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第2章 王都編
59、一軒家と今日の予定
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不動産屋の男性から鍵を受け取り中に入った俺たちは、一通り部屋の中を見て回ってそれぞれの個室を決めた。
二階はフィーネが過ごす場所ということになり、一階が俺に決定だ。ラト、リルン、デュラ爺の三人は、リビングや応接室など好きなところで寝るらしい。
『ねぇねぇ、この厨房で何か作れる?』
ラトは屋敷の一階にある大きな厨房を見て瞳を輝かせた。元はお金持ちが住んでいた屋敷なのか、厨房はかなり大きくて立派な作りだ。
「作れるだろうけど、私たちに使いこなせるかなぁ。エリクはどのぐらい料理ができるんだっけ?」
「俺は簡単なものしかできないな。孤児院時代に当番で簡単なものを作ってたぐらいだから」
「そっか。私もそこまで得意なわけじゃないんだよね……でも一度ぐらいは作ってみようか。一緒に料理をするのも楽しそうじゃない?」
「確かに」
料理は必要に駆られてやってたイメージしかないけど、好きな食材を好きなだけ使える今なら、料理も楽しめるのかもしれない。
「今日はもう遅いから、今度一日休みにする日の夜ご飯でも作ってみるか」
「そうだね。じゃあ今日は……いつも通り食べに行こうか」
それから俺たちは家の近くにあった食堂で夕食を楽しんで、家に帰ってからは疲れも蓄積していたのですぐ眠りに落ちた。
そして次の日の朝。清々しい気分で目覚めた俺は、まだフィーネが起きていなかったので、朝食の準備をすることにした。
昨日のうちに買っておいたサンドウィッチを保冷庫から出して、温めるために少しだけフライパンで焼く。さらにラトの木の実も器に盛り付け、デュラ爺の肉とリルンのパンも温めた。
「エリク……?」
「あっ、フィーネ。おはよ」
「おはよう。早起きだね」
「なんか早く目が覚めてさ、自分で自由に使える家が嬉しくて準備してた」
フライパンの中身を気にしつつそう告げると、フィーネは苦笑しつつ頷いてくれる。
「そういえばエリクは、自分の家に住んだ記憶がないんだったね」
「そうなんだ。孤児院は自分の空間なんてベッドの上だけだったし、錬金工房は狭い部屋だけだったから。一軒家っていいな」
「ふふっ、嬉しそうなのが顔に滲み出てるよ」
フィーネのその言葉を聞いて頬に手を当ててみると、確かに口角が上がっているかもしれない。
『なんだかいい匂いがするな』
二人で話をしていたら、リルンがパンの匂いに釣られてやってきた。そのすぐ後にはデュラ爺と、デュラ爺の頭の上に乗るラトも顔を出す。
「皆起きたな。朝ご飯を食べるか」
『ああ、腹が減ったぞ』
『わしもじゃ』
『僕も僕もー!』
それから皆に手伝ってもらいながら準備を終えて、昨日たくさん買ったおかげで豪華な食卓となったテーブルに着いた。
他の人がいない静かな空間での朝食は新鮮で、なんだか貴族にでもなった気分だ。
「エリク、今日はどうする? さすがに依頼は受けないよね?」
「そうだな……今日は休みにするか。ちょっと錬金もしたいと思ってるんだ」
「錬金ってもしかして、不毛な大地で手に入れた素材で?」
「そう。生命草を使ってみたくて」
回復薬の手順でヒール草を生命草に変えてみたら、何ができあがるのかずっと気になっているのだ。生命草の効果をデュラ爺に聞いた限りでは、成功する可能性はあると思う。
『わしは錬金の見学をしても良いか? あまり見る機会はないからな』
「もちろん良いよ」
「私たちはどうしようか……ラトとリルンはどこかに行きたい?」
『僕、行きたいところがある! クッションを新しくしたいんだ』
ラトはそう言うと、リビングにあるソファーに置かれたラト専用クッションの上に瞬間移動をした。クッションにも印をつけてたんだな。
『ほら、少し汚れてるし、ふかふか具合も微妙になってるの』
「確かにそうかもしれないね。じゃあクッションを買いに行こうか。リルンはどうする?」
『我もフィーネとラトと共に行こう。パン屋があればそこに寄る』
「ふふっ、了解。じゃあエリク、私たちは出かけてくるね。お昼ご飯は何か買ってこようか?」
お昼ご飯か……錬金してるといつも食べ忘れるけど、急ぎの錬金でもないんだしちゃんと食事は取ったほうがいいよな。
「お願いしてもいい? 俺はなんでも、フィーネが美味しそうだと思ったやつでいいから」
「分かった。じゃあ私が買ったところで適当に選んじゃうね。デュラ爺は?」
『わしは肉で頼む』
「お肉ね。美味しそうなのを選んでくるよ」
