囚われの公爵と自由を求める花~マザコン公爵は改心して妻を溺愛する~

無月公主

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42.愛情が空回り?過保護すぎる公爵の奮闘記

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クレノースはサクレティアに妊娠の報告を受けてからというもの、まるで別人のように張り切っていた。少しでもサクレティアが疲れていそうだと感じたらすぐにふかふかのクッションを差し出し、彼女が好むと知っている花々をひとつにまとめたブーケを用意したり、たまたま目にした果物が彼女の好物だった場合には、わざわざ温室で育てさせた新鮮なものを選び直すほどの念の入れようだ。



「クレノ、私そんなに何もかも必要ないのよ?」とサクレティアが微笑みながら言うと、クレノースは少しの間驚いたように彼女を見つめてから、すぐに真剣な表情に戻り、小さくうなずいた。



「はい、もちろん、存じておりますとも。ただ……僕ができることはなんでもしたいのです。」



「あの、そこまで必死にならなくても……」サクレティアは苦笑しながらも、手に持ったブーケを見て、少しだけ頬を赤らめた。



「僕には、こうすることが今の一番の使命ですから」と、クレノースは胸を張りながら答える。「サクレティア様が少しでも快適に過ごせるように、それが僕の一番の喜びなのです。」



「そんなに言われると、私、ちょっとプレッシャーだわ」とサクレティアはまた小さく笑ったが、彼の顔を見ると、その表情はまるで小さな子供のように嬉しそうに輝いている。



彼の視線はやがてブーケの次に彼女の足元へと移り、「床が冷えているのでは?」と言いながら彼女の足元に新しいラグを敷こうと手早く準備を始めた。



「クレノ、足元まで気を使ってもらわなくても、そこまで冷えないのよ!」と言っても、彼の動きは止まらない。「サクレティア様、今はすべてが大切です。サクレティア様とお腹の中の命を、僕が少しでも支えられることがあるなら……!」



「ほんとにもう、何もそんなに大げさにしなくても……」そう言いつつも、クレノースの真剣さが伝わってくると、少しだけ胸が温かくなった気がした。





ある日の午後、サクレティアは少し疲れた顔をしてソファに座っていた。体のだるさがいつもより増していて、少し休みたい気分だったのだが、そこにクレノースが颯爽と登場した。彼はサクレティアの隣に座り、真剣な顔で彼女を見つめると、いきなり手を握った。



「サクレティア様、どうか僕の手を握っていてください。」そう言うと、彼はしっかりとその手を包み込むように両手で握った。



「え?何それ?」サクレティアは少し驚きつつ、目の前のクレノースの真剣な表情に、少しだけ頬を赤らめた。



「こうしていれば、きっと安心していただけるかと。」クレノースはそう言って、少しだけぎこちない笑顔を見せた。



「うーん、そんな手を握ったくらいで安心するものかな?」とサクレティアが首を傾げると、クレノースは真剣そのものの顔で続けた。「もちろん、握るだけでは不十分だとわかっています。でも、僕の手を通じて、少しでも僕の思いが伝わることを願っているんです。」



その言葉に、サクレティアは思わず吹き出しそうになりながらも、「そう、クレノがそう言うなら」と、彼の手をぎゅっと握り返した。



すると、クレノースは満面の笑みを浮かべて、「ありがとうございます!サクレティア様が僕の手を信頼してくださって、とても嬉しいです!」と喜びいっぱいの様子で言った。



サクレティアはそんな彼の様子に、「ほんと、ちょっと大げさすぎない?」と軽くからかってみたが、クレノースはまったく動じず、「いえ、これは僕にとってとても重要なことなんです。サクレティア様とこの子が無事であるために、僕は全力でお守りする覚悟です!」と大真面目に宣言した。



