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第一章
第16話 異文化コミュニケーション!!?
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ここは妖怪の世界・幻妖界。
結界の張られた暗く、巨大な森──その中にある紅牙の隠れ家に、やっとの思いでたどり着いた俺と元気いっぱいの天狗二人。
そこで待っていたのは紅牙の友人、鬼の篝……で、どうやら天音の言っていたアイツとは篝のことだ。
そして、そこに現れた妖狐の幻夜──。
……なんだけど。
「なんで、幻夜まで来るんだよ……!」
そう! なんで??
俺の疑問を代弁するように言った天音に、
「来ちゃダメかい? せっかく久しぶりに仲間が揃うみたいだからわざわざ来たのに」
「……うぜぇから来んな」
小さく呟く天音。
間違いなく幻夜もこいつらの顔見知り……というか、仲間か。
ただ、このやりとりを見る限り、白叡に引き続き天音も幻夜嫌いなのかな?
……ま、幻夜は気にしてないみたいだけど。
それより、なんで俺らが揃うのが幻夜に分かったんだろう……?
そんな疑問がうかんだのと同時に、
「あぁ……結界かぁ」
彼方の呟くような声が耳に入った。
結界? どういうことだ??
そう聞き返そうと、彼方に視線を移したものの……俺は言葉にするのを躊躇った。
彼方の口調はいつも通りだったけど、幻夜を見ていたその瞳は……いつもと違うように見えたから。
もしかして……星酔の一件?
……あの時、星酔は何も言わなかったけど、彼方は幻夜が絡んでると確信しているはず。
だとしたら、この状況はマズいことになるんじゃ??
彼方のあのキレようを思い出しつつ、一人慌てる俺……!
そんな気持ちを知ってか知らずか、幻夜は微笑みをうかべたまま俺に向かい、
「この森の結界を張ってるのは僕なんだ。だから侵入者の気配で分かるんだ……君たちだってね」
あ、そういうものなんだ?
隠れ家のある森の結界を幻夜が、てことはやはり仲間なんだろうな。
さっき口にできなかった疑問に、幻夜自ら説明してくれたのはありがたいのだが──
それより今は、彼方の方が気になるんですけど……!?
「……にしては早かったな」
舌打ち混じりに言う天音に、
「君らが遅かったんだよ」
……それはもしかしなくても、俺のせいか?
たぶん、彼方たちだけならもっと早く到着してただろうから。
幻夜に図星をつかれ、ムッとする天音。
そして、ちょっとヘコんだ俺。
だが、幻夜はそんな俺らを半ば無視し、改めて彼方に微笑みながら、
「もちろん、お土産も持参したよ」
そう言ってデカい風呂敷包みを見せた。
……いや、今はそんなことどうでもいい!
幻夜は彼方があれだけ怒っていた要因かもしれないんだぞ!?
──……だが
「わぁ…! 何?? とりあえず中入ろっ」
ぱぁっと笑顔で喜ぶ彼方……。
おいおいおい……! いいのかよ、それで!!?
さっきのマジ顔はなんだったんだよッ!?
俺の心配と焦りはどうしてくれるんだ!!!
……あまりの切り替えの速さに脱力する俺。
さらに、
「もちろん、宴の準備もしてあるよ」
そう言って微笑む篝に、喜ぶ天狗二人。
なんだか…俺、すごく疲れたよ……?
──てなわけで。
篝に背を押されるように、半ば無理やり中に入ったものの……
紅牙の隠れ家、というからどんなものかと思ったが、意外に質素。
というか、必要最小限と思われるような物しかない。
まず土間があって、広い板の間の真ん中に囲炉裏…には篝の言うとおり、大きな鍋を始め、宴の準備ばんたんな感じ……?
そして、板の間の奥にも何室かありそうで、外からの見た目より家の中は随分広い印象を受ける。
「どう? 懐かしいでしょ??」
篝が俺を見上げて言うが……
「う…うん……」
俺は曖昧で形ばかりの返事しか返せなかった。
確かに、懐かしいといえばそうかもしれないけど……これが紅牙の記憶によるものなのだって断言はできないし。
「わぁ~、いい匂いだねぇ」
俺の後ろから入ってきた彼方が嬉しそうにそう言うと、篝も笑顔で、
「うん、ここに来る途中、ちょうど良い大きさの熊がいたから」
「えっ!?」
はぁ!?
熊を捕まえたのか!? そして、その熊を……?
まさかそこにある鍋……熊鍋かッ!??
