公爵家のワガママ義妹、【道の城】はじめました!

パルメットゑつ子

文字の大きさ
36 / 52
chapter3__城、営業中

開幕★道の城グランプリ(3)

しおりを挟む


 いきなり開催する運びとなった『第一回道の城グランプリ』。

 参加者はジョーイ、ユージン、ヘルムート、エンドレ、ダリル。
 そして話を聞きつけ「まだまだ若いもんには負けん」「祭だワッショイ!」と参入したヤコブ、ホセの7名だ。

 現在、道の城にいる馬は13頭。そのうち1歳から5歳の7頭が出馬する。

 レースは城が建つ丘のふもとを中心に行われる。
 城門の反対側、牢獄塔の下あたりに位置する地点からスタートし、堀の外側を約半周して城門を抜け、中庭中央でゴールというコースだ。

 観覧席は牢獄塔最上階や、城壁の歩廊、城館3階バルコニーなど。
 誰でも無料で観戦できるが、馬主になることを検討している者には優先的に良い席を提供する。

 今回は馬を披露するのが主な目的。(ジョーイにもそう理解させ、エロイーズの件を大っぴらにするのは控えた。)

 当然、順位の予想に金銭を賭ける行為は禁止だ。

「無許可の賭博場運営は禁じられているのもあるが。賭け競馬は貴族社会で聖域的な位置付けだ。地位や実績のない者が開催しても無視、下手をすれば潰される」
「こわっ……!!」
「ひとまずは馬好き界隈へ向けた、城の宣伝を兼ねてのちょっとしたイベント。ワイワイ楽しく過ごしてもらう、くらいのスタンスでいるべきでしょうね」

 ということで。違法賭博を行わないよう、関係者に周知を徹底したのだが……。


「なーに甘っちょろいこと言ってんだ★」
(やっぱりこいつだよ……)


 おおむね予想通りの開き直りに、ザラが片手でこめかみを押さえた。
 小さなノート(おそらく賭け台帳)を懐にしまうダリルをギロッとにらみつける。

「ダ~リ~ル~?? あれほど言ったわよね? 賭博は絶対厳禁って」
「そんなだからいつまでも資金繰りに頭抱えるハメになんだよ。思いつきで大浴場とサウナなんか作って。おかげで赤字ギリギリ、水洗トイレ化も見送りだよな?」
「ぐうっ……」
「いいかザラ。よーーく聞け」

 痛いところをつかれて呻くザラを、薄笑いを浮かべたダリルが人気のない廊下の壁際へ追い詰めた。

「思った通り、皆の本命は圧倒的にジョーイかユージン。ユージンがやや優勢ってとこかな。ちなみにオレはぶっちぎりで最下位」
「そ、そう。いまだに馬に乗れないあたしからすれば、ダリルだって十分すごいと思うわよ? そんな予想、気にすることなんて……」
「べつに気にしてねーよ。むしろ期待した通りになって、笑いを堪えるのに必死」

 ダリルが壁に両手をつく。いつの間にかその中に閉じ込められたザラが、いぶかしげに見返した。

「なに企んでるの?」
「ザラ。オレに賭けろ」

 質問には答えず、真顔になると強い瞳で見つめる。

「超大穴がレースをひっくり返す。高額配当間違いなしだ」
「水洗トイレもよゆーで設置。バレーネ湖なんかより、二人でビサイツィアに行って豪遊しようぜ」
「だからオレに積めるだけ積んじゃえよ」

(だから、じゃないって。違法賭博に手を染める気はありません。一応前提として、公爵家に認められる実績作り中なんだし)

 心の声を口に出すかわりに。ザラがひとつ息をつき、ダリルと目を合わせた。

「どうしたの。ダリルらしいようで、らしくない感じ。なんか焦ってない?」
「なにそれ。大金が手に入るチャンスに、経営下手な雇い主にも一枚噛ませてやろーってだけだけど」
「経営下手ですみませんねー」
「どうせユージンが勝つと思ってるだろ」

 至近距離の顔がさらに近付く。

「あいつの人間離れした身体能力はまじでバケモン。しかもあれで多分、普段は力を抑えてんだぜ。お前が応援すれば、本気出して勝ちにいくだろうな」
 にっこりと笑顔になる。
「逆に言えば。ザラが他の奴を応援したら、一気に筋肉しぼませてグダグダになって。オレにも勝ち目が見えてくるって話」

(んーと。謎の理屈はひとまず置いといて)
(これってユージンへの対抗意識??)
 腹黒い微笑みを張りつけた天使のような顔を、まじまじ見つめ返す。

「ダリル。もしアルベルゾ村でピアノのリサイタルをしたら、あなたのファンになる女子がわんさか現れると思うわよ」
「は? そんなのいらねーし」
(村娘にモテたいわけじゃないのか……)

「とにかく。少しは番狂わせも起こさなきゃ盛り上がんねーだろ。馬主は掴めなくても、貴族のリピーターを増やす努力はしないと」
「それはそうなんだけど。だからって賭博も八百長もする気は、」
「ったく、すっかりくそ真面目になって。そんな君もキライじゃないけどねっ☆」
「唐突なビジネスショタっ!?」


「お金を賭けるのがムリならぁ。今回だけはユージンや他のやつらじゃなくて、ぼくを応援して……? そしたらゼッタイ、レースをギンギンに盛り上げてみせるから! ねっ??」
「え、あ……」
「ザラはマッチョでも高身長でもないぼくなんか、応援できない……?」
「あ……、う……、」


 瞳を潤ませ、甘ったるい声を震わせて。
 だが壁ドンと畳みかけは緩ませず、顔をのぞき込む。

「ねえ、ザラぁ。……お願い……」
「……わ、わかった。今回だけだからね」
「やったあ~~☆☆☆」

 ようやく身体を離し、天使の笑顔でザラの手をとり両手で包みこむ。それから小指に自分の小指をからませた。

「約束だよっ★」
「あ……、うぅ……、」

 するりと指をはなすと、ダリルが鼻歌まじりに去っていく。

「ビジネス(演技)とわかってるのに抗えなかった。ショタ、恐ろしい……!!!」

 壁にもたれて硬直したまま、一人残されたザラが戦慄した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い! 声が出せないくらいの激痛。 この痛み、覚えがある…! 「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」 やっぱり! 忘れてたけど、お産の痛みだ! だけどどうして…? 私はもう子供が産めないからだだったのに…。 そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと! 指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。 どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。 なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。 本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど! ※視点がちょくちょく変わります。 ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。 エールを送って下さりありがとうございました!

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

処理中です...