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第1章 パーティー結成編
23、騒動の終結
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今までの流れをカイとローマンがハンスに伝え、俺とフィーネとおじさんが三人に何度も頭を下げられたところで、俺たちは全員でブラックウルフを運びながら街に戻ることになった。
ブラックウルフはそのままゲルトさんが持っていた布に載せて、数人で布を引いて運んでいく。
俺はさりげなくカイに腕を貸す担当を申し出て、ブラックウルフの運搬には関わらないようにした。素材が劣化しちゃうのならまだいいけど、ブラックウルフがより上位種に変質したら大変だからな。
「今回の昇格試験は色々あったな……というか、もう一つパーティーがいるんだよな。あいつらは合格できたのかどうか」
そういえば、女性二人組のパーティーがいたな。この騒動に気づいてなかったとしたら、外門に戻って途方に暮れてる可能性もあるのか。
「早く戻ってあげたほうが良いですね」
フィーネのその言葉に全員が頷き少し足を速めて帰ると、外門の前には予想通り女性二人がいた。
「お前たち、すまないな! 少しトラブルが発生した!」
ゲルトさんがまだ距離があるところから手を振って声をかけると、女性二人はこちらに気づいて手を振り、しかし俺たちの後ろにいるブラックウルフを見てその手を止めた。
「かなり驚いてそうです」
「まあそうだよな。ブラックウルフなんて、普通はこの街の近くにいるはずがないんだ。どこかで逸れたやつが偶然行き着いたのか……なんにせよ調査は必要だろう」
何か大変なことが起こる前触れとかだったらヤバいもんな……逸れたやつが偶然辿り着いたならいいけど。
まあそれもかなりの脅威なんだけどな。
「そ、それ、何ですか!?」
外門に着いたところで、女性二人が驚愕に瞳を見開いて叫んだ。
するとその叫び声で兵士たちもブラックウルフに気づいたようで、わらわらと門から飛び出してくる。
「何事だ!?」
「ゲルト、何があった?」
ゲルトさんを知っている兵士の一人がこちらに駆け寄ってきたところで、ゲルトさんは集まってきた人たち全員に聞かせるような声で告げた。
「森の中に突然ブラックウルフが現れたんだ。昇格試験の最中だった冒険者パーティーが襲われたが、何とかブラックウルフの討伐には成功し、襲われたパーティーも無事に戻ることができている」
そこまでを一息に言い切って言葉を途切れさせたゲルトさんは、次に俺とフィーネに視線を向けた。俺たちはゲルトさんに肩を持たれて皆の前まで移動させられ、大勢の注目を浴びた。
「この二人がブラックウルフを討伐してくれた者たちだ。名をフィーネとエリクと言う。とても優秀なテイマーと錬金術師の二人だ。……名を売るチャンスだぞ」
ゲルトさんは俺たちにだけ聞こえる声でボソッと呟くと、振り返ってゲルトさんの顔を見上げた俺たちに下手なウインクをした。
冒険者として名が売れれば報酬がいい指名依頼が入ることもあるし、昇格もしやすくなるからというゲルトさんの配慮なんだろうけど……俺たちは別にそこまで名を売りたいわけじゃないんだよな。
二人とも特殊なスキル持ちだから、目立ちすぎると面倒ごとに巻き込まれそうな気がするし。
でもここでゲルトさんの好意を無碍にすることもできず、俺たちは苦笑を浮かべつつゲルトさんに小声で感謝を伝えた。そして集まっている兵士や冒険者の方に視線を戻すと、ほぼ全員に尊敬の眼差しを向けられた。
……なんか、くすぐったいな。俺がこんなふうに注目を集めることがあるなんて、今でも信じられない。
九割以上はフィーネのおかげなんだけどさ。
「えっと……フィーネ、です。この子がリルンでこっちがラト。今回ブラックウルフを倒してくれたのはこっちのリルンです。とても強くて可愛いこの子たちにいつも助けられています」
「俺はエリクです。俺は錬金術師だから戦いはあんまりだけど、今回は怪我人を助けることができたので、錬金術を頑張って良かったと思っています。えっと……これからも頑張ります。あっ、あと向こうにいる冒険者が俺の回復薬を適切に使ってくれたので、怪我人は助かりました。あの人も今回の功労者です」
こういうのに全く慣れていない俺たちは何を言えばいいのか分からず、とりあえずよく分からない自己紹介と、俺は大活躍だったおじさんの紹介をした。
でもブラックウルフを倒したというフィルターがあるからか、皆が拍手をしてくれたのでこれで良しとしよう。
「じゃあまずはブラックウルフを運ぼう。これは冒険者ギルドでいいのか? それとも領主様のところか?」
ゲルトさんが空気を切り替えるようにそう声を発してくれたところで、俺たちに集中していた視線がそこかしこに散らばった。
「さっき領主様のところには遣いを送ったから、それまでは門前広場に置いておこう。多分領主邸に送ることになる」
「やっぱりそうか」
「ああ。それから今回のことについて、領主様から関係者が呼ばれるはずだ。そのつもりで召集を待っていて欲しい」
