日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨

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第97話 ゴブリンヲ殲滅セシメ掃討作戦ハ終了セリ

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【本文】
 白い手拭いで目隠しをされたエルフが、差し回された担架に乗せられ、衛生兵とエルザ、警護の兵とともに洞窟を出て行った。

「やっぱりいたな、囚われた人間が。」

 朝日大尉が誰に言うともなく呟いた。

 本作戦で最も危惧されたのは、ゴブリンが捉えた人間を盾に取ることであったが、幸い、今のところその様子はない。

 だが、エスケリネンによれば、過去、人里を襲ったゴブリンが、盾に人間を縛り付け、文字通りの盾にしたことがあったらしいから、油断はならない。

 広間を5,6か所通り、その度に両側の部屋を確認して前進した朝日隊であったが、ようやくT字路に突き当たった。

 このどちらかに、「女王蟻」の如き頭目か魔導士がいるはずである。

 朝日は、まず、右側の部屋に向かって九七式軽装甲車の前進を命じた。
 小牛田曹長が軽装甲を前進させると、今までの部屋と違って少し頑丈そうな気の壁と扉が設えてあった。  

 機関銃弾を撃ち込むことも考えた小牛田であったが、内側に囚われた人間がいることも考慮し、止めておいた。

 彼は、操縦員の兵長に命じて、ごくゆっくりと軽装甲を前進させ車体の前面でメキメキと壁と扉を押した。

 やがて

 バキッ

という大きな音とともに前方の木の壁が壊れ、崩れて行った。

 前照灯に照らされてボゥッと浮かび上がった部屋の中には、金属片や金属塊が置かれ、炉や金床があった。

 壁際には、剣のほか、棒のようなものが立て掛けて置かれており、よく見ると、それは銃であった。

「武器工房なのか、ここは。」

 小牛田は、信じられないようなものを見た気がした。

 実際、ゴブリンどもの知的レベルを考えると、金属器はともかく、銃を製造できる技術力があるとは、到底考えられない。

 また、銃は、狩猟であれば格別、およそ戦闘であれば、軍隊のような組織がないと役に立たない。

「そういえば、さっき林と池からの挟撃に遭ったとき、連中、妙に組織立っていたな。」

 小牛田の脳裏に、先ほど、巣に突入する前のゴブリン殲滅戦闘が蘇った。

「誰か、畜生同然の奴らを訓練しやがった奴がいる。」

 彼は、そう考えて、現場の状況を持ち歩いている手帳に記録した。
 同時に、ほぼ完成品となっている銃を一丁、持ち帰ることにした。

 その後、部屋の中を丹念に調べ、人質の痕跡がないかどうか調べてから、異常はないものとして、調査を打ち切り、部屋の大きさを利用して軽装甲車を転回させた。

 一方、左側の部屋へは、九五式軽戦車が戦闘になり、こちらも微速で前進して行った。

 すると、突然、前方で何かが光ったかと思うと、サッカーボールくらいの大きさの火球ファイアボールがこちらに向かって飛んできた。

「伏せぇー!」

 朝日大尉と鹿島少尉が同時に命じると、日本兵たちは一斉にその場に伏せた。

 飛んで来た火球は、軽戦車の砲塔前面に当たり、瞬間、ボワッという音を立てて消え去った。

 朝日が、エルフ戦士たちはどうしたかと見渡すと、彼らもそのまま突っ立ていた訳ではなく、それぞれに姿勢を低くしているのが見えた。

 敵の第二撃が来る前に、反撃しなければならない。

 軽戦車の前照灯と、エルフの魔術で照らし出された先には、顔はゴブリンであるが、いかにもなフード付きの衣装を纏った魔術師が立っていた。

 その周囲には、魔術師をガードしているのであろう大柄のゴブリン数匹が立っており、驚くべきかな、銃を装備したゴブリン10匹ほどが膝撃ちの姿勢でこちらを狙っていた。

 ズダダダダーン!

 ゴブリンの銃隊が発砲した。

「うわっ!」

 エルフ戦士の一人が銃弾を左腕に受けた。

「衛生兵!」

 エルザではない、日本の衛生兵が駆け寄って応急手当を始める。

「反撃しろ。総力射、ーッ !」

 37粍戦車砲、全方車載機関銃、軽機関銃を始め、兵隊が携行してしている歩兵銃、機関短銃が一斉に前方に向かって射撃を開始したほか、エルフの戦士たちも、負けじと矢を放っている。

 次弾を装填しようとしていたゴブリン銃兵も、魔術師を守っていた大柄ゴブリンも、凄まじい弾幕の前に、次々と撃ち斃されて行き、一番後方にいたゴブリン魔術師も、急ぎ魔術を詠唱していたが

「畜生め、くたばりやがれ!」

と小野塚少尉が気合を込めて発射した37粍砲弾が胸部を直撃し、体がそこを境目にして、真っ二つになった。

「撃ち方止めぇーッ!」
「撃ち方止めッ!」

 魔術師が撃ち斃されるのを見た朝日と鹿島が何度か叫ぶと、全ての射撃が止んだ。

 換気の悪い洞窟内は、火器の硝煙と戦車の排気が充満し、息も付けない程である。
 部屋の中は、奥に向かってゴブリンの死体が累々と横たわり、先刻の殲滅戦ほどではないにせよ、凄惨な有様である。

「敵、ゴブリンの頭目と思しき魔術師を射殺しました。」
「ゴブリンも全員死亡と思われ、殲滅戦を終了いたしました。」

 鹿島と小野塚が、敬礼して朝日に報告した。

「ご苦労だった。味方に損害はないだろうな。」
 
 朝日の問い返しに

「エルフ戦士に負傷者数名がおりますが、いずれも命に別状はありません。」

 鹿島が答えた。

「よし、帰ろう。詳細な報告は後で良い。」
「はっ!」

 朝日は、エルフの村への帰還を命じた。

 同時に、救出したエルフの女性も気掛かりであったが、まともに話ができる状況にもなく、エルザが付ききりで介抱している。

「とりあえず、一度、エルフの村に帰ってから、だな。」

 ゴブリンヲ殲滅セシメ掃討作戦ハ終了セリ

 朝日は、エルフの里残留部隊にそう無線で打電してから、エスケリネンに口頭伝達する、詳細な報告の内容を考え始めていた。
 
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