5 / 10
4話
しおりを挟む
「じゃあ、悠ちゃん。私このパッキン、ゴミ捨て場に持って行ってくるねー」
「はぁい、お願いしまーす」
うちの商品は主婦向けのキッチン道具や食器を扱っているなかなか可愛いショップだ。
価格もそれなりに安くて、でもその割にデザインはいいからたまに主婦向けの雑誌に載ってたりする。
主婦の人達ってキッチンが自分の城って思ってる人が多いから、自分好みのキッチン道具を購入していく人は多い。
ギフトにもいいしね。
こういうショップは商品が多いから、ディスプレイの変更もなかなかやりがいがある。
でも、出たゴミ達をゴミ捨て場に持って行く。 なかなかの重労働…… 台車借りれば良かったかなぁ。 そんな事を思っていた時、 「あっ相田さん!もしかして今からゴミ捨て場行く?」 いきなり通路を塞がれて現れたのは、向かいの眼鏡ショップの店長……と先ほどまで噂をしていたあの男の子が一緒にいた。 「はい、そうですけど」 何となーく嫌な予感はしたけど、笑顔で対応。 これはもう販売員としてのクセみたいになってる。 「だったらさー、悪いけどこの新入り連れて行ってくれない? 今、みんな休憩に出払っちゃって誰もショップにいなくて店の裏まで案内出来ないんだよね」 「はっ…えぇぇ!」 「案内はゴミ捨て場だけでいいからさ、よろしくねー!」 それだけ言い残してダッシュでショップに戻る眼鏡ショップの店長…… あんの店長……! 普通、違うショップの店員に自分トコの店員の指導させないでしょ! 今度、うちの店長にチクってやる! なんて、眉間にシワを寄せてたら、 「あのー……行かないんですか?ゴミ捨て場」
「えっ?あっあぁ…そうね。ごめんなさい。 とりあえず、ゴミ捨て場に行きましょうか? えっと…」 名前を聞きたいけど、本人は全く気付いてない。 だってボーッと私の顔を見ているんだもの。 ……かなり、抜けてるぞ。 「あのー名前は?」 「あー、有宮です」 「ありみや君?珍しいね」 「よく言われます。親族は有宮だらけなんで別に珍しくないんですけど」 うん、そりゃそーでしょ。 親族なんだから。 という、ツッコミを心の中で呟いてしまった。 ボーッしていたのかと思ったら、今度はニコニコと可愛い笑顔を振りまいてくれる有宮君。 そんな彼を裏のゴミ捨て場まで案内した。 後ろで悠ちゃんがジーっと見てるのは気付いてたけど、気づかないふりをして 二人でゴミ捨場まで歩き話をしてみると、有宮君はちょっと抜けてるけどしっかりと受け答えするし、やっぱり真面目な印象。 うん、眼鏡店長、いい新人入ったね。と、心の中で思った。 でも、いくら自分のショップのゴミじゃないとはいえ、女性にこのパッキンずっと持たせるのってどーなの?!とは思う。 顔は良いかもしれないけど、気遣いが出来ないタイプだわ。 本人は店内の裏側が珍しいのかキョロキョロしながら歩いてる。 男性で歩幅が違うから、いつもより早足で歩かなきゃいけないから、かなり辛い。 内心イライラしながら、会話はいつものよそゆきの笑顔で対応。 あー早く売り場に戻りたい……と、頭の中で呟いた。 そんな時、ふとゴミ捨て場にパッキンを置いて売り場に戻る途中思い出した。 「さっきはドリンクご馳走様。次の休憩何時?今度は私が奢るわ」 「えっ?あ、いーですよ。俺のミスですから。よくやるんですよね。だから、小銭ビンボー」 「ぷはっ」 言い方が面白くて、つい素で笑ってしまった。 こんなトコロもあるんだ、この子。 「相田さん、やっぱり笑った顔可愛いですね。」 「はい?」 いきなり何言い出すの? 店の裏側はかなり声が響くせいか、私の声はエコーみたいに響き渡った。 「素で笑った顔可愛いですよ。いつもそんな感じならいいのに」 「えっえっえっ…?」 いつもって何?今日初めて会ったはずなのに。
私が不思議に何度も瞬きをしていると、有宮君が悪戯っ子で魅力的な笑顔を振りまき、こう言った。
「俺、知ってるんですよ。相田さんの事。結構前から。」
「えぇぇぇ!!!」
またまた響く私の声。
有宮君……君は一体何者?
「有宮君……あなたいったい……?」
もしかしら新手のストーカーかもしれない。
ビクビクしながら素性を聞くと、
「名前は有宮 哲。
今日から晴れてフリーターになったばかりの23歳ですよ。」
「じゃあ、最近までニート?」
「俺のはちゃんとした目的のあるニートだったので。」
「ニートの人はみんなそれ言うよ?」
「……」
ちょっとうつむいて顔を赤くした有宮君。
やだ……可愛い……
じゃない!っと自分で自分にツッコミを入れた。
「何で私の事知ってるの?新手のストーカー?!」
「あーなるほど。そういう方向に考えますか。やっぱりねー」
可笑しそうに笑う有宮君に私はただもう、頭には?マークがいっぱいだった。
「普通の女子なら「これが運命の出会い?」とか思うんでしょうけどね。
うん、相田さんはやっぱりこっちタイプ」
はっ?言ってる意味がわからない。
言った本人は満足そうにしていて、とても嬉しそうだ。
「俺と相田さん、似たもの同士ですね。現実主義者」
笑顔でさっきから意味不明な事を言う君は何者?と、やっぱり思ってしまう。
もう、取り繕った営業スマイルの顔なんかどこかに消えていた。
い、いったい何?
私は何も知らないのに、有宮君だけ私の事知ってるの?
「ドコカデオアイシタコトアリマスカ?」
「ぶはっ!!」
突然、大笑いしだした有宮君。
お腹を抱えて笑っているけれど、私からすれば意味不明以外何でもない。
「んーこのまま教えるのもいいんだけど……
相田さんの色んな表情もっと見たいからやめておきます」
はっ?イキナリ悪い顔になってる彼を私はただ呆然と見つめていた。
「……それに、あの眼鏡の彼氏にはもっと色んな表情見せてたんでしょ?」
つけている伊達眼鏡であろう眼鏡を、クイっと指先の腹であげて有宮君がつぶやいた。
ボソボソと言ってるから、私にはハッキリわからなかったけれど……
「何言ってるの……?」
「いえ。何でもないです。
気にしないで下さい。てゆーか売り場戻らなくて大丈夫なんですかね?俺たち」
その言葉に顔が青ざめる。
ゴミ捨てに行くだけなのにカナリの時間が経っている!
これはヤバイ!
悠ちゃんの行くはずだった休憩時間が過ぎてる!
今日の休憩時間は夜の合コンの為に、ヘアメイク念入りにやり直すって言ってたのに!!
でも、出たゴミ達をゴミ捨て場に持って行く。 なかなかの重労働…… 台車借りれば良かったかなぁ。 そんな事を思っていた時、 「あっ相田さん!もしかして今からゴミ捨て場行く?」 いきなり通路を塞がれて現れたのは、向かいの眼鏡ショップの店長……と先ほどまで噂をしていたあの男の子が一緒にいた。 「はい、そうですけど」 何となーく嫌な予感はしたけど、笑顔で対応。 これはもう販売員としてのクセみたいになってる。 「だったらさー、悪いけどこの新入り連れて行ってくれない? 今、みんな休憩に出払っちゃって誰もショップにいなくて店の裏まで案内出来ないんだよね」 「はっ…えぇぇ!」 「案内はゴミ捨て場だけでいいからさ、よろしくねー!」 それだけ言い残してダッシュでショップに戻る眼鏡ショップの店長…… あんの店長……! 普通、違うショップの店員に自分トコの店員の指導させないでしょ! 今度、うちの店長にチクってやる! なんて、眉間にシワを寄せてたら、 「あのー……行かないんですか?ゴミ捨て場」
「えっ?あっあぁ…そうね。ごめんなさい。 とりあえず、ゴミ捨て場に行きましょうか? えっと…」 名前を聞きたいけど、本人は全く気付いてない。 だってボーッと私の顔を見ているんだもの。 ……かなり、抜けてるぞ。 「あのー名前は?」 「あー、有宮です」 「ありみや君?珍しいね」 「よく言われます。親族は有宮だらけなんで別に珍しくないんですけど」 うん、そりゃそーでしょ。 親族なんだから。 という、ツッコミを心の中で呟いてしまった。 ボーッしていたのかと思ったら、今度はニコニコと可愛い笑顔を振りまいてくれる有宮君。 そんな彼を裏のゴミ捨て場まで案内した。 