そんな話をしながら朝食は和やかに終わり、フィーネたちが出かけていくのを見送ってから、俺はデュラ爺と共にリビングにあるテーブルに錬金道具を広げた。
「よしっ、錬金していくか」
二階はフィーネが過ごす場所ということになり、一階が俺に決定だ。ラト、リルン、デュラ爺の三人は、リビングや応接室など好きなところで寝るらしい。
『ねぇねぇ、この厨房で何か作れる?』
ラトは屋敷の一階にある大きな厨房を見て瞳を輝かせた。元はお金持ちが住んでいた屋敷なのか、厨房はかなり大きくて立派な作りだ。
「作れるだろうけど、私たちに使いこなせるかなぁ。エリクはどのぐらい料理ができるんだっけ?」
「俺は簡単なものしかできないな。孤児院時代に当番で簡単なものを作ってたぐらいだから」
「そっか。私もそこまで得意なわけじゃないんだよね……でも一度ぐらいは作ってみようか。一緒に料理をするのも楽しそうじゃない?」
「確かに」
料理は必要に駆られてやってたイメージしかないけど、好きな食材を好きなだけ使える今なら、料理も楽しめるのかもしれない。
「今日はもう遅いから、今度一日休みにする日の夜ご飯でも作ってみるか」
「そうだね。じゃあ今日は……いつも通り食べに行こうか」
それから俺たちは家の近くにあった食堂で夕食を楽しんで、家に帰ってからは疲れも蓄積していたのですぐ眠りに落ちた。
そして次の日の朝。清々しい気分で目覚めた俺は、まだフィーネが起きていなかったので、朝食の準備をすることにした。
昨日のうちに買っておいたサンドウィッチを保冷庫から出して、温めるために少しだけフライパンで焼く。さらにラトの木の実も器に盛り付け、デュラ爺の肉とリルンのパンも温めた。
「エリク……?」
「あっ、フィーネ。おはよ」
「おはよう。早起きだね」
「なんか早く目が覚めてさ、自分で自由に使える家が嬉しくて準備してた」
フライパンの中身を気にしつつそう告げると、フィーネは苦笑しつつ頷いてくれる。
「そういえばエリクは、自分の家に住んだ記憶がないんだったね」
「そうなんだ。孤児院は自分の空間なんてベッドの上だけだったし、錬金工房は狭い部屋だけだったから。一軒家っていいな」
「ふふっ、嬉しそうなのが顔に滲み出てるよ」
フィーネのその言葉を聞いて頬に手を当ててみると、確かに口角が上がっているかもしれない。
『なんだかいい匂いがするな』
二人で話をしていたら、リルンがパンの匂いに釣られてやってきた。そのすぐ後にはデュラ爺と、デュラ爺の頭の上に乗るラトも顔を出す。
「皆起きたな。朝ご飯を食べるか」
『ああ、腹が減ったぞ』
『わしもじゃ』
『僕も僕もー!』
それから皆に手伝ってもらいながら準備を終えて、昨日たくさん買ったおかげで豪華な食卓となったテーブルに着いた。
他の人がいない静かな空間での朝食は新鮮で、なんだか貴族にでもなった気分だ。
「エリク、今日はどうする? さすがに依頼は受けないよね?」
「そうだな……今日は休みにするか。ちょっと錬金もしたいと思ってるんだ」
「錬金ってもしかして、不毛な大地で手に入れた素材で?」
「そう。生命草を使ってみたくて」
回復薬の手順でヒール草を生命草に変えてみたら、何ができあがるのかずっと気になっているのだ。生命草の効果をデュラ爺に聞いた限りでは、成功する可能性はあると思う。
『わしは錬金の見学をしても良いか? あまり見る機会はないからな』
「もちろん良いよ」
「私たちはどうしようか……ラトとリルンはどこかに行きたい?」
『僕、行きたいところがある! クッションを新しくしたいんだ』
ラトはそう言うと、リビングにあるソファーに置かれたラト専用クッションの上に瞬間移動をした。クッションにも印をつけてたんだな。
『ほら、少し汚れてるし、ふかふか具合も微妙になってるの』
「確かにそうかもしれないね。じゃあクッションを買いに行こうか。リルンはどうする?」
『我もフィーネとラトと共に行こう。パン屋があればそこに寄る』
「ふふっ、了解。じゃあエリク、私たちは出かけてくるね。お昼ご飯は何か買ってこようか?」
お昼ご飯か……錬金してるといつも食べ忘れるけど、急ぎの錬金でもないんだしちゃんと食事は取ったほうがいいよな。
「お願いしてもいい? 俺はなんでも、フィーネが美味しそうだと思ったやつでいいから」
「分かった。じゃあ私が買ったところで適当に選んじゃうね。デュラ爺は?」
『わしは肉で頼む』
「お肉ね。美味しそうなのを選んでくるよ」
そんな話をしながら朝食は和やかに終わり、フィーネたちが出かけていくのを見送ってから、俺はデュラ爺と共にリビングにあるテーブルに錬金道具を広げた。
「よしっ、錬金していくか」
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