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お城奪還編
第22話 ザーマスとダーマス
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「アタシが先行するので! 主様はここで待ってて下さいね!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ワンとバレリアが集落跡を出発して二日目の事。
ニノカミ神聖国へと続く街道には、フードを被った二人の姿。
馬上に居るワンと、その馬の手綱を引きながら歩くバレリアの姿があった。
空は僅かに雲がかかる程度で、風も無く絶好の旅日和といった様子。
その為、街道には旅人や商人等が多いとバレリアは想像していた。
しかし実際、行程ですれ違う人は少なく二日間で数名程度。
「帝国と神聖国は行き来が無いからのぅ。 人の気配もあまりせんか」
ワンが何気なく呟いた言葉を、バレリアは改めて実感していた。
道幅も広く見通しが良い街道を進んでいると、一行に人の気配を感じさせる音が聞こえてきた。
遠くの方から喧騒が聞こえてくる。
キャァァーーーー…… ギャリーンッ…… ギャァァ……
若い女性や男性の叫び声、それに加え金属音などが微かに聞こえる。
バレリアは、その音を【争いが原因】と考えていた。
「ふむ…… 何かあったのかのぅ」
馬上に居るワンは右手を眉の付近へ当て、眺めるように遠くを見つめる。
バレリアは握っていた手綱をワンへと手渡すと、冒頭の言葉をワンへかけた。
「アタシが先行するので! 主様はここで待ってて下さいね!」
「うむ。 心配無いとは思うが、用心せえよ」
ワンの言葉を聞いたバレリアは軽く頷くと、足早に喧騒の鳴る方へと駆け出していった。
「本当に分かっとるんかのぅ……。 まぁええわい」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
一方その頃、喧騒の発生源である地点には大勢の人影が見える。
人影はそれぞれに対峙し、揉めている様子だ。
その手に剣を持ち、武装した盗賊風の男達が数名。
男達の後ろには四頭の馬に繋がれた、巨大な馬車が見える。
もう一方は、旅装にフードを被った人影が十数名。
フードを被り、表情までは確認出来ないが、体格は女性や子供といった感じだろうか。
人影達が対峙している間では、武装した盗賊とフードを被った小柄な剣士が戦っている。
「クッ。 ちょこまかと、すばしっこい。 いい加減に」
盗賊風の男は、素早く動き回る小柄な剣士に苛立ちを隠せないでいた。
ビュン…… ブォン…… ブンッ……
男が放つ大振りな剣撃を、いとも簡単に躱す小柄な剣士。
振り回す剣撃が当たらず、ハァハァと息切れする盗賊の男。
「ふっ、ふざけやがって…… ハァ…… ハァ……」
その動きが止まったのを見計らったように、小柄な剣士が無言のまま斬りつける。
ヒュン…… ザシュッ……
小柄な剣士の持つサーベルは、目にも留まらぬ速さで盗賊の腕を切り落とす。
「うわぁぁ…… いっ、いてぇぇよぉぉ」
腕を切り落とされた盗賊は、ジタバタと地面をのたうち回る。
剣士はその様子を横目で見ながら、無言でサーベルを盗賊風の男達に向けていた。
すると盗賊集団の中心から、一人の人物が声を荒げる。
「いっ、いきなり現れて何なんザマス! 何でミー達の邪魔をするザマス」
チョビ髭にカールした髪、如何にも三流貴族っぽい風貌の男。
そんな風貌の、盗賊のリーダーと思わしき男が剣士に向けて抗議する。
「ミーは後ろの奴隷共に用があるザマス! そこを退くザマスよ」
剣士はその抗議を意に介せず、盗賊達に無言のまま切っ先を向けていた。
「くっ。 何とか言うザマス!」
青筋を立てて怒る盗賊風のリーダーの抗議は、尚も続く。
「ザーマス様ぁ。 コイツ、殺ったら幾らです」
「げへへ。 あっし等に任せてくだせぃ」
手に持った剣を舐めながら、下品に笑う盗賊風の男達。
