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第一章
02:ヤンデレミラちゃんだった
私は弱い。
魔界で致命的と言って良いほど攻撃力がない。夢魔族で最弱と言っても過言では無かろう。もうクソ雑魚なめくじレベルだ。
武力は元より攻撃魔法との相性が悉く悪くて、炎で鶏すら焼き鳥にできない。
だが夢魔族、いわゆるサキュバスである私は空間と精神を操る能力のお陰で、私は魔王ルキフェル様のお側に居られるのだ。
私の特技は精神に干渉する能力。
人間も魔界人も精神が崩壊すれば起き上がる気力が無くなる。
クソ雑魚なめくじである私の唯一の武器だ。
前世は思い出したのに、いつからルキフェルの側にいたのかさっぱり思い出せないが、彼の補佐をするために私は存在する。
何せこの世界は弱肉強食。
いついかなる時も、魔王の座を欲して襲撃してくる輩がいるやも知れない。
当然全員ルキフェル様の敵ではないけれど、心の安寧を保つ為にはいつでも何処でも転移出来て洗脳できる私がいれば安心でしょ。
ご褒美は月に一度の体液摂取。要はセックスですよ♡サキュバスって体液貰えないと死んじゃうからね。
残念ながら愛はくれない。
だからルキフェル様に秋波を送る者たちには、皆んな夢の中で痛めつけて二度と起きれない精神に追い込んで来た。
『ルキフェル様が自分の物にならないのなら、誰の物にもならなければ良い』
恐ろしくね?
ガチでそんな事思いながらライバル達を蹴落として来た、ミラ。
こわっ!ミラちゃんコワっ!もうこれヤンデレ確定だよね!
今までの記憶も思い出も多少ある私だが、前世を思い出した私の感覚からすると流石にこれは行き過ぎだと思う。
かと言って急にキャラ変したら周囲にドン引きされる可能性は大いにある。何なら体乗っ取り疑惑まで浮上すればルキフェル様に殺されるやもしれん。
ここは徐々に地を小出しにして行くしかないだろう。
そう決心をしてネビロスを適当にあしらい、医務室を後にした。
ルキフェル様の執務室へ入ると、彼はいつも通り幾重にも重なった書類を捌いていた。
魔界の王といえど、普通に執務をこなす執政官なんだよね。
この魔界、前世を思い出したおかげで凄いことに気がつく。
ここの人間界の文化レベルはまだ馬車が主流の世界で、魔法のお蔭で多少便利という具合だ。
しかしこの魔界はその人間界より遥かに文化レベルが高く、科学技術を知る私でさえそこまで不便だと感じない。
今の魔界を革新的発展をさせたのは、先代魔王。
余談だが魔王は全てサタンと呼ばれていたらしいが、ルキフェル様はその伝統をぶち壊した。
で、先代魔王サタンは魔導製品開発や、農業の効率化、さらにはインフラ整備を精力的に行い今の便利で文化的な魔界を作り上げた。
何よりも、和食が浸透されていたのは驚きだ。
今まで普通に食堂でお箸を使いウドンを啜っていた私だが、それがいかに奇妙なことか気付かずにいた。
先代魔王は多分日本人転生者だ。
彼の統治前は混沌とした魔界で、多少の文化レベルはあるが下水だって垂れ流しのひどい状態だったとか。
法と秩序を整え、魔王権限をフル稼働して現在の文化的世界に発展させた。
何せ魔伝機なる固定電話がある世界だ。残念ながら携帯電話はまだない。
更に個数は少ないが、画像を録画しスクリーンで映し出す技術もあり、ちょっと遅いけど魔導列車もある。
農業に関しては稲作農業に尽力したという。もう日本人確定だよね。
お陰で白ごはん味噌汁紅鮭に納豆という、黄金朝ごはんを何も考えずに食せる生活だ。先代、マジ天才!
