カミサマは新しいチートの楽しみ方をミツケマシタ

肉球は正義

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ヤット タビニデル

ミッション1-10 襲来

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「いや、まさか王子ご自身がいらっしゃるなんて、驚きましたよ。ようこそ。ウチの酒の味は、どうです?」
驚きを隠せていない店長が、矢継ぎ早に質問を並べるのが聞こえる。

これあれですよ。王子の目的次第じゃさらに騒がしくなるよっ。
そんでもって私は何となく気まずくて振り向けずにいた。
ファーストコンタクト以来、王子、初登場なんですけど!なに?何だろ?胸騒ぎがする!

「明日、この街を出ます」
やったぜ!
「その前に、どうしてももう1度、会いたい人がいて…」
背中を向けていても分かる王子の色気を含ませたため息。じっと動かない視線。
そして、さらにまずいのは洗う食器がなくなったことだろうか…。
「て、店長。終わりました!」
「ああ!なら裏の掃除だ!」
「はい!」
私の焦りが通じたのか、それとも情報屋として知ったのか。
店長は明らかに私を王子から遠ざけようとしてくれている。
ありがとうございます店長。このご恩は忘れry。
「待って」
断りもなくカウンター内に入ってきた王子が優雅な所作で私の手を取る。私の背中には冷や汗が流れる。
「今夜。どうか少しだけ貴方の時間を下さい」

「いやです」

つい、即答してしまった


◆ ◆ ◆


俺は落としそうになった食器を意地でも落とすまいとしながらカウンターの店長さんに渡す。そして素早くおっちゃんを振り返ると、腕組みして目を閉じてもんっのすんごい渋面で口を真一文字に結んでいた。

おい、ちょっとおっちゃん。話がある。いつの間に王子がこんなにこじらせてたのか説明しろ。
睨みながら念じてみたが、おっちゃんは微動だにしない。
え?何?俺、王子を殴る勢いだけどいいの?

「いやあ!王子さま。お酒に弱かったんですね?」
すぱん!と手刀で王子の手を叩き落として俺はにっこり笑ってみせる。
「ちょっ、兄!」
ダメだ妹!ここで気を遣ったら付け入られる!
妹を背に隠しながら王子とおっちゃんの出方を待つ。他の客も突然のことに完全に観客状態だ。

「ふふ、本当に過保護なんですね」
微笑む余裕のある王子に内心で舌打ちしながら俺の王子警戒レベルを上げていく。
いくら何でも初対面以降、2度目の接触の今日でデートに誘ってんじゃねぇぞ!!
「ええ。世界一かわいい俺の妹ですから」
真剣に答えれば、王子の微笑みが深みを増す。
「お願いです。妹さんとお話をさせて下さい」
「引き際の悪い男は好かれませんよ?」
即答しただろうが俺の妹は。


◆ ◆ ◆


重い、空気が重い。兄が背中に隠してくれていなかったら、逃げ出すレベルだ。
ああっ店長!せっかくの離れるチャンスをムダにしてごめんなさいっ。

静まり返る店内。心臓が爆発するんじゃないかってくらい音を立てている。
そこに、この静けさを破る聞き覚えのある声がした。
「え?みんな、どうしたの?」
「お、王子様?!」

ヒロインちゃんと幼馴染くん!
何気にちゃんと見るのは初めてだけど、幼馴染くんは分かりやすい王道ツンデレ系の外見をしていた。
わー、かわいい。じゃなかった…。
王子とヒロインちゃんのセットなんて危なすぎるのでは?!

そんなことに気を取られていると、王子がヒロインちゃんを振り返っている。
「おや、先日のお嬢さんではありませんか。お話してくれた、お手伝いに来たのですか?」

へ?王子ってばヒロインちゃんと面識あるの?先日とは何のお話ですか?
ポカンとしてしまう私と、渋面の兄とおじさまと店長。幼馴染くんはヒロインちゃんと王子の顔を交互に見て慌てていた。
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