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第二章 『神の印』
第二章5 姫様のストーカー
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俺たちにお金がないことを察したのか、「大丈夫ですよ」と店長のおじさんは姫様に向けて、優しく言った。
姫様は平然と店の外へ出た。俺は軽く頭を下げ、「すみません」と一言言った。
「いいよいいよ。姫様にはいつも助けられてるからね」
「そ、そうですか」
助けてるって、この無駄にプライド高そうな子が?
そういえば姫様って歳いくつなんだろう。
そんなことを考えながら、姫様に続いて俺は店を出た。
店の前でリィラが心配そうな顔をして待っていた。
「別に待たなくていいのに、リィラさん」
「そ、その……心配でっ!」
これ上目遣いだったらやばかったな。
俺がリィラより背が高かったらおそらく死んでいた。
「ちっ、早く行くわよ」
「行くってどこへですか?」
「決まってるでしょ。ギルドよ」
なんで? なんて質問は意味がなさそうだ。
仕方がない。とりあえず姫様についていくか。
それにしてもユルシリアの姿がないけど。
今日姫様の護衛をするのはユルシリアだろ?
「リウラ様っ! そいつから離れてくださいっ!」
いきなり俺の方へ大剣を振り下ろしてきたのは、茶髪の女の子。
俺は落ちてきた大剣を視界に入れると、すぐさま回避した。俺の元いた場所は、地面が派手に抉られている。
「リウラ様、こいつがアレクの言っていたやつですか……離れてください、危険ですっ!」
どうやら何か怒っていらっしゃるみたいだ。
「えっと……」
「ネム、やめなさい。レイ、紹介するわね。騎士の一人――」
「違いますよぉ、姫様ぁっ! ネムは姫様の永遠の恋人です! 裸だって見せ合った仲じゃないですかぁ」
なんかやばそうなやつ来た……。というか、こいつ俺より年下だろ、絶対。
「僕はレ――」
「喋りかけんな、この変態野郎!」
ひどい言われようだな。ともかく、誤解は解いておいた方がいいだろうな。
「僕は――」
「うるさいっ! ネムは今、姫様と同じ空気を吸えて興奮してるの。邪魔しないで変態野郎」
はーい、ごめんなさーい。
いや人の話聞けよ。というか、最後の変態野郎は必要ないだろ。
すーはすーはするネムに、この場にいる二人は軽く引いているようだ。
俺はありだと思う。ぎりぎり。
「それでネム、ここに何しに来たわけ?」
「ユルさんがまたどっか行ったみたいなので、代わりにネムが姫様の護衛をっ! で、いつになったら変態野郎さんは帰るんですか、ぺっ」
この子やばい。しかも最後ぺっ、て言ったよね!?
「私にはレイがいるから護衛は必要ないわ」
「分かりました――」
あれ、案外あっさり帰るんだな。聞き分けがよくて助かった。
「この変態野郎さんが近くにいることは許可しましょう」
あれ? この人、姫様の話を全然聞いてないけど。
「わかったわ。行きましょう」
ひ、姫様!?
なんかもう話が終わったみたいだ。
話の最後になっても、姫様は俺が変態野郎じゃないと否定しなかった。
「ねぇ、リィラさん。僕って変態野郎じゃないよね?」
「レイさんはその……へ、変態です……私のむ、胸を――」
「ぎゃー! それ以上言わないでください、リィラさん!」
朝の出来事が……再び感触が蘇ってしまうだろ!
これをネムに聞かれたら殺されるぞ、本気で。
街の中で大剣振り回されても困るからな。
「リィラさんはこの人のこと知ってるんですか?」
俺は前を歩くネムを指さして質問した。
「もちろん知ってますよ。なんか姫様のために騎士になったらしいです。それで今は姫様のために七大聖騎士を目指してるとか」
こいつの人生、「姫様のために」って言葉を最初に付ければ成立しそうだな。
それにしても七大聖騎士とかそんな簡単になれるもんなのか? 大剣なんて、力あるやつだったら誰でも扱えるし、ましてや男の方が力あるだろう。
「あとあと……極度の男嫌いみたいで、姫様に近寄った男を片っ端から、グチャって……」
「へ、へー……」
最後の効果音がめっちゃ怖いんですけど。
これ歩いてたら不意に殺されたりしない? 今のところ大丈夫だけど……。
「そういえば、リィラさんは騎士なんですか?」
「私は騎士じゃないです……」
アレクが七大聖騎士だから、てっきりその妹のリィラも騎士かと思った。
「そういや、騎士になるのって大変なんですか?」
「そうですね。騎士の九割近くは魔法学校の卒業生だと思いますよ」
魔法学校……ぜひとも行ってみたいが、それよりものんびりと過ごしたい。
でも魔法に興味がないと言えば嘘になる。魔法を使えないと、溜めた魔力も水の泡になるからな。
騎士の九割が魔法学校の卒業生なのは分かった。
あと一割はなんなのだろう。
「リィラさんは魔法学校行ってたんですか?」
「はい、つい最近卒業したんです」
リィラって魔法学校卒業してたんだ。中卒の俺からしたら、卒業って単語聞くだけで耳が痛い。
でもなんとなくだが、魔法学校に興味出てきた。
「ついたわよ。いつまでぼさっと突っ立ってるの?」
姫様は言った通り、俺たちはとっくにギルドの前に到着していた。
姫様とネムは先に二人で中に入ってしまったようだ。
俺たちは二人を追いかけるようにギルドの中へと入って行った。
姫様は平然と店の外へ出た。俺は軽く頭を下げ、「すみません」と一言言った。
「いいよいいよ。姫様にはいつも助けられてるからね」
「そ、そうですか」
助けてるって、この無駄にプライド高そうな子が?
