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第一章
04:ルキフェル様に仇なす者は全て排除せねば!
今日は気分がいい。
最高にいい。
こんなに満ち足りた日は久しぶりだ。
何せ昨日は昼間に前菜としてルキフェル様の体液を頂き、更に夜にもたっぷりと朝まで注いで貰ったのだ。
当然私の体は動かないくらい悲鳴を上げているのだが、この満腹感はひとしおだ。
月に一度しか貰えないためか、その一度は激しく濃い行為をしてくれる。
それなら淡白でもいいから毎日抱いてくれてもいいのに。と思うのだが頑なに月に一度しか相手をしてもらえない。
そこに愛は無いのだから仕方がないのだろうけど。
それを考え出すと少し切なくなるので、深くは追求しない。
こんなにも気持ちのいい朝に鬱蒼とした思考は要らない。
のんびりまったりと過ごすに限る。
私は広いベッドの上で大きく伸びをして寝返りを打つ。
そこにはもう愛しい温もりは去っていたが、残り香だけは微かに香る。
軋む体を捻り、熱量の落差に溜息を溢す。
……昨日のルキフェル様は本当に魔王だった。
あんなに激しく抱かれたのはいつぶりだろうか?
随分昔に私が人間界へ体液漁りに行って以来じゃないかな。
その昔、ルキフェル様だけじゃ足りなくて、ルキフェル様至上主義の私が他の魔界人の体液をもらう訳にはいかなくて、欲望の赴くまま人間界へ適当な男を見繕いに行った事があった。
何故だかルキフェル様にバレてしまい、所謂お仕置きエッチなる身も凍る様なセックスを強いられたのだが。
あの時ほど冷たい行為ではなかったが、昨夜のそれは中々近いものがあった。
まぁ今はお腹いっぱいで満足なんだけどね。
何が彼をそんな激情に駆り立てたのか、全くもって分からない。
あー、もしかして勇者のせいか?
今までの勇者より割と強かったし、何せネビロスを追い込んだ実力者だ。
人間界では偶に勇者と呼ばれる天使の加護を持つ人間が生まれる。瀕死でも聖職者の回復魔法で全回復する、こちらからすれば厄介な敵だ。
果敢にも毎回魔王様を倒しに魔界へやって来るのだが、大抵は私が勝利の幻覚を見せてさっさと帰らせていた。わざわざルキフェル様がお相手するほどじゃないしね。
昨日の勇者は今までの者より強く、天使の加護も厚そうだった。
そんな彼らの登場に心が揺さぶられたか。
ルキフェル様は天使が大嫌いだからね。
天使達は天界に住み神々の言葉を伝え、人間達を導く役割をしていると言うが、最近は独断でやっている感が否めない。
何せその指示を出しているはずの神々は、殆ど天使任せで遊び呆けているからだ。
昨日も海の神が普通に魔界へやって来て釣りとか呑気にしていたし。
創造神なんて居着いちゃって、役目を終えて老後を楽しんでいる老人にしか見えない。
天使達の加護が勇者達から香り、きっとルキフェル様は機嫌を損ねたのだろうと結論づけた。
私はゴロリと仰向けになり、高い天井を見上げた。
あの勇者、アレックスって言ったっけ?
そして清楚な子がソフィー?
他にもゴスロリな魔法使いと、何かシュッとした魔法剣士だったな?
よくある筋肉隆々な剣士は居なかったな。
前世でよく読んだ、チート勇者になって魔王を倒すライトノベルが頭に浮かんだ。
転生勇者ものは大抵ハーレムになってウハウハなハッピーエンドが多かったかな。
ふと、思い出す。
ミラという名のお色気サキュバスが登場する転生勇者モノがあったな、と。
それもまた何故か勇者がモテモテになって清楚な聖女や可愛い魔法使いに惚れられ、更には敵であるお色気悪魔に執着されるという物語だ。
もしかして私がそのミラ⁉︎って、まさか嘘でしょ?