ザーマスと呼ばれてたリーダーは、手下達に声をかける。
「うぅ。 仕方ないザマス。 金貨三枚出すザマス! 早く殺るザマスよ」
青筋を立てたままの表情を崩さないザーマス。
「おぃ? 聞いたか? 金貨三枚だとよ」
「へへへ。 これで酒も女も……」
下卑た表情の手下に、ザーマスが命令する。
「かかるザマス!!」
その声を聞いた盗賊達は、一斉に剣士へと襲いかかった。
ビュン…… ブォン……
盗賊達の剣撃が空を切る音が、辺りに鳴り響く。
放たれる剣撃をいとも簡単に避ける剣士は、持っていたサーベルで盗賊を切りつけていく。
ヒュン…… ザシュ…… ドサッ……
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
「あぁぁぁぁぁ」
剣士は命までは取らないまでも、指や手首を切り落とし相手を戦闘不能にしていく。
「ぐへっ……」
「がっは……」
剣士は、のたうち回る盗賊達を足蹴にすると、ゆっくりと切っ先をザーマスへと向ける。
「なっ、なんザマス? ちょっと待つザマス!」
切っ先を向けられ、冷や汗を流しながら焦るザーマス。
ザーマスは両手を剣士へ向け、静止するように促す。
そして、剣士の横へと顔をずらし、後ろに控える十数名の人影の方に声をかける。
「ちょっと、シナモンさん! こいつを止めるザマス! 早く!!」
剣士の後ろに控える人影達の先頭には、フードを被る一人の少女の姿があった。
シナモンと呼ばれていた少女は、ザーマスへ返答する。
「なっ、何言ってるのですか! 貴方が約束を破るからいけないのです!」
胸の前で両手をギュッと握りながら、大声で叫ぶシナモン。
(そっ、それに、助けてもらってなんですけど……)
シナモンは自分の前でサーベルを持って佇む、剣士の背をジッと見つめた。
(いきなり現れたこの人が何者か…… 私も分からないのです……)
剣士の背をジッと見つめるシナモンに、ザーマスが応戦する。
「ミー達は、ゼニール様直属の奴隷商人ザマスよ? それをこんなにして……」
「うるさいのです! この人達は、ずぇっったいに渡さないのです!!」
「キィィィ! そんな事言って良いザマスか? 後悔しないザマスね?」
青筋を立てながら、激昂するザーマスは馬車の方へと駆け出した。
そして、馬車をガンガンと蹴りながら大きな声で叫ぶ。
「ダーマス! 我が弟よ! 早く起きるザマス!!」
「んあぁぁぁぁ……?」
野太い声が、辺りに木霊する。
そして、四頭の馬に繋がれた巨大な馬車が、右へ、左へと大きく揺れていた。
ガチャン…… ガチャン…… ドン……
馬車から出てきたのは、巨大な戦鎚を持った重騎士。
巨大な身体はフルプレートアーマーで覆われ、表情を伺う事は出来ない。
風貌だけ見ると兄であるザーマス同様にベタと言えた。
これが漫画であれば必ず出てくるであろう全ての能力値を攻撃に振ったパワー系のキャラ、といった所だろうか?
「何だぁぁ? 呼んだがぁぁ?」
「えぇぇい。 しっかりするザマス! ほら! アイツを殺るザマス」
ザーマスは小柄な剣士を指差し、命令する。
「おぉぉ。 全員殺しで…… いいのがぁぁ?」
「だっ、駄目ザマスよ! 奴隷共は傷つけちゃ駄目ザマス」
「面倒ぐせぇなぁ。 うっかり殺しぢまっても…… あぁぁ」
会話にならない会話を繰り返すザーマスとダーマス。
そんな二人を横目に、小柄な剣士はシナモンへと声をかける。
「……危険。 ……逃げて」
「えっ? あっ、あなたは?」
シナモンは驚いていた。
小柄な剣士の声は、年頃でいうとまだ幼い少女のような声。
抑揚の無い、感情が希薄な様子の剣士の声に、シナモンは驚きを隠せない。
「いっ、一体、何者なのです?」
「…………早く」
シナモンの問いを遮るように、逃げるよう静かに促す剣士。
その言葉を聞いて、シナモンは後ろに控える人影達へと声をかける。
「はっ、早く逃げるのです! 急ぐですよ!」
自分はその場から離れようとせず、皆を優先的に逃がそうとするシナモン。