そういえば姫様って歳いくつなんだろう。
そんなことを考えながら、姫様に続いて俺は店を出た。
店の前でリィラが心配そうな顔をして待っていた。
「別に待たなくていいのに、リィラさん」
「そ、その……心配でっ!」
これ上目遣いだったらやばかったな。
俺がリィラより背が高かったらおそらく死んでいた。
「ちっ、早く行くわよ」
「行くってどこへですか?」
「決まってるでしょ。ギルドよ」
なんで? なんて質問は意味がなさそうだ。
仕方がない。とりあえず姫様についていくか。
それにしてもユルシリアの姿がないけど。
今日姫様の護衛をするのはユルシリアだろ?
「リウラ様っ! そいつから離れてくださいっ!」
いきなり俺の方へ大剣を振り下ろしてきたのは、茶髪の女の子。
俺は落ちてきた大剣を視界に入れると、すぐさま回避した。俺の元いた場所は、地面が派手に抉られている。
「リウラ様、こいつがアレクの言っていたやつですか……離れてください、危険ですっ!」
どうやら何か怒っていらっしゃるみたいだ。
「えっと……」
「ネム、やめなさい。レイ、紹介するわね。騎士の一人――」
「違いますよぉ、姫様ぁっ! ネムは姫様の永遠の恋人です! 裸だって見せ合った仲じゃないですかぁ」
なんかやばそうなやつ来た……。というか、こいつ俺より年下だろ、絶対。
「僕はレ――」
「喋りかけんな、この変態野郎!」
ひどい言われようだな。ともかく、誤解は解いておいた方がいいだろうな。
「僕は――」
「うるさいっ! ネムは今、姫様と同じ空気を吸えて興奮してるの。邪魔しないで変態野郎」
はーい、ごめんなさーい。
いや人の話聞けよ。というか、最後の変態野郎は必要ないだろ。
すーはすーはするネムに、この場にいる二人は軽く引いているようだ。
俺はありだと思う。ぎりぎり。
「それでネム、ここに何しに来たわけ?」
「ユルさんがまたどっか行ったみたいなので、代わりにネムが姫様の護衛をっ! で、いつになったら変態野郎さんは帰るんですか、ぺっ」
この子やばい。しかも最後ぺっ、て言ったよね!?
「私にはレイがいるから護衛は必要ないわ」
「分かりました――」
あれ、案外あっさり帰るんだな。聞き分けがよくて助かった。
「この変態野郎さんが近くにいることは許可しましょう」
あれ? この人、姫様の話を全然聞いてないけど。
「わかったわ。行きましょう」
ひ、姫様!?
なんかもう話が終わったみたいだ。
話の最後になっても、姫様は俺が変態野郎じゃないと否定しなかった。
「ねぇ、リィラさん。僕って変態野郎じゃないよね?」
「レイさんはその……へ、変態です……私のむ、胸を――」
「ぎゃー! それ以上言わないでください、リィラさん!」
朝の出来事が……再び感触が蘇ってしまうだろ!
これをネムに聞かれたら殺されるぞ、本気で。
街の中で大剣振り回されても困るからな。
「リィラさんはこの人のこと知ってるんですか?」
俺は前を歩くネムを指さして質問した。
「もちろん知ってますよ。なんか姫様のために騎士になったらしいです。それで今は姫様のために七大聖騎士を目指してるとか」
こいつの人生、「姫様のために」って言葉を最初に付ければ成立しそうだな。
それにしても七大聖騎士とかそんな簡単になれるもんなのか? 大剣なんて、力あるやつだったら誰でも扱えるし、ましてや男の方が力あるだろう。
「あとあと……極度の男嫌いみたいで、姫様に近寄った男を片っ端から、グチャって……」
「へ、へー……」
最後の効果音がめっちゃ怖いんですけど。
これ歩いてたら不意に殺されたりしない? 今のところ大丈夫だけど……。
「そういえば、リィラさんは騎士なんですか?」
「私は騎士じゃないです……」
アレクが七大聖騎士だから、てっきりその妹のリィラも騎士かと思った。
「そういや、騎士になるのって大変なんですか?」
「そうですね。騎士の九割近くは魔法学校の卒業生だと思いますよ」
魔法学校……ぜひとも行ってみたいが、それよりものんびりと過ごしたい。
でも魔法に興味がないと言えば嘘になる。魔法を使えないと、溜めた魔力も水の泡になるからな。
騎士の九割が魔法学校の卒業生なのは分かった。
あと一割はなんなのだろう。
「リィラさんは魔法学校行ってたんですか?」
「はい、つい最近卒業したんです」
リィラって魔法学校卒業してたんだ。中卒の俺からしたら、卒業って単語聞くだけで耳が痛い。
でもなんとなくだが、魔法学校に興味出てきた。
「ついたわよ。いつまでぼさっと突っ立ってるの?」
姫様は言った通り、俺たちはとっくにギルドの前に到着していた。
姫様とネムは先に二人で中に入ってしまったようだ。
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