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別の世界から来た傲慢たる救世主
実践
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リクはカーティスに連れられ(なおレイラはカーティスから待っている様お願いされ、少し不満げながらたいきしている)、さらに森の中を深く入り込む。今まで登山以外でこの様に森の中へ入ったことがないリクにとって少しばかり心配にさせるものであった。
「この森には少しばかり猛獣がいます」
カーティスは世間話をする様な風になかなかに物騒な話をしてきた。
「カーティスさん。なぜ貴方は、今日はいい天気ですねみたいなノリでその様なことを呟くのです」
「はて?リク様はこれからこの辺にいるような猛獣如きなんか目でもない様な輩と相手することになろうというのですよ」
カーティスは不思議そうな目でリクを見ていた。
「俺まだやる気になってませんが……」
「やる気の問題ではないのですよ」
カーティスは真摯な態度を崩さなかったが、少しばかり品があるとは言えない様に口元を歪ませた。
「人というものは時として、予期せぬものに巻き込まれてしまうもの。いえ、予期できていても巻き込まれてしまうのです。その時人は、さらに望まぬ方向へ進まぬ様抗ねばなりません。それが人というものです。ならば今のうちにその時に、存分に抗うためにも力をつけとく必要がありましょう。力とは時に奪うためにありますが、時に抗うためにあるのです」
「……」
リクは何も答えなかった。ただ無言でその言葉を聞いていた。
「そうこう言っている間にどうやらきたようですね。我々という獲物を見つけて、本能を抑えきれていない猛獣が」
カーティスの言葉をきいて、リクは慌てて周りを見渡す。するとカーティスのいう通り確かにあたりに獣がこちらを睨みつけていた。
その事実にリクに緊張がはしる。この様な状況は経験がない。無理もなかった。
「……リク様。武器を構えなさい。武器を構え、深く呼吸をし、頭をクリーンにし、相手に殺意を向け、相手と対面するのです。今貴方はそれをやらねばなりません」
「!」
カーティスの言葉につられる様にリクはウォルンタースを構えた。カーティスはその事実に満足そうに笑みを浮かべる。
「さあ、実践練習といきましょう」
リクを睨みつけていた獣たちが雄叫びをあげ、肉を食するために、本能のままに、襲いかかってくる。
だがカーティスは喜怒哀楽何ら感情を表に出さずに、流作業で退屈している労働者の様な表情で、獣の一匹の頭を切り落とした。
カーティスの手には短刀が一本あった。無駄な装飾品は一切なく、ただ敵を倒すために必要なものだけが備わったものであった。
「リク様。ご自身が傷つくこと可能性については考える必要はありません。この程度でしたら全くもってそんな可能性はゼロと断言できます。蟻に殺されるかもしれないと考えるようなものです」
カーティスは意識的にか、無意識的にかはわからないが、リクが考えていることを否定する。リクはその指摘に少しばかり驚いたが、すぐにカーティスは今この場でこの様に襲われ、命の危機に晒されている状況に慣れろという意味があることを察した。
そのためにここに連れられていることを理解した。そして身の安全はしっかりと保障すると言ったカーティス。ならばここで何もせず怖がったままは格好がつかない。
リクは一度深く呼吸し、頭をクリーンにし、そして殺意をもって構えた銃の引き金を引いた。
リクが想像したよりも反動はなかった。いや、ほとんど感じなかったと言ってもいいだろう。しかしそれに反して、威力は凄まじいものであった。
魔力が弾の代わりに使われており、そしてその代わりとなる魔力に関してリクは膨大に持っているおかげか、一発一発獣に当たると、その獣の顔がつぶれて、一撃で即死していく。
そのことに驚きがあるが、それを声にすることはなく、リクはもう一度落ち着き、さらに引き金を引く。
するとやはりリクたちに遅いかかる獣はその一発をもって絶命していく。
(いける!)
