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No.27
しおりを挟む体を揺さぶられる感覚に目を覚ました俺は、目の前に迫る見知らぬ男のキス顔に慌てて体を捻り交わすと声を荒げた。
「な、何をするんですか!」
「おや、目を覚ましたか、残念…」
本当に残念そうにそう言った男はそっちの方なのかは分からないが俺は男にキスされる気は全く無い。
「気を失ってる僕にいきなりキスするとか何考えてるんですか?犯罪ですよ、犯罪!」
「君は僕っ子かい?益々気に入ったよ。僕の彼女にならないかい?」
ニコニコと手を差し出す男は何を言ってるんだ?やっぱりそっちの方だったようだ。
「僕にそっちの趣味はありません。お断りします」
「そっちの趣味?何を言っているのかは分からないが、君は女性の方が好きなのかい?」
本当にコイツは何を言ってるんだ。
当たり前の事を聞く意味が分からない。
いくら俺が美少年だからってそっちに誘わないでほしい。
「何を当たり前の事を言ってるんですか!女性の方が好きに決まってます!」
俺が断言すると男は驚いた表情を浮かべた。
「そうかい、君は女性が好きなのか……そんなに可愛い顔をしてるのに残念だよ」
(ちょっとまて、なんかおかしいぞ、この人俺を女と思ってない?)
男の言葉に疑問を感じた俺は質問した。
「僕の事、女性と思ってません?」
「そうだけど違うのかい?」
(やっぱりか)
心で呟きタメ息を吐いた。
「僕は男ですよ?」
「その顔で?」
「はい!」
少しイラッとしたので強めに返事をした。
「まさか……」
地面に手を付き項垂れる男はそうとうなダメージを負ったみたいだ。
いい気味と思い男を見てると男は立ち上がった。
「失礼した。余りにもショックが大きくてね…僕は銀の冒険者でカイムと言う、君はどうしてここで倒れていたんだい?」
ダメージを負ったなら良かった。俺を女と思った罰だ。
でも俺は美少女とも言えるからコイツには罪は無いかもしれない。
段々悪い気がしてきて申し訳なさそうに俺は男の質問に答えた。
「とりあえずなんかすいません。ギルドからの依頼でゴブリン討伐をしたんですが、魔力欠乏で気を失ってしまったんです」
「と言う事は君がラグーくんかい?」
「そうですけど、どうして僕の名前を?」
「君が依頼を受けたまま昨晩から帰らないからアマリさんに様子を見て来てくれって頼まれたんだよ。それで君の名前を知っていたのさ」
なるほど、俺はゴブリンを倒した後そのまま意識を失って夜を明かしたのか。
土壁が無かったらと思うとゾッとする。
今度からは気を付けないと
「僕は大丈夫です。探しに来てくれてありがとうございます」
俺はお礼を言った。
「所でこの壁は君が作ったのかい?」
「はい、僕が土魔法で作りました」
「なるほど、ヤルタさんが君を金の冒険者にした理由が良く分かったよ。外もすごいけどこの土壁もすごい」
うんうんと俺を褒めるカイムさんは外もすごいと言ってたけどどうなってるんだろう?
「外もすごいって、どうなってるんですか?」
「見てないのかい?あれじゃしばらく雑草すら生えてこないだろうね……」
遠い目をするカイムさんに少し心配になった俺は土壁を破壊して外の惨状を見て目を丸くした。
地面は抉れ真っ黒となった大地に、俺が倒した筈のゴブリンは跡形もなく消えていた。
「な、すごいだろ?」
「やり過ぎました……」
俺は少し魔法を抑えようと決意し、カイムさんと一緒にギルドへ向かった。
ギルドに着くとアマリさんとマリアお姉ちゃんに抱きつかれた。
「ラグー心配したよー」
「アマリが慌てて家に来たから本当にビックリしたんだからね。無事で良かったよ……」
「アマリさん、マリアお姉ちゃん心配させてごめんなさい」
俺は心配させた二人に向け謝った。
「ラグーが無事ならいいの……」
涙を浮かべるマリアお姉ちゃん
「本当にごめんなさい」
しんみりとした空気の中、アマリさんが口を開く。
「依頼は達成したの?」
「はい、ゴブリンは魔法で全滅させました」
「それは良かった。ならゴブリンの素材をちょうだいな」
ニコニコとするアマリさんは俺に手を向ける。
「素材?」
「そう素材よ、素材が討伐した証拠になるから討伐した分の素材が必要になるのよ。だからほら」
そう言っていい笑顔を向けるアマリさん
「すいません、ありません…」
「どうして?」
「魔法で全て消してしまいました」
「は?……魔法で全て消した?ま、まぁいいわ、素材が無きゃこの依頼は失敗って事になるけどいいねわ?」
「そ、そんなー」
俺の苦労はいったい……
項垂れる俺の初めての魔物討伐はこうして幕を閉じた。
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