青いsquall

黒野 ヒカリ

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コンビニ店員颯太のモヤモヤ

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 前にバイト君に言われたことがある。

 「颯太くんはこの店にいいようにこき使われてますよね」

 確か彼は高校2年生だったな、僕はもう27だったけど見た目がリス系で名前も颯太だから若く見られてしまう。

 もう5年以上ここで仕事しているうちに『颯太くん』が通り名になった。

 そしてどこでも入れるフリーシフト扱いで、きつくても自然と収入も不満ない金額だから慣れた仕事の環境も影響して辞める気はない。

 先週も店長に「今度の新人さん、どう?」と言われ、いつのまにか監察係までやらされている。

 高島さんとはガッツリ一緒に仕事したことがない。

 マネージャー曰く「仕事出来るもん同士を一緒にしたら勿体ないからね」
 それを人伝に聞いて高島さんへの評価は自分では表で言えないけど結構高くて期待している。

 その朝は発売される雑誌が多いからと4時に入ったらまるで救世主を見る村人のような無垢な目で見て「小森さん、助かります」と涙ぐむ高島さんが深く頭を下げていた。

 高島さんも苦労している…聞かなくても、わかった。
 一段落するとお互いの有能ぶりに満足していた。

 高島さんは「働くって、人数じゃないね、人だよ人!」何度も僕を見て言うから、
「同感だけど、たぶんシフトは組んでもらえないよね」今回はたまたまだから、と念を押した。

 僕だって、この人と一緒に仕事したいよ、今後も。
 何よりも僕を『颯太くん』じゃなくて『小森さん』と呼んでくれてドキってなった。

 ここでは働く者も客も『颯太くん』と呼んでいるから。礼儀正しくて良い人だよ、高島さんは。

 バックヤードで品出ししていると、あの娘が来た。

 僕は飲み物のガラスケースを通して2人を見る。
 朝から満面の笑みの彼女、嘘だろ?ってくらい高島さんを真っ直ぐ見つめる。

 ちょっと遠目の横顔だけど、顔が言っている
『高島さんが大好きです』、と。

 そしてもう一度、嘘だろ?って思う。

 その高島さんの爽やかな笑顔。
 それは僕に向けられてたのと変わらない普通の笑顔なんだけど?
 何?高島さんは気付かないのか?
 あんな風に見つめている女の子の気持ちに…。
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