10年後も生きる為に、特種素材を求めて、異世界を旅する事になりました。《仮》

夕刻の灯

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第3章・炎帝龍の山

四十九話・買取

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冒険者ギルドのギルドマスターの部屋の中だ。
ギルマスのシュルトさんとリオさんが話し合っている。

「…つまり、素材の買い取りを希望か?」
「そうです。路銀が厳しくなってきてるんですよ。」

…そう。
オレ達が冒険者ギルドに来た目的は、身分証になるギルドカードを手に入れる為と
素材の買取で、旅に必要な物を買う資金を集める事だ。

「確かに、冒険者ギルドココでも素材の買い取りはするがいいのか?商人ギルドの方が高く買い取りしたりするぞ?」
「まだ、商人ギルドに登録してないんですよ。」

まぁ、後々には商人ギルドにも、登録しておいた方がいいだろうけどね。

「それに商人ギルドと冒険者ギルドとで、買い取りにそんなに大差ないでしょう?」
「まぁな…だか良い値段で買うかは、その買い取りする物によるがな」

確かにそうだろうな。
いい値段で買ってもらえるかは、その買ってもらう素材によるだろうからな。

「それにだ。さっき商人ギルドを勧めはしたが…今、商人ギルドには行かない方がいいぞ?」

商人ギルドに行かない方がいいって?
さっき、素材の買い取りには商人ギルドもあるって言ってたのに?

「商人ギルドには行かない方がいいって何で?」
「今この街の商人ギルドは、内輪で揉めてる最中だ。迂闊に近寄ったら、厄介なことに巻き込まれかねないんだよ。」

リオさんがアイテムバックから取り出して
机の上に置いた。
カゴに入っているのは、ボルドーと一緒に森の中で最初に採取した薬草。
白い花が咲いている薬草で、此れに似た猛毒の毒草バッタリ草を間違えて触りそうになった。

「これは、薬草のヨモモ草だな。」
「本当だわ。それに…こんなにたくさん。」

そのヨモモ草…薬草は、カゴに山盛りになってる。

「そうです。この街へ来る途中の森の中で採取したんだ。」
「森の中…でも、この近くには生えてなかっただろう?」
「言われてみれば、確かに見なかったな。」

まぁ…オレ達は、ボルドーが森の中を高速で移動してくれたから
森の中の事は、よく知らないんだけど。
確かに、シャンティに近いところでは
ボルドーが薬草とかを採取するのに外に出してくれなかったな。
シャンティの街が近いから先を急いでいたのかと思ったけど。
ただ単にシャンティの街の近くに薬草が無かったからだったのかな?

「最近この街に近い森の中では、薬草を採取する事が出来ないですからね。」
「本当に、薬草これはありがたいよ。」

シュルトさんが喜んでくれてよかった。

「じゃあ、ギルマス。私は、これを下に運んで仕分けて来ますね。」
「ああ、頼んだよ。あ、そうだ。マヤ、待ってくれ。」

シュルトさんが薬草の入ったカゴを持とうとしているマヤさんを呼び止めた。。

「まず入ってないだろうが、この薬草似た猛毒の毒草が混じってるかもしれないからな。一応な

シュルトさんが薬草に鑑定をかけた。

「…大丈夫そうだが、万が一があるかもしれからな。みんなには、注意して作業するように言ってくれ。」

シュルトさんは、このヨモモ草と似た毒草バッタリ草を知ってる様だな。

「わかりました~行って来ます。」

そう言って、マヤさんは薬草の入ってるカゴを両手に抱えて持って部屋を出て行ってしまった。
しかし、最近薬草が採取出来ないって、どういう事かな?

「後、これも買い取りしてもらいたい。」

リオさんが包みを開けて見せる
中身がチラッと見えた段階で、シュルトさんが身を前に乗り出して、包みの中身を覗き込んだ
包みの中身は、緑色の結晶で出来たツノの様な塊

「これは、ヒーリングホーンのツノか?」
「その通り、ヒーリングホーンのツノです。」
「これがここにあるって事は、あの薬草喰いの鹿を狩ったのか?」

ヒーリングホーンまたは、薬草喰いとも呼ばれる。
薬草喰いの名の所以は、そのままの意味だった。
この魔物は、薬草を好んで食う。
しかも、その食い方がよろしくない。
この魔物は、特に状態・薬効が一番良い薬草を真っ先に食べる。
その状態が一番良い薬草を食うのに、他の薬効が低めな薬草を踏み散らかす。
この魔物に食われてしまった薬草
その他にも生えている薬草が踏み潰されて全滅する。
この魔物が通った後の薬草の群生地の薬草は、もう使い物にならない。

「薬草喰いは、逃げ足が速いんだがな?どうやって狩ったんだ?」
「やはり、その辺りが気になりますか?」

シュルトさんの口元がニヤける。
シュルトさんの問いにリオさんもにっこりして笑う。 
2人とも、にっこりしてるんだけど。
なんだか…テレビドラマの中の悪い人みたいだな。

「当然だろう?生い茂る木々や足場が悪い森の中で薬草喰いアイツらの逃げ足も相まって、大概の連中ならば仕留める前に取り逃がすんだからな。」
「確かにそうでしょうね。でも俺達には心強い相棒が居ますからね。薬草喰いを狩れましたよ。」

リオさんがボルドーを指差しながら笑う。

「そのウルフが薬草喰いを狩るのには必須だったって事か?」
「まさにその通りで、彼無しだったらまず無理でしょうね。」

ボルドーが誇らしげだ。
まぁ、このツノも薬草もほとんど
ボルドーが集めてくれたモノで、量的には極々一部なんだけどね。

「しかし、ヒーリングホーンのツノか…。コイツはどうするかな…?」
「どうかしました?」
「いや、最近このツノは、中々出回らないからな。それに…」

そんな事を話していると…
部屋の扉が開いた。

「あの~先ほどの薬草なんですけど…って、ギルマス何見てるんですか?」
「うん?コレさ。」

マヤさんが下から戻って来た。
シュルトさんがマヤさんにヒーリングホーンのツノを見せる。

「あー!!それって、ヒーリングホーンのツノじゃないですか!!」
「何!?ヒーリングホーンだと!?」

部屋の外から声が大きな声が聞こえてきた。
すると、部屋の中に男がマヤさんを押し退けて入って来た。

「おい、勝手に入ってくるなよ!!」
「良いじゃないか。それよりも…」

机の上に置いてあるヒーリングホーンを手にとって食い入るように眺め始めた。

「おい、マイク!!それに勝手に触るなよ!!」

シュルトさんが注意するが全く聞いてない。
っと言うよりも、この人にはおそらくだけど。
今、集中しすぎて周りの声が聞こえないと思うんだけど?

「マイク聞こえてるか!!」

シュルトさんが怒鳴ってるけど、マイクさんは微動だにしない。

「あーくそ!!コイツまた聞こえてないな。」

シュルトさんが呆れ顔でマイクさんを見ている。

「ギルマス、この人は?」
「ああ、さっき言ってた商人ギルドの奴さ。」

この人、商人ギルドの人だったんだ。
だからかな?
ヒーリングホーンのツノしか見てない。
シュルトさんがリオさんを手招きしている
リオさんがシュルトさんに近寄ったら、シュルトさんが小さな声で

「おい、気をつけろよ?」

っと言った。
気をつけろ?何を?

「コイツが商人ギルドで、今揉めてる人物の2人のうちの1人だ」

商人ギルドで揉めてる人!?
何で、そんな人がここに居るの!?
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