あまりにもにこやかに……とんでもないことを言う篝に、俺が動揺していると、
「熊……きらい?」
篝が上目遣いで聞いていた。
いやいや、そんな表情されても……ッ
「き…嫌いも何も……食べたことないし…っ! というか、幻妖界にも熊がいるのかよ!??」
篝の大きな瞳から逃れるように、彼方に視線を移すと……
「いるよ。他にも人界の動物はだいたいいると思うけど……でも、まぁ…向こうよりもっと野性的な感じかな?」
それは……野性的っていうか、野性だろ…元から。
たぶん、彼方の言う野性的ってのは……狂暴ってことか!?
妖怪だけでなく、野生動物にも絶対出会ってはいけない!!
俺は心に固く誓った……。
……と、そこに、
「そんな事より、酒はッ??!」
俺らの話を遮るように、天音が割って入ってきた……!
そんな天音に、篝は苦笑混じりに小さく溜め息をつくと、
「……飲みたかったら、天音も手伝って」
「はいはい」
流石に素直に従い、いそいそと篝について(主に酒の)準備を手伝う天音。
「ほら、上がって?」
「う……うん」
後ろから幻夜に促され、彼方に続いて上がってはみたもの……
俺……どうしたらいいんだ?
その場に立ち尽くす俺に、
「宗一郎はここね」
彼方に勧められ、とりあえず、囲炉裏を囲むようにセッティングされた席に座る。
でも、紅牙(自分?)の隠れ家にきたとはいえ、他人の家同然で……どうも居心地が悪い。
キョロキョロと周りを見渡すくらいしか、することがない。
「で、どうだい? 久々の隠れ家は」
幻夜が俺の横に座りながら聞いてきたが、
「いや……そう言われても……」
何とも答えようがない。そんな俺に、
「そこは紅牙がいつも座ってた席だよ」
そう言って彼方は微笑む。
……いわゆる、上座ってやつだな。
なんだか申し訳ない気もするけど……。
……そうこうするうちに、篝と天音も席に着く。
俺から見て左から彼方、天音、篝、幻夜で囲炉裏を囲む。
おそらく、これがこいつらの定位置なのだろう。
そして、“宴“がスタートした──。
……ていうか。
これは、口にしても大丈夫なんだろうか??
見た目は普通だけど……ここは妖怪の住む幻妖界、何が入ってるか分からない!?
別に篝を…こいつらを信用していないわけではないけど、どうかな?
一応、熊鍋の他にもいろいろあるけど……
「大丈夫だと思うよ? 口に合うかは……とりあえず食べてみたらいいんじゃないかな?」
そう言って幻夜は熊鍋を取り分け、俺に手渡してくれた。そして、
「あ、僕の持ってきたのも良かったら食べてみて?」
そう笑顔で勧めてくれたのは、幻夜の手土産──デカい三段重にびっしり入った“いなり寿司”だった。
“幻夜=妖狐=キツネ”
……ということは、これは本場仕込みの“いなり寿司”?
とりあえず、すでにそのうちの二段分は彼方に手渡されていた。
「……彼方ちゃんは…相変わらず細いのによく食べるねぇ」
篝はそう感心…いや、半ば呆れるように言い、
「幻夜くんがおいなりさん持ってきてくれて助かったよ……ここにあるのだけじゃ足りなくなっちゃうとこだったからねぇ」
相変わらずの口調だが、手元では天音との熊肉争奪真剣バトルが繰り広げられている……!?
……でも…まぁ、確かにな。
すでに彼方の抱えているいなり寿司一段目は……もうほとんど残ってない。
だが、彼方の食べっぷりも“妖怪”だし……と思って納得してたんだけど、
「おい、彼方がおかしいんだからな? 一緒にするなよ?」
天音がタイミング良く俺の考えを否定しながらも、篝から肉を奪い取る。悔しがる篝!
そして、それを微笑みをうかべ見守りつつ……慣れた様子でしっかり自分の分を確保している幻夜。
──……まぁ、とりあえず。
俺も幻夜が取ってくれた熊鍋に口をつけてみようか……?
森を延々歩かされて腹も減ってるし?
せっかくだし、な?
そう自分に言い聞かせつつ、恐る恐る口へ……
…………
──……ん? あ……れ?
美味い……かも…!?
それに、何だか懐かしい味のような気さえする……?
