10年後も生きる為に、特種素材を求めて、異世界を旅する事になりました。《仮》

夕刻の灯

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第3章・炎帝龍の山

十一話・黒い狼

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~↓リオside↓~

誰かが俺の体をゆさぶっている
揺すり起こす者の声が聞こえて来る

「…隊長、起きて下さい」
「…ん…うん…ハッ⁉︎」

ぱっと目を開けると
心配そうに俺の顔を覗き込む
見慣れた顔があった

「ヤンにロキソか?」
「隊長、お身体の具合はどうです?」
「大丈夫ですか?」

何の事だろうか?
ダメだまだ頭がぼんやりしている
気を失っていたのか?

「一体何があった?」
「覚えていませんか?」
「俺たちは、追っ手と戦闘になったんですよ?」

そうだった。
オレは、気を失うまでの間に起きた事を思い出した!!
盾が壊れて、そこにヴァンが…

「そうだ!!ヴァン!!」
「隊長の息子さんなら、大丈夫ですよ」

横になっていた
ヴァンの顔を覗き込んだ。
確かに、若干血の気がない様だが、大丈夫そうだ
…よかった。
だが…おかしい
オレもヤツに背中を切られたハズだ
なのに今は、なんの痛みもない
肩を手で触れてみるが…

「傷が無い⁉︎」
「そうなんです。」
「俺たちも全く、傷が無いんです。」

服は、血に汚れている上に
切られた事によって破れているが
血は、出ていないようだ

「ダンは?それに敵の姿が見えないが?」
「敵の姿は、見当たりませんでした。」
「ダン隊長は、周囲の状況を確認するため見に行かれました。」

そうか…

「それに隊長周りをよく見て下さい。」
「ここ明らかに異様ですよ?」

言われてみれば、そうだ
木々に囲まれていたハズなのに
周りに木々が一本足りとも、全く見当たらない

「隊長…上、見て下さい上を」
「上?」

空を見上げた
見上げた空は、ほのかに明るい
しかし…月も、星も見えない
太陽が雲によって覆われているのか、っとも思ったが違うな。

「おい!!コレは、空じゃないぞ!!」
「空じゃない⁉︎」
「どう言う事ですか⁉︎」

俺にも分からないが…
すると

「分からん!あの世って訳でもないんだろうな」

聞き慣れた声がした

「ダン!無事だったか?」
「おかげさまでな。そういうお前は?大丈夫か?」
「ああ、残念ながら平気だよ」
「そうか」
「しかし、ここは何なんですかね?」
「ダンジョンかも、知れないな」
「ダンジョン?」
「騎士団の遠征で行ったっていうあのダンジョンか?」

国の中にある小規模なダンジョン
そこへ度々遠征を行いに行く事になっていた

「ああ、そこにある階層によく似てるんだ」
「なら、ここはダンジョン何ですか?」
「分からん、しかしそれなら」
「ああ、俺たちはダンジョンに移動した事になるな」

そうやって、空を見上げて呆けていると
いきなりだった。

ー''ズン"ー

!!周りの空気がガラリと変わった
全身がピリピリする感じがする
プレッシャーが辺り一面を支配していた。

「た、隊長!!アレを!!」

指差す方を見ると
先ほど戦った熊の魔物だった。
戦った時は間違いなくAランクの魔物だった
しかし…今は、あの時よりも、ずっと強い魔力を感じる
今の状態では、もうコイツは、確実にAAランクだ
武器を構えなければ…
武器が見当たらない

「みんな、俺の武器をどうした?」
「隊長の武器は、ありません」
「は?何をふざけている?」
「ふざけていません!!」
「それが、俺たちが気がついた時には、既に一つも武器が無かったんだ」

なんて事だ
こんな強敵を前に丸腰だなんて

「ヤツは、魔法を使うつもりだぞ警戒しろ」

熊の魔物が魔法を使った
大地が盛り上がり、高台を形成した
次に何が来るのかと身構えたが…
熊の魔物はその大地の高台の横で、跪いた。

「なんだ?」
「攻撃して来ない?」
「いや違う、何かあるぞ」

目の前の熊の魔物とは違う気配が高台から発せられて来る

「このプレッシャーはヤツじゃない!!」
「ああ、高台あそこに出て来るヤツだろうな」

すると、高台に姿を現した
黒い影…

「おい待てよ、何だよありゃ~」
「マジかよ!!」

黒い影から発せられている魔力は、熊の魔物が発しているそれとは比較にならない程
強大な魔力だった。

「ヤツは間違いなく、Sランクだ」
「ああ、間違いないな」
「Sランク⁉︎」
「隊長、Sランクなんて無理ですよ⁉︎」

隊員達は皆一様に不安を隠せない様だが
無理もない、Aランクですら自分達の実力で
やっとの事で追い払う事が出来たのだ
だが、目の前に現れたソレは
その魔物を遥かに上回るSランクの魔物
逃げるにしても、無事に逃げるとは思えないんだ
どうすればいいんだ
すると

『おい、人間…話がある。』

…声が聞こえた
突然の出来事に俺たちは全員、固まった…

『おい、人間…聞こえているハズだが?』

隊長…どうします?
っと隊員達は皆、怯えている
無理もない、この声は耳ではなく
直接頭に語りかける念話だ
聞かないという事が出来ない

『聞こえないのか!!』

ビック!!
声の主に、俺たちは怒鳴られてしまった。

「き、聞こえています。」
「あ!ば、バカ!!」

隊員の一人が思わず声を出してしまった様だ

『聞こえているなら何故、我の問いに返事をせぬ?』

黒い影との会話が始まってしまった…

「申し訳ありません。突然の事で皆、動揺してしまって」

ダンが黒い影と会話を始めた
汗をダラダラかいている
緊張と恐怖からだろうな
っと言う俺も額に汗をかいている

『我の力を示そうとしただけだが、そう緊張していては話がし難い。』

そう言うと俺たちにかかっていた
強烈なプレッシャーが弱まった

『どうだ?マシになっただろう?』
「はい、大分楽になりました。」

弱まったプレッシャーと魔力によって
黒い影をよく見る事ができる様になった
俺たちの目に影の主の姿が見える
巨大な体で、全身に黒い毛が生えている
口から見える鋭い犬歯の牙

ソレは、巨大な狼の様な姿をしていた。
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