ハイスペな車と廃番勇者の少年との気長な旅をするメガネのおっさん

夕刻の灯

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8話・追跡者

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イレギュラーが起こった。
それは…。

"ピ・ピ・ピピ"
静寂の中で突如、スマホからアラームが鳴り響いた
突然鳴り響く、そのアラームに驚いてしまった

「ハ!!何だ!?」

俺は、手紙をもう一度最初から読んでいた。
その内容を見逃している事がないかを確認していたのだ。
しかし、一度読んだ後でも内容に引き込まれる。
そんな時は、時間を忘れてしまう。
机の上に置いていたスマホの通知音が鳴った。
手に持っていた手紙を机に置き
その代わりにその横のスマホを手に取っり
スマホのロック画面を見ると…
いくつかの通知があった。
その内容は…

『警告・監視対象指定者が保護対象者へ接近しました。』
『監視対象指定者が警戒ラインを越えましたので、監視対象指定者を脅威対象指定者と断定。』
『防御壁を通常モードから警戒モードへ自動的に移行しました。』

保護対象者とは、あの少年の事だろう。
そして、あの少年の跡を追って来た奴らがいるようだった。
だからこそ、このスマホの探知機能で自動的に最適な対応する様に設定したんだった。
しかし…
このスマホは、俺が今まで使っていた
このスマホ見た目は、そのままだが
その中のアプリの中身は、どうなってるんだろうか?
この世界用の地図アプリがあるし
レーダー探知機の機能もある。
アンテナのマークがなくて圏外なのは、異世界だから当然としても…
無線LANでは、バリバリのフルでマークが出てる。
つまり、ネットに接続してる。
謎のオンラインの状態なんだけど?
一体、どこに接続してるんだ?
全く、訳が分からない。
それの詮索は、ひとまず暇な時にでもするとしてだ。
その前に監視対象…いや、今はもう違うな。
このスマホに入ってる機能に言わせれば、明らかに"脅威となる対象"…って事だろうな。

「その脅威の連中は、今どのあたりに居るんだろう?」

スマホのロックを解除する。
解除したスマホの画面は、すでにこの辺り地形の地図になっていた。
端の方に幾つかの点がチカチカ点滅しながら動いている。
画面の中心のこの車の周囲には、赤くて太い二重丸の線が引いてある。
これがさっきの通知にあった、防御壁ってことだろうな。

『脅威対象の到達予想時刻まで、残り約13分26秒です。』

…13分。
つまり後13分でここまで、来るらしい。
そうなると…

「こっちは?あと何分くらいだ?」

他のアプリを開く。

『…ダウンロード完了まで、約3分42秒です。』

あと3分…
ここに到着するまで、10分くらいの時間がある。

「さて、間に合うか?」

もう少しだけ奴らが来るまでに準備しとかないとな

ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー・ーー

ベッドで寝ている少年を残して、は部屋を出た。
そうしているうちに、しばらくして…
スマホのスピーカーからアラームと共に人工音声が鳴り響く。

『脅威対象指定者が防御壁に到達しました。』

キャンピングカーの扉の小窓から外を見ると…
明らかに兵士って感じの集団が車の周囲に群がっていた。
多いな…見える範囲だけでも、数十人は居るな。
車の防壁ボルク?って言う薄い壁によって、行く手を阻まれている。
それで、この車には直接的な手出し出来ないらしい。
そうは言っても、周囲を囲まれている様だが?
車自体は、防壁を不可視化してある。
その上で探知不可に設定してある。
不可視・探知不可だと
防壁の中にあるこの車も当然の事だが
奴らには一切見えてはいない。
奴等の狙いは、俺じゃないんだろうけれど。

「まぁ…100%あの子を追って、ここまで来たんだろうな」
「…でしょうね。」

キャンピングカーから降りた。
そして、防壁…男たちのいる方へ向かって歩いて行く。

「アイツらは、相変わらずだな」
「そのようですね。」
「学習能力ないかね?」
「ないでしょう」

こうしてる間も防壁を武器でガツガツ殴ってる。
この血眼気味な感じがどうもな…
冷静さが微塵も感じないな。
ここまでくると、帝国への忠誠心ってやつじゃなさそうなんだが?

「なあ、コイツらを鑑定する事って出来ないのかな?」
「もちろん。出来ますよ、今調べますね。」

へぇ~、出来るんだな
さすが異世界、ノベライズで見た設定がそのまま反映されるなんてなぁ
そう思っていたら、パッと目の前に何か出て来た。
宙に浮いてる画面だ
それに加えて僅かに向こうが透けて見えてる思わず
指を突っ込んでみたくなる衝動を抑えつつ…
コレもお馴染みの異世界ノベライズ仕様って事かな?

