バッドエンドを選択しましたが一番幸せです。

無月公主

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第二十六話【オープン!!】

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「さて、いよいよオープンね!色々あったけど、頑張りましょう!!」

私の掛け声に「おー!!」と従業員20人が声をあげた。一か月間みっちりと飲食店の極意を教えこんだ最強の戦士たち。
ラーメンのスープ作りは大きな寸胴鍋に錬金術でろ過をつけた水道水で満たし、孤児達が錬金術を覚えて作ったスープの石を入れて煮るだけ。スープのレシピを知るのは子供達のみ。
そして、このラーメンスープの匂いに釣られてお客さんがやってくる…と。

私も制服に着替えてお客を待った。

オープン時間が過ぎても誰もこない…。不安を感じてしまう。
「オーナー、外の様子を見て来たほうが良いんじゃないですかい?」と店長。
「え、えぇ。そうね。」

ヒヤヒヤしながら外へ出てみると、見慣れた顔の人達が一斉に花吹雪をまき散らした。
「オープンおめでとう!!!」
外には沢山の人がいた。前列にはジェイド王子、プレジャデス王子、サノアル、ドーリッシュ、クレア、聖女様にエンバート・ギルクライム、ジグルド様まで…。後列は町の人でいっぱいだった。
「え?え?どういう事?」
「サプライズです。皆さんでお祝いに来ました!」とドーリッシュ。
「みんな…。」
胸の奥がジーンと熱くなった。こんな感覚初めてだった。こんなに友達がいるのも初めてだった。
人ってこんなにも優しかったんだ。涙が止まらなくなった。

ジェイドが私の方を抱いた。
「さぁ、皆が食事を待っている。泣いている場合ではないよ。」
「はい!」

24時間営業予定の飲食店。主にラーメン屋だけれど、始終お客さんが切れる事はなさそうだった。
従業員を予定よりも多めに育てて良かった。クラリアス領の名物にもなれそうだ。

新しい味に抵抗がある人もいたが、強烈な旨味の匂いに釣られてやってくる人達、ジェイドもプレジャデス王子も太鼓判を押してくれるから、貴族の方達も来てくれて、あっという間に赤字が黒字に変わった。

◇◇◇

二ヶ月経って、十分な資金を手にした私は土地を追加で買って、お店の裏に孤児院を建てた。
裏の屋敷はスープの石を作り出す秘密工場として運用して、裏の孤児院では余った材料で食事をまかない、錬金術や裁縫を教えて生きる術を学ばせた。そのうちの優秀な子供には使用人としての教育を受けさせた。
お店の隣に同じお店を建てた。そのお店は24時間営業ではなく、昼の2時間と夜の2時間のみの営業で新人教育に使っている。ちなみに新人が接客するので、本店では置いていないラーメンを出した。
どちらのお店も大盛況だった。正直こんなにうまくいくとは思わなかった。現代チートが気持ちよすぎてダメになっちゃいそう。
私も成功を収めていたが、クレアも成功を収めていた。私の店舗の近くに小さなを店を持っていたが、次期王妃のサノアルのドレスを作って入れるという噂が広まって、とても人気になってしまい、店を拡張して短期間で私と変わらないくらいの店を持つことになっていた。

「で?いつになったら王都へ来てくれるのかな?」
自室の向かい側のソファーに座るジェイドが笑顔で問いかけてきた。
ジェイドは覚えたての瞬間移動の魔法で時間さえあれば私の部屋にやってくる。

私の店が成功しているのはジェイド王子の力でもあった。頻繁に通ってくれていて、しかも一般客席で食事をしてくれる事によって、女性客がわんさか増えて、ラーメンを根付かせる鍵となってくれた。なのでいつまでもここで暮らすわけにはいかなかった。

