13 / 55
第四章 訪問者
11話
しおりを挟む
肩を貸しながらなんとか家に辿りつき、すぐに固定用の包帯でぐるぐる巻きに固めておいた。
肋骨にヒビが入った状態で無理をしたから、早くも熱が出始めてる。とりあえず鎮痛剤と解熱剤を飲ませたけど、また暫くは安静にしてもらわなければ。
一方僕は、家中の本棚や物置をひっくり返してエレメントデビルが載った図鑑を探していた。かなり時間がかったけれど、ついさっき、お爺さんの遺品の中からそれらしきものを発見したところである。
(ヴィラと一緒に読もう)
そう思ってリビングに本を持ち帰ると、荒々しいノックの音が聞こえてきた。……来客なんていつぶりだろうか。
「はーい」
「セラシェル! お前無事だったか!」
「あれ、カリアじゃないか。どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるかよ。普段は静かな森から、ものすっごい唸り声が聞こえてきたかと思ったら、デッケー氷が現れたり、晴れてるのに雷が鳴ったりでさぁ……心配するに決まってるだろ!」
どうやら心配して様子を見に来てくれたらしい。村からは片道半刻以上かかるのに……なんていいやつなんだろう。
事情を話すからと上がってもらい、温かいお茶を用意する。ヴィラも呼ぼうかと思ったけど、部屋を覗くと眠っていたので、そっとしておくことにした。
スリープマッシュを取りに行ったら、帰り道で見たこともない魔獣に会ったこと。二人で協力し、最後にはスリープマッシュの胞子を飲ませて池に沈めたことなどを、出来るだけ簡潔に話した。
氷がヴィラの加護属性であることは話したけど、雷は偶然だと言って誤魔化しておいた。カリアのことを信用していないわけではないけれど、ヴィラは隠したいようだったから。
「それにしてもヴィラってさ、あんなに巨大な氷を出せるなんて、とんでもない魔力量なんだな」
「そうなんだ。僕は魔力量とか分からないし、純粋に凄いな~としか思わないんだけど……」
「いやいやいや、あれは相当だって。同じ加護持ちって言っても、やっぱ魔力量によって威力が変わるんだよ。俺も火の加護を受けてるけど、全力で魔法を使ったとしても、暖炉より少し強火の火力が出るくらいだし」
「なるほど……?」
「その顔、絶対理解してないだろ。……まぁいいや。無事なのは確認できたし、お前も疲れてるだろうから今日のところは帰るよ」
またなー! と元気に手を振って消えていく幼馴染の姿を見送る。……ふぅ、怒涛の一日だったから、流石に疲れた。
暫くして目が覚めたヴィラと軽めの夕食を取り、その日はすぐに眠りについた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▽
それから二日後。
畑の水撒きに行く為にドアを開けると、ドサッという音が聞こえた。どうやら、外側のドアノブに引っかけられていた何かが、地面に落ちてしまったらしい。
音の正体は果物が入ったバスケットだったようで、あっちこっちに転がった果物を集め直すのには苦労した。黄色くてトゲトゲしたもの、赤くて柔らかいもの、これは紫でつぶつぶだ。見たこともない果物ばかりだけどカリアのお土産だろうか?
