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第一章
第15話 全員集合集合!!?
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何だかいきなりの成り行きから、彼方と天音に拉致…連れられ、妖怪の住む幻妖界へ行くことになってしまった俺!
──というか、来てしまった……!!
「こ…ここが幻妖界──……?」
一体どうやったのか……天狗二人の手を取り、目の前が霧に包まれた──と思ったらこの場に立っていた。
目の前に広がる光景は、夢で見たあの荒れた大地とは違い、広大に広がる巨大な暗い森……?
ここがどこか分からない。
ただ、俺には初めてのはずなのに、この景色も、この独特の空気も……何もかもが懐かしく感じていた。
「──大丈夫か? 宗一郎」
「……え? 何が??」
呆然と森の暗い入り口を眺めていた俺に、天音が心配気に訊いてきたが……何が大丈夫だというのか?
「普通の人間はこの空気が合わないみたいでねぇ。宗一郎も紅牙だとはいえ、しばらく離れてたし……」
……え?
そういうものなのか??
彼方の言葉に、若干焦った俺に今度は、
「神隠しから気がふれちゃって戻ってきた奴の話とか聞かねぇか?」
……二人の話に血の気が引きかけたが、俺は……変化なんてないし、気もしっかりしているつもりだ。
てことは、やっぱり俺は“普通”ではないのか?
改めてガッカリだよ……ある意味。
「だいたい、そういう奴らはここの妖気やら障気やらに耐えられなくて壊れちまうようだな」
「まぁ……人界に帰れただけでも良しとしてほしいとこだよねぇ」
──怖いことをさらっと言う天狗二人に改めて“妖怪”らしさを感じ、言葉を失っていた俺に天音が、
「……さて、行くか! アイツもすぐ来るだろうし」
どこに??
というか、アイツって誰??
俺がその疑問を口に出す前に、
「昔の仲間とこの先の隠れ家で待ち合わせする事になってるから」
そう言って笑顔で暗く不気味な森への入り口を指差す彼方。
いつの間にそんなことになったのかは分からないけど……やっぱり、この森に入るのか。
見るからに危険な感じがする、そんな森の中……まぁ、隠れ家というからにはすぐ見つけられても、難なく行けても意味ないのだろうけど。
ただ、入らずにここに残っても確実に妖怪の餌食になるよな?
──ここまで来てそれはナシだ!!
半ば無理やり覚悟を決めた俺は、歩き出した彼方の後ろについて森へと足を踏み入れる。
すぐ後ろに天音がいてくれるし、もう引き返せない……!
──鬱蒼とした暗い森の中。
迷わず進んでいく彼方を先頭に、俺そして天音は昔の仲間と待ち合わせているという隠れ家に向かう。
だが、道…いや、獣道ですらもない。それこそ、草木をかき分けるように進んでいくような状態だ。
別に山登りというわけではないが、体力を削られるような道のり……というか、体力を削られてるのは俺だけで、天狗二人はあくまでも俺のペースに合わせて歩いている。
しかも先を行く彼方は、一応俺が歩きやすいように道を作りながら歩いてくれている……というのは分かるが、それでも俺はやっとの思いで着いていくだけ。
もうどのくらい進んできたのか、これから先どのくらい進むのかも分からない。
……いや、目的地までどのくらいなのかも知らないけど。
やはり、そう簡単には行き着かないのか?
分かってはいたけど、早くも弱音を吐きそうになる。
そこに追い討ちをかけるかのように、彼方は振り返り、
「宗一郎、この辺は妖獣の類が出たり、一応侵入者が迷うような結界になってるからはぐれないでね?」
そう、笑顔で念を押された。
怖いことを笑顔で言われることには……まだ慣れそうにない。
余計に…というか無駄に恐怖と不安を煽られた気がするよ……?
「本当にとんでもないとこに来ちゃったな……」
ポツリと呟いた俺に、
「まぁまぁ、もうすぐ着くから」
彼方はそう言って微笑むと、再び歩き出した。
その後ろ姿を見る限り、ウキウキにすら見える……。
小さく溜め息をつきつつも、それを見失わないよう必死に着いていく俺。
そんな俺に、
「大丈夫か? もう少しだから頑張れ、宗一郎」
明るく声をかけてくる天音。
まぁ、分かってはいたけど……相変わらず疲れているのは俺だけ。
でも頑張って着いていくしかない!
こんなところで置いて行かれても困るし……!!
二人がいなければ方向も何も分からない──まるで富士の樹海みたいな森だ。
だいたい、歩いても歩いても目的地どころか、まともな道にすら出ない。
……もう! どのくらい広いんだよッ!? この森は!!
