10年後も生きる為に、特種素材を求めて、異世界を旅する事になりました。《仮》

夕刻の灯

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第1章・始まりの森

五話・再びの神界《失敗した異世界召還の代償》

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森をボルドーの背に乗って、半日ほど進んだ先にあった。
ひらけた所の中央に、苔に覆われた古ぼけた祠がある場所。
オレ達は、そこから神界へと飛ばされた。

この数日の間何度も、俺たちは、この神界へ訪れている。
ボルドーは、今日は、他の神様に連れられて
違う空間に行っている。
今日も、目の前にいる神様のイレさんに、いろいろと教えてもらったけど、イマイチピンと来ないんだけど…

それは、規模が大きい話をする神様の様子がかなり落ち着いているからだろう。
こっちがかなり驚くような話を顔色を変えずに平然と話すからだ。
例えば…

「あの国は、禁術だけに飽き足らず、更に禁忌タブーを犯しました。」
禁忌タブーですか?」

神が定めた禁忌タブー
っと言うからには、あの国で行われた事は
普通の人間のする所業では、なかっただろう。

「生贄です。それも人間の」
「え?ええ~⁉︎」

生贄って、それだけでもドン引きだが
更に上に突き抜けたよ
人間の生贄…
生きた人間をそのまま使う、まさに悪魔の所業。

「おそらく、魔法陣にその術式を組み込んだんでしょう」

召喚術を行うには、神のみ技による補助が必要となるが
今回の召喚は、神が禁術にしている為、神の補助は得られない
膨大な魔力の消費が行われる。
宮廷魔導士達だけの魔力を注いでも、微々たるモノ…
ならば、他所から持って来れば良いと…

「とんでもない話だ」
「そうですよね。しかし、国王アレは、平然と行ったのです。」

用意された生贄は、最初の内は魔力量が高い奴隷達…
奴隷と言っても、生贄を使用する事は、例外なく禁忌に当たるが気にしなかったそうだ。
だが、補填するには、まだまだ足りない。
ならばっと、国王は、とんでもない事を始めた
誘拐や人攫いにまで、手を出したのだ。

「そうして、補填されて、オレをこちらへ召喚したんですね?」

その問いに、イレは首を左右に振った。
それは違うと

「補填なんてされていません。」
「されてない?でも、現にオレはここに居ますよね?」

その問いに答え
話を更に進めた。
足りない事もあるっと報告を受けた王は
ある指示を出した。
足りない魔力を周りから吸収する
術式を魔法陣に組み込めと
その指示に従って、魔導士達は術式を魔法陣に組み込んだ。 
そうして、完成した魔法陣を起動させた。
結果、一度発動した術は、最後まで自動で作用した。

「魔力の不足をあの術は、自ら補填したのでしょう…、そして、起こった結果が広範囲の消滅現象でした。」

足りない物は、周りから補填する…
そうして、この世界イレベリアには、甚大なる代償が発生した。
それは、王都の消滅…。
王都、それは、国の中枢
王の支持を受けて、政を行う行政区
その役職に就く貴族が住む貴族街
それを囲む市民の街

人口25,000人の大都市
それが、一夜のうちにこの世界イレベリアから消えた。

「消えたんですか?」

頷き答えを見せてくれた。

世界地図ワールドマップ

スッと、横に向かって手を出した。
その場所に
何かが浮かび上がる。
地図のようだ。
その地図を指差したり、つまんだりして
その地図を動かしている。
しばらくすると、ある区域が映し出された。
王都と書かれているが…
何もなかった。
地図を確認して、イレさんが説明を続けた。

「そうです。
王都が丸ごと全てモノがこの世界から、消えました。
そして、貴方を召喚しようとした国王も官僚たちと一緒に、消滅しました。」

消滅って、かなり大事だけど⁉︎
平然と言ってるし、イマイチ実感わかないよ。

「王都って国の中枢でしょう?
王様や国の偉い人が消えて、この国の人達大丈夫なんですか?」

「大丈夫です。
あの国王に追放された官僚たちと王と異母兄妹の妹がそれを引き継ぐはずですから」

「そうなんですね。良かったです。」

王に妹がいたのか、なら大丈夫だろう。

「ですがね…。
多少の混乱はあるはず…ですが
大丈夫。
隣国がサポートしてくれますからね。」

隣国、いくつも国があると言うことか。
国王が消えて、隣国から侵略戦争とされなきゃ良いけど
まぁ、オレとは無関係と言えば無関係だしな
けど、そんな心配は要らないんだろうな。

「他の国もサポートしてくれるんですか?
なら安心です。」
「でも、召喚術で王都が消滅した事は、各国の政府では、トップシークレットになっています。
迂闊に口外しないようにしてください。」

国家機密か、これは口に出したら
オレの存在がばれる事になる。

「分かりました。」

とても心配そうに言葉をかけてくれる。

「本当に口外しないで下さい。
貴方の存在がバレたら、消滅した王や官僚たちと関わりがあった者達がどんな手段に出るか、分かりません。
隣国が早急に対処していますが…万が一がありますからね。」

かなりの情報を教えてくれるんだが…。
こっちが覚える前に違う話をするから、前の方の話を忘れてしまった…。

「ごめんなさい。
これだけの話を一度に聞いても
今の状態では、覚えきれないでしょうが…
一応、一通りの事を話をしておかないといけない決まりだから…」

やっぱり、こちらの考えている事がわかるようだ。
ボルドーが帰って来た。

「そちらの話も一先ず終わったようですね。」

ボルドーがすり寄ってくる。

「その子がそこまで懐くなんて…」

途中まで言いかけて、神様が言葉を呑み込んだ。

「貴方達は、この祠から移動されるのでしょう?」

世界地図ワールドマップで、祠を映し出した。

「どうでしょうか?もう少し森を探索してから移動する事しようと思っていますけどね。」

ボルドーが頷いている。
どうやら彼も、探索するらしい。
どちらにせよ、この場所から離れるのは確かな話だけど。

「移動するならば、祠をセーフスペースに収納して下さい。」

苔むしたりして、かなり古そうな感じの祠だったけど
あの祠を持ち去っても良いのだろうか?

「え?オレ達があの祠を持って行っても、良いんですか?」

笑顔で答える

「大丈夫ですよ。アレも魔法道具マジックアイテムの一種ですし、貴方の為に用意した物ですから」

へ~あの祠も魔法道具マジックアイテムだったんだ
イレさんが用意したのだったんだ。
なら、地上へ帰ったら回収しよう。

「後は、もう大丈夫ですね?」

聞きたいことをあらかた聞けたし、祠を持って行くんだし
また、来れるだろう。

「オレの方は、問題ないです。ボルドーは?」
『主人であるアイ様が問題無ければ、私も問題ないです。』

他の神との話も、全て終わっているようだ。

「では、またお会いしましょう。それとボルドー。アイさんを頼みましたよ?他の子達も準備が終わり次第、そちらの護衛に加わります。」
『分かりました。アイ様の御身は、私がこの命に代えてもお守りします。』

手を振っている
オレも、それに答えて、手を振り返す。


そうして、オレ達は、神界を後にした。
ようやく、この世界へのまだ見ぬ地へ向かう。
オレに必要なモノを探す旅へ、旅立つ事になるのだった。

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