けれど、彼であれば朝早くにドアノブにかけるなんて真似はせず、昼休憩を抜け出して、堂々と渡しに来るだろう。……まぁ、誰でもいいか。見たことのない果物の味も気になるし、ありがたく朝ご飯にでもしよう。そう思いながら、ひとまずはダイニングテーブルの上に置いて、意気揚々と家を出た。
収穫できた野菜を抱えて水撒きから戻ると、ヴィラが真っ青な顔で椅子に座っていた。……体調でも悪いのだろうか? 不思議に思って尋ねてみても、一向に返事は返ってこない。とりあえずストーブの温度を上げてみたけれど、部屋が温かくなっても、ヴィラの顔色が戻ることはなかった。
「あー、フルーツ食べる? 今日の朝ドアのところにかけてあってさ」
「…………」
「珍しいものばっかりだよね! 特にこの赤いのとか……」
パシッ、果物へと伸ばした手が素早く叩き落とされて少し驚く。そんなに果物好きだったっけ。普段は大人びた少年の子供じみた仕草に思わず笑みが溢れる。
「僕は食べなくてもいいけど、君怪我してるんだから僕が剥くよ」
「はぁ……お前には警戒心というものがないのか」
「な、なんだよいきなり」
「こんな誰が置いていったかも分からない果物を食べようとするな。捨てる」
「え、ちょっと、そこまでしなくても」
せっかく珍しいフルーツなのに……。物欲しそうな目で眺めていると、何故かあっさりバレてしまった。
「……捨てたら拾って食べそうだな。燃やすか」
あれ? 不思議だな。どうして出会ったばっかのツンツンモードに戻ってるんだろう。思春期の子供って本当によく分からない。そんな思いを抱きながら、一瞬で果物を消し炭にするヴィラの背中を見つめていた。基本好き嫌いはない子だけど、食育とかした方がいいのかな。
結局、ヴィラはその日一日元気がなかった。怪我の経過は良好だし、ご飯もしっかり食べていたから、体調が悪いわけでもないと思う。絶対安静中で散歩に行けてないことがストレスなのかも。
全く論文に集中できないまま自室で悶々と考え込んでいると、控えめなノックと共にヴィラが入ってきた。
手紙用の紙と封筒を貸して欲しいとのことだったので、もちろんOKだと手渡したのだけど、彼が出て行った後にハタと気づく。その手紙、一体誰用なんだ……?
肋骨にヒビが入った状態で無理をしたから、早くも熱が出始めてる。とりあえず鎮痛剤と解熱剤を飲ませたけど、また暫くは安静にしてもらわなければ。
一方僕は、家中の本棚や物置をひっくり返してエレメントデビルが載った図鑑を探していた。かなり時間がかったけれど、ついさっき、お爺さんの遺品の中からそれらしきものを発見したところである。
(ヴィラと一緒に読もう)
そう思ってリビングに本を持ち帰ると、荒々しいノックの音が聞こえてきた。……来客なんていつぶりだろうか。
「はーい」
「セラシェル! お前無事だったか!」
「あれ、カリアじゃないか。どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるかよ。普段は静かな森から、ものすっごい唸り声が聞こえてきたかと思ったら、デッケー氷が現れたり、晴れてるのに雷が鳴ったりでさぁ……心配するに決まってるだろ!」
どうやら心配して様子を見に来てくれたらしい。村からは片道半刻以上かかるのに……なんていいやつなんだろう。
事情を話すからと上がってもらい、温かいお茶を用意する。ヴィラも呼ぼうかと思ったけど、部屋を覗くと眠っていたので、そっとしておくことにした。
スリープマッシュを取りに行ったら、帰り道で見たこともない魔獣に会ったこと。二人で協力し、最後にはスリープマッシュの胞子を飲ませて池に沈めたことなどを、出来るだけ簡潔に話した。
氷がヴィラの加護属性であることは話したけど、雷は偶然だと言って誤魔化しておいた。カリアのことを信用していないわけではないけれど、ヴィラは隠したいようだったから。
「それにしてもヴィラってさ、あんなに巨大な氷を出せるなんて、とんでもない魔力量なんだな」
「そうなんだ。僕は魔力量とか分からないし、純粋に凄いな~としか思わないんだけど……」
「いやいやいや、あれは相当だって。同じ加護持ちって言っても、やっぱ魔力量によって威力が変わるんだよ。俺も火の加護を受けてるけど、全力で魔法を使ったとしても、暖炉より少し強火の火力が出るくらいだし」
「なるほど……?」
「その顔、絶対理解してないだろ。……まぁいいや。無事なのは確認できたし、お前も疲れてるだろうから今日のところは帰るよ」
またなー! と元気に手を振って消えていく幼馴染の姿を見送る。……ふぅ、怒涛の一日だったから、流石に疲れた。
暫くして目が覚めたヴィラと軽めの夕食を取り、その日はすぐに眠りについた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
▽
それから二日後。
畑の水撒きに行く為にドアを開けると、ドサッという音が聞こえた。どうやら、外側のドアノブに引っかけられていた何かが、地面に落ちてしまったらしい。
音の正体は果物が入ったバスケットだったようで、あっちこっちに転がった果物を集め直すのには苦労した。黄色くてトゲトゲしたもの、赤くて柔らかいもの、これは紫でつぶつぶだ。見たこともない果物ばかりだけどカリアのお土産だろうか?