そう思いさらに踏み込む。だがその意識が敵を倒すというものに向けすぎてしまったせいか、横から襲いかかる獣の存在に気がつかなかった。
「!」
焦りの表情が浮かぶが、一瞬にしてその焦りの原因は排除された。
もちろんカーティスによってである。
「頭をクリーンするということは、冷静に今自分がいる状況をみることです。決して敵を倒すことに意識しすぎることではありません。それも学ぶことでしょうな」
「はい」
素直にリクはそう返事をする。この場においてカーティスは教師の様な立場でリクは教えを乞う生徒。ならばこの様に反応することが正しいとリクは思ったからだ。
再び、頭を冷静にし、周囲をよく観察する。
残っている敵の数はおよそ10。それらは集団となって固まっているのではなく、四方八方襲いかかることができる様にばらけている。
一匹がやられてももう一匹が敵を倒せる様に獣達は立っていた。おそらく本能がそうさせたのだろう。だからさきほどリクは少しばかり肝を冷やす羽目になった。
(次はない!一度しくじったことをもう一度しくじる様なことはしない)
二匹の猛獣がリクに飛びかかる。しかし距離的に言ってもまだ余裕がある。リクは二発の魔力を放つ。それが命中するだけでその二匹は絶命する。だが次が問題だ。一匹がこちらに襲いかかってくるのと同時に、後ろからももう二匹襲いかかってきているのだ。どちらか一方だけならば先程の様に対処することは可能だが、もう一方の対処が遅れてしまう。
リクは前進する。襲いかかる一匹に向かって前進する。銃は使わない。未だ使い慣れていないものを使ってもの仕方がない。
自分に武器があるから、心強いものを持っているからといってそれに固執するのは頭をクリーンにしたとは言い難いことを理解していた。時にそれ以外の方法を持って対応する必要があるのだ。
銃を手にしていない方、詰まるところ左手に意識を集中させる。この森に来る前に行っていたことを思い出す。魔法を、魔力を使いこなすために特訓していたことを思い出す。
リクは未だ碌な魔法を使うことはできない。だが、魔力を集中させ、衝撃を与えることはすでに習得済み。そしてこの場合それだけで十分であった。
前方から襲いかかる獣は飛びながら襲いかかるために地面の間に隙間が生まれていた。リクはその隙間を滑り込みながら、すぐに相手の方へ視線をむけ、魔力弾を放出する。その威力は回避行動と同時であったが故、大したものではなかったが、姿勢を崩すには十分であった。
獣はその衝撃により、そのままもう二匹の方へぶつかり、三匹が固まることになる。
そこでリクは改めて、ウォルンタースは構える。だが、先程の様に魔力による弾丸ではない。使う弾丸は『プレケス』。その弾丸には様々な魔法が込められているものだ。
それを一発三匹に放つ。
着弾するのと同時に、大きな炎が周辺に生まれる。おもわず、その熱風に耐えきれずにリクは顔を庇ったほどだ。
その炎は獣達の蓄えた脂肪にまで火がついたのかさらに火力を増す。
「はは。すげぇ。俺がというより完全にこいつのおかげじゃないか」
「ですが。それほどの武器を扱える貴方様はやはり素晴らしい。その辺の人間であればそいつを満足に扱うことさえできますまい。そういう意味ではやはりリク様の手柄でございましょう」
カーティスはリクの自身の評価に対してフォローを入れるが、残念ながらあまり喜べるものではなかった。
「俺がこいつらを倒すよりも早く、もう半分を倒したカーティスさんに言われてもね……しかもその前の数を入れれば俺の倍は倒している」
苦笑いながらリクは答えた。明らかにカーティスの方が強いと感じている現状。褒められても、大人が子供を褒めている様に思えてしまいどうも素直に喜べなかったのだ。
「ふふ。ですが私はもう老人。ただレイラ様の身の回りの世話をするのがふさわしい。戦闘に加わる様な元気もありませぬ」
「それさっきまで勢いよく短剣で切り刻んでいた人間が言いますか?逆に怖いですよ」
「それはそれは。しかし私はただの年老いた人間です。さて戻りましょう」
ニコニコしながらカーティスはリクに手を伸ばす。リクもその手を取ろうとした。
―――しかしその間に一本の投剣が突き刺さった。
ドンッ!!
