悪役令嬢で物語を進めたら、全ての攻略ルートを辿ってしまいました。~悪役令嬢は第二王子とXXXする~

無月公主

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第一幕【二度目の命の幕開け】

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帰りの馬車の中、私は満面の笑みを浮かべ、上機嫌に窓の外を眺めていた。

――やったわ!ルルと友達になれたし、お菓子作戦も大成功!

ルルの嬉しそうな顔を思い出し、心の中で小さくガッツポーズを取る。しかし、その隣で、なぜか公爵様ことリオハルトは腕を組み、微妙に不機嫌そうな顔をしていた。

「……随分と機嫌がよろしいですね。この俺をおいてどこへ?」

不機嫌そうな声に、私はニコニコと振り向いた。

「婚活ですってば。」

「……」

リオハルトは無言のまま、じっと私を見つめる。

「そのご様子ですとうまくいったようですね。」

「はい!!それはもちろん!」

私は勢いよく頷く。だが、リオハルトの目がすっと細まり、冷ややかな声が続いた。

「……しかし、あなたにはガッカリです。」

「はい?何がです?」

突然の発言に私はきょとんとする。しかし、リオハルトは軽く肩をすくめた。

「いえ、別に。」

そう言うだけで、それ以上は何も言わなかった。その態度が妙に気になったが、聞いても無駄そうなので、私は肩をすくめて馬車の揺れに身を任せた。

――まあいいわ。今日は楽しかったし、婚活もうまくいったし、余計なことは考えないでおきましょう!

やがて馬車はダールベイト侯爵家に到着した。扉が開かれ、私は馬車を降りる。最後にリオハルトの方を振り向き、礼儀正しく微笑んだ。

「今日はありがとうございました。」

完璧な笑顔。完璧な締めくくり。

――さあ、これで終わり!

しかし、リオハルトはその場で何かを思い立ったように私の方へゆっくりと歩み寄る。そして……

「っ!?!」

頬に、柔らかな感触が落ちた。

「なっ……!?」

私は目を見開き、思考が停止する。

「……あぁ、良い顔だ。」

リオハルトは満足そうに黒い笑みを浮かべ、じっと私を見つめていた。

――えっ……ちょっ……何今の!?!?

心臓がドクンと跳ね、顔が一気に熱くなる。

「私で遊ぶのはやめてください!そのうち後悔しますよ!」

動揺しながら叫ぶと、リオハルトは薄く微笑んだまま、静かに囁いた。

「それは楽しみだ。」

夜風がそっと吹き抜ける中、彼はまるで劇的なラブシーンのように余裕の表情で馬車へと戻っていった。

――ちょっと待って!?なんでこっちだけロマンチックな雰囲気になってるのよ!?

