染谷君は知らない滝川さんはもっと知らない交差するキュンの行方とその発信源を

黒野 ヒカリ

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学園祭の準備をしている件③

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 「杏、なんか久しぶりに話すね」

 「そうね……」

 杏と隣の教室に移動した私は気まずい空気にどうしたらいいのかわからないでいた。

 「まず、体、測るね」

 「う、うん」

 私と全く目を合わせようとしない杏と会話が続かない。
 こんな事は杏と仲良くなってから初めての経験だった。

 私はどうしていいのかわからず、無言のまま杏の体を測って行く。

 「杏、終わったよ」

 「う、うん、ありがとう」

 それだけ言って立ち竦む杏を見ると辛くなる。

 あんなに明るくて輝いていた杏が今では輝きを失い、暗い影が射している。

 (こんな杏、見てられないよ)

 私は何も言葉が出てこなかった。


◇◇◇


 本当に久しぶりに美織と言葉を交わした。

 美織に嫌われていると思っている私はこれ以上嫌われ無いようにしようと必死に言葉を探したけど結局浮かばずに素っ気ない返事を返す事しかできなかった。

 続かない会話にどんどん教室の空気が悪くなって行くのがわかる。

 (美織、ごめんね……)

 心の中で美織に謝ると涙が溢れそうになり私は必死で堪えた。

 体の寸法を測り終わり、美織の声が聞こえたので「ありがとう」と言った。

 ここに美織といてもどう話していいのかわからないし、空気も悪くなるばかりなので私は教室の出口へと足を進める。

 教室を出てすぐの所で美織が私の名前を叫んだ。

 「杏!」

 私は振り返り、美織を見たけど、俯く美織はそれ以上何も言わない。

 「杏、ごめんね……」

 美織は少しして、ボソボソと震える声で何かを言っていたけどその声は小さくて私には聞こえなかった。
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