公爵家のワガママ義妹、【道の城】はじめました!

パルメットゑつ子

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chapter3__城、営業中

パワハラVSワガママ(1)

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「おはようございます!」
「「「おはざーす!!」」」
「おはようございます、皆さん。本日もよろしくお願いします」
「はいっ!」「「「うすっ!!」」」

(朝からキビキビしてて元気いいな~。さすがガテン系の方々)

 早朝、廊下ですれ違ったザラに四人の男が威勢よく挨拶した。
 下水道工事を担当する職人一人と、徒弟(見習い)の三人だ。
 二週間ほど前に道の城へやってきた。近場に他に宿もないため、工事の間ここに泊まり込んでいるのだった。

 今のところ8室あるゲストルームが全て埋まる日はない。なので彼らに2室を無料で提供した。
 掃除や炊事など、身の回りのことは自分たちでまかなうようにしてもらっている。

「こんな良い部屋にタダで泊まるなんて……。親方にどやされちまいます」
 はじめはそう言ってしきりに恐縮していたが、

「この工事は我が城の将来を左右する、大大大っ事な設備強化です! 皆さんにはしっかり休養をとり、バリバリ働いていただかなくてはなりません」

 ザラが拳を握って力説すると。四人で顔を見合わせ、輝くような笑顔になった。

「……っはい!! 一意専心、取り組ませてもらいます!!」
「「「押忍!!!」」」

(徒弟さんの一人は厨房仕事に慣れていて、イアンの手を煩わせることもない。いい人たちで本当によかった)

(はじめはあたしたち(主にユージン)の手伝いを「親方にどやされるんで!」って断られて、予想より工期が長引いたものの。最近はユージンの怪力による補助作業くらいなら受け入れてくれたから、順調順調♪)

「うふふ……水洗トイレ様が我が城にご降臨なさる日は近い……。経費を稼ぐためにも、ガンガン働くぞ~~!!」


 晴れやかな気分でザラがやる気をみなぎらせた、その数時間後――。


「おう。やってるか」
「親方っ!? どうしたんです、こんなとこまでわざわざ……」
「どうって、お前らの仕事を見にきてやったんじゃねぇか。……ふん、思ったよりもはかどっとるようだな」
「「「あ、あざますっ!!」」」

 城門で馬車を降り、出迎えたザラを軽く一瞥すると。
 ズカズカ中庭を進んでいった、背は低めだががっしりした体格の中年男が、城の裏手で作業をする職人たちへ声をかけた。

(このひとが、親方のヴィルゴさん……)

 水道工たちを束ねる親方。本来ならここから離れた大きな町の工房にいるはずだ。
 どうやら抜き打ちで部下たちの仕事ぶりを監督しに来たらしい。

「おい嬢ちゃん。椅子をくれ」
「は、はい……」

 ザラが中庭の片隅から木の椅子を持っていくと、作業場の前に置いてドカリと腰かけ、微動だにしなくなった。
 そんな上司に慣れているらしい。職人たちが気を取り直して作業に戻っていく。
 だがその表情は目にみえて萎縮しており、動きもどこか精彩を欠いていた。

(あわわ。前世を思い出して、こっちまで涙目になりそう。こういうのも親方の仕事だろうから仕方ないとはいえ。大丈夫かな……)

 いかにも職人カタギな鋭い眼光で部下を監視するヴィルゴ。
 この様子ではユージンの手伝いもはねのけられるだろう。ハラハラしつつ、かといって今できることもないザラは、仕方なく城館へ戻っていった。


「あんたがここのお頭なんだってな」
(おかしら……)

 陽が落ちてしばらくたった頃。ヴィルゴが一人で城館に戻ってきた。

「ザラと申します。ヴィルゴ様、今夜はお泊りになられますよね? お部屋をご用意いたします」
「あー、いい。あいつらが泊まってた部屋をそのまま使う」
「ですがベッドも足りませんし。お一人でゆったり一室お使いいただく方が……」
「あん? 部屋はオレが一人で使うんだよ。――今までさんざんぬくぬくしてきたみてぇだからな。あいつらは今日から現場で野宿させる」
「はいっっ!??」

(このおっさ……いや親方、今なんて!? 野宿!??)

 季節はようやく春。日中は暖かくなってきたとはいえ、夜はまだ冷えこむ。
 呆然とするザラを上から下までじろじろ眺めると。ふん、と鼻で笑った。

「温室育ちのお嬢ちゃんにはわからんだろうが。そのくらいの強さがない奴に、この仕事はつとまらねぇんだよ。オレが親方にまでのぼりつめることができたのは、厳しい下積みをきちっとこなしてきたからだ」

(なんてわかりやすいパワハラ体質!! シンプルにうざい!!)

 その価値観の全てを否定する気はザラにもないが……。
 この手の中年。特に自分の仕事や地位を誇る相手に、「あたし温室なんかで育ってないですけど」と反論してもあまり意味がない、最悪状況を悪化させると(前世で)知っている。

 職人たちの境遇改善を訴えたところで、素直に聞き入れてはもらえないだろう。

「飯は部屋で食う、なにか適当に持ってきてくれ。もちろん一人分だ」

 黙って頭を下げるのを見もせず反転し、肩をいからせ階段をのぼっていく。

(ちょっと前にスタッフにハラスメントをした身ではございますが……、)
 顔を上げ、ザラがうす暗い表情で口元をゆるませた。


「そんなに部下を厳しく育てたいのなら。お手伝いして差し上げましょう」

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