後ろで悠ちゃんがジーっと見てるのは気付いてたけど、気づかないふりをして 二人でゴミ捨場まで歩き話をしてみると、有宮君はちょっと抜けてるけどしっかりと受け答えするし、やっぱり真面目な印象。 うん、眼鏡店長、いい新人入ったね。と、心の中で思った。 でも、いくら自分のショップのゴミじゃないとはいえ、女性にこのパッキンずっと持たせるのってどーなの?!とは思う。 顔は良いかもしれないけど、気遣いが出来ないタイプだわ。 本人は店内の裏側が珍しいのかキョロキョロしながら歩いてる。 男性で歩幅が違うから、いつもより早足で歩かなきゃいけないから、かなり辛い。 内心イライラしながら、会話はいつものよそゆきの笑顔で対応。 あー早く売り場に戻りたい……と、頭の中で呟いた。 そんな時、ふとゴミ捨て場にパッキンを置いて売り場に戻る途中思い出した。 「さっきはドリンクご馳走様。次の休憩何時?今度は私が奢るわ」 「えっ?あ、いーですよ。俺のミスですから。よくやるんですよね。だから、小銭ビンボー」 「ぷはっ」 言い方が面白くて、つい素で笑ってしまった。 こんなトコロもあるんだ、この子。 「相田さん、やっぱり笑った顔可愛いですね。」 「はい?」 いきなり何言い出すの? 店の裏側はかなり声が響くせいか、私の声はエコーみたいに響き渡った。 「素で笑った顔可愛いですよ。いつもそんな感じならいいのに」 「えっえっえっ…?」 いつもって何?今日初めて会ったはずなのに。
私が不思議に何度も瞬きをしていると、有宮君が悪戯っ子で魅力的な笑顔を振りまき、こう言った。
「俺、知ってるんですよ。相田さんの事。結構前から。」
「えぇぇぇ!!!」
またまた響く私の声。
有宮君……君は一体何者?
「有宮君……あなたいったい……?」
もしかしら新手のストーカーかもしれない。
ビクビクしながら素性を聞くと、
「名前は有宮 哲。
今日から晴れてフリーターになったばかりの23歳ですよ。」
「じゃあ、最近までニート?」
「俺のはちゃんとした目的のあるニートだったので。」
「ニートの人はみんなそれ言うよ?」
「……」
ちょっとうつむいて顔を赤くした有宮君。
やだ……可愛い……
じゃない!っと自分で自分にツッコミを入れた。
「何で私の事知ってるの?新手のストーカー?!」
「あーなるほど。そういう方向に考えますか。やっぱりねー」
可笑しそうに笑う有宮君に私はただもう、頭には?マークがいっぱいだった。
「普通の女子なら「これが運命の出会い?」とか思うんでしょうけどね。
うん、相田さんはやっぱりこっちタイプ」
はっ?言ってる意味がわからない。
言った本人は満足そうにしていて、とても嬉しそうだ。
「俺と相田さん、似たもの同士ですね。現実主義者」
笑顔でさっきから意味不明な事を言う君は何者?と、やっぱり思ってしまう。
もう、取り繕った営業スマイルの顔なんかどこかに消えていた。
い、いったい何?
私は何も知らないのに、有宮君だけ私の事知ってるの?
「ドコカデオアイシタコトアリマスカ?」
「ぶはっ!!」
突然、大笑いしだした有宮君。
お腹を抱えて笑っているけれど、私からすれば意味不明以外何でもない。
「んーこのまま教えるのもいいんだけど……
相田さんの色んな表情もっと見たいからやめておきます」
はっ?イキナリ悪い顔になってる彼を私はただ呆然と見つめていた。
「……それに、あの眼鏡の彼氏にはもっと色んな表情見せてたんでしょ?」
つけている伊達眼鏡であろう眼鏡を、クイっと指先の腹であげて有宮君がつぶやいた。
ボソボソと言ってるから、私にはハッキリわからなかったけれど……
「何言ってるの……?」
「いえ。何でもないです。
気にしないで下さい。てゆーか売り場戻らなくて大丈夫なんですかね?俺たち」
その言葉に顔が青ざめる。
ゴミ捨てに行くだけなのにカナリの時間が経っている!
これはヤバイ!
悠ちゃんの行くはずだった休憩時間が過ぎてる!
今日の休憩時間は夜の合コンの為に、ヘアメイク念入りにやり直すって言ってたのに!!
0
あなたにおすすめの小説
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる