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愛花の世界
怪しい男
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手当してもらったことで、私の佐藤周子さんへの親近感が爆上がりして、今の私の最大の推しとなった。
周子お姉様! と敬愛を込めて呼ばせてもらっている。
一見クールなのに、困った人を見捨てず手を差し伸べ助けてくれる。なんて素晴らしい人なのか! 今就活の面接で『尊敬する人』『目標としている社会人』とか聞かれたたら、迷う事なく周子お姉様と私は答えるだろう。
周子お姉様もループをしていることを察しているのだろうか? ということも考えてみたが、尾行一回目と二回目は私と交流するまでは全く同じ行動をしていたこと。
大切だというキーホルダーを二回とも落としていた事から、多分ループしていることに気がついてない。
私は次の回、よりメイクに気を使い出かける。周子お姉様の行動はもう分かっている。
汗まみれの恥ずかしい顔を見せたくないので、先に区役所に向かい体温を落ち着かせたから化粧直しをして周子お姉様がくるのを待った。
入り口の見える場所で待っていると、周子お姉様は、前二回と同じ時間にやってくる。
明らかに視界に私が入っているはずだが、気にする様子もなく受付に向かう。
見知らぬ人に格下げされてしまっていることに、少し寂しさを覚えた。
申請していた書類を受け取った周子お姉様が、区役所を出たタイミングで私も追いかけ外に出る。
今日はスマートに落とし物を届けるぞと、張り切って公園入り口の清水門に向かう。橋を渡っているところで違和感を覚えた。
周子お姉様が門を通った後にスッと門の影から人か現れたから。背が高く男性のようだ。その人物は周子お姉様の後を歩き出す。
私は足を止めて様子を伺う。男は移動しながら背中に背負っていたワンショルダーの鞄をずらしサイドに移動させる。
体格が良く足のコンパスが長いこともあるのだろうが、男性は少しづつ周子お姉様と距離を詰めていく。
周子お姉様のバックからキーホルダーが落ちる。男は落ちたキーホルダーも気にせず、そのまま周子お姉様の後ろを歩く。
男の手がバッグに突っ込まれ何かを握るのが見えた。先にバチバチと火花が見えた。
「危ない! 後ろに、変態がいます!! 逃げて! 誰か~」
私は叫び二人に走り寄る。周子さんは振り向き、側にいる男の手にスタンガンが握られているのを見て顔をこわばらせる。
男は私の方をみて少し驚いた顔をした。
こういうことをするのは小太りのオタクっぽい人間だと思っていたが、相手は身長も高く日に焼けたスポーツマン風で、切れ上がった目をしたイケメンとも言える男性だった。
こっちに気を取られている男の様子をみて、周子お姉様は男に体当たりを喰らわせる。転ばせてから私の方に走ってくる。
そして私の手をとり、そのまま元来た道を二人で走り出す。
振り返ると男は追いかけてくる様子はなく、立ち上がり反対方面にゆっくりと去っていくのが見えた。
二人でそのまま区役所に走り込み、玄関にいた警備員にスタンガンを持った男に襲われそうになったことを伝える。
話を聞いた警備員は、他の警備員や職員と共に公園へと走っていく。
会議室のような所に案内され、私たちはようやく一息つくことが出来た。隣に座り周子お姉様の手をとり私はギュッと握る。
「ありがとう。助かった」
私はブルブルと顔を横にふる。
「いえ、お姉さんが無事で良かったです」
身体の震えが止まらない。
そんな私の様子を見かねたのか、周子お姉様は私をそっと優しく抱きしめてくれた。
「怖かったわよね?」
怖かった。目の前で周子お姉様が殺されてしまうのではないかと……。
「怖かった……お姉さんも怖かったよね?」
私も周子お姉様の背中に手を回し抱きしめ返す。しばらく二人で落ち着くまで抱き合っていた。
「そうね。でも貴方が助けてくれたから……本当にありがとう。
貴方が大声を上げて助けてくれたから。命の恩人ね」
周子お姉様はやはり前回の記憶はないようで私を初めて会った対応をしてくる。
「いえ、たまたま後ろを歩いていたら、あの男がお姉さんに変な感じで近づいていっていたので……」
もう私が大丈夫だと判断してしまったのか、周子お姉様は私から離れてしまう。
「そういえば貴方のお名前は? 私は佐藤周子」
「私は佐竹愛花です」
知っていますとは言えないので、私も素直に名乗ることにする。周子お姉さんに私の存在をしっかり認識してもらえたのは嬉しい。たとえ0時を超えたら忘れられてしまうとしても。
そうしているうちに警察もやってきて事情聴取をされる。やはりこういう時は女性の警察官が対応してくれるようだ。
男は逃げた後で捕まえられなかったという。特徴も黒っぽいTシャツに黒っぽいズボンを履いていてワンショルダーのリュックの、まあまあ長身の男性としか答えられなかった。
周子お姉様にとっても、知らない人だったようだ。
私としては歩いていたら、門の影に隠れていた男が、前を歩いていた佐藤周子お姉様を襲おうとしていたという事だけを伝えるしかない。
それが今回の今日の事実だから。もう何回か周子お姉様が殺されているなんて言っても変な顔をされるだけだろうから言えない。
周子お姉様は、同居している彼氏に迎えにきて欲しいと連絡をしているが一向に繋がらないようだ。
私も一人暮らし。結局それぞれ家まで警察の人に送ってもらうことになって、周子お姉様とお別れになった。
連絡先交換したために部屋に帰ってから、周子お姉様に連絡をする。
「今日はありがとう!
家に帰ってお風呂入ったら、汗とともに恐怖も流れてサッパリしたわ!
愛花ちゃんは? まさかまだスーツのままってことはないわよね」
周子お姉様の落ち着いた声を聞いていると、私の気持ちも穏やかになってくる。
「いえ、私もシャワー浴びて、今は超、楽チンな格好で惚けてました。
あの男なんだったのでしょうね? お姉さん本当に見知らぬ人でした?」
周子お姉様を待ち伏せして襲っていたように見えたからここでも聞いてみる。
「まあ、パッとしかみてないけど初めて見る人だったと思う」
その言葉には嘘はないように感じる。
「やはり通り魔なのかな?」
そう言ってはみたが、私はそれが違うと分かっている。
あの男はどこから現れたのか? 前回も前々回もあんな人はいなかった筈。
もしかして門の影にいた可能性はあるが、一回目は今回以上に距離をとって歩いていたから、もし男がいたなら気がついていたと思う。
でも男が私と同じで、違う行動を取れていたとしたら? 二回目走って近づいた私を見て行動を変えて襲ってこなかったということもあるのだろうか?
とすると、私が周子お姉様の後ろを歩いていることを知っている筈だから、そもそも襲うことはしない。
それにあそこに現れた私に男は驚いた顔をしていた。となるとあの男にとっても私は想定外の存在だった?
何も分からない。
「公園の周りには、色々防犯カメラもあるだろうから直ぐに捕まるでしょう。もう心配する事ないわよ」
明るくそう言ってくる周子お姉様の言葉に私は「そうですね」という言葉を返すしかない。
でも心の中であの男は捕まるなんて事は無い。そんな事を確信に近い感情で想う。
「でも周子お姉さん、まだ何があるか分からないから気をつけて!」
私は祈りに近い気持ちを込めた言葉を、周子お姉様に伝えた。
「愛花ちゃんもね! 人気のない所とか歩いたらだめよ!」
周子お姉様は明るくそんな言葉を返してくる。そう言っているが、周子お姉様は時間が戻ったら、またあの公園を通ってしまうのだろう。こうして話をした記憶もなくなるから。
私は電話を終えた後も、話していたスマホを抱きしめながら過ごすうちに0時となった。
周子お姉様! と敬愛を込めて呼ばせてもらっている。
一見クールなのに、困った人を見捨てず手を差し伸べ助けてくれる。なんて素晴らしい人なのか! 今就活の面接で『尊敬する人』『目標としている社会人』とか聞かれたたら、迷う事なく周子お姉様と私は答えるだろう。
周子お姉様もループをしていることを察しているのだろうか? ということも考えてみたが、尾行一回目と二回目は私と交流するまでは全く同じ行動をしていたこと。
大切だというキーホルダーを二回とも落としていた事から、多分ループしていることに気がついてない。
私は次の回、よりメイクに気を使い出かける。周子お姉様の行動はもう分かっている。
汗まみれの恥ずかしい顔を見せたくないので、先に区役所に向かい体温を落ち着かせたから化粧直しをして周子お姉様がくるのを待った。
入り口の見える場所で待っていると、周子お姉様は、前二回と同じ時間にやってくる。
明らかに視界に私が入っているはずだが、気にする様子もなく受付に向かう。
見知らぬ人に格下げされてしまっていることに、少し寂しさを覚えた。
申請していた書類を受け取った周子お姉様が、区役所を出たタイミングで私も追いかけ外に出る。
今日はスマートに落とし物を届けるぞと、張り切って公園入り口の清水門に向かう。橋を渡っているところで違和感を覚えた。
周子お姉様が門を通った後にスッと門の影から人か現れたから。背が高く男性のようだ。その人物は周子お姉様の後を歩き出す。
私は足を止めて様子を伺う。男は移動しながら背中に背負っていたワンショルダーの鞄をずらしサイドに移動させる。
体格が良く足のコンパスが長いこともあるのだろうが、男性は少しづつ周子お姉様と距離を詰めていく。
周子お姉様のバックからキーホルダーが落ちる。男は落ちたキーホルダーも気にせず、そのまま周子お姉様の後ろを歩く。
男の手がバッグに突っ込まれ何かを握るのが見えた。先にバチバチと火花が見えた。
「危ない! 後ろに、変態がいます!! 逃げて! 誰か~」
私は叫び二人に走り寄る。周子さんは振り向き、側にいる男の手にスタンガンが握られているのを見て顔をこわばらせる。
男は私の方をみて少し驚いた顔をした。
こういうことをするのは小太りのオタクっぽい人間だと思っていたが、相手は身長も高く日に焼けたスポーツマン風で、切れ上がった目をしたイケメンとも言える男性だった。
こっちに気を取られている男の様子をみて、周子お姉様は男に体当たりを喰らわせる。転ばせてから私の方に走ってくる。
そして私の手をとり、そのまま元来た道を二人で走り出す。
振り返ると男は追いかけてくる様子はなく、立ち上がり反対方面にゆっくりと去っていくのが見えた。
二人でそのまま区役所に走り込み、玄関にいた警備員にスタンガンを持った男に襲われそうになったことを伝える。
話を聞いた警備員は、他の警備員や職員と共に公園へと走っていく。
会議室のような所に案内され、私たちはようやく一息つくことが出来た。隣に座り周子お姉様の手をとり私はギュッと握る。
「ありがとう。助かった」
私はブルブルと顔を横にふる。
「いえ、お姉さんが無事で良かったです」
身体の震えが止まらない。
そんな私の様子を見かねたのか、周子お姉様は私をそっと優しく抱きしめてくれた。
「怖かったわよね?」
怖かった。目の前で周子お姉様が殺されてしまうのではないかと……。
「怖かった……お姉さんも怖かったよね?」
私も周子お姉様の背中に手を回し抱きしめ返す。しばらく二人で落ち着くまで抱き合っていた。
「そうね。でも貴方が助けてくれたから……本当にありがとう。
貴方が大声を上げて助けてくれたから。命の恩人ね」
周子お姉様はやはり前回の記憶はないようで私を初めて会った対応をしてくる。
「いえ、たまたま後ろを歩いていたら、あの男がお姉さんに変な感じで近づいていっていたので……」
もう私が大丈夫だと判断してしまったのか、周子お姉様は私から離れてしまう。
「そういえば貴方のお名前は? 私は佐藤周子」
「私は佐竹愛花です」
知っていますとは言えないので、私も素直に名乗ることにする。周子お姉さんに私の存在をしっかり認識してもらえたのは嬉しい。たとえ0時を超えたら忘れられてしまうとしても。
そうしているうちに警察もやってきて事情聴取をされる。やはりこういう時は女性の警察官が対応してくれるようだ。
男は逃げた後で捕まえられなかったという。特徴も黒っぽいTシャツに黒っぽいズボンを履いていてワンショルダーのリュックの、まあまあ長身の男性としか答えられなかった。
周子お姉様にとっても、知らない人だったようだ。
私としては歩いていたら、門の影に隠れていた男が、前を歩いていた佐藤周子お姉様を襲おうとしていたという事だけを伝えるしかない。
それが今回の今日の事実だから。もう何回か周子お姉様が殺されているなんて言っても変な顔をされるだけだろうから言えない。
周子お姉様は、同居している彼氏に迎えにきて欲しいと連絡をしているが一向に繋がらないようだ。
私も一人暮らし。結局それぞれ家まで警察の人に送ってもらうことになって、周子お姉様とお別れになった。
連絡先交換したために部屋に帰ってから、周子お姉様に連絡をする。
「今日はありがとう!
家に帰ってお風呂入ったら、汗とともに恐怖も流れてサッパリしたわ!
愛花ちゃんは? まさかまだスーツのままってことはないわよね」
周子お姉様の落ち着いた声を聞いていると、私の気持ちも穏やかになってくる。
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あの男なんだったのでしょうね? お姉さん本当に見知らぬ人でした?」
周子お姉様を待ち伏せして襲っていたように見えたからここでも聞いてみる。
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その言葉には嘘はないように感じる。
「やはり通り魔なのかな?」
そう言ってはみたが、私はそれが違うと分かっている。
あの男はどこから現れたのか? 前回も前々回もあんな人はいなかった筈。
もしかして門の影にいた可能性はあるが、一回目は今回以上に距離をとって歩いていたから、もし男がいたなら気がついていたと思う。
でも男が私と同じで、違う行動を取れていたとしたら? 二回目走って近づいた私を見て行動を変えて襲ってこなかったということもあるのだろうか?
とすると、私が周子お姉様の後ろを歩いていることを知っている筈だから、そもそも襲うことはしない。
それにあそこに現れた私に男は驚いた顔をしていた。となるとあの男にとっても私は想定外の存在だった?
何も分からない。
「公園の周りには、色々防犯カメラもあるだろうから直ぐに捕まるでしょう。もう心配する事ないわよ」
明るくそう言ってくる周子お姉様の言葉に私は「そうですね」という言葉を返すしかない。
でも心の中であの男は捕まるなんて事は無い。そんな事を確信に近い感情で想う。
「でも周子お姉さん、まだ何があるか分からないから気をつけて!」
私は祈りに近い気持ちを込めた言葉を、周子お姉様に伝えた。
「愛花ちゃんもね! 人気のない所とか歩いたらだめよ!」
周子お姉様は明るくそんな言葉を返してくる。そう言っているが、周子お姉様は時間が戻ったら、またあの公園を通ってしまうのだろう。こうして話をした記憶もなくなるから。
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