公爵家のワガママ義妹、【道の城】はじめました!

パルメットゑつ子

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chapter2__城、始動

課題は山積み

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「――ふぅ、洗濯日和でよかった。溜まった汚れを落とし、事業は無事第一歩を踏みだし。スッキリ新しい週を迎えられて気分いいわね~」

 春の気配を感じさせるうららかな空を仰ぐと。
 城館裏手。物干しロープに吊るした大量の洗濯物を見渡し、ザラが笑顔になった。

「だから少しくらい使用人を雇えよって……」

 こそこそと自分や男性たちの下着類を干していたダリルが言う。

「今回はつい溜め込んじゃってたから手伝ってもらったけど。洗濯はコツを掴めばそんなに時間もかからないし、当分あたしがやるからいいわよ」
「そういうわけにもいかねーだろ。スカートたくし上げて踏み洗いなんてよ……オレらの下着とかもあるし」
「へ? どっちもあたしは気にしてないわ。っていうかミニスカート姿はもう晒してるじゃない」

 心底不思議そうに返すとダリルがため息をつく。

「ジャンヌに言っとけ。誰も教えてないのにうすうすイアンが勘付いて、見たいってしつけーの。だから作品発表会はしばらくおあずけだ」
「なんで? 見たいなら次はイアンも呼んであげたら、」
「ったくお前は~~……これユージンの過保護が原因だよな」
「???」

 口の中で呟くダリル。意味を理解できないザラ。
 以前はともかく。前世を思い出したザラに、彼が言わんとしている内容が本気で通じないわけではない。

 だが不良令息たちが居座っていた頃、ザラで欲望を満たそうとした輩は彼女の知らないところでユージンが“お仕置き”、もしくは城から放り出していた。
 武人の勘、それとも野生の勘か。害をなそうと企む者には敏感に反応するようだ。

 ついでに当時はダリル含め、周りを取り巻く者はほぼ金目当て。そのせいかザラは恋愛対象として見られている意識が極端に低いのだった。

「とりあえず、早急に部屋に鍵をつけろよ」
「うん、食後の会議で話すつもりだったんだけど。今日は3階の部屋すべてに鍵をつけるつもり。引っかけるタイプの簡易的な内鍵だけどね」
「ふーん」
「それで私も含め、今まで3階を使っていた皆には部屋を移動してもらいます」
「!??」

「この城で一番いい場所は3階だから。お客様を泊めるゲストルームはこの階に統一するつもり。となると従業員が同じ階を使うのは避けた方がいいもの」
「うっ……まぁその計画自体に異論はねーけど。じゃあ移動先の部屋の鍵は……」
「そんなのあとあと」
「先にやれって!!」
「最近のダリル、なんかお母さんみがあるよねー」
「なに笑ってんだよ!?」

 くすくす笑っていたザラがふと肩を落とす。

「たしかに笑いごとじゃないわ。資金不足……」
「……あー」

 無事、新厩舎が完成し。馬車の駅を営むトロット家を招致することに成功した。
 しかし現状はまだまだ順風満帆とは言い難い。

 たとえば大手ショッピングモールにテナントが入った場合。
 “集客効果のあるショッピングモールに入って増えた収益”の一部を含めた賃料、つまり歩合賃料をオーナーへ支払うのはやぶさかではないだろう。共存共栄だ。

(でもうちの場合、まだ世間に認知されてない集客力・魅力ともにゼロ施設。トロット家に「来てください」とお願いする側であって、土地の賃料すら徴収するのもおこがましい立場……)(あたしじゃなくイゼルラント家の土地なのは前提として。)

 トロット家とはリスクの少ない、業務提携的スタンスでやっていく方針になった。
 だがそれはあくまで【道の城】が順調に成功すればの話だ。

「ありがたいことにジャンヌが自作品をあたしに着せて楽しむ『着せ替えザラ』の特権で、こちらのリスクがほとんどない契約を結んでもらえたわ。だからこそ早く事業を軌道に乗せて、共栄のかたちを整えたいところだけど……いかんせん……」
「集客のためにはまず、この城の知名度を上げなきゃなんねーって話か」
「それと設備投資ね。今のままじゃどれだけ掃除しても、せいぜい地方の中の下、安宿レベルだもの」

 改めて山積みの課題を前に、どうしても気分上々ではいられない。
 ダリルが片手でぺしっと軽くザラの額を打った。

「はじまる前から落ち込んでどーすんだ。こういう時こそ前みたいな、何の根拠もない自信ふりかざして突き進む場面だろ」
「……そっか。過ぎたるはなお及ばざるが如し。反省のしすぎもよくないわね」
「そういうこと。あー腹減った、戻って飯にしようぜ」

 彼なりの励ましに頷き返すときびすを返し、城館の入口目指して歩きだす。
 少しだけ軽くなった足取りで、ザラも後に続いた。

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