自分で書いた未完のラノベ小説の世界に転生したけどどうしたらいいですか?

黒野 ヒカリ

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No.7

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 「キャァァァァァァァァ」

 の叫び声に飛び起きた俺は今、マリアお姉ちゃんに抱き締められている。

 至福の柔らかさに包まれて幸せだけど状況が良くわからない。

 「ラグー大丈夫?」

 「えーっと、大丈夫だよ?」

 「ラグーの言葉を聞いて安心したよ、何度呼んでも部屋から出て来ないから様子を見に来てみればラグー床に顔を付けたまま動かないから死んでると思ったじゃないの…」

 魔力欠乏で床にキスをしたままの体制で寝てしまった俺を起こしにきたマリアお姉ちゃんが、ビックリして叫び声を上げたという事ね。なるほど。 

 俺の異世界ファーストキスをマリアお姉ちゃんに見られたという事に不思議な興奮を感じてしまったけど、変な世界の扉を開いてしまったら大変なので俺は素直に謝る事にする。

 「マリアお姉ちゃん心配かけてごめんなさい」

 「いいのよラグー、朝ごはんできたから行こう」

 俺はマリアお姉ちゃんに手を引かれ部屋を出た。

 朝ごはんはいつものパンですごく固い。

 パンを口にするとスープで流し込む作業を繰り返す。

 「そう言えばマリアお姉ちゃん、僕今日から仕事に行くから」

 「へ?もう仕事見つけてきたの?」

 「うん、マウロさんの紹介で同じ所で働けるようになったんだ」

 「えっ!マウロ……さん、そ、そっか、マウロさんと同じ所で働くのね、うんうん」

 口ごもって何やら様子のおかしいマリアお姉ちゃんにジト目を向けたけど俺の事をいっさい見ずに、マリアお姉ちゃんは黙々とパンを頬張っている。

 (これ絶対マウロさんと何かあるだろう!)

 との叫びは心の中だけにした俺は空気が読める男だろう。

 朝ごはんを食べ終わるとマリアお姉ちゃんに「行ってきます」と言って異世界初めてのお仕事に向かった。

 指定された場所に行くとマウロさんがいて、俺を見つけると手を振ってくれた。

 「ラグーおはよう」

 「マウロさんおはようございます。今日からよろしくお願いします」

 「馴れるまでは少しキツイと思うけどあまりムリはしないでな」

 「はい、わかりました」

 マウロさんと挨拶を交わすと俺はマウロさんの指示に従い仕事に取りかかったのだが、異世界初めてのお仕事はきつかった。

 仕事は土木作業だけど、スコップやツルハシで穴を掘るのがこんなにキツイとは思わなかった。

 ショベルカーでガンガン穴を掘っていく文明の力の素晴らしさを肌で感じる事が出来たのはいい経験になったと思う。

 転生する前の職業が営業職だった俺は文明の力は当たり前だと思っていたけどそれが無くなって初めてその有り難みを知れた。

 お陰で午前中の作業だけで腕がパンパンになってしまい、明日は間違いなく筋肉痛で苦しむ事になると思うと明日の仕事が不安になってしまう。

 異世界で土木作業の辛さを知る事になるとは思ってもみなかった。

 「ラグーお疲れ様」

 「マウロさんお疲れ様です」

 お昼休みで地べたに座る俺に声を掛けてきたマウロさんは俺の隣に座った。

 「ラグー仕事はどうだい?」

 「思ってたよりもしんどいです」

 「そっか、そっか俺も最初の頃は大変だったよ。仕事終わりには体中が痛くてによく回復魔法をかけてもらったよ」

 「はい?」

 マウロさんがさらりとそんな事を仰って俺はかなりの衝撃を受けた。

 『マリア』ってマリアお姉ちゃんの事?
 よく回復魔法をかけてもらった?
 マリアお姉ちゃんは魔法使えたの?

 マウロさんの仰られた事は情報が多すぎて俺の頭は混乱する。

 「ち、ちょっとマウロさん色々と聞きたい事が多すぎるんですが、まずマリアってマリアお姉ちゃんの事ですか?」

 「そうだよ」

 「よく回復魔法をかけてもらってたと言うのは?」

 「この仕事を始めた頃にマリアと出逢い付き合ったんだけど───」

 「もう大丈夫です。良くわかりました」

 話の途中だったが、俺は全てを理解してマウロさんの話を一刀両断した。

 そして俺は立ち上がり、叫んだ。

 「マウロさんなんて嫌いだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 俺はこの場から逃げ出すように走り去った。

 突然話を終わらされて、叫び駆け出す俺の後ろ姿を見るマウロさんがどんな表情をしてたのかは知りたくもなかった。

◇◇◇

 仕事が終わり、家に帰ってきた俺をマリアお姉ちゃが出迎えてくれた。

 「お帰りー」

 「ただいま」

 「お疲れ様、ラグー初めてのお仕事どうだった?」

 晩ごはんの準備をしていたのだろう、マリアお姉ちゃんは包丁を片手にそう聞いてきた。

 「疲れたよ、そんな事よりもマリアお姉ちゃん、マウロさんとお付き合いしてるんだね」

 その瞬間、マリアお姉ちゃんは手に持った包丁を落とすと包丁は一直線に床に向かい突き刺さった。

 「そっか、バレちゃったんだね……でもラグーには秘密にするつもりは無かったんだよ。マウロが町の男達にバレたら殺されるって言ってたからラグーにも話すタイミングを失ってたって言うか何とも言うか……」

 マウロさんが黙っててって言ったのは正解だろう。

 町を歩いたらマリアお姉ちゃん目当ての声掛けばかりで凄かった。

 マリアお姉ちゃんの彼氏がマウロさんとバレてしまえば本当にマウロさんは殺されるかもと思ってしまう程にモテモテだったのだ。

 それにしても、モジモジとするマリアお姉ちゃんはかなり可愛くて思わずドキッとしてしまったけど床に刺さる包丁が気になる。大丈夫?

 マリアお姉ちゃんのこの態度を見るとマウロさんの事が好きなのが良くわかる。

 マリアお姉ちゃんが幸せなら俺は応援するしかないだろう。

 「マリアお姉ちゃん、僕応援するよ」

 「ラグーありがとう!でも誰にも言わないでね」

 「わかったよ」

 俺の応援がうれしかったのだろう、マリアお姉ちゃんは笑顔になって晩ごはんの準備を始めた。

 マリアお姉ちゃんの笑顔は輝いていたけど、応援すると言った俺の心はどす黒くなっていた。

 晩ごはんを食べ終わり、俺はベットに横になった。

 天井を見上げるとタメ息が出て何もやる気が起きなかった。

 幸せそうなマリアお姉ちゃんを見ると、嬉しい気持ちと、悔しい気持ちが混じり合ってモヤモヤとしてしまう。

 「はぁ、僕は僕のやる事をやらないと……」

 呟くとやる気が起きない体を起こして魔力操作を始めた。

 全身に魔力を巡らせた所で魔力欠乏になり、俺は床と二度目のキスをした。

 おやすみなさい……
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