「おいしい?」
もごもごといなり寿司を食べながら様子を伺うように聞いてきた彼方に、俺は素直に頷く。
それを見た彼方…そして他三人からも、優しい笑顔がこぼれていた──。
結界の張られた暗く、巨大な森──その中にある紅牙の隠れ家に、やっとの思いでたどり着いた俺と元気いっぱいの天狗二人。
そこで待っていたのは紅牙の友人、鬼の篝……で、どうやら天音の言っていたアイツとは篝のことだ。
そして、そこに現れた妖狐の幻夜──。
……なんだけど。
「なんで、幻夜まで来るんだよ……!」
そう! なんで??
俺の疑問を代弁するように言った天音に、
「来ちゃダメかい? せっかく久しぶりに仲間が揃うみたいだからわざわざ来たのに」
「……うぜぇから来んな」
小さく呟く天音。
間違いなく幻夜もこいつらの顔見知り……というか、仲間か。
ただ、このやりとりを見る限り、白叡に引き続き天音も幻夜嫌いなのかな?
……ま、幻夜は気にしてないみたいだけど。
それより、なんで俺らが揃うのが幻夜に分かったんだろう……?
そんな疑問がうかんだのと同時に、
「あぁ……結界かぁ」
彼方の呟くような声が耳に入った。
結界? どういうことだ??
そう聞き返そうと、彼方に視線を移したものの……俺は言葉にするのを躊躇った。
彼方の口調はいつも通りだったけど、幻夜を見ていたその瞳は……いつもと違うように見えたから。
もしかして……星酔の一件?
……あの時、星酔は何も言わなかったけど、彼方は幻夜が絡んでると確信しているはず。
だとしたら、この状況はマズいことになるんじゃ??
彼方のあのキレようを思い出しつつ、一人慌てる俺……!
そんな気持ちを知ってか知らずか、幻夜は微笑みをうかべたまま俺に向かい、
「この森の結界を張ってるのは僕なんだ。だから侵入者の気配で分かるんだ……君たちだってね」
あ、そういうものなんだ?
隠れ家のある森の結界を幻夜が、てことはやはり仲間なんだろうな。
さっき口にできなかった疑問に、幻夜自ら説明してくれたのはありがたいのだが──
それより今は、彼方の方が気になるんですけど……!?
「……にしては早かったな」
舌打ち混じりに言う天音に、
「君らが遅かったんだよ」
……それはもしかしなくても、俺のせいか?
たぶん、彼方たちだけならもっと早く到着してただろうから。
幻夜に図星をつかれ、ムッとする天音。
そして、ちょっとヘコんだ俺。
だが、幻夜はそんな俺らを半ば無視し、改めて彼方に微笑みながら、
「もちろん、お土産も持参したよ」
そう言ってデカい風呂敷包みを見せた。
……いや、今はそんなことどうでもいい!
幻夜は彼方があれだけ怒っていた要因かもしれないんだぞ!?
──……だが
「わぁ…! 何?? とりあえず中入ろっ」
ぱぁっと笑顔で喜ぶ彼方……。
おいおいおい……! いいのかよ、それで!!?
さっきのマジ顔はなんだったんだよッ!?
俺の心配と焦りはどうしてくれるんだ!!!
……あまりの切り替えの速さに脱力する俺。
さらに、
「もちろん、宴の準備もしてあるよ」
そう言って微笑む篝に、喜ぶ天狗二人。
なんだか…俺、すごく疲れたよ……?
──てなわけで。
篝に背を押されるように、半ば無理やり中に入ったものの……
紅牙の隠れ家、というからどんなものかと思ったが、意外に質素。
というか、必要最小限と思われるような物しかない。
まず土間があって、広い板の間の真ん中に囲炉裏…には篝の言うとおり、大きな鍋を始め、宴の準備ばんたんな感じ……?
そして、板の間の奥にも何室かありそうで、外からの見た目より家の中は随分広い印象を受ける。
「どう? 懐かしいでしょ??」
篝が俺を見上げて言うが……
「う…うん……」
俺は曖昧で形ばかりの返事しか返せなかった。
確かに、懐かしいといえばそうかもしれないけど……これが紅牙の記憶によるものなのだって断言はできないし。
「わぁ~、いい匂いだねぇ」
俺の後ろから入ってきた彼方が嬉しそうにそう言うと、篝も笑顔で、
「うん、ここに来る途中、ちょうど良い大きさの熊がいたから」
「えっ!?」
はぁ!?
熊を捕まえたのか!? そして、その熊を……?
まさかそこにある鍋……熊鍋かッ!??