その言葉を聞いて、サクレティアは少し照れくさそうに笑いながら、「クレノ、ありがとうね。なんだか私も、ちょっと安心したわ」とぽつりとつぶやいた。するとクレノースはさらに喜び、彼女の手をしっかりと握りしめたまま、「これからもずっと、サクレティア様のおそばにおりますから!」とさらに意気込んでいる。



サクレティアは彼のその一生懸命さに、思わず心が温かくなるのを感じていた。そして、ふと彼の顔を見ると、少し緊張しているようにも見える。



「クレノ、そんなに力を入れていたら、こっちが痛くなっちゃうわよ?」サクレティアは笑いながら、彼の手を少し緩めさせた。



「すみません……!どうしても力が入ってしまって。」クレノースは少し恥ずかしそうに手を緩めながらも、「でも、僕にとってサクレティア様は何よりも大切な存在ですから」と言葉を付け加えた。



サクレティアは彼のそんな純粋な気持ちが嬉しくて、「クレノがそう思ってくれてるなら、私もがんばれる気がするわ」と、少し照れくさそうに笑顔を返した。



その瞬間、クレノースの顔はさらに明るく輝き、「ありがとうございます!サクレティア様と一緒にいることが、僕にとっての最大の喜びです!」と嬉しそうに叫ぶように言った。



「うんうん、それなら何よりね」と、サクレティアもつい微笑んでしまったが、彼のあまりにも幸せそうな顔に《ほんとに、この人はどうしようもないわね……》と心の中でつぶやかずにはいられなかった。



サクレティアはクレノースの一生懸命すぎる様子に呆れながらも、ほんの少しだけ愛おしさを感じていた。彼は再び彼女の手を握り直して、「サクレティア様とお腹のお子様のためなら、何だってしますよ!」ときらきらとした目で宣言する。



「そこまでしなくていいわよ」とサクレティアが軽く言うと、クレノースは首を横に振り、真剣な眼差しで続けた。「いいえ、それでは足りません!いまこの瞬間も、何かできることがあればと思ってるんです!」



サクレティアは「まぁまぁ、気持ちはわかったから」とクレノースをなだめながら、心の中で《ほんとに過剰すぎるわね…》と呆れていた。しかし、クレノースは再びふかふかのクッションを持ってきて、「どうぞ、少しでもリラックスしていただければ…」と、そっと彼女の背後に置いてくる。



「もう、本当に大丈夫だから」サクレティアが笑いながら言うと、クレノースは少し考え込んでから、「それなら…次は温かい飲み物などいかがでしょうか?僕、すぐに温室から一番新鮮なハーブを摘んできます!」と言い出した。



「温室まで!?それはさすがに大袈裟よ!」とサクレティアが驚くと、クレノースは一瞬だけ戸惑った様子を見せ、「そ、そうですか…?」と少し顔を赤らめた。



「クレノ、大事なのはそこじゃないわよ。無理しないでいいの」とサクレティアは優しく諭すように言った。



「でも…」クレノースはしばらく悩んだ末に、ふと考え直したように小さくうなずいた。「はい、サクレティア様がそうおっしゃるなら、なるべく無理のない範囲で…やっぱり特製ハーブティーを…!」



「もういいから!」とサクレティアは笑いながら彼の肩を叩いた。クレノースは一瞬だけ驚いた顔をしたが、その後、少し寂しそうに目を伏せて小さな声でつぶやいた。「サクレティア様、僕が少しでも助けになりたくて…」



その表情を見て、サクレティアも少しだけ申し訳ない気持ちになり、「ありがとう、クレノ。本当に感謝してるの。でも、あんまり頑張りすぎると、逆に疲れちゃうわよ?」と優しく微笑んだ。



するとクレノースは驚いたように顔を上げ、「僕が疲れるだなんて…!まさか、そんなことは…!」と口にしたが、サクレティアの真剣な顔を見ると、すぐに「そ、そうですね…少し休憩を…」と椅子に腰を下ろした。



《やっと休んでくれたわ》とサクレティアは安堵しながら彼に微笑みかけた。

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