その直後リクとカーティスの間に大きな土でできた壁が生まれた。
「なっ!」
「何と!これは!」
二人とも驚きを隠せなかった。しかしそんなことも気にすることなく次々に投剣が突き刺さり、さらに長く壁ができていく。二人が合流するには時間がそれなりにかかる程度の距離だ。
「これは間違いなく魔法!何者かによる攻撃でございます。リク様!気をつけて!すぐに私も参ります!」
カーティスはそう忠告し、すぐにリクに合流する様に動き出そうとした。しかし突如嫌な予感がし、大きく横に飛んだ。
カーティスが元いた場所には大きな穴が空いた。そしてそれは自然発生的なものではなく、生き物が行ったものである。
カーティスの視線の先には、全長2mを超える大きな猛獣、ライオンの様でライオンではない猛獣がそこにはいた。
大きな爪、大きな牙、相当筋力が発達した足。ライオンと言えるかもしれないが、ライオンと大きく異なるのはその背中についている大きな翼であった。
そしてその猛獣の後ろには子分らしき獣が数十匹いた。
そしてその生物達はどこかおかしいものであった。体の構造がおかしいというわけではない。様子がおかしいという意味だ。体の周囲に妙に黒い霧とも言える何か、正直気分を悪くさせる何かがその猛獣達の周囲に漂っていたのだ。
そしてカーティスはこれが何か心当たりがあった。
「……『デスアモル』。なるほどこれは厄介まさかこんなところで遭遇するとは!これではリク様のところへはすぐには向かえない。だが、早くせねば。おそらく向こうにはもっとやっかいな奴がいるはずなのですから!」
カーティスは戦闘体制に入る。早急にこの猛獣を駆除するために動き出した。
「一体何が……」
リクは事態を把握できなかった。突如大きな壁によりカーティスと分断されてしまい戸惑いを感じていた。だがあまりこの場にいることはまずいということは本能的に感じていた。リクはすぐにこの場に離れる様に動き出すために、180度回転した。
そのおかげかリクはこちらにゆったりと近づいてくる大男の存在に気がついた。
年は正確にはわからないが、恐らく40。いや50を超えているだろう。所々皺がある。しかし身長は180㎝おろか190㎝にもなろう大きさであり、筋力も年齢に反し全くもって衰えていない。その証拠に肩周りがゴツく、薄いコートを羽織っており、肌をあまり露出していないにも関わらず相当程度鍛えられていることを一目でわかった。 銀色の短髪。眼鏡をかけているものの、右目には切り傷が大きくあり、そのせいか知的な印象はなかった。
「ははは。いやはや、全くもって愉快だ。愉快!愉快!愉快!クソつまらん『デスアモル』との追いかけっこの先に、何とも素敵な出会いがあるとは。人生とは全くもって愉快なものだ。楽しい日だと思いきや不愉快な日になることもあれば、逆に不愉快な日に限り妙な運というものがついてまわり、それはそれは大変愉快な日にもなる。これだから人生というのは素晴らしい。そうは思わないかい?救世主」
「……誰だ!」
リクはその男から嫌な予感を感じ取ったのか、距離をとり武器を構えた。
「
私のことか?私はただの処刑人。ただのゴミ処理係。人の世にはどうしようもない汚物が生まれてしまう。それを処理することが私の役目。我が名はウィリアム。この世に存在する悪を一切合切差別することなく、討ち滅ぼす者」
その大男、ウィリアムは口元を大きく歪ませながら、誠に不気味な笑みを見せながらリクの問いかけに答えた。
「この森には少しばかり猛獣がいます」
カーティスは世間話をする様な風になかなかに物騒な話をしてきた。
「カーティスさん。なぜ貴方は、今日はいい天気ですねみたいなノリでその様なことを呟くのです」
「はて?リク様はこれからこの辺にいるような猛獣如きなんか目でもない様な輩と相手することになろうというのですよ」
カーティスは不思議そうな目でリクを見ていた。
「俺まだやる気になってませんが……」
「やる気の問題ではないのですよ」
カーティスは真摯な態度を崩さなかったが、少しばかり品があるとは言えない様に口元を歪ませた。
「人というものは時として、予期せぬものに巻き込まれてしまうもの。いえ、予期できていても巻き込まれてしまうのです。その時人は、さらに望まぬ方向へ進まぬ様抗ねばなりません。それが人というものです。ならば今のうちにその時に、存分に抗うためにも力をつけとく必要がありましょう。力とは時に奪うためにありますが、時に抗うためにあるのです」
「……」
リクは何も答えなかった。ただ無言でその言葉を聞いていた。
「そうこう言っている間にどうやらきたようですね。我々という獲物を見つけて、本能を抑えきれていない猛獣が」
カーティスの言葉をきいて、リクは慌てて周りを見渡す。するとカーティスのいう通り確かにあたりに獣がこちらを睨みつけていた。
その事実にリクに緊張がはしる。この様な状況は経験がない。無理もなかった。
「……リク様。武器を構えなさい。武器を構え、深く呼吸をし、頭をクリーンにし、相手に殺意を向け、相手と対面するのです。今貴方はそれをやらねばなりません」
「!」
カーティスの言葉につられる様にリクはウォルンタースを構えた。カーティスはその事実に満足そうに笑みを浮かべる。
「さあ、実践練習といきましょう」
リクを睨みつけていた獣たちが雄叫びをあげ、肉を食するために、本能のままに、襲いかかってくる。
だがカーティスは喜怒哀楽何ら感情を表に出さずに、流作業で退屈している労働者の様な表情で、獣の一匹の頭を切り落とした。
カーティスの手には短刀が一本あった。無駄な装飾品は一切なく、ただ敵を倒すために必要なものだけが備わったものであった。
