異能者たちの日常

野草こたつ/ロクヨミノ

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◇くりかえしの一日:3◆

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 路地裏にぼたぼたと血がこぼれていく。
 真っ白だった白衣は赤く染まり、ウィリアムは不自然な相手の動作に困惑していた。

 戦えないとはいえ、せめて足手まといにならないように回避にはそれなりの自信がある。
 それなのに目の前の少女の攻撃は、避けているはずなのに、まるで違うところから切りつけられるのだ。
 幸いにして、彼の傷は、自分のものにかんしては致命傷でさえ癒えてしまう。
 だから天に呼ばれること以外で死ぬ確率はないに等しいが、もちろん痛みはある。

「……どうして死なない?」
 少女が怪訝そうに呟いた。
 ウィリアムはそれに困ったように笑う。

「これが私の能力だからね、もうしわけないけど」
「チッ、傷が癒えるってだけじゃないのかよ」
 それでもまだ少女は諦めていないようで、ウィリアムの心臓を狙ってナイフを構え、地面を蹴る。

 ――……。

「いい加減に、しろっつーの!」
 俺はウィリアムを庇って、ガキのナイフを受けとめた。
 やっぱりそうだ、ウィリアムは避けることにかんしては俺よりうまい、なのにこんなにずたずたになってるのを見ると……。
 たぶんウィリアムには、こいつがガキに見えてない。

「こンのクソガキ! こととしだいによっちゃあおまえ、死罪になっちまうぞ!」
 能力者だったらなにをしても助けてもらえるわけじゃない。
 危険だと判断されりゃあ殺されるだけだ。

 クソガキは俺を見るなり目つきを鋭くさせて叫ぶ。
「おまえさっきの……よくも! グレーテルを!」
「は? グレーテル? 童話かなんかの話か?」

 あ、違うのか、もしかしてさっきのスイカの話か。
 クソガキはナイフを構えなおして、にやりと笑った。

「ちょうどいいや、おまえのほうから潰してやる!」
 けど俺は、そいつのナイフを受けとめて弾き飛ばす。
 やっぱどんなにすばしっこくてもガキの腕力だ。

 ナイフをふっとばした時、一緒に帽子がふっとんで、金色の髪と紫の目が見えた。
「――なんで、まさか、やっぱりほんとうに、僕の姿が見えてるのか?」
 驚いたようすのクソガキが戸惑ってるあいだに距離をつめて、腕を掴む。

「なんでもくそもへったくれもねーんだよ! 法律に物理的な意味で頸椎折られたくなきゃおとなしくしてろ?」
 そう叫んで、俺はそのクソガキをとっつかまえたのだった。
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