もうすぐ、もう少しって……あとどのくらいなんだよ!?
本当にこんなとこに隠れ家なんてあるのか!??
もう、疲れと不安がだんだん苛立ちに変わってきた。
だいたい……あのまま連れてこられたから制服のままだし、唯一の救いはスニーカーだったことくらいだ。
そういえば、荷物もどこかに忘れてきたようで、気づいたら手ぶら……制服のポケットに突っ込んでいた紙袋くらいしか持って来れていなかった。
──そのたいやきも結局、さっき歩いている途中に彼方と半分こしたけど。
「……だいたい…誰の隠れ家なんだよ…ッ」
思わず呟いた俺に、後ろから天音が、
「もちろん、紅牙のさ」
当たり前だと言わんばかりに答える。
── 紅牙の隠れ家か……まぁ、そんな気はしてたけどな。
なんだか鬼ヶ島に行くような気分になってきた……ただし、俺がその鬼らしいけど。
それにしても。
天狗二人は元気だ。
この悪路の中、厚底靴やブーツでその身軽さと体力は流石というべきか。
……いやいや!
俺と、生粋の妖怪と比べるのがそもそも間違いだっ!!
そうだ! せめて休憩しよう!!
「な…なぁ、彼方……?」
意を決して休憩を申し出ようとした俺だが、彼方は笑顔で振り返り、
「着いたよ、宗一郎」
「え……ッ?」
彼方の言葉に顔を上げて見ると、彼方が指差しているその先は……木々が開け、視界も明るい!!
そして、そこには木々に囲まれるように、目的地である隠れ家が……!?
「……これが…紅牙の…?」
俺の呟きに、彼方は笑顔で頷いた。
それは、昔っぽい平屋造りの日本家屋……?
いや、木々に囲まれひっそりと佇む山寺のようだった。
静かで、ある意味趣のある感じ……それは、俺が思い描いていた“鬼の隠れ家”イメージとはかけ離れていた。
「おー、変わってないなぁ! もっと荒れ果ててるかと思ったけど」
そんな天音の感想に、彼方は苦笑をうかべつつ、
「……そうだね、確かに紅牙がいなくなってからずいぶん経つしねぇ。ま、入ろ」
そう言って歩き出すが……ふと、入り口の戸の前で足を止め、
「あ。……もう来てるみたい」
クスッと笑い、俺に戸を開けるよう促す彼方。
何? 何故に……俺が??
不信に思いつつも、その引き戸に手をかけ、恐る恐る開けると──……
「おかえりっ! 紅牙!!」
「ぅわぁっ!??」
開けた戸の向こうから、何者かにガバッと抱きつかれ……その勢いで俺はそのまま押し倒された!
「なっ……!???」
何? 何?? 誰ッ!!??
慌てる俺の上に乗っかっている…というか、抱きついたままの何者かを確認するより先に、ひょいっと俺の上からそいつを退かしながら、
「……相変わらずだなぁ、お前」
そう呆れたように言う天音に対し、
「何すんだよ!? ボクは紅牙との再会を……」
再会の喜び(?)を邪魔され、プンプン怒りながら文句を言っている……少年?
その姿を改めて確認してみると……年齢でいうなら10歳前後くらいだろうか?
明るい栗色のおかっぱ髪に大きな…まるで、夕陽のような色をした瞳の美少年だった。
そして、服装は腿丈で袖のない和服に近いが、少し違う。
ファンタジーに出てくるような……こういうのをアレンジ着物っていうのかな??
人間仕様の妖怪を見慣れてきていただけに、少し新鮮かもしれない。
ようやくそれっぽい格好の奴が出てきたな……。
俺はそんなことを考えつつ二人のやり取りを呆然と眺めていた。
……と、その間。
天音と少年の会話はいつの間にか掴み合いの喧嘩に!?
身長差は関係ないらしい……精神的に同じなら。
そして、それを止めるでもなく笑って見ている彼方。
だが、天音が一言、
「……そう言うけどなっ、コイツ…記憶ないんだぜ!?」
「!? え……嘘でしょ?」
信じられないといった様子で、少年は改めて俺に視線を向けると……今度は俺に掴みかかる勢いで、
「ちょッ……紅牙! ボクだよ、篝だよ!? 本当に忘れちゃったの? ボクのこと…ボクたちのこと……ッ!!」
それは、あまりにも必死な訴えだった。
正直、戸惑うほどに……。
紅牙と友だちだという彼方をはじめ、今まで会った奴らは俺に記憶がないと分かっても、これほどの反応を見せなかった。
それだけに、この少年の反応はあまりにも新鮮で……あまりにも当たり前の、自然なものに思えた。
だけど──……俺はそれに対して、
「……ごめん」
そう答えるしかなかった。
すると、少年はじっと俺を見つめ……
「──まぁ、姿は…ずいぶん小さいし、可愛い感じになってるけど……」
確かに、俺の身長は彼方たちほど高くないし、顔も若干童顔かもしれないけど。
……なんか前にも似たようなこと言われたような気もするが、いったい紅牙とはどんな男だったんだよ?
