平凡なラブストーリー

H君

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6話

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「な…何?…」

「いやぁ…楽しくなさそうだなって思って」

「…そんな事ないよ、私なりに楽しんでるから、お気遣いなく、2人も楽しんで」

場の空気をシラけさせたくなくて、精一杯の嘘。
だって………

となりのさやか嬢が、(邪魔しないでくれます?)って般若のような顔をして訴えかけてくるんだもん!!

恐いよ!般若!!

営業スマイルで他のみんなと会話していたら…

「俺、帰るわ行こ、相田さん。送ってく」

そう言ってイキナリ立ち上がった有宮君。そして、みんなの空気が止まった。

「へっ?私…?」

「相田さんって相田 香奈さん以外誰がいるの?そうか他の女の子で相田さんっていた?」

そ…それは失礼極まりないよ!有宮君!それって私以外の名前を覚えていないって事で……

ヤバイ!超嬉しい。

「ま…マジかー!哲がお持ち帰り?!明日、季節外れの超大型台風来るんじゃねぇ?」

「うるさいから、健太。例え古過ぎ。あと、お持ち帰りじゃなくて送ってくだけだから、行こう、相田さん」

男性陣がワイワイ言う中、強引に腕を引っ張られる。
私のコートと鞄もちゃっかり持ってくれて、

「会計、ここに置いておくから。俺と相田さんの分ね」

自分と私の分の会費をテーブルに置き、私の腕と荷物を持って出口に向かう有宮君。
私はというと…

「お、お先に失礼します!」

としか言えなくて、引きずられながら私がさっきまでいた光景は、興奮冷めやらぬ男性陣とフリーズしたさやか嬢と、そのさやか嬢を意地悪な顔で笑ってる女の子達。
きっと、悠ちゃんがいたらこんな光景にはならずにいたんだろうなと、引きずられながら思うのであった…

ところで、

悠ちゃん……あなた、いつ来るの?
私の腕を手首に持ちかえ、駅までの道を歩きだした有宮君。
歩くスピードは相変わらず早いので私はついて行くだけで精一杯で、アルコールも入ってるから足元のもつれ具合が半端ない

もう、駄目~限界……そう思った時、足がもつれ、有宮君の背中にダイブしてしまった。
アルコールが入ってるとはいえ、大胆な事をしちゃったなぁと思って、私より頭一つ分高い有宮君を上向きで覗いてみた。
さっきまで大胆な事をしでかした人とは、全く思えない位耳まで真っ赤になった有宮君の顔。
目なんか見開いたまんまだ。

「ご…ごめん」

とりあえず謝っとく。

「…相田さん、誘ってんの?」

「んなっ!わけないでしょ!!
てゆーか誘ってんの有宮君の方??
イキナリあんな事して…友達のイメージ悪くなるよ」

「せっかく助け出してあげたのに」

「それは感謝してるけど、せっかくの合コンなんだから、若い子達で楽しんどけば良かったのに」

うわっ!私やなヤツだぁって思う。せっかく助けてもらったのに、可愛くない。

「ツレの事なら大丈夫だよ。俺がこんなヤツって知ってるから。
あと、俺にベッタリくっついてた女、あーゆーの大嫌いなんです。
わざわざ胸見せてきてキモチワリー」

煙草に火をつけながら毒舌に話し出す有宮君。
へぇー煙草吸うんだ。煙草を口に加え、今度は私の手を握って歩き出す。

えっ?えっ?

自分でも今、めちゃくちゃ顔赤いんだろうなって位顔が熱くなる。

「俺はね、相田さんみたいな服の人の方が好きー。
ピッタリしたタートルとスキニーって体のライン丸わかりでしょ?
相田さん、いいくびれしてますよね?胸も大っきい方だし」

「こ…この変態!!」

荷物で有宮君の腕をバシンと叩く。
「いってー」とか言いながらクスっと笑う有宮君。
何!何なの?!このじゃれ合ってるムードは!!

でも、ヤバイ、 楽しい!

異性と2人で歩くのも久しぶりで…
こんなにはしゃぐのはもっと久しぶりな訳で…
前彼とは、終わりかけの時こんなムードはなくて、ありきたりの会話しかしてなくて…
有宮君のペースに引き込まれてしまっている自分が居心地良くて。

でも、忘れてた。
この人は私が知らないトコロで私の事をみてたストーカーもどきの人だ。
これだけはちゃんと聞いておかなくちゃ、
握られた手に力を込めた。
結構力込めて握ったのに気づかないのか、平然とした顔で歩いて行く有宮君。
力が足りないのかもう少しギュッと強く握りしめる。

すると「はぁー」とため息を吐かれた。

「相田さん、本当に俺の事誘ってるの?」

「えっ?!違う、違うよ!」

なんて自分の都合のいいように考えるの?!
私の顔はさっきよりもずっと真っ赤になった。

「でも、こんなに強く握りしめられたら、いくら俺でも期待するでしょ?帰りたくないのかなぁって」

「だから違うって!私は聞きたい事があるの!」

「俺に彼女いるとか、そういう事?そういう事なら安心してー。
今、ちょーどフリーです」

「そんな事聞いてない!」

全く話にならない、この人。
てゆーかニートで彼女なんか出来るわけないでしょ!っと突っ込みそうになった。

「じゃあ、何でニートだったのか?とか?」

あっ、それちょっと気になるかもてか、私顔に出てたみたいだ、私。

「夢があるって本当ですよ、まぁ、それを理由にニートしてたっていうのはただの言い訳であって……俺自身も何してたんだろうって今なら思ってるし」

そう説明してくれた。
何だ、ちゃんと自覚あるじゃんって。
そして駅に着き、握られた手が離れた。
改札を通るから仕方ないけど、さっきまであった温もりが恋しくなる。
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