「リク様。ご自身が傷つくこと可能性については考える必要はありません。この程度でしたら全くもってそんな可能性はゼロと断言できます。蟻に殺されるかもしれないと考えるようなものです」
カーティスは意識的にか、無意識的にかはわからないが、リクが考えていることを否定する。リクはその指摘に少しばかり驚いたが、すぐにカーティスは今この場でこの様に襲われ、命の危機に晒されている状況に慣れろという意味があることを察した。
そのためにここに連れられていることを理解した。そして身の安全はしっかりと保障すると言ったカーティス。ならばここで何もせず怖がったままは格好がつかない。
リクは一度深く呼吸し、頭をクリーンにし、そして殺意をもって構えた銃の引き金を引いた。
リクが想像したよりも反動はなかった。いや、ほとんど感じなかったと言ってもいいだろう。しかしそれに反して、威力は凄まじいものであった。
魔力が弾の代わりに使われており、そしてその代わりとなる魔力に関してリクは膨大に持っているおかげか、一発一発獣に当たると、その獣の顔がつぶれて、一撃で即死していく。
そのことに驚きがあるが、それを声にすることはなく、リクはもう一度落ち着き、さらに引き金を引く。
するとやはりリクたちに遅いかかる獣はその一発をもって絶命していく。
(いける!)
そう思いさらに踏み込む。だがその意識が敵を倒すというものに向けすぎてしまったせいか、横から襲いかかる獣の存在に気がつかなかった。
「!」
焦りの表情が浮かぶが、一瞬にしてその焦りの原因は排除された。
もちろんカーティスによってである。
「頭をクリーンするということは、冷静に今自分がいる状況をみることです。決して敵を倒すことに意識しすぎることではありません。それも学ぶことでしょうな」
「はい」
素直にリクはそう返事をする。この場においてカーティスは教師の様な立場でリクは教えを乞う生徒。ならばこの様に反応することが正しいとリクは思ったからだ。
再び、頭を冷静にし、周囲をよく観察する。
残っている敵の数はおよそ10。それらは集団となって固まっているのではなく、四方八方襲いかかることができる様にばらけている。
一匹がやられてももう一匹が敵を倒せる様に獣達は立っていた。おそらく本能がそうさせたのだろう。だからさきほどリクは少しばかり肝を冷やす羽目になった。
(次はない!一度しくじったことをもう一度しくじる様なことはしない)
二匹の猛獣がリクに飛びかかる。しかし距離的に言ってもまだ余裕がある。リクは二発の魔力を放つ。それが命中するだけでその二匹は絶命する。だが次が問題だ。一匹がこちらに襲いかかってくるのと同時に、後ろからももう二匹襲いかかってきているのだ。どちらか一方だけならば先程の様に対処することは可能だが、もう一方の対処が遅れてしまう。
リクは前進する。襲いかかる一匹に向かって前進する。銃は使わない。未だ使い慣れていないものを使ってもの仕方がない。
自分に武器があるから、心強いものを持っているからといってそれに固執するのは頭をクリーンにしたとは言い難いことを理解していた。時にそれ以外の方法を持って対応する必要があるのだ。
銃を手にしていない方、詰まるところ左手に意識を集中させる。この森に来る前に行っていたことを思い出す。魔法を、魔力を使いこなすために特訓していたことを思い出す。
リクは未だ碌な魔法を使うことはできない。だが、魔力を集中させ、衝撃を与えることはすでに習得済み。そしてこの場合それだけで十分であった。
前方から襲いかかる獣は飛びながら襲いかかるために地面の間に隙間が生まれていた。リクはその隙間を滑り込みながら、すぐに相手の方へ視線をむけ、魔力弾を放出する。その威力は回避行動と同時であったが故、大したものではなかったが、姿勢を崩すには十分であった。
獣はその衝撃により、そのままもう二匹の方へぶつかり、三匹が固まることになる。
そこでリクは改めて、ウォルンタースは構える。だが、先程の様に魔力による弾丸ではない。使う弾丸は『プレケス』。その弾丸には様々な魔法が込められているものだ。
それを一発三匹に放つ。
着弾するのと同時に、大きな炎が周辺に生まれる。おもわず、その熱風に耐えきれずにリクは顔を庇ったほどだ。
その炎は獣達の蓄えた脂肪にまで火がついたのかさらに火力を増す。
「はは。すげぇ。俺がというより完全にこいつのおかげじゃないか」
「ですが。それほどの武器を扱える貴方様はやはり素晴らしい。その辺の人間であればそいつを満足に扱うことさえできますまい。そういう意味ではやはりリク様の手柄でございましょう」
カーティスはリクの自身の評価に対してフォローを入れるが、残念ながらあまり喜べるものではなかった。
「俺がこいつらを倒すよりも早く、もう半分を倒したカーティスさんに言われてもね……しかもその前の数を入れれば俺の倍は倒している」
苦笑いながらリクは答えた。明らかにカーティスの方が強いと感じている現状。褒められても、大人が子供を褒めている様に思えてしまいどうも素直に喜べなかったのだ。
「ふふ。ですが私はもう老人。ただレイラ様の身の回りの世話をするのがふさわしい。戦闘に加わる様な元気もありませぬ」
「それさっきまで勢いよく短剣で切り刻んでいた人間が言いますか?逆に怖いですよ」
「それはそれは。しかし私はただの年老いた人間です。さて戻りましょう」
ニコニコしながらカーティスはリクに手を伸ばす。リクもその手を取ろうとした。
―――しかしその間に一本の投剣が突き刺さった。
ドンッ!!