そんな疑問がよぎる中、少年は少しの沈黙の後……気を取り直すように小さな溜め息をついてから、
「……今の名前はなんていうの?」
急に聞かれ、戸惑いながらも、
「そ……宗一郎…」
そう答えた俺を少年は改めて見つめ、
「覚えてないなら仕方ないね……。宗一郎、ボクは篝。紅牙と同じ、鬼の一族だよ。改めてよろしくね」
そう言って……苦笑混じりの微笑みをうかべた。
「…鬼……?」
この美少年…篝を改めて見てみると、確かにその頭には小さな角が二本……?
──やはり鬼には角が生えているものらしい。
本や伝承のとおり……ではあるが、あそこまでの怖さも、典型的な外見でもない。
角が生えていることと、耳が少し尖っていることくらいか…?
思わず観察するように見ていた俺に、
「ちなみに、コイツはこんなナリしてるが、本当はオッサンだぜ?」
そう天音が付け加えると、
「ボクがオッサンなら天音もだよ! 天音とそんなに変わんないもんっ」
「あ―…まぁ。一応、実年齢は篝が上だけどねぇ……」
篝の言葉に納得する彼方。
え? 実年齢??
あぁ、妖怪だもんな……実年齢と外見は違うか。
少なくとも紅牙がいなくなって17年は経っているのに、こいつらの外見では計算が合わない。
いやいや! 空気読めよ!
ていうか、止めろよ!!
このままでは、第二ラウンドが始まりそうだ……!
もはや、子供の喧嘩だが…流石に止めないと……だよな?
「ちょ…二人とも止め……」
意を決して俺が止めに入った、その時──
「相変わらず賑やかだねぇ」
「!!」
背後から聞こえた声──!
全員の視線が一気に集まった、その先。
こちらに向かい、ゆっくり歩いてくる、あれは……
長身、金色長髪、メガネに黒スーツ
あの(嘘くさい)微笑みをたたえた、妖狐・幻夜の姿があった──。
──というか、来てしまった……!!
「こ…ここが幻妖界──……?」
一体どうやったのか……天狗二人の手を取り、目の前が霧に包まれた──と思ったらこの場に立っていた。
目の前に広がる光景は、夢で見たあの荒れた大地とは違い、広大に広がる巨大な暗い森……?
ここがどこか分からない。
ただ、俺には初めてのはずなのに、この景色も、この独特の空気も……何もかもが懐かしく感じていた。
「──大丈夫か? 宗一郎」
「……え? 何が??」
呆然と森の暗い入り口を眺めていた俺に、天音が心配気に訊いてきたが……何が大丈夫だというのか?
「普通の人間はこの空気が合わないみたいでねぇ。宗一郎も紅牙だとはいえ、しばらく離れてたし……」
……え?
そういうものなのか??
彼方の言葉に、若干焦った俺に今度は、
「神隠しから気がふれちゃって戻ってきた奴の話とか聞かねぇか?」
……二人の話に血の気が引きかけたが、俺は……変化なんてないし、気もしっかりしているつもりだ。
てことは、やっぱり俺は“普通”ではないのか?
改めてガッカリだよ……ある意味。
「だいたい、そういう奴らはここの妖気やら障気やらに耐えられなくて壊れちまうようだな」
「まぁ……人界に帰れただけでも良しとしてほしいとこだよねぇ」
──怖いことをさらっと言う天狗二人に改めて“妖怪”らしさを感じ、言葉を失っていた俺に天音が、
「……さて、行くか! アイツもすぐ来るだろうし」
どこに??
というか、アイツって誰??
俺がその疑問を口に出す前に、
「昔の仲間とこの先の隠れ家で待ち合わせする事になってるから」
そう言って笑顔で暗く不気味な森への入り口を指差す彼方。
いつの間にそんなことになったのかは分からないけど……やっぱり、この森に入るのか。
見るからに危険な感じがする、そんな森の中……まぁ、隠れ家というからにはすぐ見つけられても、難なく行けても意味ないのだろうけど。
ただ、入らずにここに残っても確実に妖怪の餌食になるよな?
──ここまで来てそれはナシだ!!