先代の偉大さをしみじみ感じながら、私は現在魔王であるルキフェル様のお茶を淹れる。
普段の私は彼の秘書官的な役割をしている。
「ネビロスはどうだったか?」
ルキフェル様はペンを走らせながら私に尋ねた。
「特に。ただ残してきた国を憂いてはおりましたが、アスタロト様に引き継がれた事に驚いていましたね」
元々アスタロトは領土を持つ魔界人だ。
人間界の小国も難なく治めてくれるのではなかろうかと思う。
「………………ミラ?」
ルキフェル様の何か含みのある呼び声に、緊張が走る。
「何でしょう?」
だが平静を保ち、いつも通りの調子でお茶を差し出す。
「違うな。人間界に行った時から感じていた違和感がある。どうした?何かあったか?」
「特に、問題ありません」
大有りなんだけどね!心の脇汗ダラダラ流しながら無表情を保つ。
だがルキフェル様、ついにペンを置き私の頬をひと撫でした。
「私に誤魔化しは効かんぞ?」
静かに喋ってはいるが、これは完全に疑われている!
何をどう疑っているのか、潜在意識に潜り込んで知りたいところだがルキフェル様の中には入れない。何せ魔力が違いすぎて弾き出されてボコられる。
「存じ上げております。ですが、本当に何も問題ありません」
頼むからスルーして欲しい!
確かに今までのヤンデレミラちゃんじゃないけれど、まごう事なきミラなのよ!寧ろまともになったから許して欲しい!
私を見透かす赤い双眸。
ルビーの様に美しく、赤い血の様に深い。
昔は輝く金色の髪を持っていたルキフェル様。今は魔王の称号を得て艶やかな漆黒の髪を緩く後ろへ流している。
はぁぁぁ美しい……♡
疑いの目を向けられている時でさえ、溜息の出る美しさに何もかもどうでも良くなる。
どんな目で見られようと、蔑みの目を向けられようとも、私を見てくれるだけで恍惚としてしまう。
私はこの方の近くにいられるだけで満足だ。
欲を言うなら月一ではなくもう少し体液が欲しい。常に空腹状態は辛い。
あと、正直イチャイチャしたい。一日中べったり何もせずくっついていたい。一緒にピクニックとかしてみたい。買い物デートかもしてみたい。
あ、欲望だらけじゃん私。
不埒な願いを思い描いていると徐に腰を抱き込まれ、ルキフェル様のお膝へ跨る体制になった。
バランスを取るため慌ててルキフェル様の肩に手を掛け、体勢を確保する。
「ミラ?やはり何かあるだろう。まさか、あの勇者が気になるか?」
顔を近付け低い声で囁くルキフェル様。
「勇者?何故そこで勇者が出てくるのですか?」
今まで一欠片も思い出さなかった勇者だ。
しかしあのネビロスが追い込まれた位なのだから、相当厄介な敵ではあるな。
「少将にスカウトしていただろう」
あぁ。したね。それはヤンデレミラちゃんだ。
強そうだったから魔界に連れて行ったら楽しめるんじゃね?とか思っていただけだ。
「あれは…ネビロスを追い込む強さがあるのなら、魔界でも十分楽しめるのではないかと思っただけです」
「本当にそれだけか?」
「他に理由が?」
するりと私の腰を撫で付け、蠱惑的な笑みを浮かべるルキフェル様。あぁ尊い。
「そう言えば今日は十五日だったな?」
「………はい」
毎月十五日は体液が貰える日!つまり抱いて貰える日なのだ。
毎日毎日この日を楽しみに生きている私だ。
いつもは仕事が終わり、就寝時間にやっと相手をして貰えるのに今日は今からですか!
いやぁぁぁどうしよう!はっ!下着とか大丈夫かな?この露出度の高い服に下着とか気にする必要全く無かったわ。
絶対これTバック履いてるでしょうよ。
何て色々考えていたらふわりと体が浮かび、執務机に座らされた。
あれ?
しないの?
一瞬残念に思いルキフェル様を見つめると、噛み付く様に唇を塞がれる。
突然のキスに驚いたが、柔らかく潤った唇が触れて嬉しくなる。
そのまま熱い舌を捩じ込まれて口内を蹂躙される。
「ん、んん」
いきなりの口付けに体を硬らせた私に、容赦なく覆い被さるルキフェル様。
バサバサと書類が床に落ち、気にも止めずに私を机に縛りつけた。
え、ちょっと待って?ここでやるの?
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