昨日対峙した勇者達の名前を思い出す。
勇者アレックスと聖女ソフィー…と、他二名。
ぬぅぅっ!ありふれた名前すぎて分からん!でもネビロスのストーリーは私の知っている小説に酷似している。
まさか小説の世界へ私は転生してしまったのだろうか?
心臓が激しく鳴り響き、前世で読んだ内容を混乱しつつも思い出して来た。
うわぁぁ!タイトルが分からんけどそんなストーリーあったわ!
ミラというツンデレ悪魔が事あるごとに登場して勇者と絡み、時には手助けする。
最終的には勇者に惚れて魔王を裏切り、彼らを勝利に導くのだ。
無い無い無い!私がルキフェル様を裏切るはずが無い!
しかし今まで読んだ小説のセオリーからすると、原作強制力なるものが働くなんて事もあり得る。
如何にサキュバス最弱たる私でも、魔王の側近の端くれ。
ルキフェル様に仇なす者は全て排除せねば!
幸いな事に今日は気力魔力と、更にココロも満タンなベストコンディションだ。ちょっと腰の具合が悪いだけで(照)
これはもう勇者が転生者かどうか、確認しに行くしか無いわよね!
そう考えるとすぐ様行動に移した。
「おいおい。大人しくしてろって言ったのミラちゃんだろう?何で俺なんだよ」
「ネビロスが一番人間界のこと詳しいじゃん。私、何年も行ってないから分かんないんだもん。いいからさっさと準備してよ」
早速行ったのは、片角が折れたネビロスの元。
彼は五十年間人間界の王様をやっていた実績があるので、彼を連れて人間界にいこうと誘った。この前はネビロスを救出して速攻帰ったからね。
「相変わらず強引だなぁ。やっぱり変わってねーな」
渋々と言いながらも嬉しそうに準備をするネビロス。
細けぇこたぁ良いんだよ!というタイプのネビロスは、私にとって気を遣わなくていい数少ない魔界人だ。
「ネビロスだってシルバウェル王国が気になるでしょ?」
そう言うと、彼は眉を下げて小さく笑った。
◆
魔界と人間界の境目は、魔界門と呼ばれるもので繋がる。
空間系の能力を持つものだけが、それを操れる………つまり私だ。
人間にもその能力を持つ者はいるが、稀だ。
小説ではミラがそこを開けて勇者達を人間界から魔界へご招待していた。
魔界では番人が魔界門を管理しているが、私くらいになると顔パス…。
「み、ミラさん…!今日も人間界へ?魔王様はご一緒ではないのですか?」
とはいかず、番人の怪訝な声にぎくりと反応する。
すると、ネビロスが巨躯を揺らし威厳たっぷりに番人を見下ろした。
「おぅ。ちぃと忘れ物を取りにな?さっさと開けてくれ」
「………!ネビロス少将!すぐに開けます!」
勇者に角を折られたとは言え、彼は序列第九位の上位魔界人。
魔王の金魚のフンである私とは扱いが違う。くっ!クソ雑魚ナメクジな自分が恨めしい。
番人が魔界門に手を翳すと極彩色の光が現れ、人間界へと繋がった。
私は悔しさのあまり、番人をひと睨みしてそこを潜る。
「い、行ってらっしゃいませ!」
番人はネビロスの威圧に萎縮しながら見送った。
ネビロスはその番人を一瞥し、私に囁く。
「ミラちゃん、流し目するのはやめておけよ。犠牲者増やしたく無いだろ?」
「流し目?そんな事してないわよ。ちょっと睨んだだけよ」
ネビロスとの扱いの違いに八つ当たり的な睨みをしただけだ。
意図が伝わっていないのか、ネビロスは肩をすくめて嘆息する。
なによ。こっちが溜息吐きたいんだけど。クソ雑魚ナメクジの気持ちなんて、上位魔界人には分かんないでしょうよ。
その弛んだ腹を掴んでタプタプしてやるわよ?
私はフンスと鼻を鳴らし、人間界へ入り勇者達を探した。
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