嫌われ者だった俺が転生したら愛されまくったんですが

恋人編

本当は

「…アツキ！」
「レン？なんでこんなとこ？」
「それはこっちの台詞！知らない人に勝手にほいほいついて行かないで」
「う、うん。ごめん」
いきなりのレンの登場に驚いたのは俺だけではなく。
「な、なんで、レン様がここに…」
レンを見て呆然とする女性たちはやはりテンプレの言葉しか出てこないらしかった。
「お前たち？アツキいじめたの」
「い、いじめてなんか」
「こんな状況で疑うなって言う方が無理だけど。じゃあもういいから早くここから出て行って。それから、もう2度と俺たちの前に現れないで」
口調こそ多少の穏健さは残っているものの、レンから醸し出される雰囲気は、何物も寄せ付けないようなものだった。
「ッッ！」
レンの圧力に負けたらしい女性たちは何も言葉を発さないまま路地裏から出て行った。
「あ、アツキに謝ってもらうの忘れてた」
「いいよ、俺のことなんて。それより、助けてくれてありがと」
「ふふ、今日のアツキは素直で可愛い。助けに来るの遅くなってごめんな。」
きてくれるだけでありがたかったのに謝られてしまうのはなんだか居心地が悪い。
「ん？アツキ大丈夫か？」
何がだ、と言う前にレンに頬を拭われた。
「俺のせいで、ごめん」
「ちがっ、」
どうやら俺は泣いているらしい。
平気なふりをしていても、集団の中で罵声を浴びせられるのは応えたみたいだ。
レンの前でこんな情けない姿見せたくないのに、涙は一向に止まってくれない。
泣いている顔を見られたくなくてレンの肩口に顔をぐっと押し付けると、レンは頭を撫でてくれる。
それにまた安心してしまい、余計に涙が溢れてくる。
「俺は本当に大丈夫だから、」
レンのせいじゃない、と言うことを伝えたかった。このまま引きずってしまう気がしたから。
「ああ、ありがとう」
どうやら伝わったらしかった。