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後宮の雑草令嬢は愛を令嬢力(物理)で掴み取る
04.願い
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「……一位となれば、願いをひとつきいてくださるとのこと、相違ございませんか」
「うむ。何でも申してみよ。もっとも、この一か月全てをそなたに通えというようなものは無理だがな」
鷹揚に答える皇帝バルウィンを見据え、フリーダは腹に力をこめて口を開く。
「わ……私を、宰相閣下に下賜してください!」
フリーダの叫びに、皇帝バルウィンが目を見開く。
周囲の令嬢たちも唖然として、信じられないものを見る眼差しをフリーダに向けていた。
「宰相……? 宰相といえば、マイノのことか……? 陰険ひょろひょろ眼鏡で、三十路に差し掛かりながらも嫁の来手がない、あの?」
「はい、そのマイノさまです」
「……言っては何だが、あんな女にモテぬ奴のどこがよいのだ?」
場合によっては、後宮の一員でありながら他の男に懸想した恥知らずとして、斬り捨てられるのも覚悟の上だった。
だが、皇帝バルウィンにそのような苛立ちは見られず、単純な好奇心だけがうかがえる。
宰相マイノは皇帝バルウィンの言う通り、細身で貧弱な体をしており、頑強な者が好まれるこの国の感覚からいえば、まともな男性として見られないくらいだ。
だが、フリーダにとっては唯一無二の存在である。
「以前、宰相閣下が父のもとを訪れた時、私は一人で魔物狩りを終えて帰って来たところでした。そのとき、宰相閣下は冷淡な眼差しを私に向け、私の担いでいた双頭熊を見てただため息を漏らされて……そこで私は、心を奪われたのです」
「意味がわからぬ」
「それまで私が魔物を狩ってくると、領地の者は熱狂して素晴らしいと褒め称えてきました。でも、宰相閣下はこれくらい大したことがないといった素振りで、私はいかに自分が調子に乗っているかに気づかされたのです」
「双頭熊を一人で倒せる者など、滅多におらぬが」
「そして、宰相閣下の顔色の悪さ……私がこれまで試行錯誤してきた魔物料理ならば精がつくかもしれないと思い、お作りして差し上げたいという気持ちが日ごとに募ってまいりました。しかし、父の命令により私は後宮入りして……これが愛だと気づいたのは、それからでした。もう遅かったのです」
語り終えると、フリーダは皇帝バルウィンの足下に平伏した。
「後宮の一員でありながら、許されぬ思いとはわかっております。本来、私はこのまま後宮を去り、修道院にて人生を終えるつもりでした。そこに、願いをきくという陛下のお言葉を聞き、欲が出てしまいました。もし叶わねば、私を斬り捨てて、どうか髪だけでも宰相閣下の元へ……!」
「……顔を上げよ」
静かな皇帝バルウィンの声が響く。
「そなたがマイノのことを想っていることはよくわかった。何故かはさっぱりわからぬが、まあよかろう。そなたをマイノに下賜してやろう」
「ほ……本当でございますか!?」
「願いをきくと言ったからな。それにマイノは貧弱だが、その頭脳は我が国に無くてはならぬものだ。そなたのような令嬢力の持ち主が寄り添えば、マイノも少しは強靱になるやもしれぬ。しっかりとマイノを支えよ」
「はい、尽力いたします! ありがとうございます!」
「うむ。何でも申してみよ。もっとも、この一か月全てをそなたに通えというようなものは無理だがな」
鷹揚に答える皇帝バルウィンを見据え、フリーダは腹に力をこめて口を開く。
「わ……私を、宰相閣下に下賜してください!」
フリーダの叫びに、皇帝バルウィンが目を見開く。
周囲の令嬢たちも唖然として、信じられないものを見る眼差しをフリーダに向けていた。
「宰相……? 宰相といえば、マイノのことか……? 陰険ひょろひょろ眼鏡で、三十路に差し掛かりながらも嫁の来手がない、あの?」
「はい、そのマイノさまです」
「……言っては何だが、あんな女にモテぬ奴のどこがよいのだ?」
場合によっては、後宮の一員でありながら他の男に懸想した恥知らずとして、斬り捨てられるのも覚悟の上だった。
だが、皇帝バルウィンにそのような苛立ちは見られず、単純な好奇心だけがうかがえる。
宰相マイノは皇帝バルウィンの言う通り、細身で貧弱な体をしており、頑強な者が好まれるこの国の感覚からいえば、まともな男性として見られないくらいだ。
だが、フリーダにとっては唯一無二の存在である。
「以前、宰相閣下が父のもとを訪れた時、私は一人で魔物狩りを終えて帰って来たところでした。そのとき、宰相閣下は冷淡な眼差しを私に向け、私の担いでいた双頭熊を見てただため息を漏らされて……そこで私は、心を奪われたのです」
「意味がわからぬ」
「それまで私が魔物を狩ってくると、領地の者は熱狂して素晴らしいと褒め称えてきました。でも、宰相閣下はこれくらい大したことがないといった素振りで、私はいかに自分が調子に乗っているかに気づかされたのです」
「双頭熊を一人で倒せる者など、滅多におらぬが」
「そして、宰相閣下の顔色の悪さ……私がこれまで試行錯誤してきた魔物料理ならば精がつくかもしれないと思い、お作りして差し上げたいという気持ちが日ごとに募ってまいりました。しかし、父の命令により私は後宮入りして……これが愛だと気づいたのは、それからでした。もう遅かったのです」
語り終えると、フリーダは皇帝バルウィンの足下に平伏した。
「後宮の一員でありながら、許されぬ思いとはわかっております。本来、私はこのまま後宮を去り、修道院にて人生を終えるつもりでした。そこに、願いをきくという陛下のお言葉を聞き、欲が出てしまいました。もし叶わねば、私を斬り捨てて、どうか髪だけでも宰相閣下の元へ……!」
「……顔を上げよ」
静かな皇帝バルウィンの声が響く。
「そなたがマイノのことを想っていることはよくわかった。何故かはさっぱりわからぬが、まあよかろう。そなたをマイノに下賜してやろう」
「ほ……本当でございますか!?」
「願いをきくと言ったからな。それにマイノは貧弱だが、その頭脳は我が国に無くてはならぬものだ。そなたのような令嬢力の持ち主が寄り添えば、マイノも少しは強靱になるやもしれぬ。しっかりとマイノを支えよ」
「はい、尽力いたします! ありがとうございます!」
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