半ば無理やり覚悟を決めた俺は、歩き出した彼方の後ろについて森へと足を踏み入れる。
すぐ後ろに天音がいてくれるし、もう引き返せない……!
──鬱蒼とした暗い森の中。
迷わず進んでいく彼方を先頭に、俺そして天音は昔の仲間と待ち合わせているという隠れ家に向かう。
だが、道…いや、獣道ですらもない。それこそ、草木をかき分けるように進んでいくような状態だ。
別に山登りというわけではないが、体力を削られるような道のり……というか、体力を削られてるのは俺だけで、天狗二人はあくまでも俺のペースに合わせて歩いている。
しかも先を行く彼方は、一応俺が歩きやすいように道を作りながら歩いてくれている……というのは分かるが、それでも俺はやっとの思いで着いていくだけ。
もうどのくらい進んできたのか、これから先どのくらい進むのかも分からない。
……いや、目的地までどのくらいなのかも知らないけど。
やはり、そう簡単には行き着かないのか?
分かってはいたけど、早くも弱音を吐きそうになる。
そこに追い討ちをかけるかのように、彼方は振り返り、
「宗一郎、この辺は妖獣の類が出たり、一応侵入者が迷うような結界になってるからはぐれないでね?」
そう、笑顔で念を押された。
怖いことを笑顔で言われることには……まだ慣れそうにない。
余計に…というか無駄に恐怖と不安を煽られた気がするよ……?
「本当にとんでもないとこに来ちゃったな……」
ポツリと呟いた俺に、
「まぁまぁ、もうすぐ着くから」
彼方はそう言って微笑むと、再び歩き出した。
その後ろ姿を見る限り、ウキウキにすら見える……。
小さく溜め息をつきつつも、それを見失わないよう必死に着いていく俺。
そんな俺に、
「大丈夫か? もう少しだから頑張れ、宗一郎」
明るく声をかけてくる天音。
まぁ、分かってはいたけど……相変わらず疲れているのは俺だけ。
でも頑張って着いていくしかない!
こんなところで置いて行かれても困るし……!!
二人がいなければ方向も何も分からない──まるで富士の樹海みたいな森だ。
だいたい、歩いても歩いても目的地どころか、まともな道にすら出ない。
……もう! どのくらい広いんだよッ!? この森は!!
もうすぐ、もう少しって……あとどのくらいなんだよ!?
本当にこんなとこに隠れ家なんてあるのか!??
もう、疲れと不安がだんだん苛立ちに変わってきた。
だいたい……あのまま連れてこられたから制服のままだし、唯一の救いはスニーカーだったことくらいだ。
そういえば、荷物もどこかに忘れてきたようで、気づいたら手ぶら……制服のポケットに突っ込んでいた紙袋くらいしか持って来れていなかった。
──そのたいやきも結局、さっき歩いている途中に彼方と半分こしたけど。
「……だいたい…誰の隠れ家なんだよ…ッ」
思わず呟いた俺に、後ろから天音が、
「もちろん、紅牙のさ」
当たり前だと言わんばかりに答える。
── 紅牙の隠れ家か……まぁ、そんな気はしてたけどな。
なんだか鬼ヶ島に行くような気分になってきた……ただし、俺がその鬼らしいけど。
それにしても。
天狗二人は元気だ。
この悪路の中、厚底靴やブーツでその身軽さと体力は流石というべきか。
……いやいや!
俺と、生粋の妖怪と比べるのがそもそも間違いだっ!!
そうだ! せめて休憩しよう!!
「な…なぁ、彼方……?」
意を決して休憩を申し出ようとした俺だが、彼方は笑顔で振り返り、
「着いたよ、宗一郎」
「え……ッ?」
彼方の言葉に顔を上げて見ると、彼方が指差しているその先は……木々が開け、視界も明るい!!
そして、そこには木々に囲まれるように、目的地である隠れ家が……!?
「……これが…紅牙の…?」
俺の呟きに、彼方は笑顔で頷いた。
それは、昔っぽい平屋造りの日本家屋……?
いや、木々に囲まれひっそりと佇む山寺のようだった。
静かで、ある意味趣のある感じ……それは、俺が思い描いていた“鬼の隠れ家”イメージとはかけ離れていた。
「おー、変わってないなぁ! もっと荒れ果ててるかと思ったけど」
そんな天音の感想に、彼方は苦笑をうかべつつ、
「……そうだね、確かに紅牙がいなくなってからずいぶん経つしねぇ。ま、入ろ」
そう言って歩き出すが……ふと、入り口の戸の前で足を止め、
「あ。……もう来てるみたい」
クスッと笑い、俺に戸を開けるよう促す彼方。
何? 何故に……俺が??
