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第1章 パーティー結成編
27、領主邸へ
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次の日の朝。午前九時前にはあの日の事件の当事者全員がギルド前に集まり、皆で一つの馬車に乗り込んだ。ギルド所有の馬車はかなり大きく頑丈で、乗り心地も悪くない。
「今日はあの日の事情聴取だ。実際に起こったことを包み隠さず話せば問題はない。領主様に嘘は厳禁だから、そこは気をつけろよ」
ゲルトさんのその言葉に皆が神妙な面持ちで頷き、馬車内は異様な静けさに包まれたまま街の中を進んだ。ちなみにリルンは馬車には乗り込まず、横を並走している。ラトはいつでもマイペースなので、フィーネの膝の上で爆睡だ。
いつも思うけど、ラトってフィーネを完全に信頼してるよな。そうじゃなければ、仰向けで寝ることなんてできないだろう。
「あの、その魔物ってスクワールですか? 凄く可愛いですね」
静かな馬車内で、フィーネの隣に腰掛けていた男の子が躊躇いがちに口を開いた。この子は確か……ローマンだったよな。俺たちに救助を求めに走ってきた子だ。
「そうだよ。毛並みも凄くふわふわなの。触ってみる?」
「良いんですか!」
「うん。でもちょっと待ってね。ラト、起きてる?」
フィーネがラトのお腹をこしょこしょと指先で撫でると、ラトの尻尾がぴくっと動いて閉じていた瞳が開いた。
『フィーネ、どうしたの?』
「あっ、起きたみたい。ローマンに触らせてあげても良いかな」
『僕の毛並みを堪能したいの? しょうがないなぁ~』
周囲に不自然にならない程度にフィーネが話しかけると、ラトは満更でもない様子でフィーネの膝の上に立ち上がった。
「ふふっ、良いみたい。優しく触ってあげてね」
両手に乗せたラトをローマンの前に移動させると、ローマンは緊張の面持ちでそっとラトの背中に触れた。
「うわぁ、ふわふわですね」
「そうでしょ? 気持ち良いよね」
『僕の毛並みなんだから当然だよ!』
「本当に可愛いです」
ローマンが頬を緩めながらラトの背中を何度も撫でていると、ローマンのことを羨ましげに見つめていたハンスが身を乗り出した。
「お、俺も触っていいか!」
「ふふっ、もちろん良いよ。カイも触ってみる?」
触りたいけど言い出せない様子のカイにもフィーネが声を掛けると、カイは思わず笑ってしまうほどの速度で頷いた。
そして三人で一緒に、ラトの背中にそっと触れる。
「うわぁ、やべぇ」
「これは凄いな……」
「なんだか気持ちよさそうにしてるよ」
「ははっ、本当だな」
それからはラトと三人のおかげで穏やかな空気が流れ、緊張感はいい感じに解けて馬車は領主邸に着いた。
馬車から降りるとビシッと使用人の服を着こなした男性が出迎えてくれて、俺たちはなんだか豪華な一室に通される。
高そうなものがたくさんあって、いるだけで緊張するような部屋だ。領主様が座るのだろう豪華なソファーの向かいに椅子が並べられていて、俺たちはそこに座るみたいだ。
「旦那様がいらっしゃるまでこちらでお待ちください」
案内してくれた人が部屋から出ていくと、それと入れ違いでメイド服を着た女性が二人入ってきた。俺たちにお茶を出してくれるらしい。
「ミルクと砂糖はいかがいたしますか?」
「えっと……ではミルクだけ」
ゲルトさんが最初にそう答えたので、どう答えるのが正解なのか分からない俺たちは、全員ゲルトさんと同じように答えた。
「どうぞお召し上がりください」
「ありがとうございます」
それから緊張で味がよく分からないお茶を飲みながら待っていると、しばらくして部屋の中に豪華な服を着た男性が入ってきた。