「彼らの鑑定結果です。」

わりとすぐ出たな、これが奴らの鑑定結果…ね。

「あらら、見事な内容だな。」

表示された文書が自動で下へスクロールしてる。
人物とその情報が矢印付きで表示されてる。

「確かにこれは…見事ですね。」

【鑑定結果】
職業・教会派遣員
派遣先・帝国
クラスB

「派遣?」
「教会からクラーク帝国へ派遣された人材のようです。」

職業・兵士(帝国兵)
クラスC
反皇帝派
・皇帝の叔父派勢力
使役兵士
・忠誠
・隷属
・洗脳
…etc. 

「こっちは、帝国の兵隊って訳だな。」
「そのようですね。」

今ぱっと見た感じの感想は…

「ほ~見事なまでの異世界あるあるのランナップだな」
「ですね。本当に…見事なまでにです。」

しっかし…
ここまで来るともう、何とも言えないな。
使役兵士ってのが特にな。
雇い主に使役されてるって事だろう?
皇帝の叔父だって?
この帝国の皇帝には、叔父がいるのか?
この国の事情ってヤツか?
いろいろとややこしいな。
それに洗脳ね…
まぁ、俺たちの知った事ではない事は確かだ。

「どうしますか?」

どうしますか?って言われてもな。
殺したら後々、メンドくさそうだしなぁ~

「兵士を殺した後の展開なんて、善悪以前の問題だろう?」
「でしょうね。」

どう転んでも良い展開になってなる訳ない。

「ではここで一つ。提案しても、いいですか?」
「提案?」

立ててた人差し指を奴等に向ける。

「彼らにマスターの魔法の習熟度…レベルアップに協力してもらいましょう。」

習熟のレベルアップ
つまり練習…って事か?

「どうでしょう?」

あの子に会う前に魔法の練習に使ったアレでも使うかな?
俺は、上着のポケットをゴソゴソっとして
ポケットからある物を取り出した
カラフルな色の折鶴だ。
折鶴は、日本人ならば知ってる人多いだろうな
この折鶴に使ってるカラフルなのは、さっき貪り食ってた飴の包み紙で作った折鶴だ。
コレには、一つ一つに何度も暇つぶしに魔法の練習に呪文を掛けては、成功する毎に違う鶴に変えたんだ。
機械作業的にね。
どうやってその練習したかは…
この際、別にどうでもいいか。
つまり、この折鶴一個毎に違う魔法を込めてある。

『追跡』
『隠遁』

とかその他、いろいろ魔法の使い方を覚えたわけだが
その他は~なんだっけ?
あとは、何の魔法を込めたかを忘れた。

「今、それを使いますか?その中には、かなりの魔力が入ってますよ?」
「かなり?」
「ええ、そうです。」
「確かに人1人を始末するのには、多過ぎる量ですね。」

あー、そう言う事なら…

「他にもまだ要らないものがあったような…」

折鶴を飛ばしたい所だったけど。
魔力の量が多いらしい。
だったら、その前にポケットの中のゴミでも飛ばして見るかな?
どんな感じに当たるのか見て見たいからな。

「何か出るかな」

そう思ってポケットから取り出したるは、この手からあふれんばかりの大量の棒!!
…ウソです。
ただ、あのポケットから無限に出て来た。
あの飴を食べた後に残った飴の芯に使われてた棒だよ。
その棒をあのたむろしている連中へ狙いを定める。
正確には、その中の1人の眉間をめがけて投げる。
投げてはみたものの、この一発で当たる自信がないけどな。

パーン

軽い感じの破裂音とともに、ぶつけた棒がその男の眉間に当たると弾け飛んだ。
え?何⁉︎びっくりした。

「…一発で、見事に命中したね。」

何発か試して、その内に当てるつもりだっだんだけど?
棒が当たった男は、当たった衝撃で派手に吹っ飛んでから
倒れて、手足がクピクしてる。
だが…
そこは今どうでもいい。

「サポートによる投擲の補正は、問題ない様ですね。」

手元の画面で何かを操作してる。

「サポート?って事はさっきのは、実力じゃなかったのか?」
「ええ、そうですよ。」

まぁ、分かってるけどね。
死ぬ前に同僚に誘われて一度だけ行った事がある。
あの忘れもしない、ダーツバーで試しに投げた。
見事なまでに全部外れたからな。
何度やっても床とか天井に刺さったな。
最後には店長の頰をかすってたからなぁ…
あまりにも下手すぎるし、店長にはわざとやったんじゃないと疑われたからな。
結果的に同僚と一緒にその店に出禁を食らったんだけど…
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