戦う聖女さま

有栖多于佳

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聖教国戦

エピソード24 聖教会戦 VS怪力戦士マルシア

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中へと進んで行くマルシアとアーディルだったが、ドタドタとした世話しない足音が大きくなって、あっという間に周りを重装備の聖騎士団と魔術師団に囲まれた。



「まあ、お誂え向きね。では、各々の役目を果たしましょう」

「はい!」



マルシアとアーディルはにこりと微笑みあうと一転、アーディルは濃い紺色の魔力が満ちた結界魔法を大きく展開して魔法師団を包み込んでしまった。



「わあ」

「なんだ、なんだ」

無秩序に集まっていた聖騎士団員と魔術師団員の中から魔術師団員だけが選り分けられて結界へと引き吊り込まれていくのを、聖騎士団員は驚きの声をあげるだけ。



「さあ、あなた方のお相手は私ですよ。かかって来ないなら、こちらから行きますよ」

マルシアの声に、聖騎士団員たちはグワッと闘志を燃やしてて、



「奴隷巫女の分際で聖教会に楯突こうなどと、自惚れるな」

「お前ごときの魔力で勝てる訳がないだろう」

「泣き言言ってももう遅い!」

たった一人のまだ少女と言ってもおかしくない年頃のマルシアに向かって、本気で斬りかかって向かってくるのが、聖女の護り手である聖騎士だとか、冗談が過ぎる。

聖でも無いし、騎士道にも劣る、何とも情けない集団に、マルシアが半目になって呆れ果てた。



「奴隷巫女と陰で呼ばれ、蔑み侮られていたんだー」

ポツリと言葉が口から溢れ落ちると、胸に怒りの炎が瞬間的に燃え広がった。



「ガッデム!!!!!」

マルシアは自身の拳に覇気を纏わせ、斬りかかってくる騎士たちの剣に向けて、拳を振り抜いた。



ブブブブオーーーーーグァオオオオオーーーーー



拳の風圧で、空気が揺れて暴風のような音が鳴った。



パキンパキンパッキン、バタン



マルシアを取り囲んでは斬りかかってきた聖騎士たちの剣がその衝撃波で折れて薙ぎ倒された。



「まだまだーシュッシュッシュッシュ!」

マルシアはその場でシャドーボクシングよろしくパンチをを繰り出し、その波動で立っていた聖騎士たちは次々と倒れていった。



「何をしている、情けない!」

突然、大きな声が上がり、ブアっとした威圧で衝撃波を往なして、大男が前に進み出てきた。



聖騎士団長にして、教皇の側近、バール=ベリト公爵が前に進み出てきた。

騎士団長を務める位であるから、マルシアの頭ほどもある二の腕、分厚い胸板、見上げるほどの巨体、そんな恵まれた体躯を、トレードマークの真っ赤な鎧と兜を身に纏い、手には大きなブレイブソード。

その剣は魔物から抽出した魔力を込めた魔石を嵌め込み、真っ赤な炎がその刀身を包んでいた魔法剣であった。



ブワンブワンッ

剣を二度振ると、剣から炎が大きく伸びてマルシアの顔に熱風がかかった。



この御方、現教皇と同郷のイースランド王国出身者である。



イースランド旧王族の傍系公爵家出身だったが随分前に聖教国へと一族で移住し、それに伴い聖教国から爵位を授かっていた。



そして、ベリトが聖騎士団長及び当主になった時に、陞爵して聖教国の公爵となったのである。



赤い衣服を好んで着ているのは、教皇の政敵を斬る折りに返り血が目立たないように、そんな噂がまことしやかに流れる程、聖を戴く騎士とは思えぬ後暗い背景を持つ者である。



「南の巫女、お前は従順で献身的、聖女の器に相応しいと思っていたのだがな。

やはり、穢れた平民の血がそんな乱暴者へと変貌させたのであれば、お前なぞを選んだサザランドの落ち度。我がお前の命を屠ることで、今回の不手際の責任としよう。平民ごときがナメるなよ!」



大きな声でマルシアを蔑み、恫喝しつつ、大きく振りかぶった剣を躊躇無くマルシアの脳天目掛けて振り下ろした。



ボウォオオオオオオオオー!!!



剣を包む炎が強く大きくなって、マルシアに襲いかかった。



だが、マルシアは冷静にその剣筋を見切って半歩後ろに下がり体を捩ってやり過ごした。



ガキーーーーーン



ベリトの剣が大きな音を立てて床にめり込んだ。



「チェックメイト!」

マルシアは、素早く拳を構えて、がら空きのこめかみに右ストレートのパンチをお見舞いした。

めり込んだ剣を抜こうとしていたベリトは無防備なこめかみにガードもなくパンチを倉って脳天を揺らして気を失った。

それでも手を緩めず、連打でがら空きの顔やボディーを叩きまくる。



大袈裟な登場シーンよりも短い時間でベリトを打ち取った。



この大陸は大きな戦も無く、ましてや聖教国と言う宗教国家であるから、ベリトが騎士団長とは言え実践に乏しい。

聖騎士団を見かけただけで、どこの国の軍隊も友好的な話し合いに変わるのだ。

彼らは存在すること自体が抑止力、牽制力なのだから。



ベリトが血祭りに上げたのは、結局教皇の力をそごうとした者や取って変わろうとした者、つまり神職者たちで、彼らは一様に非力だった。

非力な神官を何人血祭りに上げようとも、そんなのはのび太とジャイアンの喧嘩みたいなもので、実戦経験なぞにカウントされようも無いものだった。



一方、マルシアは修行部屋でのトレーニングと聖女聖典バトルマンガで、人の弱点を叩くことに躊躇が無い、むしろ全力で倒しにかかっていたので、一方試合の様相で、あっという間にベリトを仕留めたのだった。



「ふ、笑止、口程にもないヤツめ。さあ、次は誰?なんなら纏めてかかってきなさい!負ける気がしません!!」

マルシアの強烈なパンチに気絶し、埃を上げドダーンと言う大きな音を響かせてベリトが床に転がった。

それを片口を上げた歪な笑顔で見下ろしながら、マルシアが大声を上げた。



その声に、二人の対決を取り囲んで見守っていた、聖騎士たちは飛び上がり震え上がって、

「どうか、どうかお許しを。聖巫女マルシア様、我らはもう敵対致しません!!」

そう言うと、全員が膝を突いて頭を垂れ、恭順の意を示したのだった。



「この人たちは善悪で言えば悪側、どうしたものかしら?」

マルシアは、そう呟いたけれども、まあ敵対したら倒せばいいか!と思い直して、



「では、私に従いなさい!」

そう勝ち名乗りを上げた。



「「「は、はっははあー!!!」」」



ここに聖騎士団(悪)はマルシアの傘下となったのだった。

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