5 / 34
第一章 『ベルガレートの迷宮』
第一章5 スキル『略奪』
しおりを挟む
せめて、奪う条件でも書いてあったらなぁ。
ベルガレートの魔導書、最後のページにはこの迷宮のことが書かれていた。
ここは本当にベルガレートの迷宮の最深部らしく、地上へは階段を上がれば辿り着くみたいだ。
まぁここはかなり深いから、一つの階段で地上へは出られないだろうけど。
「アルノアにバレず、この迷宮出られる気がしないな。やっぱ倒すしか……」
殺しに躊躇いがないわけじゃない。恐怖だって感じてるし、俺自身が死ぬ可能性だって十二分ある。
周りを見渡しても、アルノアが近づいてる気配はしない。
事前にあいつがベルガレートだって気付いた理由はいくつかあった。
一つ、俺に身体強化の魔法をかけなかったことだ。あれは身体強化の魔法なんかじゃないってことだ。
二つ、ここまで来るのに、迷いもしなかった。こんな暗い道を迷わない。そしてモンスターも出てこない。違和感がありすぎだろ。
三つ、とっても単純なことだ――子供を連れてボス攻略なんて馬鹿だろ。
「アルノアについて行った過去の俺を呪いたい……」
ってか! あのロリニオンがこんな危険な森に落としたのが悪いだろ!
街で落とせよ、街で!
「ん? あれは」
視界の片隅に、白銀の刀身が見えた。
お? 剣? すごく怪しくない? めっちゃ怪しいんだけど。
「しゅ、収納。……オープン」
ベルガレートの剣っ! わかってた。なんとなくわかってたよ!
「ベルガレートってやつは自己顕示欲の塊か!? あるいは自分の名前を相当気に入ってのか!?」
いや、別に武器として使えるならいいんだけどさ。名前なんてどうでも……。
足音が近づいてきている。この音は……おそらくアルノアだな。デスハウンドはもっと大きいはずだもんな。
「や、やっと見つけた」
「っ……」
「私の思った通り、あなたはここに来た」
嘘だろ、何言ってんだよこいつ。
もしかしてここが略奪条件になる場所……?
「ディア――」
詠唱!? 魔法陣もっ!?
下を見ると、俺を中心に魔法陣の輪が広がっていた。
「オープン……。試すか」
剣の『発射』に魔力を加えて……。
魔力の扱いなんかわからない。だが、感覚に任せて。
「一か八か、だ。アルノアすまん……『発射』ッッッ!」
それはアルノアの二回目の詠唱よりも早かった。
一直線に風を切りながら、剣はアルノアの心臓目掛けて進んだ。
「グ、ハッ! お前、その剣……」
「自分の剣で死ぬのは嫌だろ。じゃあな、魔精霊」
頼む、死んでくれ!
静かになり、周りを見渡せば魔法陣はなくなっていた。
アルノアのいた位置には魔石が置いてある。
収納して、ステータスのところで確認しようした寸前。
〈精霊スキルを確認。スキル『略奪』を獲得可能。獲得しますか?〉
『略奪』ってベルガレートと契約しないといけないんだろ?
でもそうか、今はベルガレートいないんだもんな。え、憑りつかれたりしない?
「一応もらっておくとするか」
〈獲得許可確認。スキル『略奪』を確認。同時に、略奪条件の更新。デスハウンドのスキル『危険察知』と『魔力感知』獲得しました〉
よ、よくわからないけどたくさんスキルが手に入ったな。
これ、ラノベというよりゲームみたいだ。
頭の中に聞こえてくるこの声、可愛い女の子に担当してほしかった気もするが。
「魔力感知って、どういう意味だ? なんにも感じないけど」
なんか近づいてきてる。
あ、感じる。めっちゃ大きい魔力。
「ラスボスのつぎに中ボスって順番おかしいんですけど!?」
一先ず、ベルガレートの剣を収納しておこう。
〈剣スキル『魔力遮断』を獲得しました〉
剣スキル!? あぁ、確かにユルシリアの剣にもスキルついてたな。
剣にもスキルがあるってことは、あんまり投げない方がいいかな。
「持って戦ってみるか?」
そんな簡単じゃないだろうけど。
「ふぅ、来い!」
この先の曲がり角におそらくいる。
「グァアアアアアアッ!」
うるせっ! 思わず、耳を塞いでしまった。それくらい大きな叫び声に、俺は一歩後退りした。
お、オーク!?
「ほ、本物だよな。なんか気持ち悪い……」
後ろには数体のゴブリンがいる。
異世界系の実写化映画が出ても見ないでおこう……。
「と、そんなことより」
気付けば念じることで『倉庫』の中のものを取り出せるようになった。便利!
まぁ最初も「出てこい」で出てきてたしな。
「おもっ! 勇者はこんなの持って戦ってんのかよ」
「ガルゥ、ギャッギャッ!」
気持ち悪いよ……いきなり奇声あげないでほしい。
心臓止まるわ、ほんと。
そんな俺に気付いた一体のゴブリンは、口元を斜めに歪ませた。
そして考える隙を与えることなく、俺の方へと走ってきた。
「ギャッギャッギャッ」
「やば! はやすぎだろっ!」
とりあえず思いっ切り振った剣は、ゴブリンに強い打撃を与えた。
刃が当たってたら返り血浴びてただろうな……。
壁に叩き付けられたゴブリンは、地面についたと同時に魔石へと変わった。
「一体撃破……」
さすがにこの音は気付いたのか、オークがこちらの方へ来た。
これはチャンスじゃないか?
「――収納! んでもって、『発射』ッ!」
剣を一度しまい、再び威力をつけて出した。
オークの胸に狙いを定めて放たれた剣は、
「嘘だろ……」
オークが持っていた斧によって簡単にはじかれてしまう。
勘違いしていたようだ……俺は別に最強になったわけではなかった。
チートスキルをたまたま手に入れ、それに酔ってモンスターを甘く見ていた。
「また死ぬのかよ……」
二度目の人生はのんびり暮らすはずだったのに……スローライフにチートスキルなんて必要ないのに……。くそっ!
俺の目の前には、とっくにオークが立っていた。
振り下ろされた斧は、俺の頭目掛けて容赦なく進んできた。
スローライフのため、まだ死ねない。猫耳少女とも会ってないってのに。
こんなところで死ぬわけには。
「考えろよ、俺っ!」
ベルガレートの魔導書、最後のページにはこの迷宮のことが書かれていた。
ここは本当にベルガレートの迷宮の最深部らしく、地上へは階段を上がれば辿り着くみたいだ。
まぁここはかなり深いから、一つの階段で地上へは出られないだろうけど。
「アルノアにバレず、この迷宮出られる気がしないな。やっぱ倒すしか……」
殺しに躊躇いがないわけじゃない。恐怖だって感じてるし、俺自身が死ぬ可能性だって十二分ある。
周りを見渡しても、アルノアが近づいてる気配はしない。
事前にあいつがベルガレートだって気付いた理由はいくつかあった。
一つ、俺に身体強化の魔法をかけなかったことだ。あれは身体強化の魔法なんかじゃないってことだ。
二つ、ここまで来るのに、迷いもしなかった。こんな暗い道を迷わない。そしてモンスターも出てこない。違和感がありすぎだろ。
三つ、とっても単純なことだ――子供を連れてボス攻略なんて馬鹿だろ。
「アルノアについて行った過去の俺を呪いたい……」
ってか! あのロリニオンがこんな危険な森に落としたのが悪いだろ!
街で落とせよ、街で!
「ん? あれは」
視界の片隅に、白銀の刀身が見えた。
お? 剣? すごく怪しくない? めっちゃ怪しいんだけど。
「しゅ、収納。……オープン」
ベルガレートの剣っ! わかってた。なんとなくわかってたよ!
「ベルガレートってやつは自己顕示欲の塊か!? あるいは自分の名前を相当気に入ってのか!?」
いや、別に武器として使えるならいいんだけどさ。名前なんてどうでも……。
足音が近づいてきている。この音は……おそらくアルノアだな。デスハウンドはもっと大きいはずだもんな。
「や、やっと見つけた」
「っ……」
「私の思った通り、あなたはここに来た」
嘘だろ、何言ってんだよこいつ。
もしかしてここが略奪条件になる場所……?
「ディア――」
詠唱!? 魔法陣もっ!?
