ハイスペな車と廃番勇者の少年との気長な旅をするメガネのおっさん

夕刻の灯

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7話・人の命《輪廻転生の輪》

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何度も通った店
その店の店主の顔が思い出せない。

「ダメだ。やっぱり、思い出せない。」

この手紙の内容は本当らしい。
店主との会話はほとんどの思い出せるから店の記憶を忘れた訳でもない。
言ってみるならば、そうだな。
思い出せないって言うよりも、靄がかかった様にボヤけてしまう。
そんな感じだな。

「しかし…神様だったとはな。」

手紙の続きを読む。

「私は、神ではありますが…神様っと言っていただくほどの者ではありません。」

相変わらず謙遜するな。
俺がよく店主が作る菓子の事を世界一美味いとか、天下一品だね。
って言ったら…

「志賀さん。そんなに私の事を誉めないで下さい。私は、まだまだ新参の未熟者ですからね。」

っと言っていた。
店主と思い出は、尽きないなぁ。
…顔が思い出せないがな!!
さて、この手紙の続きを読まないとな。

「例え…全知全能たる世界を統べる神だったとしても、全てを思い通りには出来ません。っと言うよりも、出来たとしてもしてはいけないのです。」

思い通りにしてはいけない?
全知全能の神なのにか?

「確かに管理するために必要不可な世界の枠組みを作り出したりする事は出来ます。」

世界の枠組み?

「それは…世界に生まれて死ぬ事、生命あるものの生と死。輪廻転生の輪に囚われた命の連なり、理に摂理と言った法則性のあるものです。」

生と死か…
天国や地獄は、本当にあるのだろうか?

「志賀さんが考えている天国や地獄は、世界や国を構成する文明によって異なりますが…あります。」

あるのか。
…俺の考えが店主に先読みされてる。

「志賀さん。この手紙の内容は、ある程度の予測して書いているんですよ?未来に起きる事の全てを知っている訳では、ありません。」

いや…そう言われてもな。
そのある程度の予測だけでも、一般常識で考えてもかなり難しいと思うんだが?
…この件を深く考えるのは、止めよう。

「先程も書きましたが…いくら全知全能の神であっても、出来ない事があるのは事実なのです。」

さっきも書いてあったが、この出来ない事って言うのは?

「それは…本来の寿命を迎えて、死んだ人間を生き返らせる事です。」

寿命で死んだ人間は、生き返らせない?
寿命で死んでいなければ、生き返らせられるって事か?

「本来の死以外の死とは、イレギュラーな死です。」

相変わらず、考えを先読みされてる。
しかし、そこは気にしたらきりがない。
考えてはいけないんだろうな。
そのイレギュラーな死?
本来の死とどう違うんだ?

「イレギュラーな死を説明する前に本来の死を説明します。
本来…人の命は、長い短いに至るまで事細かに輪廻転生の輪の中に組み込みがされています。」

輪廻転生の輪?

「輪廻転生の輪とは…
人が人の世に産まれ、
己が人生な営みを過ごす、
寿命を迎えて死に、
その後に生まれ変わって再び、
次の人生を過ごす為に人の世に産まれる。
その一連の流れの輪が無限に続き続ける事です。」

確かこの話を昔、誰かに聞いたな。

「そこに他者の意思が入り込む余地など無いのです。
一度死んだ命は、その瞬間にはもうすでに次の命へ向かっている。
だからこそ、一人一人のそれぞれが持つ寿命によって
人の命が終わり死んだのならば、その命を紡ぎ生き返らせる事は出来ないのです。」

だから、死んだ人間生き返らせることが神でも出来ないのか。

「本来の死の説明をしましたから、イレギュラーな死について説明しましょう。」

イレギュラーな死って、一体何の事だ?

「イレギュラーな死とは、先程の輪廻転生の輪で迎える事になる死ではない死です。
輪廻転生の輪の死は、病死や老衰に災害によって死に至る。
他者によって命を奪われる死、つまり殺人もそれに該当します。」

え⁉︎殺人も本来の死に含まれるのか?
だが、そうなると…
イレギュラーな死って、本当に何なんだ?

「イレギュラーな死…それは、神にすら予測する事が出来なかった輪廻転生の輪の綻びによってもたらされる死です。」

輪廻転生の輪の綻び?
全知全能の神でも、予測出来ない?

「本来ならば決して、強固かつ緻密な構成されて組み込まれている輪廻転生の輪に綻びが発生する事などあり得ません。ですが、それが発生する事があります。それは…」

ここでまた手紙のページが終わっている。
次のページをめくらないとな。
そこで、俺はふと疑問に思った。
事故って死んだと思ったら、いきなり異世界に来てしまった。
そして、その直後に手紙が届いたから読んでいる訳だが…
この手紙の内容は、俺には難しくてよくわからないんだが?
なぜ、店主はこんな事を手紙に書いているんだろうか?
そこで、俺はある結論に至った。

「今、この手紙に書いてあるって事は…まさか?」

そう思って、急いでページをめくる。

「この手紙の違和感に気づいたんですね?そうです。
志賀さんは、全知全能の神ですら予想出来なかったイレギュラーな死を迎えた。
極めて稀な存在なのです。」

極めて稀な死を迎えた存在…
それが俺?
確かに俺はあの時に死んだ。
しかし…その死は
たまたま、偶然にくしゃみをした。
たまたま、その時に偶然に道に飛び出して来たあの鹿を避けた。
そして、避けた先がたまたま崖だった。
本当にたまたまだった。
ただそれだけだった。
でも、ただそれだけ…じゃなかったのか?
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