けれど、彼であれば朝早くにドアノブにかけるなんて真似はせず、昼休憩を抜け出して、堂々と渡しに来るだろう。……まぁ、誰でもいいか。見たことのない果物の味も気になるし、ありがたく朝ご飯にでもしよう。そう思いながら、ひとまずはダイニングテーブルの上に置いて、意気揚々と家を出た。
収穫できた野菜を抱えて水撒きから戻ると、ヴィラが真っ青な顔で椅子に座っていた。……体調でも悪いのだろうか? 不思議に思って尋ねてみても、一向に返事は返ってこない。とりあえずストーブの温度を上げてみたけれど、部屋が温かくなっても、ヴィラの顔色が戻ることはなかった。
「あー、フルーツ食べる? 今日の朝ドアのところにかけてあってさ」
「…………」
「珍しいものばっかりだよね! 特にこの赤いのとか……」
パシッ、果物へと伸ばした手が素早く叩き落とされて少し驚く。そんなに果物好きだったっけ。普段は大人びた少年の子供じみた仕草に思わず笑みが溢れる。
「僕は食べなくてもいいけど、君怪我してるんだから僕が剥くよ」
「はぁ……お前には警戒心というものがないのか」
「な、なんだよいきなり」
「こんな誰が置いていったかも分からない果物を食べようとするな。捨てる」
「え、ちょっと、そこまでしなくても」
せっかく珍しいフルーツなのに……。物欲しそうな目で眺めていると、何故かあっさりバレてしまった。
「……捨てたら拾って食べそうだな。燃やすか」
あれ? 不思議だな。どうして出会ったばっかのツンツンモードに戻ってるんだろう。思春期の子供って本当によく分からない。そんな思いを抱きながら、一瞬で果物を消し炭にするヴィラの背中を見つめていた。基本好き嫌いはない子だけど、食育とかした方がいいのかな。
結局、ヴィラはその日一日元気がなかった。怪我の経過は良好だし、ご飯もしっかり食べていたから、体調が悪いわけでもないと思う。絶対安静中で散歩に行けてないことがストレスなのかも。
全く論文に集中できないまま自室で悶々と考え込んでいると、控えめなノックと共にヴィラが入ってきた。
手紙用の紙と封筒を貸して欲しいとのことだったので、もちろんOKだと手渡したのだけど、彼が出て行った後にハタと気づく。その手紙、一体誰用なんだ……?
10
あなたにおすすめの小説
俺の婚約者は小さな王子さま?!
大和 柊霞
BL
「私の婚約者になってくれますか?」
そう言い放ったのはこの国の王子さま?!
同性婚の認められるパミュロン王国で次期国王候補の第1王子アルミスから婚約を求められたのは、公爵家三男のカイルア。公爵家でありながら、長男のように頭脳明晰でもなければ次男のように多才でもないカイルアは自由気ままに生きてかれこれ22年。
今の暮らしは性に合っているし、何不自由ない!人生は穏やかに過ごすべきだ!と思っていたのに、まさか10歳の王子に婚約を申し込まれてしまったのだ。
「年の差12歳なんてありえない!」
初めはそんな事を考えていたカイルアだったがアルミス王子と過ごすうちに少しづつ考えが変わっていき……。
頑張り屋のアルミス王子と、諦め系自由人のカイルアが織り成す救済BL
【第一章完結】死に戻りに疲れた美貌の傾国王子、生存ルートを模索する
とうこ
BL
その美しさで知られた母に似て美貌の第三王子ツェーレンは、王弟に嫁いだ隣国で不貞を疑われ哀れ極刑に……と思ったら逆行!? しかもまだ夫選びの前。訳が分からないが、同じ道は絶対に御免だ。
「隣国以外でお願いします!」
死を回避する為に選んだ先々でもバラエティ豊かにkillされ続け、巻き戻り続けるツェーレン。これが最後と十二回目の夫となったのは、有名特殊な一族の三男、天才魔術師アレスター。
彼は婚姻を拒絶するが、ツェーレンが呪いを受けていると言い解呪を約束する。
いじられ体質の情けない末っ子天才魔術師×素直前向きな呪われ美形王子。
転移日本人を祖に持つグレイシア三兄弟、三男アレスターの物語。
小説家になろう様にも掲載しております。
※本編完結。ぼちぼち番外編を投稿していきます。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました
禅
BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。
その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。
そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。
その目的は――――――
異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話
※小説家になろうにも掲載中
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる