18 / 54
夏祭りに行った件②
しおりを挟む夏祭りの会場は沢山の人で溢れかえっていた。
どこを見ても人、人、人。アニメフェス以外での人混みは嫌いだけど今日の僕は違う。
不思議な高揚感で異常なテンションになっている僕は逆に興奮してしまう。
「まいった!人が多い!しか~し!俺にはあゆたんがついている!あゆたんがついているのだ!」
僕の胸には笑顔のあゆたんがいる。
あゆたんがついてくれている今、嫌いな人混みごときに怯むわけにはいかない。
「さぁ、杏、紗枝、北澤さん行こう!」
あゆたんがついている今の僕に怖いものは何もない。
「ちょっと、賢どうしたのよ急に!」
そんな事を言って困惑の表情をする滝川さんはあゆたんだけじゃなくきっと自分の事も誉めてほしのだと思う。なので誉める事にする。
「どうしたの杏?それにしても浴衣似合うね!綺麗さが神がかってるよ」
「ば、バカ!な、何言ってるのよあんた!」
あたふたとする滝川さんにウィンクすると今度は北澤さんを誉める。
「北澤さんもカワイイよ、浴衣を着るとその可愛さも倍増するね」
「あ、ありが、とう…」
少し顔を赤らめた北澤さんは可愛かった。
◇◇◇
(あっ、この顔ヤバイ、美織ちゃん……)
私は賢くんにかわいいと言われて顔を赤くする美織ちゃんを見て恋する乙女だと思い焦ってしまった。
(杏ちゃんだけじゃなくて美織ちゃんも出てくると大変だよ)
私は、勢いに任せて賢くんの腕に抱きつくと金魚すくいに連れて行った。
慌てて杏ちゃんと美織ちゃんが追いかけてきてる。
金魚すくいの露店につくと賢くんはお金を払い金魚すくい用の網を受けとった。
「賢くん、あの赤い金魚と黒い金魚取れる?」
私のお願いに「大丈夫」と返事をすると賢くんは金魚すくいに集中して頑張っているけどなかなか金魚はとれず、三回ほど網を変えてもらってやっと取れた金魚を袋に入れてもらった賢くんは嬉しそうにしていた。
一発で取れてないのに取れた金魚を私に渡す時の賢くんのドヤ顔にはおかしくなってしまったけど、私のお願いに一生懸命頑張ってくれて嬉しかったから心を込めてお礼をする。
「ありがとう賢くん」
◇◇◇
染谷君が次はどこに行こうか?と言っていたのですぐに射的に行きたいと言った私の意見が通り、私達は射的の露店に向かった。
狙いは、可愛い熊のぬいぐるみ。
染谷君は銃を構え、熊のぬいぐるみに狙いを定めて引き金を引くと、弾は見事ぬいぐるみに当たったけどびくともしない。
それで意地になったのか染谷君はお金を払って全く動かない熊のぬいぐるみに銃を打ち続けた。
途中で私がもういいからと言ったけど染谷君はやめなかった。
どれくらいお金を使ったのかわからないけど染谷君が構える銃に射的屋のおじさんが手を置いた。
「お前の熱意に負けたよ」と言って台に置いてある景品の熊のぬいぐるみを手に取り、染谷君に手渡すと親指を上げた。
そんなおじさんと、染谷君は手をガッチリと握り合い、お礼を言うと受け取った熊のぬいぐるみを私に手渡した。
「賢君、なんかごめんね…」
「いいよ気にしないで」
手をヒラヒラとする染谷君は疲れた顔をしていた。
あんなに頑張ったんだから疲れるよね。
あまりかっこいいとは言えないけど私の為に頑張ってくた染谷君にお礼をした。
「染谷君、ありがとう」
◇◇◇
金魚すくいと射的に行った私は「お腹が空いたな」と小声で呟いたけど、賢にはそれが聞こえたみたいで食べ物を買いに行った。
四人分の食べ物を抱えるのは大変なので私も「一緒に行くよ」と言ったけど、賢は「大丈夫」と言って一人で行ってしまった。
「なんか、疲れたね…」
「本当に…」
「ね…」
賢が買い出しに行った後、私と美織、紗枝ちゃんの三人は少し静かな木の側で座って賢の帰りを待つ。
そして、三人で女子トークをしていると声をかけられた。
「三人ともカワイイね!ちょうど俺達も三人なんだけどどう?」
ありきたりなナンパだった。
こうゆうのは本当にめんどくさい……
「間に合ってるんでけっこうです」
私は声をかけてきた男を立ち上がり睨み付けたけど、
「いいねぇ~怒った顔もカワイイなんてすごいね~」
「だな!たまらん!」
「お前に同意する」
こんな事を言っているこの人達バカなのか?不機嫌な私の顔と口調で嫌がっているのをわからないのだろうか
そんな男達を見ていた美織と紗枝ちゃんも立ち上がり、私の手を掴んで「行こ」と言ったけど男達は引かれる私の逆の手を掴んだ。
「行かせるわけないじゃーん!」
ニヤニヤしてそう言った男の手を振りほどこうとしたけど力が強くて振りほどけない。
「気持ち悪いから本当にやめて!」
私の手を掴む男に叫んだけど男はニヤニヤして手を離さない。
「ちょっ、本当に離してよ!」
「なんなのよ!杏の手を離しなよ!キモいんだよ!」
「そうだよ、離してよ!」
美織と紗枝ちゃんも私の手を引っ張り声をあげた。
その時、
「やめろーー!」
声が聞こえ、男が近づいてくる。
私達に声をかけてきた男達は振り向き、近づいてくる男を見た。
だんだんと近づいてくる男は賢だった。
私は賢の姿が見えた瞬間に胸が激しく動くのがわかってすごく嬉しかった。
のに─────
「そのTシャツなんなのよぉぉぉ!」
存在感を放つ賢のTシャツのあゆたんは場違いに笑顔だった。
◇◇◇
僕が戻ってくると三人は絡まれていた。
僕は叫んで手に持っていた食べ物を投げ捨て、三人に近よったけど滝川さんにTシャツの事を言われてしまった。
この状況で僕のTシャツに触れるなんて滝川さんは案外余裕があるかもしれない。
僕は滝川さんの手を掴む男と滝川さんの間に体を割り込ませ、男の手を掴んだ。
「手、離せよ」
「あぁん!殺すぞテメー!」
「やってみろよ!」
男は僕の顔に拳を放つ!
(大丈夫、今の僕は無敵だ!こんなヤツには負けるはずが───)
「ブファッ!」
男の拳をもろに顔面にくらい自慢のくろぶちメガネは飛んでいき、膝から崩れ落ちた。
「威勢だけの雑魚かよ」
男の言葉に僕はそいつの足にしがみついた。
「テメー離せよ!」
男は僕に何度も拳を振り下ろしたけど僕は掴んだ足を離さなかった。
「テメーいいかげんに離──」
「お前ら何してるんだ!」
声が聞こえた所で僕は意識を失った。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ
みずがめ
ライト文芸
俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。
そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。
渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。
桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。
俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。
……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。
これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる