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憂鬱な飲み会
しおりを挟む土曜になり、飲み会の日を向かえた。
余り乗り気はしないが、京ちゃんと約束したのだから仕方ない。
飲み会の相手が高島さんだったらいいのに、と淡い思いを抱きながら出掛ける準備を始めた。
準備を終えると家を出て駅に向かった。
そして、待ち合わせ場所の大森駅に着くと私を見付け手を振って近付いて来た京ちゃんは、黒のワンピースを着ていて何とも言えない色気を漂わせていた。
「京ちゃん、そのワンピース似合ってて凄くセクシーだよ」
「そうっ」と言ってクルリと回った京ちゃんから漂う甘い香りが私の鼻を擽った。
駅から移動して、京ちゃんに案内された場所は沖縄料理のお店だった。
このお店はとても美味しいと評判で、私が行ってみたいと京ちゃんに話していた場所だった。
「京ちゃんありがとう」
嬉しくなった私はそう言って京ちゃんに抱きついた。
「ナミが喜ぶと思ってここを選んだんだよ」
微笑む京ちゃんは女神様に見える。
こんなに綺麗で気配りも出来るのに彼氏がいないのが不思議でならない。
もっとも、京ちゃんはモテるので厳選してるのかもしれないけど……
店内に入ると、まだ午後六時だと言うのにお客さんで賑わっていた。
賑わう店内をグルリと見渡した京ちゃんは、今回の飲み会のお相手を見付けると手を振って近付いて行った。
「お待たせ~、ジンくん待った?」
「いや、俺達も今来た所だよ」
京ちゃんにジンくんと呼ばれた男性は茶髪で遊んでそうに見えた。
席に座り、運ばれてきた飲み物で乾杯をして、自己紹介が終ると私はメニューを開いた。
ずらりと並ぶ沖縄料理が私の心を踊らせる。
豚足、島らっきょうの天ぷら、豚バラ肉の塩漬けをチョイスして注文した。
運ばれて来た料理は評判のお店だけあってどれも美味しかった。
楽しそうに飲んでいた京ちゃんがトイレに行くと、リョウスケくんが私に話し掛けて来る。
ここまで私は料理に夢中で、ほぼ会話には参加して無い。だから私の事は気にしないでそっとしておいてほしいと思う。
「ナミちゃん沖縄出身なんだね」
「そうですよ」
素っ気なく返事を返すとリョウスケくんは驚きの言葉を口にした。
「京子ちゃんもかわいいけど俺はナミちゃんの方がかわいいと思うよ」
お世辞でもそんな事を言うのは止めてほしい。
色気漂う京ちゃんより私の方がかわいいなんてあり得ない。
私は「そんな事ないですよ」と返すとさんぴん茶を口にした。
飲み会が終わり、私と京ちゃんはお店を出た。
「たぶんね、リョウスケくんはナミの事がお気に入りだと思うよ」
人が疎らに歩く駅に向かう帰り道、お酒を飲んでほんのりと頬の赤くなった京ちゃんはそんな事を言った。
リョウスケくんにかわいいとは言われたけどそれは無いと思う。
例えそうだったとしても私が他の男性に心変わりする筈が無い。
今は高島さんしか見ていないのだから……
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