上 下
15 / 19

15.カミングアウト

しおりを挟む
水を何杯お替りしたことだろう。 
コートを羽織りマスクをした。 
 
「トイレ行きたいな。」 
「うん、トイレ出てすぐそこにあるから。」 
 
(先に出ていいのかな?一応お会計で財布ちらつかせた方がいいのかな。) 
 
彼が席から立ちあがるのを待って一緒にレジに行った。 
財布を広げると 
 
「あ、いいよ。」 
 
とスマートに言ったので、 
 
「ごちそうさまです。じゃあトイレ行ってるね。」 
 
店を出た。 
トイレから出るとエレベーター前で待っていた彼が近づいてきた。 
 
「なんかさー遠くから見ると女子大生くらいに見えるね。」 
「えー?そう?やったー!ありがとう。」 
 
(ここにきてダメ押しのアピールか?笑 
最初のテンションはなんやったんや?笑) 
 
エレベーターを降りたところの柱で立ち止まった。 
 
「ねえ、24日だめ?」 
「うん、だって3時間はもったいなくて、なんか悪いでしょ?
夜は用事があるから。」 
「そっか、仕事?」 
「うん、FXしてるから。」 
 
(あ、咄嗟に嘘をついてしまったが、 
FXしてる人だったらクリスマスは欧米市場が休みで 
むしろトレードしないのが常識だけど、バレるかな?苦笑) 
 
「俺もさー株やってるの。」 
「ふーん。日本株?」 
「そう、トーホーシネマズとかの株持ってるからさ、 
優待でもらうチケットを新橋で売ってるの。新橋だとすぐ売れるからさ。」 
 
(どうせ何百枚ももらうわけじゃなし、それぐらい使えよ。笑) 
 
「そーなんだ。」 
「じゃあ夜は無理か。どう?俺と今後も会おうとか思う?」 
「まあ別にいいけど、真剣に彼女とか探してるっていうからさ。」 
「それは建前だって言ってるじゃん。」 
「じゃあさ、例えば既婚者でもいいの?」 
「それは嫌だ。俺さ、そういうリスクは背負いたくないから。」 
「ふーん、そっか。じゃあ無理だね。」 
しおりを挟む

処理中です...