下を見ると、俺を中心に魔法陣の輪が広がっていた。
「オープン……。試すか」
剣の『発射』に魔力を加えて……。
魔力の扱いなんかわからない。だが、感覚に任せて。
「一か八か、だ。アルノアすまん……『発射』ッッッ!」
それはアルノアの二回目の詠唱よりも早かった。
一直線に風を切りながら、剣はアルノアの心臓目掛けて進んだ。
「グ、ハッ! お前、その剣……」
「自分の剣で死ぬのは嫌だろ。じゃあな、魔精霊」
頼む、死んでくれ!
静かになり、周りを見渡せば魔法陣はなくなっていた。
アルノアのいた位置には魔石が置いてある。
収納して、ステータスのところで確認しようした寸前。
〈精霊スキルを確認。スキル『略奪』を獲得可能。獲得しますか?〉
『略奪』ってベルガレートと契約しないといけないんだろ?
でもそうか、今はベルガレートいないんだもんな。え、憑りつかれたりしない?
「一応もらっておくとするか」
〈獲得許可確認。スキル『略奪』を確認。同時に、略奪条件の更新。デスハウンドのスキル『危険察知』と『魔力感知』獲得しました〉
よ、よくわからないけどたくさんスキルが手に入ったな。
これ、ラノベというよりゲームみたいだ。
頭の中に聞こえてくるこの声、可愛い女の子に担当してほしかった気もするが。
「魔力感知って、どういう意味だ? なんにも感じないけど」
なんか近づいてきてる。
あ、感じる。めっちゃ大きい魔力。
「ラスボスのつぎに中ボスって順番おかしいんですけど!?」
一先ず、ベルガレートの剣を収納しておこう。
〈剣スキル『魔力遮断』を獲得しました〉
剣スキル!? あぁ、確かにユルシリアの剣にもスキルついてたな。
剣にもスキルがあるってことは、あんまり投げない方がいいかな。
「持って戦ってみるか?」
そんな簡単じゃないだろうけど。
「ふぅ、来い!」
この先の曲がり角におそらくいる。
「グァアアアアアアッ!」
うるせっ! 思わず、耳を塞いでしまった。それくらい大きな叫び声に、俺は一歩後退りした。
お、オーク!?
「ほ、本物だよな。なんか気持ち悪い……」
後ろには数体のゴブリンがいる。
異世界系の実写化映画が出ても見ないでおこう……。
「と、そんなことより」
気付けば念じることで『倉庫』の中のものを取り出せるようになった。便利!
まぁ最初も「出てこい」で出てきてたしな。
「おもっ! 勇者はこんなの持って戦ってんのかよ」
「ガルゥ、ギャッギャッ!」
気持ち悪いよ……いきなり奇声あげないでほしい。
心臓止まるわ、ほんと。
そんな俺に気付いた一体のゴブリンは、口元を斜めに歪ませた。
そして考える隙を与えることなく、俺の方へと走ってきた。
「ギャッギャッギャッ」
「やば! はやすぎだろっ!」
とりあえず思いっ切り振った剣は、ゴブリンに強い打撃を与えた。
刃が当たってたら返り血浴びてただろうな……。
壁に叩き付けられたゴブリンは、地面についたと同時に魔石へと変わった。
「一体撃破……」
さすがにこの音は気付いたのか、オークがこちらの方へ来た。
これはチャンスじゃないか?
「――収納! んでもって、『発射』ッ!」
剣を一度しまい、再び威力をつけて出した。
オークの胸に狙いを定めて放たれた剣は、
「嘘だろ……」
オークが持っていた斧によって簡単にはじかれてしまう。
勘違いしていたようだ……俺は別に最強になったわけではなかった。
チートスキルをたまたま手に入れ、それに酔ってモンスターを甘く見ていた。
「また死ぬのかよ……」
二度目の人生はのんびり暮らすはずだったのに……スローライフにチートスキルなんて必要ないのに……。くそっ!
俺の目の前には、とっくにオークが立っていた。
振り下ろされた斧は、俺の頭目掛けて容赦なく進んできた。
スローライフのため、まだ死ねない。猫耳少女とも会ってないってのに。
こんなところで死ぬわけには。
「考えろよ、俺っ!」
51
あなたにおすすめの小説
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる