日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨

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第96話 洞窟突入 エルフ救出

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 九五式軽戦車と九七式軽装甲車は、丸太の塀との間隔をいったん200mほどで固定した。
 あまり接近し過ぎても、却って射界が狭められてしまうからである。

 兵の外側からの機銃掃射は、銃弾が飛来するとゴブリンが塀の陰に隠れてしまい、あまり効果がない。
 ただ、ゴブリンたちの頭を下げさせる効果はあった。

 ドンッ

 ドンッ

 小野塚は、続け様に37粍主砲を発射し、塀の数か所を途中からへし折ったが、ゴブリンは、また別の場所から矢を射かけて来る。

「面倒臭ぇー!」

 彼はそう独り言ちると

「小牛、コゴ、コゴ、こちらヅカ。門内に進入する、後に続け。突入せよ、前へ!」

と軽装甲車の小牛田曹長に指示し、自分は操縦士の両肩に置いていた足でその肩を蹴飛ばし、前進の合図をした。

 砲を痛めないように砲塔をぐるりと後ろに回し、小野塚の軽戦車は速度を上げて、丸太の杭が扉になっている門に体当たりをすると、扉は門ごと崩壊して地面に倒れた。

 倒れた門と扉を踏み拉きながら、軽戦車と軽装甲は門の中へ進入し、軽戦車は、柵の内側でゴブリンの弓兵が乗っている台の付け根を、足払いを掛ける様に崩して行った。

 地面に落ち、悲鳴を上げて逃げ惑うゴブリンたちを、軽装甲の機関銃が狙い撃ちし、次々と掃討して行った。

 弓なりに飛来する矢の脅威がなくなったことから、装甲兵車、自動貨車、馬車も、それぞれ柵の内側へ進入し、乗車していた兵を降ろした。

 兵たちが、塀の内側で生存していたゴブリンを掃討し終えたころ

「ギガントゴブリンが出たぞ!」

と誰かが叫ぶ声が聞こえた。

 ゴブリンの巣の洞窟から、背丈が洞窟入り口ギリギリの大きさ程もある、棍棒を手にしたギガントゴブリンが現れた。

「全員、装甲車輛の後方へ下がれ、軽機と噴進砲は前へッ!」

 朝日大尉と鹿島少尉が交々に命令する。

 現れたギガントゴブリンは全部で4体で、小野塚は、最後の4体目が洞窟から表に出る前に、最初のギガントゴブリンの腹部に主砲の照準を合わせ、そのまま発砲した。

 ドンッ

 狙いどおり、砲弾はギガントゴブリンの臍の辺りに命中、背中まで貫通し血飛沫を上げた。

 そのギガントゴブリンは
 
「ンガーッ!」

という雄叫びを上げるとうつ伏せに倒れ、動かなくなった。

 2番目のギガントゴブリンは、洞窟から現れると同時に、ありとあらゆる銃の集中射撃を顔面に受け、雄叫びを上げる間もなく絶命し、その場に倒れた。

 3番目のギガントゴブリンは、徒歩兵とエルフ戦士の方へ向かおうとしたが、ちょうど、装甲兵車から降りた噴進砲操作員の兵長が弾込めを終えたところに出くわしてしまい、噴進砲弾で上半身を吹き飛ばされてしまった。

 残る一体は、それでも逃げようとはせず、最も弱体と見たのか、これもエルフの戦士に向かって行こうとしたものの、途中で軽装甲の銃撃で左足の甲を撃ち抜かれ、立ち止まったところを小野塚に37粍砲で狙い撃ちされ、頭部が飛散して動かなくなった。

 ギガントゴブリンは、ゴブリンたちにとっては、言わば切り札であったと見え、全部が斃されてしまうと、洞窟の中のゴブリンの動きが止まってしまった。

「軽装甲を先頭に洞窟内へ進入する。前へ!」

 朝日の命令で、小牛田の軽装甲車を先頭に挺身兵や歩兵、エルフの戦士たちと軽戦車が続いた。

「ゲホッゲホッ。」

 軽装甲と軽戦車の排気で、多くの者が咳き込んでいる。

「そうか、戦車と軽装甲の排気までは頭が回らなかったな。」

 朝日が、自分も咳き込みながら呟いた。

 軽装甲の前照灯が前方を照らしているが、思うように視界が得られない。

 まごついているところに一人のエルフの若者が進み出て、汎用魔術「照度の理」を使い、前方を照らしてくれた。

 魔術は、「言葉の理」以来である。

 灯りを得た朝日隊は、奥へと進んで行った。

 洞窟は、所々に広間のような空間があり、そこは大抵、左右にも通路があって、突き当りには部屋があった。

 日本兵とエルフ戦士たちは、その部屋を一つ一つ確認し、隠れたゴブリンがいないか、囚われた人間がいないかを確認して行った。

 3か所目の「広間」を右に曲がった突き当りの「部屋」に、鹿島少尉が入った時、部屋の奥で何かが蠢く気配があった。

「誰だ。」

 鹿島は、着剣した機関短銃を気配の向けながら、慎重に近付いて行った。

「うぐぐぐぐ…」

 気配のほか、呻き声が聞こえる。

 彼がその方向に懐中電灯を向けると、手足に枷をはめられた白い女性の姿が浮かび上がった。

「衛生兵はおるかーッ!」

 鹿島が呼ぶと、赤十字マークがついた衛生用品箱を持った衛生兵と、エルフの若者が一人近寄って来た。

「小鬼の虜囚となった女性1名を発見した。すぐに手当てをしてやってくれ。えーっと、そちらは…。」

 鹿島が衛生兵に同行して来たエルフの方を向くと、そのエルフは

「私は、エルフのエルザでございますが、回復の魔術を少々心得ております。そこの女性、見たところエルフのようでございますが、是非、治療・回復をさせていただきたく存じます。」

と言って、枷をはめられた女性に近寄った。

「あ、女性の方でありましたか。気付かずに失礼しました。いずれ、そういうことであれば、手当などよろしくお願いします。」

 声と立ち居振る舞いから、ようやくエルザが女性と悟った鹿島であったが、言われてみると、体つきなども女性である。

 エルザは、まず、その女性の手足に咬ませてある枷に手を当て、何かを唱えていたかと思うと、しばらくして枷が外れた。

「ははあ、これも解錠の魔術なんだな。」

 傍で見ていた鹿島は思った。

「どうした?」

 後方から朝日の声がしたので鹿島が振り返ると、朝日大尉が鹿島の背中越しに、虜囚の女性を覗き込んでいた。

「はっ、囚われと思われる女性を発見いたしましたので、目下、治療中であります。」

 鹿島が答えると

「よし。衛生兵と何名か護衛の兵を付けて外へ運び出してやれ。ああ、目隠しをしてやるのを忘れるな。暗いところに長期間いると瞳孔が開ききっているから、いきなり外で眩しい光が入ると目が潰れるぞ。」

そう朝日は指示した。
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