フェイタリズム

倉木元貴

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出会いの形は最悪だ 22

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「それが僕にとって本当に有益かどうかは僕しか決められない。実はどうでもいい話かもしれない。駅で話す理由が僕にあるか?」
 
 如月さんは、また深く溜息をついた。
 
「いつからそんなに面倒な人になったのですか? 私が持っている情報は、中田さんにとって必ず有益な情報ですよ。もし、有益でないのであれば、私は中田さんの言うことを何で一つ聞きましょう。不可能でない限り何でもいいですよ」
 
 よほどの自信がなければ、そんなセリフは出てこないだろう。と言うか、そんなに話したいのであれば、普通にこの場で話せば良くないか? 如月さんの考えていることはわからない。でも、ここまでの自信を見せられたのなら信じてもいいのかも。それに、もし有益じゃない情報であれば、何でも言うことを聞くと言っていたからな。うまくことが運べば有利に立てる。そんなチャンスをみすみす逃すわけにはいかない。
 
「そこまで自信があるならその話を聞いてみようかな。それに、本当に有益な情報なら聞かなかったら損だし」
 
 本心ではない言葉を軽々しく述べていたが、如月さんには見破られていた。
 
「それこそ異議ありですね。本当は、『何でも聞く』と言う言葉に心を動かされたのじゃないですか? あ、因みに言っておきますけど、エロは禁止ですから」
 
 また返答に困るようなことを。このパターンはどう答えるのが正解なのだ? 昨日も下手なことを言ったつもりはなかったけど、完全に飲み込まれたからな。如月さんとの会話はいかに早く終わらすかが鍵なのだ。淡白に「しないよ」と言えば、「本当ですか~?」とか言いそうだから、この返答は不正解になる。あまりしたくはなかったけど、ここは自虐で乗り越えるしかないのか。
 
「僕にそんな勇気があるとでも?」
 
 案の定如月さんは、黙り込んだ。
 よし勝った! 
 僕はは、心の中で過去一番のガッツポーズを繰り出した。そんなやり取りをしているうちに、僕らは駅に到着いた。駅舎の中に入ることはなく、取り敢えず外に待機した。
 
「さあ、僕にとっての有益な情報を聞かせてもらおうか?」
 
 やけに自信ありげに話すのには理由がある。よくよく考えれば、今回の話は僕に有利しかないことに気づいたからだ。本当は有益だったけど、どうでもいいと突き放してしまえば僕は、如月さんに一つ何でも言うことを聞いてもらえる。如月さんには悪いけど、今回ばかりは嘘でも有利に立たせてもらう。
 
「そうですね。駅でお話をしましょうと言っていたところでしたね」
 
 また前のようなパターン。話す気がないのなら訊かなければよかった。
 
「と言うのは冗談で……」
 
 前科があるから冗談に聞こえない。
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