その直後リクとカーティスの間に大きな土でできた壁が生まれた。
「なっ!」
「何と!これは!」
二人とも驚きを隠せなかった。しかしそんなことも気にすることなく次々に投剣が突き刺さり、さらに長く壁ができていく。二人が合流するには時間がそれなりにかかる程度の距離だ。
「これは間違いなく魔法!何者かによる攻撃でございます。リク様!気をつけて!すぐに私も参ります!」
カーティスはそう忠告し、すぐにリクに合流する様に動き出そうとした。しかし突如嫌な予感がし、大きく横に飛んだ。
カーティスが元いた場所には大きな穴が空いた。そしてそれは自然発生的なものではなく、生き物が行ったものである。
カーティスの視線の先には、全長2mを超える大きな猛獣、ライオンの様でライオンではない猛獣がそこにはいた。
大きな爪、大きな牙、相当筋力が発達した足。ライオンと言えるかもしれないが、ライオンと大きく異なるのはその背中についている大きな翼であった。
そしてその猛獣の後ろには子分らしき獣が数十匹いた。
そしてその生物達はどこかおかしいものであった。体の構造がおかしいというわけではない。様子がおかしいという意味だ。体の周囲に妙に黒い霧とも言える何か、正直気分を悪くさせる何かがその猛獣達の周囲に漂っていたのだ。
そしてカーティスはこれが何か心当たりがあった。
「……『デスアモル』。なるほどこれは厄介まさかこんなところで遭遇するとは!これではリク様のところへはすぐには向かえない。だが、早くせねば。おそらく向こうにはもっとやっかいな奴がいるはずなのですから!」
カーティスは戦闘体制に入る。早急にこの猛獣を駆除するために動き出した。
「一体何が……」
リクは事態を把握できなかった。突如大きな壁によりカーティスと分断されてしまい戸惑いを感じていた。だがあまりこの場にいることはまずいということは本能的に感じていた。リクはすぐにこの場に離れる様に動き出すために、180度回転した。
そのおかげかリクはこちらにゆったりと近づいてくる大男の存在に気がついた。
年は正確にはわからないが、恐らく40。いや50を超えているだろう。所々皺がある。しかし身長は180㎝おろか190㎝にもなろう大きさであり、筋力も年齢に反し全くもって衰えていない。その証拠に肩周りがゴツく、薄いコートを羽織っており、肌をあまり露出していないにも関わらず相当程度鍛えられていることを一目でわかった。 銀色の短髪。眼鏡をかけているものの、右目には切り傷が大きくあり、そのせいか知的な印象はなかった。
「ははは。いやはや、全くもって愉快だ。愉快!愉快!愉快!クソつまらん『デスアモル』との追いかけっこの先に、何とも素敵な出会いがあるとは。人生とは全くもって愉快なものだ。楽しい日だと思いきや不愉快な日になることもあれば、逆に不愉快な日に限り妙な運というものがついてまわり、それはそれは大変愉快な日にもなる。これだから人生というのは素晴らしい。そうは思わないかい?救世主」
「……誰だ!」
リクはその男から嫌な予感を感じ取ったのか、距離をとり武器を構えた。
「
私のことか?私はただの処刑人。ただのゴミ処理係。人の世にはどうしようもない汚物が生まれてしまう。それを処理することが私の役目。我が名はウィリアム。この世に存在する悪を一切合切差別することなく、討ち滅ぼす者」
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