日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨

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第95話 ゴブリン掃討戦 戦車前へ!

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 ボルの村を出発した車列は、九五式軽戦車、九七式軽装甲車、一式装甲兵車の順に進み、馬車2台は、その後ろを進んだ。

 馬を労わるために馬車が早く進めないため、全体では、人の小走り程度の速度しか出すことができない。

 だから、歩いて半日行程のゴブリンの巣までは、四分の一日行程ということになる。

 それでも、途中の大休止を挟んで森の中の小路を進み、4時間ほどでゴブリンの巣間近の池のほとりまで到達した。

 車列は、前面の木立が途切れる寸前で停止をした。

 前方は木立が途切れ、左手が林、右手が池になっていて、数百メートル前方には、丸太を地面に建てた塀と門が見えた。

「あれがゴブリンどもの巣ってやつか。」

 先頭を行く軽戦車の車長、小野塚少尉が双眼鏡を覗いて呟いた。

 前方の塀までの間は、草原になっていたが、左方の林は途切れることはなく、伏兵を置くにはあつらえ向きと思われた。

 小野塚のヘッドセットが「ジジッ」っと鳴り、続けて

「塚、ヅカ、ヅカ、こちらアサ。前方左側には敵兵アリの公算大。軽装甲とともに前進して敵の待ち伏せを叩け。終ワリ、送レ。」

と朝日から無線で指示が入った。

「朝、アサ、アサ、こちらヅカ。了解した、軽装甲とともに前進する。終ワリ。」

 小野塚は朝日に返答した後、軽装甲の車長である小牛田曹長に無線で指示を出した。

「小牛、コゴ、コゴ、こちらヅカ。敵の待ち伏せに注意しつつ前進、会敵次第掃討する。速度5、車距離10、前進せよ、前へ!」

 軽戦車と軽装甲車は、それぞれディーゼルの排気を吐き出し、履帯を軋ませながら前進を始めた。

 2輌が木立を抜け、草原をゆっくりと前進して行った。

 小野塚は、砲塔を左へ回し、37ミリ戦車砲の照準眼鏡を覗いて左方の林を観察していたが、朝日大尉の言うとおり、どうにも怪しい。

 彼は、車体の向きはそのままに、砲塔を反対の右に旋回させ、砲塔後部の機関銃を林に向けた。

 ダダダダダダダダ…

 銃弾が、左から右へ、木立の下部を舐めるようにして林の中へ飛び込んで行く。
 軽戦車の発砲を見た軽装甲も、砲塔を左へ回して、機銃掃射を開始した。

 すると、予想どおり、林の中から無数の矢が、軽戦車と軽装甲に向けて飛んで来た。

 カッカッカッカッ…

 軽戦車と軽装甲の車体に命中したたくさんの矢が、弾かれてあちこちに跳ね返って行った。

「右側からも矢の飛来あり!」
「何ッ!」

 前方機関銃手の報告で、小野塚は、右に向いている戦車砲の単眼式照準眼鏡を覗いた。

 照準眼鏡に浮かび上がった右側の池の水面には、50~60mほどの距離に流木にしては不自然な丸太が一本浮いており、よく見ると、その後ろ側から、ゴブリンが見え隠れしながら矢を射ているのが確認できた。

 こうして軽戦車と軽装甲は、左の林と右の池の両側から、無数の矢に射かけられることになった。

「ほう、奴ら考えやがったな。」

 小野塚は呻く様に呟き、37粍砲の閉鎖機を開け砲弾を装填すると、照準を手早く丸太の中央付近に合わせ、右手で撃発機の引き金を引いた。

 ドンッ

 37粍砲が火を吐き砲身が後退すると、尾部の閉鎖機が自動的に開き、薬莢受けに空薬莢が「カラン」と音を立てて落ちて行った。

 小野塚の狙いは正確で、照準のとおり丸太の中央付近に37粍砲弾が命中し、丸太はそこで二つに折れて別々に漂い始めた。

 すると、丸太の陰に隠れて矢を放っていた20匹ほどのゴブリンが、矢を射ることはそっちのけで、あるいは慌てて漂っている丸太に隠れようとしたり、あるいはこれにすがり付こうともがき始めた。

 その状況に気付いた軽装甲が砲塔を反転させ、このゴブリンたちに照準を合わせて素早く機銃掃射すると、ゴブリンは次々と撃ち据えられ、水面が真っ赤に染まって行った。

「鬼心来々仏心無用。魑魅魍魎、鬼畜生、化け物の類だこいつらは。」

 軽装甲の小牛田曹長は、自ら放った機関銃弾に射殺されて行くゴブリンたちを見ながら、自分に言い聞かせるように呟いた。

 右の方、池側のゴブリン掃討を終えた軽戦車と軽装甲は、今度は左側、林の方のゴブリン掃討に取り掛かった。

 2輌とも、方向を左に転回し正面を林に向け、機銃掃射を加えながら距離を詰めて行った。

 始めのうちは結構な数が飛来した矢であるが、当然ながら軽戦車と軽装甲に通用するはずもなく、機関銃弾に撃ち据えられるゴブリンの数が増すとともに段々と数が少なくなって行った。

 と、ある瞬間、一匹のゴブリンが木立の間を抜け、巣の方向へ逃げ出したかと思うと、残りのゴブリンたちも後を追う様に算を乱して逃げ出した。

 こうなるとこれらのゴブリンは、射撃の格好の的となり、再び方向を巣の方へ転回した軽戦車と軽装甲の追い討ちを受けることになった。

 一目散に巣の方を目指すゴブリンたちは、後方からの軽戦車と軽装甲の機関銃弾を浴び次々と斃れて行き、生き残ったゴブリンも、やがて速度を上げた2輌に追い付かれ、履帯の下に踏み拉かれて、次々と息絶えて行った。

 日本軍将兵たちは、前線での壮絶な撃ち合いや、米軍相手に一方的に撃ちまくられたりした経験があるので、こうした状況は見聞していたが、エルフの戦士たちにとっては、戦闘経験はあっても、ゴブリン相手とはいえ、ここまで凄惨な戦闘は未経験であって、目を背ける者もいた。

 差はさて置き、徒歩部隊が乗車した後方の装甲兵車と自動貨車、それにエルフの戦士が乗った2台の馬車も、頃は良しとばかりに林を抜けて、ゴブリンの巣の方角へ前進を始めた。

 装甲兵車が、やや速度を上げて軽戦車と軽装甲に追い付こうとしたとき、今度は、柵の上からゴブリンたちが現れて、矢を放ち始めた。

 屋根に覆いがないオープントップの装甲兵車は、文字通り弓なりに放たれた矢が上から降りかかる虞があり、自動貨車も同様であるため、いったん距離を置いた。

 これは、幌が掛けられただけの馬車も同じで、いったん停止せざるを得ず、結局、また、装甲に覆われた軽戦車と軽装甲が前面に出る形となった。

「やはり、戦車は頼りになるな。」

 朝日を始め、将兵たちはそう思った。
 
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