「そうですね。もうやる事はやったので、明日にでも王都へ移ります。王子様をこんなところまで毎日通わせるわけにもいきませんから。」
「そうしてくれるとありがたい。」

ジェイドの体が少し筋肉質になっている事に気付いてジッと観察してしまう。

「どうかした?」
「いえ、何というか逞しくなりました?」
「え。いや、その…。ラーメンばかり食べていたら少し、まぁ。鍛えねばと思った。」
「なるほど。なるほど!!そうですよね!!」

そう、私は閃いてしまった。次はスポーツジムを作ろうと。温泉付きだったら最高かもしれない。

「リーアー?僕が目の前にいるのに別の事を考えているね?」
ジェイドに図星をつかれてギクリとしてしまう。
「ごめんなさい。」
「何を考えていたのかな?」
「えっと、美味しいものを沢山食べる為には運動しなければならないと思いまして、運動する為の施設を建てようかと考えておりました。」
「ふーん、それで、また王都行きは先延ばしされるのかな?」
「いえいえ!明日にでも行きますとも!」
慌てて笑顔を取り繕う。

どうせ第二シーズンが始まればジェイドは私以外の令嬢のところへ行く事になるかもしれないから、行った後にでも考えよう。

「リア?」と耳元で甘く名前を囁かれてドキリと心臓が脈打つ。いつの間に向かい側から隣に移動したのだろうか。顔も声もドストライク過ぎるこの甘美なる王子にどう抗えよう…。そもそも、今は婚約者だし言う事を聞いておかないといけない。
クリアした事のないジェイドルートを攻略したらこうなるのかと好奇心だったり興味が湧いてしまうけれども、ある程度は離れとかないと後で辛い。

「リア!」
今度は両手でバチンと頬を挟まれた。
「いっ!?」
「もっと僕を欲しがれ!」
「は…い?」
意外な言葉に驚いてしまった。心の中でも読まれてしまったのだろうか。
「僕は目の前にいる。僕とリアは今どれくらいの距離にいる?」
「ど、どれくらいって…。」
そう、今の私とジェイドの距離はゼロに近い。もう1ミリでも動こうものなら唇がくっついてしまう。それにジェイドが喋る度に唇に吐息がかかるのだ。婚約者だからって、この距離がいけない気がするけど…。
「もうゼロ距離です。」
そう呟けば唇を食べるようにキスされてしまった。ダメなのに拒めない。私、いつからジェイドを拒めなくなってしまったんだろう。でも、誰かのものになったら、この気持ちもなくせるかな?
「リア、僕はね…。君の事が大好きなんだ。」
熱い吐息がかかって、その熱がそのまま伝わってくる。
「はい。」
「どうか、僕が誰かのものになるなんて思わないで…。天命でも何でも良い。僕の意思は君の隣に、側にいたいんだ。」
「はい。」

幸せな時間。でもジェイド。それは今だけだよ。私なんかより、もっと良い人がいるよ。

◇◇◇◇

◇◇クルス視点◇◇

精神世界。リアの近くにいる者の中に私は出入りができる。まさに今、私は素直でない愛しのリアの為にリアが愛する男の精神世界に入っていた。

「どうすれば伝わるんだ。お前が…あんな死に方をするから。」
悲痛な声を絞り出すジェイド王子。
「人のせいにしても、どうにもなりませんよ。こうしてリアの本心を貴方に伝えているだけでも感謝してほしいくらいです。それに私が王子の望み通りの死に方をしたとしたら、あの子はずっと精神世界に籠って一生目覚めなかったかもしれませんよ。リアは私の事が大好きでしたから。」
「…っ!!」
ジェイド王子にとっては厳しい言葉でしょうけど、これくらい言っておかないといけません。間違ったやり方でリアを手に入れても本当の愛は手に入らない。
とっくの昔から二人は両想いなんですよ。全く手がかかる子達ですね。

そもそもリアの中にはいつもジェイド王子がいた。
些細な文通から芽生えた確かな愛があった。彼女は確かに私を拒んだ。私はフラれた。それが全てだ。彼女が手に入らないのなら彼女の一部になろうとしただけ。リアの幸せは私の幸せです。
早く幸せになりなさい…リア。
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