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何もしなかった悪役令嬢と、真実の愛で結ばれた二人の断罪劇
03.何もしない
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あるとき、ポレットは無礼を承知でコランティーヌに、もう少しファブリスと向き合ってもらえないだろうかと申し出た。
「わたくしは王妃としての勉強に忙しいのですわ。殿下の問題は、殿下ご自身で向き合うべきではありませんの? それに、あなたごときが口を出すなど、僭越ではありませんこと?」
だが、コランティーヌは全く取り合わず、ポレットをはねつける。
ファブリスとコランティーヌの仲が改善すれば、一歩引いて二人を見ることになり、気持ちに整理がつくかもしれないというポレットの思惑は外れた。
「なんて身の程知らずなのかしら……コランティーヌさまに対して物申すなど……恥を知りなさい」
「あなたのような卑しい女と、コランティーヌさまは違うのよ。学業に毎日のお茶会にとお忙しいコランティーヌさまを煩わせたこと、反省なさい」
「そもそも、婚約者のいる王太子殿下に取り入るなど、恥知らずもよいところですわ。王太子殿下もコランティーヌさまという素晴らしい婚約者がありながら……」
しかも、これがきっかけでコランティーヌの取り巻きから、嫌がらせをされるようになってしまったのだ。
コランティーヌ本人からは、何もされなかった。
嫌がらせの現場をコランティーヌが目撃したときも、彼女は何も言うことなく立ち去っただけだった。
やがて嫌がらせは、ファブリスが偶然その場面を見つけたことによって、収まることとなった。
普段は穏やかで、おどおどとすらしているファブリスが激しい怒りを見せ、堂々とした態度で取り巻きたちに向き合い、コランティーヌにも抗議したことに、ポレットは驚く。
だが、ファブリスはポレットをそのような目に遭わせたことで、さらに追い詰められてしまったようだ。
「ごめんよ……僕が不甲斐ないばかりに……そもそも、僕は王の器なんかじゃないんだ。本当は、弟に王太子の座を譲りたいんだ……」
涙ぐみながら、ファブリスは思いを吐き出した。
ファブリスは第一王子であり、第二王子となる二歳年下の弟ベネディクトがいる。ベネディクトは優秀で、見目も麗しいと評判だ。
しかし、ファブリスは今は亡き先王妃の息子であり、ベネディクトは現王妃の息子となる。
今は亡き先王妃のことを愛していた国王は、その息子であるファブリスに跡を継がせたいのだという。
「……実は、考えていることがあるんだ。実行すれば、僕はきっと王太子の座を失う。王族でもなくなるだろう。それでも、一緒にいてくれるだろうか……?」
ファブリスはまっすぐにポレットを見つめながら、そう尋ねてきた。
唇を引き結びながら、ポレットはその視線を受ける。
ポレットの目的は、王太子の愛妾となって左扇で暮らすことなのだから、身分を失ったファブリスに価値などないはずだ。
まして、王太子でも王族でもなくなるというのは、よほどのことをしでかすということだろう。
そのような相手と一緒にいて、得になることなどない。
ポレットの理性は、断れと警鐘を鳴らしている。
「はい……」
だが、理性を裏切って、ポレットは頷いていた。
何故かは自分でもよくわからない。
だが、ポレットの返事を聞いて、硬かった蕾が綻ぶように心からの笑顔を見せるファブリスを見ると、胸が苦しく、そして温かくなる。
きっと、これが答えなのだろう。
──そして、ファブリスは卒業パーティーの場で、婚約破棄を宣言した。
「わたくしは王妃としての勉強に忙しいのですわ。殿下の問題は、殿下ご自身で向き合うべきではありませんの? それに、あなたごときが口を出すなど、僭越ではありませんこと?」
だが、コランティーヌは全く取り合わず、ポレットをはねつける。
ファブリスとコランティーヌの仲が改善すれば、一歩引いて二人を見ることになり、気持ちに整理がつくかもしれないというポレットの思惑は外れた。
「なんて身の程知らずなのかしら……コランティーヌさまに対して物申すなど……恥を知りなさい」
「あなたのような卑しい女と、コランティーヌさまは違うのよ。学業に毎日のお茶会にとお忙しいコランティーヌさまを煩わせたこと、反省なさい」
「そもそも、婚約者のいる王太子殿下に取り入るなど、恥知らずもよいところですわ。王太子殿下もコランティーヌさまという素晴らしい婚約者がありながら……」
しかも、これがきっかけでコランティーヌの取り巻きから、嫌がらせをされるようになってしまったのだ。
コランティーヌ本人からは、何もされなかった。
嫌がらせの現場をコランティーヌが目撃したときも、彼女は何も言うことなく立ち去っただけだった。
やがて嫌がらせは、ファブリスが偶然その場面を見つけたことによって、収まることとなった。
普段は穏やかで、おどおどとすらしているファブリスが激しい怒りを見せ、堂々とした態度で取り巻きたちに向き合い、コランティーヌにも抗議したことに、ポレットは驚く。
だが、ファブリスはポレットをそのような目に遭わせたことで、さらに追い詰められてしまったようだ。
「ごめんよ……僕が不甲斐ないばかりに……そもそも、僕は王の器なんかじゃないんだ。本当は、弟に王太子の座を譲りたいんだ……」
涙ぐみながら、ファブリスは思いを吐き出した。
ファブリスは第一王子であり、第二王子となる二歳年下の弟ベネディクトがいる。ベネディクトは優秀で、見目も麗しいと評判だ。
しかし、ファブリスは今は亡き先王妃の息子であり、ベネディクトは現王妃の息子となる。
今は亡き先王妃のことを愛していた国王は、その息子であるファブリスに跡を継がせたいのだという。
「……実は、考えていることがあるんだ。実行すれば、僕はきっと王太子の座を失う。王族でもなくなるだろう。それでも、一緒にいてくれるだろうか……?」
ファブリスはまっすぐにポレットを見つめながら、そう尋ねてきた。
唇を引き結びながら、ポレットはその視線を受ける。
ポレットの目的は、王太子の愛妾となって左扇で暮らすことなのだから、身分を失ったファブリスに価値などないはずだ。
まして、王太子でも王族でもなくなるというのは、よほどのことをしでかすということだろう。
そのような相手と一緒にいて、得になることなどない。
ポレットの理性は、断れと警鐘を鳴らしている。
「はい……」
だが、理性を裏切って、ポレットは頷いていた。
何故かは自分でもよくわからない。
だが、ポレットの返事を聞いて、硬かった蕾が綻ぶように心からの笑顔を見せるファブリスを見ると、胸が苦しく、そして温かくなる。
きっと、これが答えなのだろう。
──そして、ファブリスは卒業パーティーの場で、婚約破棄を宣言した。
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