転生したら唯一の魔法陣継承者になりました。この不便な世界を改革します。

蒼井美紗

文字の大きさ
166 / 173
第四章 交易発展編

166、話し合い

しおりを挟む
 応接室の前に着いて一度大きく深呼吸をしたら、ニルスにドアをノックしてもらい、大きく声を張った。

「ノバック国王陛下並びに、騎士ダビドを連れて参りました」
「入れ」

 中から陛下の重厚な声が聞こえてきたのでニルスに合図をすると、ニルスはゆっくりと扉を開けた。
 すると奥にあるソファーに陛下が腰掛け、その斜め後ろに宰相様がいるのが見える。壁際に並ぶのはファビアン様とマティアスだ。

 俺は陛下の向かいに置かれたソファーの近くまで歩みを進め、二人をもう一度紹介した。

「こちら、ノバック国王陛下ならびに騎士ダビドでございます」
「ご尊顔を拝する栄誉を賜り、誠に光栄でございます。ノバック王国が国王、エドゥアール・ノバックでございます」
「私はラスカリナ王国国王、ルーウェン・ラスカリナだ。此度はお会いできて光栄だ」

 それから何度か長ったらしい挨拶が繰り返され、やっと二人がソファーに腰掛けたところで、俺はファビアン様とマティアスの隣に並んだ。

 それにしても滅亡寸前の国で、こういう礼儀作法はよく残ってたよな。というか本当なら対等なはずの国王同士なのに、ノバック国王陛下の腰が凄く低い。
 俺に対してもこんな感じだったし、国の現状と救援を願う立場を考えたら仕方がないのかな……

「して、今回は我が国へ救援を願いに来られたのだとか」
「はい。我が国は魔物の被害や作物の不作、水不足などで滅亡の危機に瀕しておりまして、ぜひ国民を助けていただけないかと懇願に参った次第でございます。どうか、どうか我が国をお助けください……!」
「顔を上げてくれ。ラスカリナ王国としては、出来る限りの援助をしたいと思っている」
「ほ、本当ですか……!?」

 陛下が発した援助をするという言葉に、ノバック国王陛下は分かりやすく顔を輝かせた。ポーカーフェイスを保てないほどに嬉しいことなのだろう。
 さっきも自分を救って欲しいというよりも国民を救って欲しいと言っていたし、この人は良い国王なんだろうな。

「ああ、しかし我が国にもそこまでの余裕があるわけではない。どこまで助けられるかは分からないが、そこは受け入れてもらえると嬉しい」
「……もちろんでございます。少しでも多くの国民が助かるという事実だけで、とてもありがたいことです」
「ではさっそく援助の内容を話し合おう。……そうだ、その前に援助の対価の話をしておきたい。国家間のことだ、これから先で他国からも要望がある可能性を考えると、無償というわけにはいかない。そこで我が国としては貴国の鉱山などをもらえればと考えているのだが、どうだろうか」

 援助の対価という言葉に表情を固くしたノバック国王陛下だったけど、鉱山を求めるという話を聞いて表情をまた緩めた。支払える対価であったことに安堵したのだろう。

「かしこまりました。現状我が国が持っているものは少ないですが、対価として差し出せるものがあるならば喜んで差し出させてただきます。鉱山は近年管理もできておりませんが、それでも良いでしょうか?」
「ああ、そこはこちらで引き受けよう。古い文献によると我が国とノバック王国との間にある山脈の一部に、多くの鉱石が眠っているとのことらしいが心当たりはあるか?」

 陛下のその質問に、ノバック国王陛下は難しい表情で考え込んだ。

「確か……古い記録を読み返していた時に、鉱山として採掘をしていたという記録が残っていたと思います。確か二ヶ所ほどあったかと」
「ほう。ではそこをいただきたい。もしその場所に鉱山が見つからなければ、別の場所に変更できる契約としたいのだが良いだろうか?」
「もちろんでございます」

 ノバック国王陛下が頷いたのを確認して、宰相様がさっそく後ろで書類の作成を始めた。この後すぐに契約を交わすのだろう。

「受け入れていただき感謝する。では本題の援助のことだが、まずは騎士団の大隊を一つノバック王国に派遣するつもりだ。大隊は小隊が十個集まったもので、騎士が百名ほどになる。その騎士達が食料や魔道具を運び入れ、貴国で魔物討伐も行う予定だ」
「……騎士を百名も! さらに食料と魔道具までいただけるのですか!?」
「ああ、とりあえずの応急処置だ。その対策で国が少しでも建て直れば、そこからは知識の伝達をしようと思っている。具体的には魔法陣魔法を使える者の育成と、魔道具師の育成だな。しかしそれは騎士達が行うにも限度があるので、貴国から我が国へ、留学という形で人材を送ってもらいたい。その者たちに我が国の学校で学んでもらい、貴国における魔法陣魔法と魔道具の技術革新、伝播の役割を果たしてもらいたいと思っている」

 陛下がそこまで話し終えたところで、ノバック国王陛下は感動で瞳を潤ませながら深く、それはもう地面に額がつくんじゃないかというほどに深く頭を下げた。
 
 ノバック王国にしてみたら信じられないほどの厚遇だもんな……でもこんなに謙らなくても良いのに。そのうち対等に話ができるぐらい、ノバック王国も発展したら良いな。
 この世界に蔓延る魔物に対抗するためには、同じ人間の仲間は多い方が良い。

「具体的な日程だが、準備はできる限り早くに終わらせるつもりだ。三日から五日後には出発と考えていて欲しい。貴殿らも騎士達と共に帰還するので良いだろうか?」
「もちろんでございます。素早い対応、ノバック王国を代表して感謝申し上げます」

 それからはノバック王国内の様子など細かい情報を共有してもらい、それを元にノバック王国での騎士達の動きについて話し合い、二国間の会談は終わりとなった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...