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7話
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そしてまた繋がれる手。嬉しくてにやけてしまった。
有宮君は「相田さん、お酒入ってるから転んじゃいけないから」て言ってくれたけど、それでも嬉しいと思う私は久々に男の人に優しくされて舞い上がってるのだろうか?
そしていつも乗っている電車に乗り込む。
「じゃあ……」と言おうとしたら、「俺もこの電車」って言われて、もうしばらく一緒に過ごす事になった。
2人で並んで座った時、気恥ずかしくて会話に困っていると、ポツリポツリと有宮君がニートになった理由を話し出してくれた。
「すっごい恥ずかしい話なんだけど…俺、将来なりたいものは小説家なんです」
「小説書くの?凄い!」
昔から私は椅子に座って机に向かっているより、外で走ったりする事の方が実力を発揮出来るタイプだった。
だから、体育以外の成績はいつも散々。
机に向かってペンを持っていられる人を尊敬してた。
「凄いって言われても、まだデビューもしてないし全然何の成果も出してないだだのド素人ですよ。
でも、学生の頃から俺は小説家になるもんなんだって思ってて、ロクに就職活動もしないで……」
えーっと……あらら。先が読めて来たぞ。
「家も一人暮らしの家を親に用意してもらって、俺はここで小説を書くのが仕事なんだって思い込んでて。本当、思い出すだけでも恥ずかしい……」
えっ?!ちょっと待って!
ニートなのに親に家を用意してもらった?
君、お金持ちの子?
つーか家賃とか生活費は?
なんて疑問だらけだったけど、有宮君がせっかく身の上話をしてくれてるので、おとなしく話を聞く事にした。
「でも、ある日気づいた事があって。
人間って社会に出て人間関係に揉まれたり、どんな仕事でもやってみなきゃ大変さや楽しさってわかんなくて。
何でも経験しなきゃ、人間ダメなんだって。
特に文字にして相手に伝える小説家って職業は特に色んな事を知ってなくちゃいけないから、俺全然駄目だーって。
それで今のショップに面接受けて受かって晴れてニート脱出です」
かけているメガネを人差し指で、クイッと持ち上げて優しく笑う。
言っている事は当たり前の事なのに、絵になるのが悔しい。
「そっかぁー小説家かー、夢叶うといいね」
「まぁ、ゆっくり頑張りますよ。小説家に定年はないんで」
「……60過ぎてもフリーターでいるつもり?」
苦笑いしながらつい言ってしまった。
だって彼の将来不安すぎる
「んーそんな先の事考えてないですねぇ。30までにデビュー出来たらいいかなぁ?」
でたな、悪いトコロ。
私も人の事言えないけど、物事を深く考えないのがマイペースな性格の悪いトコロだ 。
「キツイこと言うかもしれないけど、ご両親はいつまでもいるわけではないよ? 今はまだ仕送りとかしてもらってて、生活出来てるかもしれないけどお父さんだって定年後は年金生活できっとラクなわけではないのだから、ちゃんと安心させてあげないと。 夢を追うことは素晴らしい事だけど期限を決めてちゃんとしなくちゃ。 それが、育ててくれたご両親に対して……」 「相田さん、降りる駅ですよ」 「えっ?!」 車内アナウンスを聞くと確かに降りる駅。私は慌てて鞄を持ち、ホームに降りる。 んっ?何で有宮君、私の降りる駅知ってるの? それに話の途中…… 「あのまま話ししてたら乗り過ごしてましたね」 「えっ!」 隣には有宮君。 「俺もこの駅」 あっ……あっー!!!そうか!! 私と最寄り駅一緒だったから私の事知ってたのね?! 「あ、あり……有宮君!あなたが私の事知ってたのは、この駅で何回か私の事見かけたことあるから?!」 改札に繋がる下りの階段で、キョトンとした顔で私を見つめる有宮君。 私は横のエスカレーターに乗り、降りて行く。 彼は止まっているからそのまますれ違う。 「まっ、そういう事にしておいてくれていいですよ」 すれ違いざまにそう囁かれた。
えっ?
違うの?
わけがわからなく呆然としていたら有宮君が降りてきた。
「ねぇ、今のはどういう……」
「あぁ、ちなみに言っておきますけど、いまは親から何の援助も受けてないですよ。
今のショップ決まる前は日雇いバイトとかして、生活費やら家賃やら払ってきましたから。
このバイトも決まったから、今まで親がだしてくれたお金も徐々に返して行くつもりで…」
あっそうなんだっと納得して聞いてると……
「あの人達がお金受け取ってくれるとは思わないけど…」と、有宮君がボソッと言ったのが聞こえた
やっぱりキミ、お金持ちの子か…
ていうか、さっきから話遮られ過ぎて聞きたい事は聞けずじまい。
モヤモヤしていたら、改札を先に通った有宮君が笑顔で「帰ろう」なんて手をのばしてきてくれたものだから。
握られた手の温かさにヤられて、私はもうこの日はどうでも良くなってしまった。
有宮君は「相田さん、お酒入ってるから転んじゃいけないから」て言ってくれたけど、それでも嬉しいと思う私は久々に男の人に優しくされて舞い上がってるのだろうか?