その様子を見たザーマスは、焦ったように声を荒げる。
「きぃぃ! 逃げるなザマス! えぇい。 ダーマス! もう殺るザマス」
「おぉぉ。 わがっだぞぉぉぉ」
野太い声で答えるダーマスが、ゆっくりと剣士の方へと近づいてくる。
ズシンッ…… ズシンッ…… ズシンッ……
あまりの重厚感に、地面が少し揺れるように感じられた。
剣士はサーベルを構えながら、ダーマスと対峙する。
ズシンッ…… ズシンッ…… ズゥゥゥン……
剣士が巨大な戦鎚の間合いに入った所で、ダーマスは立ち止まる。
「死ね」
ダーマスが戦鎚を振り回す。
ビュン…… ビュン…… ヒュン……
巨大な戦鎚は鞭のようにしなり、剣士へと襲いかかる。
まるで小枝でも振っているかのような風切り音、巻き起こる砂塵。
残像を残しながら繰り出される破壊撃が、地面に無数の穴を空けていく。
「あぁぁぁ。 煩い蝿だぁぁ。 うがぁぁぁ」
プレートヘルムからヨダレを撒き散らしながら、戦鎚撃を繰り出すダーマス。
「………っ」
剣士は身体を翻しギリギリの所で避けているが、予想以上の速度に疲弊している様子だ。
息を切らす様子の無いダーマスのスキを突くように、剣士は剣撃を繰り出す。
ガンッ…… カーン……
「うぅぅ。 うるせぇぇぇ」
ヘルムを叩かれ、衝撃音がヘルム内に響き渡る。
あまりの音に、ダーマスは先程以上に素早い戦鎚撃を繰り出していく。
「……っ」
ギリギリで躱しながら、戦況を整理していく剣士。
しかし先程、渾身の一撃をプレートヘルムにお見舞いした剣士は絶望していた。
通常より厚く、刃の入る隙間が見当たらないダーマスの装甲。
小柄な剣士、切る事に特化したサーベル。
普通に考えれば、ダーマスにダメージを与える事すら不可能な状況と言えた。
「参ったザマスか? 弟ダーマスは強いざんしょ? ホーッホッホッホ」
声高らかに笑い声を上げるザーマスは、防戦一方の剣士とシナモンへ声をかける。
「弟は、かのガレリア帝国に属し、十四年前の大戦でハイランド騎士を八十人も殺したザマスよ」
なおも笑い声を上げながら、弟ダーマスの戦果を自慢するザーマス。
「けっ、剣士さまぁぁ……」
避ける事しか出来ない剣士の姿を見て、シナモンも少し絶望感に襲われていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ダーマスと剣士の攻防が始まって、どれくらい経ったろうか?
戦鎚を振り回しながらも、剣士を捉えきれずにいたダーマスは苛立ちを隠せずにいた。
「だぁぁぁ。 動ぐんじゃねぇぇ。 あぁぁぁ」
叫びながら攻撃を繰り返すダーマス。
その様子を見ていたザーマスは、シナモンへと視線を送り声をかけた。
「ダーマス!! 先にシナモンさんを潰すザマス!!」
その声を聞いたダーマスはピタリと動きを止め、ゆっくりとシナモンへと視線を送る。
「ひっ!!」
突然の出来事に、シナモンは恐怖のあまり動けずにいた。
ズシンッ…… ズシンッ…… ズシンッ……
ゆっくりとシナモンに近付く大きな影。
シナモンにとって恐怖そのものであるダーマスの姿は、逃げるという事を忘れさせた。
その場にへたり込み涙目を浮かべ、その影を見つめるシナモン。
「あっ、あぁ…… はっ、母様ぁ……」
死を覚悟したシナモンは、ふと脳裏に母親の事を思い浮かべていた。
「じっ…… 死ねっ……」
ヒュン…… ドスン……
「……くっ」
先程までシナモンが居た所には、ダーマスの戦鎚撃による巨大なクレーターが出来ている。
その傍らには、背中に少し傷を負った剣士。
そして剣士に抱かれるように、へたり込むシナモンの姿があった。
「けっ、剣士さま。 だっ、大丈夫なので……」
シナモンは自らに寄り掛かる剣士の肩を抱く。
「……ウッ……」
その肩はダランと下がり、明らかに脱臼しているような状態だ。
「……ッ」
「けっ、剣士さまぁぁ」
フードを被り表情までは伺いしれないが、苦痛に歪む剣士の声。
シナモンは自分のフードを脱ぎ去ると、涙目のまま間近に迫るダーマスを睨みつける。
「あぁぁぁ。 やっど…… 捕らえたぁぁぁ」
ダーマスは、チラリとザーマスへと視線を向ける。
「殺って…… 良いのがぁぁぁ?」
「うんうん。 問題無いザマスよ! さっさと潰すザマス」
ザーマスは下卑た表情で、そう答える。
「まっ、待つのです!」
「何ザマス? 今更、命乞いザマスか?」
「そんな事しないのです。 でも。 でも剣士さまだけは」
「だーめーざーまーすー」
ザーマスは、意地悪そうな表情でそう答えると、ダーマスへと声をかける。
「もう良いザマス。 さっさと殺るザマス」
「おぉぉ。 じゃぁぞういうごどでぇぇぇ」
ダーマスは両手で戦鎚を握り、大きく振りかぶる。
巨大な戦鎚と、巨大なダーマスの身体の影に隠れた剣士とシナモン。
シナモンは、ギュッと剣士の身体を抱きしめながら、小声で呟いた。
「ごっ、ごめんなさい…… なのです……」
シナモンは謝罪の言葉を述べると、両目をギュッと閉じ迫りくる戦鎚撃に備えた。
「死ねっ」
その言葉と共にダーマスは、大きく振りかぶっていた戦鎚を二人目掛けて振り下ろす。
ビュン……
(か…… 神様……)
ダーマスの戦鎚が風を切る音を鳴らし、それと同時にシナモンが心の中で祈る。
ガァァァン…………ンン……
「ひっ……」
風切り音の後に鳴り響いた、特大の衝撃音が辺り一帯に広がった。
恐怖で瞼が固まっていたシナモンは、ゆっくりと目を開ける。
先程までダーマスが居た場所と、シナモンの間には一人の少女?の姿が見えた。
「あぶなぁぁ…… 間に合って良かったぁぁ」
そこに居たのは身の丈程もある黒い剣で戦鎚を受け止める、赤い髪の少女?だった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ワンとバレリアが集落跡を出発して二日目の事。
ニノカミ神聖国へと続く街道には、フードを被った二人の姿。
馬上に居るワンと、その馬の手綱を引きながら歩くバレリアの姿があった。
空は僅かに雲がかかる程度で、風も無く絶好の旅日和といった様子。
その為、街道には旅人や商人等が多いとバレリアは想像していた。
しかし実際、行程ですれ違う人は少なく二日間で数名程度。
「帝国と神聖国は行き来が無いからのぅ。 人の気配もあまりせんか」
ワンが何気なく呟いた言葉を、バレリアは改めて実感していた。
道幅も広く見通しが良い街道を進んでいると、一行に人の気配を感じさせる音が聞こえてきた。
遠くの方から喧騒が聞こえてくる。
キャァァーーーー…… ギャリーンッ…… ギャァァ……
若い女性や男性の叫び声、それに加え金属音などが微かに聞こえる。
バレリアは、その音を【争いが原因】と考えていた。
「ふむ…… 何かあったのかのぅ」
馬上に居るワンは右手を眉の付近へ当て、眺めるように遠くを見つめる。
バレリアは握っていた手綱をワンへと手渡すと、冒頭の言葉をワンへかけた。
「アタシが先行するので! 主様はここで待ってて下さいね!」
「うむ。 心配無いとは思うが、用心せえよ」
ワンの言葉を聞いたバレリアは軽く頷くと、足早に喧騒の鳴る方へと駆け出していった。
「本当に分かっとるんかのぅ……。 まぁええわい」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
一方その頃、喧騒の発生源である地点には大勢の人影が見える。
人影はそれぞれに対峙し、揉めている様子だ。
その手に剣を持ち、武装した盗賊風の男達が数名。
男達の後ろには四頭の馬に繋がれた、巨大な馬車が見える。
もう一方は、旅装にフードを被った人影が十数名。
フードを被り、表情までは確認出来ないが、体格は女性や子供といった感じだろうか。
人影達が対峙している間では、武装した盗賊とフードを被った小柄な剣士が戦っている。
「クッ。 ちょこまかと、すばしっこい。 いい加減に」
盗賊風の男は、素早く動き回る小柄な剣士に苛立ちを隠せないでいた。
ビュン…… ブォン…… ブンッ……