不信に思いつつも、その引き戸に手をかけ、恐る恐る開けると──……
「おかえりっ! 紅牙!!」
「ぅわぁっ!??」
開けた戸の向こうから、何者かにガバッと抱きつかれ……その勢いで俺はそのまま押し倒された!
「なっ……!???」
何? 何?? 誰ッ!!??
慌てる俺の上に乗っかっている…というか、抱きついたままの何者かを確認するより先に、ひょいっと俺の上からそいつを退かしながら、
「……相変わらずだなぁ、お前」
そう呆れたように言う天音に対し、
「何すんだよ!? ボクは紅牙との再会を……」
再会の喜び(?)を邪魔され、プンプン怒りながら文句を言っている……少年?
その姿を改めて確認してみると……年齢でいうなら10歳前後くらいだろうか?
明るい栗色のおかっぱ髪に大きな…まるで、夕陽のような色をした瞳の美少年だった。
そして、服装は腿丈で袖のない和服に近いが、少し違う。
ファンタジーに出てくるような……こういうのをアレンジ着物っていうのかな??
人間仕様の妖怪を見慣れてきていただけに、少し新鮮かもしれない。
ようやくそれっぽい格好の奴が出てきたな……。
俺はそんなことを考えつつ二人のやり取りを呆然と眺めていた。
……と、その間。
天音と少年の会話はいつの間にか掴み合いの喧嘩に!?
身長差は関係ないらしい……精神的に同じなら。
そして、それを止めるでもなく笑って見ている彼方。
だが、天音が一言、
「……そう言うけどなっ、コイツ…記憶ないんだぜ!?」
「!? え……嘘でしょ?」
信じられないといった様子で、少年は改めて俺に視線を向けると……今度は俺に掴みかかる勢いで、
「ちょッ……紅牙! ボクだよ、篝だよ!? 本当に忘れちゃったの? ボクのこと…ボクたちのこと……ッ!!」
それは、あまりにも必死な訴えだった。
正直、戸惑うほどに……。
紅牙と友だちだという彼方をはじめ、今まで会った奴らは俺に記憶がないと分かっても、これほどの反応を見せなかった。
それだけに、この少年の反応はあまりにも新鮮で……あまりにも当たり前の、自然なものに思えた。
だけど──……俺はそれに対して、
「……ごめん」
そう答えるしかなかった。
すると、少年はじっと俺を見つめ……
「──まぁ、姿は…ずいぶん小さいし、可愛い感じになってるけど……」
確かに、俺の身長は彼方たちほど高くないし、顔も若干童顔かもしれないけど。
……なんか前にも似たようなこと言われたような気もするが、いったい紅牙とはどんな男だったんだよ?
そんな疑問がよぎる中、少年は少しの沈黙の後……気を取り直すように小さな溜め息をついてから、
「……今の名前はなんていうの?」
急に聞かれ、戸惑いながらも、
「そ……宗一郎…」
そう答えた俺を少年は改めて見つめ、
「覚えてないなら仕方ないね……。宗一郎、ボクは篝。紅牙と同じ、鬼の一族だよ。改めてよろしくね」
そう言って……苦笑混じりの微笑みをうかべた。
「…鬼……?」
この美少年…篝を改めて見てみると、確かにその頭には小さな角が二本……?
──やはり鬼には角が生えているものらしい。
本や伝承のとおり……ではあるが、あそこまでの怖さも、典型的な外見でもない。
角が生えていることと、耳が少し尖っていることくらいか…?
思わず観察するように見ていた俺に、
「ちなみに、コイツはこんなナリしてるが、本当はオッサンだぜ?」
そう天音が付け加えると、
「ボクがオッサンなら天音もだよ! 天音とそんなに変わんないもんっ」
「あ―…まぁ。一応、実年齢は篝が上だけどねぇ……」
篝の言葉に納得する彼方。
え? 実年齢??
あぁ、妖怪だもんな……実年齢と外見は違うか。
少なくとも紅牙がいなくなって17年は経っているのに、こいつらの外見では計算が合わない。
いやいや! 空気読めよ!
ていうか、止めろよ!!
このままでは、第二ラウンドが始まりそうだ……!
もはや、子供の喧嘩だが…流石に止めないと……だよな?
「ちょ…二人とも止め……」
意を決して俺が止めに入った、その時──
「相変わらず賑やかだねぇ」
「!!」
背後から聞こえた声──!
全員の視線が一気に集まった、その先。
こちらに向かい、ゆっくり歩いてくる、あれは……
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あの(嘘くさい)微笑みをたたえた、妖狐・幻夜の姿があった──。
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