あまりにもにこやかに……とんでもないことを言う篝に、俺が動揺していると、
「熊……きらい?」
篝が上目遣いで聞いていた。
いやいや、そんな表情されても……ッ
「き…嫌いも何も……食べたことないし…っ! というか、幻妖界にも熊がいるのかよ!??」
篝の大きな瞳から逃れるように、彼方に視線を移すと……
「いるよ。他にも人界の動物はだいたいいると思うけど……でも、まぁ…向こうよりもっと野性的な感じかな?」
それは……野性的っていうか、野性だろ…元から。
たぶん、彼方の言う野性的ってのは……狂暴ってことか!?
妖怪だけでなく、野生動物にも絶対出会ってはいけない!!
俺は心に固く誓った……。
……と、そこに、
「そんな事より、酒はッ??!」
俺らの話を遮るように、天音が割って入ってきた……!
そんな天音に、篝は苦笑混じりに小さく溜め息をつくと、
「……飲みたかったら、天音も手伝って」
「はいはい」
流石に素直に従い、いそいそと篝について(主に酒の)準備を手伝う天音。
「ほら、上がって?」
「う……うん」
後ろから幻夜に促され、彼方に続いて上がってはみたもの……
俺……どうしたらいいんだ?
その場に立ち尽くす俺に、
「宗一郎はここね」
彼方に勧められ、とりあえず、囲炉裏を囲むようにセッティングされた席に座る。
でも、紅牙(自分?)の隠れ家にきたとはいえ、他人の家同然で……どうも居心地が悪い。
キョロキョロと周りを見渡すくらいしか、することがない。
「で、どうだい? 久々の隠れ家は」
幻夜が俺の横に座りながら聞いてきたが、
「いや……そう言われても……」
何とも答えようがない。そんな俺に、
「そこは紅牙がいつも座ってた席だよ」
そう言って彼方は微笑む。
……いわゆる、上座ってやつだな。
なんだか申し訳ない気もするけど……。
……そうこうするうちに、篝と天音も席に着く。
俺から見て左から彼方、天音、篝、幻夜で囲炉裏を囲む。
おそらく、これがこいつらの定位置なのだろう。
そして、“宴“がスタートした──。
……ていうか。
これは、口にしても大丈夫なんだろうか??
見た目は普通だけど……ここは妖怪の住む幻妖界、何が入ってるか分からない!?
別に篝を…こいつらを信用していないわけではないけど、どうかな?
一応、熊鍋の他にもいろいろあるけど……
「大丈夫だと思うよ? 口に合うかは……とりあえず食べてみたらいいんじゃないかな?」
そう言って幻夜は熊鍋を取り分け、俺に手渡してくれた。そして、
「あ、僕の持ってきたのも良かったら食べてみて?」
そう笑顔で勧めてくれたのは、幻夜の手土産──デカい三段重にびっしり入った“いなり寿司”だった。
“幻夜=妖狐=キツネ”
……ということは、これは本場仕込みの“いなり寿司”?
とりあえず、すでにそのうちの二段分は彼方に手渡されていた。
「……彼方ちゃんは…相変わらず細いのによく食べるねぇ」
篝はそう感心…いや、半ば呆れるように言い、
「幻夜くんがおいなりさん持ってきてくれて助かったよ……ここにあるのだけじゃ足りなくなっちゃうとこだったからねぇ」
相変わらずの口調だが、手元では天音との熊肉争奪真剣バトルが繰り広げられている……!?
……でも…まぁ、確かにな。
すでに彼方の抱えているいなり寿司一段目は……もうほとんど残ってない。
だが、彼方の食べっぷりも“妖怪”だし……と思って納得してたんだけど、
「おい、彼方がおかしいんだからな? 一緒にするなよ?」
天音がタイミング良く俺の考えを否定しながらも、篝から肉を奪い取る。悔しがる篝!
そして、それを微笑みをうかべ見守りつつ……慣れた様子でしっかり自分の分を確保している幻夜。
──……まぁ、とりあえず。
俺も幻夜が取ってくれた熊鍋に口をつけてみようか……?
森を延々歩かされて腹も減ってるし?
せっかくだし、な?
そう自分に言い聞かせつつ、恐る恐る口へ……
…………
──……ん? あ……れ?
美味い……かも…!?
それに、何だか懐かしい味のような気さえする……?
「おいしい?」
もごもごといなり寿司を食べながら様子を伺うように聞いてきた彼方に、俺は素直に頷く。
それを見た彼方…そして他三人からも、優しい笑顔がこぼれていた──。
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