そしていつも乗っている電車に乗り込む。
「じゃあ……」と言おうとしたら、「俺もこの電車」って言われて、もうしばらく一緒に過ごす事になった。
2人で並んで座った時、気恥ずかしくて会話に困っていると、ポツリポツリと有宮君がニートになった理由を話し出してくれた。
「すっごい恥ずかしい話なんだけど…俺、将来なりたいものは小説家なんです」
「小説書くの?凄い!」
昔から私は椅子に座って机に向かっているより、外で走ったりする事の方が実力を発揮出来るタイプだった。
だから、体育以外の成績はいつも散々。
机に向かってペンを持っていられる人を尊敬してた。
「凄いって言われても、まだデビューもしてないし全然何の成果も出してないだだのド素人ですよ。
でも、学生の頃から俺は小説家になるもんなんだって思ってて、ロクに就職活動もしないで……」
えーっと……あらら。先が読めて来たぞ。
「家も一人暮らしの家を親に用意してもらって、俺はここで小説を書くのが仕事なんだって思い込んでて。本当、思い出すだけでも恥ずかしい……」
えっ?!ちょっと待って!
ニートなのに親に家を用意してもらった?
君、お金持ちの子?
つーか家賃とか生活費は?
なんて疑問だらけだったけど、有宮君がせっかく身の上話をしてくれてるので、おとなしく話を聞く事にした。
「でも、ある日気づいた事があって。
人間って社会に出て人間関係に揉まれたり、どんな仕事でもやってみなきゃ大変さや楽しさってわかんなくて。
何でも経験しなきゃ、人間ダメなんだって。
特に文字にして相手に伝える小説家って職業は特に色んな事を知ってなくちゃいけないから、俺全然駄目だーって。
それで今のショップに面接受けて受かって晴れてニート脱出です」
かけているメガネを人差し指で、クイッと持ち上げて優しく笑う。
言っている事は当たり前の事なのに、絵になるのが悔しい。
「そっかぁー小説家かー、夢叶うといいね」
「まぁ、ゆっくり頑張りますよ。小説家に定年はないんで」
「……60過ぎてもフリーターでいるつもり?」
苦笑いしながらつい言ってしまった。
だって彼の将来不安すぎる
「んーそんな先の事考えてないですねぇ。30までにデビュー出来たらいいかなぁ?」
でたな、悪いトコロ。
私も人の事言えないけど、物事を深く考えないのがマイペースな性格の悪いトコロだ 。
「キツイこと言うかもしれないけど、ご両親はいつまでもいるわけではないよ? 今はまだ仕送りとかしてもらってて、生活出来てるかもしれないけどお父さんだって定年後は年金生活できっとラクなわけではないのだから、ちゃんと安心させてあげないと。 夢を追うことは素晴らしい事だけど期限を決めてちゃんとしなくちゃ。 それが、育ててくれたご両親に対して……」 「相田さん、降りる駅ですよ」 「えっ?!」 車内アナウンスを聞くと確かに降りる駅。私は慌てて鞄を持ち、ホームに降りる。 んっ?何で有宮君、私の降りる駅知ってるの? それに話の途中…… 「あのまま話ししてたら乗り過ごしてましたね」 「えっ!」 隣には有宮君。 「俺もこの駅」 あっ……あっー!!!そうか!! 私と最寄り駅一緒だったから私の事知ってたのね?! 「あ、あり……有宮君!あなたが私の事知ってたのは、この駅で何回か私の事見かけたことあるから?!」 改札に繋がる下りの階段で、キョトンとした顔で私を見つめる有宮君。 私は横のエスカレーターに乗り、降りて行く。 彼は止まっているからそのまますれ違う。 「まっ、そういう事にしておいてくれていいですよ」 すれ違いざまにそう囁かれた。
えっ?
違うの?
わけがわからなく呆然としていたら有宮君が降りてきた。
「ねぇ、今のはどういう……」
「あぁ、ちなみに言っておきますけど、いまは親から何の援助も受けてないですよ。
今のショップ決まる前は日雇いバイトとかして、生活費やら家賃やら払ってきましたから。
このバイトも決まったから、今まで親がだしてくれたお金も徐々に返して行くつもりで…」
あっそうなんだっと納得して聞いてると……
「あの人達がお金受け取ってくれるとは思わないけど…」と、有宮君がボソッと言ったのが聞こえた
やっぱりキミ、お金持ちの子か…
ていうか、さっきから話遮られ過ぎて聞きたい事は聞けずじまい。
モヤモヤしていたら、改札を先に通った有宮君が笑顔で「帰ろう」なんて手をのばしてきてくれたものだから。
握られた手の温かさにヤられて、私はもうこの日はどうでも良くなってしまった。
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