私は拳を握りしめ、深呼吸する。

「攻略キャラと恋愛してたまるか……!」

思わず呟いたその言葉は、夜の静寂に吸い込まれていった。

屋敷の大きな扉をくぐると、玄関の中央に立つ一人の男が目に入った。

オルグだった。

薄暗い照明の下、彼は静かに立っていたが、その表情には薄く怒りの影が見える。鋭い眼差し、ほんのわずかに浮かぶ怒り筋。それだけで彼の感情が伝わってきた。

「おかえりなさい。」

低く抑えられた声。それが妙に心に引っかかる。

私は気を取り直して上機嫌に微笑み、「ただいま」と言いながらその場を通り過ぎようとした。部屋に戻って今日のことを振り返りながら、早く眠りたかった。

しかし、その瞬間、腕を掴まれた。

「っ!」

思わず息を呑む。オルグの手はいつもより強く、決して逃さないという意志を感じさせるほどの力だった。

「オルグ!?何、どうしたの?」

振り返ると、彼は真剣な表情をしていた。その目は強く、まるで私の答えを待つかのように揺らがない。

「……俺が……もう……不要ですか?」

「は?何いって……。」

一瞬、何のことかわからなかった。

でも、すぐに気づいた。これは私が避けてきた問題だった。

――そうよね。オルグは私をずっと護衛してきた。それなのに、私は何も言わず彼を突き放そうとしていた。

彼の手の力が強まる。私は深呼吸し、心を落ち着かせながら彼を真っ直ぐに見つめた。

「ごめんなさい、オルグ。」

彼の目がわずかに揺れる。

「あなたの気持ちには答えられないわ。」

オルグの指が僅かに震えるのがわかった。でも、私は続けた。

「だから、もう私の護衛を外れて。」

静寂。

「……俺は……。」

「もし望むなら、推薦状も用意するわ。オルグがやりたいことを手伝うから。」

これが最善の答えだった。

私は逆ハーレムを作りたいわけじゃないし、この世界でありふれた恋愛模様には乗らない。私の命がかかっているのだから。

オルグは拳をぎゅっと握りしめた。その瞳はしばらく私を見つめていたが、やがて何も言わずに手を離した。

そして、踵を返し、静かに去っていった。

廊下の奥へと消えていくその背中を、私は何も言わず見送るしかなかった。

「……オルグには、悪いことしちゃったわね。」

ぽつりと呟く。

でも、命がかかった人生なの。馬鹿正直に攻略キャラ、しかも騎士を選んでロマンスしても、そんなの読者が飽きるに決まってる。

「騎士×令嬢なんてありふれすぎてるのよ……。」

そう自分に言い聞かせ、私は部屋へと向かった。

ドアを閉め、ゆっくりと着替える。衣装を脱ぎ捨て、柔らかな部屋着に身を包むと、化粧を丁寧に落とした。

ふかふかのベッドへと身を投げると、心地よい眠気がゆっくりと押し寄せてくる。

「……明日から、また頑張らないとね……。」

ぼんやりと天井を見上げながら、小さく息をついた。

静かな夜の中、私はそっと目を閉じ、深い眠りへと落ちていった。

ぼんやりとした意識の中で、私は目を覚ました。
天井を見上げると、見覚えのない装飾が施された部屋の天井が広がっている。シルクのカーテン、重厚な木製の家具、そして見たことのない調度品たち。

「え……?」

寝台の上でゆっくりと身を起こそうとするが、体が思うように動かない。まるで力が抜けたかのように、指先すらまともに動かない。

「あぁ……目が覚められましたか?」

低く、冷ややかな声が部屋に響く。

――オルグ?

目の前に立っていたのは、確かにオルグ・マッキャノンだった。
だが、いつもの冷静で誠実な騎士の雰囲気はどこにもない。彼の青い瞳はどこか陰を帯び、声の調子も低く抑えられていた。

「今……追加の薬を出しますね。」

そう言いながら、オルグは静かに側にある机の引き出しを開けた。

「……私の護衛を外れたんじゃ……。」

言葉を絞り出すように問いかけると、オルグは小さく微笑んだ。

「外れましたよ。辞表も出してきました。」

「じ、辞表!?」

予想外の言葉に思わず目を見開く。

「待って……ここはどこ?」

オルグは水の入ったコップを手に取り、ゆっくりと私の方へ近づいてきた。
淡々とした表情のまま、静かに言い放つ。

「ここはマッキャノン子爵家です。」

「子爵家……?」

混乱する私を無視し、オルグはコップの中の水にさらさらと薬を溶かし込んだ。


「な……に……何を言ってるの?」

思考が停止する。

次の瞬間、オルグはコップの水を口に含むと、片手で私の頭を優しく押さえ、ためらいなく口移しで水を流し込んできた。

「んっ……!!」

突然の出来事に抵抗しようとするが、力が入らない。
喉に流れ込んでくる液体を拒めず、私は無意識のうちに飲み込んでしまった。

「けほっ、けほっ……! 何が入って……。」

「その薬は……あなたの体の自由を奪う薬です。」


体の内側からじんわりと広がる異変。
指先が痺れ、視界がかすんでいく。

「何……を……言って……。」

口元が上手く動かせない。意識が朦朧としていく。

嘘……でしょ?
何が起きているの……?

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