「分かった。俺から伝えておく」
「よろしくな」
それからは皆で力を合わせてブラックウルフを門前広場に運び、俺たちは昇格試験終了の手続きをするために冒険者ギルドへと戻った。
ブラックウルフはそのままゲルトさんが持っていた布に載せて、数人で布を引いて運んでいく。
俺はさりげなくカイに腕を貸す担当を申し出て、ブラックウルフの運搬には関わらないようにした。素材が劣化しちゃうのならまだいいけど、ブラックウルフがより上位種に変質したら大変だからな。
「今回の昇格試験は色々あったな……というか、もう一つパーティーがいるんだよな。あいつらは合格できたのかどうか」
そういえば、女性二人組のパーティーがいたな。この騒動に気づいてなかったとしたら、外門に戻って途方に暮れてる可能性もあるのか。
「早く戻ってあげたほうが良いですね」
フィーネのその言葉に全員が頷き少し足を速めて帰ると、外門の前には予想通り女性二人がいた。
「お前たち、すまないな! 少しトラブルが発生した!」
ゲルトさんがまだ距離があるところから手を振って声をかけると、女性二人はこちらに気づいて手を振り、しかし俺たちの後ろにいるブラックウルフを見てその手を止めた。
「かなり驚いてそうです」
「まあそうだよな。ブラックウルフなんて、普通はこの街の近くにいるはずがないんだ。どこかで逸れたやつが偶然行き着いたのか……なんにせよ調査は必要だろう」
何か大変なことが起こる前触れとかだったらヤバいもんな……逸れたやつが偶然辿り着いたならいいけど。
まあそれもかなりの脅威なんだけどな。
「そ、それ、何ですか!?」
外門に着いたところで、女性二人が驚愕に瞳を見開いて叫んだ。
するとその叫び声で兵士たちもブラックウルフに気づいたようで、わらわらと門から飛び出してくる。
「何事だ!?」
「ゲルト、何があった?」
ゲルトさんを知っている兵士の一人がこちらに駆け寄ってきたところで、ゲルトさんは集まってきた人たち全員に聞かせるような声で告げた。
「森の中に突然ブラックウルフが現れたんだ。昇格試験の最中だった冒険者パーティーが襲われたが、何とかブラックウルフの討伐には成功し、襲われたパーティーも無事に戻ることができている」
そこまでを一息に言い切って言葉を途切れさせたゲルトさんは、次に俺とフィーネに視線を向けた。俺たちはゲルトさんに肩を持たれて皆の前まで移動させられ、大勢の注目を浴びた。
「この二人がブラックウルフを討伐してくれた者たちだ。名をフィーネとエリクと言う。とても優秀なテイマーと錬金術師の二人だ。……名を売るチャンスだぞ」
ゲルトさんは俺たちにだけ聞こえる声でボソッと呟くと、振り返ってゲルトさんの顔を見上げた俺たちに下手なウインクをした。
冒険者として名が売れれば報酬がいい指名依頼が入ることもあるし、昇格もしやすくなるからというゲルトさんの配慮なんだろうけど……俺たちは別にそこまで名を売りたいわけじゃないんだよな。
二人とも特殊なスキル持ちだから、目立ちすぎると面倒ごとに巻き込まれそうな気がするし。
でもここでゲルトさんの好意を無碍にすることもできず、俺たちは苦笑を浮かべつつゲルトさんに小声で感謝を伝えた。そして集まっている兵士や冒険者の方に視線を戻すと、ほぼ全員に尊敬の眼差しを向けられた。
……なんか、くすぐったいな。俺がこんなふうに注目を集めることがあるなんて、今でも信じられない。
九割以上はフィーネのおかげなんだけどさ。
「えっと……フィーネ、です。この子がリルンでこっちがラト。今回ブラックウルフを倒してくれたのはこっちのリルンです。とても強くて可愛いこの子たちにいつも助けられています」
「俺はエリクです。俺は錬金術師だから戦いはあんまりだけど、今回は怪我人を助けることができたので、錬金術を頑張って良かったと思っています。えっと……これからも頑張ります。あっ、あと向こうにいる冒険者が俺の回復薬を適切に使ってくれたので、怪我人は助かりました。あの人も今回の功労者です」
こういうのに全く慣れていない俺たちは何を言えばいいのか分からず、とりあえずよく分からない自己紹介と、俺は大活躍だったおじさんの紹介をした。
でもブラックウルフを倒したというフィルターがあるからか、皆が拍手をしてくれたのでこれで良しとしよう。
「じゃあまずはブラックウルフを運ぼう。これは冒険者ギルドでいいのか? それとも領主様のところか?」
ゲルトさんが空気を切り替えるようにそう声を発してくれたところで、俺たちに集中していた視線がそこかしこに散らばった。
「さっき領主様のところには遣いを送ったから、それまでは門前広場に置いておこう。多分領主邸に送ることになる」
「やっぱりそうか」
「ああ。それから今回のことについて、領主様から関係者が呼ばれるはずだ。そのつもりで召集を待っていて欲しい」
「分かった。俺から伝えておく」
「よろしくな」
それからは皆で力を合わせてブラックウルフを門前広場に運び、俺たちは昇格試験終了の手続きをするために冒険者ギルドへと戻った。
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