俺たちが慌てて椅子から立ち上がると、男性は笑顔で座ったままでいいと合図をしてくれる。この人が領主様なのか……優しそうな人だな。
「今日はあの日の事情聴取だ。実際に起こったことを包み隠さず話せば問題はない。領主様に嘘は厳禁だから、そこは気をつけろよ」
ゲルトさんのその言葉に皆が神妙な面持ちで頷き、馬車内は異様な静けさに包まれたまま街の中を進んだ。ちなみにリルンは馬車には乗り込まず、横を並走している。ラトはいつでもマイペースなので、フィーネの膝の上で爆睡だ。
いつも思うけど、ラトってフィーネを完全に信頼してるよな。そうじゃなければ、仰向けで寝ることなんてできないだろう。
「あの、その魔物ってスクワールですか? 凄く可愛いですね」
静かな馬車内で、フィーネの隣に腰掛けていた男の子が躊躇いがちに口を開いた。この子は確か……ローマンだったよな。俺たちに救助を求めに走ってきた子だ。
「そうだよ。毛並みも凄くふわふわなの。触ってみる?」
「良いんですか!」
「うん。でもちょっと待ってね。ラト、起きてる?」
フィーネがラトのお腹をこしょこしょと指先で撫でると、ラトの尻尾がぴくっと動いて閉じていた瞳が開いた。
『フィーネ、どうしたの?』
「あっ、起きたみたい。ローマンに触らせてあげても良いかな」
『僕の毛並みを堪能したいの? しょうがないなぁ~』
周囲に不自然にならない程度にフィーネが話しかけると、ラトは満更でもない様子でフィーネの膝の上に立ち上がった。
「ふふっ、良いみたい。優しく触ってあげてね」
両手に乗せたラトをローマンの前に移動させると、ローマンは緊張の面持ちでそっとラトの背中に触れた。
「うわぁ、ふわふわですね」
「そうでしょ? 気持ち良いよね」
『僕の毛並みなんだから当然だよ!』
「本当に可愛いです」
ローマンが頬を緩めながらラトの背中を何度も撫でていると、ローマンのことを羨ましげに見つめていたハンスが身を乗り出した。
「お、俺も触っていいか!」
「ふふっ、もちろん良いよ。カイも触ってみる?」
触りたいけど言い出せない様子のカイにもフィーネが声を掛けると、カイは思わず笑ってしまうほどの速度で頷いた。
そして三人で一緒に、ラトの背中にそっと触れる。
「うわぁ、やべぇ」
「これは凄いな……」
「なんだか気持ちよさそうにしてるよ」
「ははっ、本当だな」
それからはラトと三人のおかげで穏やかな空気が流れ、緊張感はいい感じに解けて馬車は領主邸に着いた。
馬車から降りるとビシッと使用人の服を着こなした男性が出迎えてくれて、俺たちはなんだか豪華な一室に通される。
高そうなものがたくさんあって、いるだけで緊張するような部屋だ。領主様が座るのだろう豪華なソファーの向かいに椅子が並べられていて、俺たちはそこに座るみたいだ。
「旦那様がいらっしゃるまでこちらでお待ちください」
案内してくれた人が部屋から出ていくと、それと入れ違いでメイド服を着た女性が二人入ってきた。俺たちにお茶を出してくれるらしい。
「ミルクと砂糖はいかがいたしますか?」
「えっと……ではミルクだけ」
ゲルトさんが最初にそう答えたので、どう答えるのが正解なのか分からない俺たちは、全員ゲルトさんと同じように答えた。
「どうぞお召し上がりください」
「ありがとうございます」
それから緊張で味がよく分からないお茶を飲みながら待っていると、しばらくして部屋の中に豪華な服を着た男性が入ってきた。
俺たちが慌てて椅子から立ち上がると、男性は笑顔で座ったままでいいと合図をしてくれる。この人が領主様なのか……優しそうな人だな。
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