公爵家のワガママ義妹、【道の城】はじめました!

パルメットゑつ子

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chapter3__城、営業中

開幕★道の城グランプリ(1)

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「これでよし、っと」
「早っっ! わぁ、あの成金武装がこんなに上品で落ち着いたドレスに生まれ変わるなんて。ありがとう、ジャンヌ!!」
「このくらい朝飯前だよ」

 ザラの部屋にて。
 瞳を輝かせて喜ぶザラに、ジャンヌが照れ笑いした。

 元はゴテゴテと派手な、あまり品のよろしくないドレス。それをジャンヌが装飾を外して手直しし、接客に適したデザインにリメイクしたのだった。

「これにお手当を出さないのは、悪徳雇用主だわ」
「いいのいいの、アタシには“特権”があるし。じいちゃんも回復して、この頃は余裕もでてきたからさ」
「でも……」

「あー! ザラがきれいな服着てるー!」
「ほんとだあ~ザラきれい~」
「ヨシュア、ヨナタン」
「あっこら、また勝手に入りこんで!」

 部屋に入ってきた幼い少年二人がザラを指差してはしゃぐ。姉に叱られてもどこ吹く風だ。
 トロット家の末っ子双子、ヨシュアとヨナタン。6歳のわんぱく盛り。近頃はよくこの城を遊び場にしている。

「いいのよジャンヌ。怪我が治ったとたん、ヤコブさんにも駅を手伝ってもらっているから。離れた家に二人でお留守番させておくのは心配でしょ」
「けどさぁ……。いつ客に何かやらかすかと思うとヒヤヒヤしちまうよ」
「大丈夫、とてもいい子たちだもの。城内が明るくなるわ」
「へへっ、おれたちいい子だもんなー!」
「いい子なの~♪」
「……ったく。甘やかして大丈夫かねぇ」

 嬉しそうに駆けよってきて、双子が足元にまとわりつく。

「今日はザラ、足だしてないな。生足だしてる方がいいぞ!」
「ザラの生足かわいい~すき~」
「あ、ありがと……」

 キャッキャとはしゃぐ二人がふいにザラの顔をじーっと見つめた。

「なー。ザラはユージンとデキてるのか??」
「できてるの~??」
「はっ!?」
「父ちゃん言ってたもん。ザラとユージンはえっちな関係だって」
「えちえちなの~??」
「な……っっ!!!???」

 純粋無垢な四つの瞳に見上げられ、ザラがあたふたと否定する。

「ち、違いますっ!!! それホセさんの誤解!! あたしとユージンはただの雇用者と労働者、潔白かつクリーンな関係ですっ!!」
「あれ? 恋人同士じゃないのかい?」
「ジャンヌまで!? ほんとにデマだから。信じないで……」

「でも一緒に寝てんだろ? 男と女が一緒に寝ると、えっちなことするって兄ちゃんが言ってた」
「ユージンがねえ、『あったかくなってきたから最近ザラが来ないな』って。ザラはあったかくなるとえっちなことしないの~?」

「――――……ほあ……?????」

 どうやら二人でユージンの部屋に忍び込み、まだ眠っていた彼のベッドにもぐり込んだらしい。すると寝ぼけまなこで「ザラかと思った」と言ったそうだ。

(っはああぁ!?? ユージンのベッドにもぐり込むだなんて、一度たりとも――)
(……ないとはいえないかも。そういえば寒すぎて耐えられなかった日に、……)

 前世を思い出す前の冬。毛布にくるまっても寒さで寝付けない夜があった。
 そこでザラがとった行動は――熱源にくっついて暖をとること。
 眠るユージンを湯たんぽ代わりにしていたのだった。

「グゥッ……過去の悪行のツケが、こんなかたちでまた回ってくるとは……。で、でも寒くて添い寝しただけ! いかがわしい行為は一切いたしておりません!!」
「ザラあんた……動物の兄妹じゃないんだから」
「ザラとユージンはえっちじゃないのか?」
「えちえちじゃないの? すやすやなの?」
「そうよ~、すやすやしただけなのよ~」
「じゃあ誰とえっちなんだ? 他の四人か?」
「ザラは四人とえっちなの??」
「もうそのネタから離れようね~。えっちはナイナイしましょうね~」

 まとわりつく二人をさりげなくドアまで誘導し、部屋の外へ追い出そうとすると。

「あ、ムッツリだ」
「ムッツリ、おはよ~」
「……」
(いつの間にかあだ名で呼ばれてる!?)

 扉を開けた先、入口脇の壁際にヘルムートが立っていた。
 驚き固まるザラへ無表情のまま手にした書類を差しだす。

「頼まれていた、地域ごとの小麦取引価格の概況だ」
「あ、うん。ありがとう……」
「……ああ」
 書類を手渡すと、まとわりつこうとする双子をスッとかわして去っていく。

(話、聞かれてたよね。セクハラ女の印象がより深まっただろうな……)
 気まずい空気の余韻を感じ、思わずうなだれる。

「今年の冬までに暖房を完備。……従業員部屋にもきちんと鍵を取りつけよう(特にユージンとヘルムート。)」

 次の目的地へ向かって駆けだす双子をぐったりと見送り、ザラが呟いた。


   凹凹†凹凹


 トロット家長男・ジョーイ。ジャンヌの3つ年上の21歳。

 馬車の駅の運営を支える若きホープだ。祖父ヤコブからは「まだまだ青二才」と評されるも、馬の扱いは適切で、こまやかな行き届いた世話をする。

 その彼が珍しく、一人で城館を訪れた。
 気迫のこもった顔つきで休憩中のユージンの前に立ち、一度鋭く睨みつけ。びしりと指をつきつけた。

「ユージン。俺と勝負しろ!!」
「……へ??」

「勝ってお前に奪われた彼女――エロイーズの愛を、必ず取り戻すっっ!!!!」

「あ??? 誰だそれ????」
(なんか始まったーー!!!?)

 一方的な宣言にユージンが困惑する。同じく隣で休憩中のザラも驚く。

 のんびりムードだった道の城の中庭を一陣、春めいた風が強く吹き抜けていった。

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