男が放つ大振りな剣撃を、いとも簡単に躱す小柄な剣士。
振り回す剣撃が当たらず、ハァハァと息切れする盗賊の男。
「ふっ、ふざけやがって…… ハァ…… ハァ……」
その動きが止まったのを見計らったように、小柄な剣士が無言のまま斬りつける。
ヒュン…… ザシュッ……
小柄な剣士の持つサーベルは、目にも留まらぬ速さで盗賊の腕を切り落とす。
「うわぁぁ…… いっ、いてぇぇよぉぉ」
腕を切り落とされた盗賊は、ジタバタと地面をのたうち回る。
剣士はその様子を横目で見ながら、無言でサーベルを盗賊風の男達に向けていた。
すると盗賊集団の中心から、一人の人物が声を荒げる。
「いっ、いきなり現れて何なんザマス! 何でミー達の邪魔をするザマス」
チョビ髭にカールした髪、如何にも三流貴族っぽい風貌の男。
そんな風貌の、盗賊のリーダーと思わしき男が剣士に向けて抗議する。
「ミーは後ろの奴隷共に用があるザマス! そこを退くザマスよ」
剣士はその抗議を意に介せず、盗賊達に無言のまま切っ先を向けていた。
「くっ。 何とか言うザマス!」
青筋を立てて怒る盗賊風のリーダーの抗議は、尚も続く。
「ザーマス様ぁ。 コイツ、殺ったら幾らです」
「げへへ。 あっし等に任せてくだせぃ」
手に持った剣を舐めながら、下品に笑う盗賊風の男達。
ザーマスと呼ばれてたリーダーは、手下達に声をかける。
「うぅ。 仕方ないザマス。 金貨三枚出すザマス! 早く殺るザマスよ」
青筋を立てたままの表情を崩さないザーマス。
「おぃ? 聞いたか? 金貨三枚だとよ」
「へへへ。 これで酒も女も……」
下卑た表情の手下に、ザーマスが命令する。
「かかるザマス!!」
その声を聞いた盗賊達は、一斉に剣士へと襲いかかった。
ビュン…… ブォン……
盗賊達の剣撃が空を切る音が、辺りに鳴り響く。
放たれる剣撃をいとも簡単に避ける剣士は、持っていたサーベルで盗賊を切りつけていく。
ヒュン…… ザシュ…… ドサッ……
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
「あぁぁぁぁぁ」
剣士は命までは取らないまでも、指や手首を切り落とし相手を戦闘不能にしていく。
「ぐへっ……」
「がっは……」
剣士は、のたうち回る盗賊達を足蹴にすると、ゆっくりと切っ先をザーマスへと向ける。
「なっ、なんザマス? ちょっと待つザマス!」
切っ先を向けられ、冷や汗を流しながら焦るザーマス。
ザーマスは両手を剣士へ向け、静止するように促す。
そして、剣士の横へと顔をずらし、後ろに控える十数名の人影の方に声をかける。
「ちょっと、シナモンさん! こいつを止めるザマス! 早く!!」
剣士の後ろに控える人影達の先頭には、フードを被る一人の少女の姿があった。
シナモンと呼ばれていた少女は、ザーマスへ返答する。
「なっ、何言ってるのですか! 貴方が約束を破るからいけないのです!」
胸の前で両手をギュッと握りながら、大声で叫ぶシナモン。
(そっ、それに、助けてもらってなんですけど……)
シナモンは自分の前でサーベルを持って佇む、剣士の背をジッと見つめた。
(いきなり現れたこの人が何者か…… 私も分からないのです……)
剣士の背をジッと見つめるシナモンに、ザーマスが応戦する。
「ミー達は、ゼニール様直属の奴隷商人ザマスよ? それをこんなにして……」
「うるさいのです! この人達は、ずぇっったいに渡さないのです!!」
「キィィィ! そんな事言って良いザマスか? 後悔しないザマスね?」
青筋を立てながら、激昂するザーマスは馬車の方へと駆け出した。
そして、馬車をガンガンと蹴りながら大きな声で叫ぶ。
「ダーマス! 我が弟よ! 早く起きるザマス!!」
「んあぁぁぁぁ……?」
野太い声が、辺りに木霊する。
そして、四頭の馬に繋がれた巨大な馬車が、右へ、左へと大きく揺れていた。
ガチャン…… ガチャン…… ドン……
馬車から出てきたのは、巨大な戦鎚を持った重騎士。
巨大な身体はフルプレートアーマーで覆われ、表情を伺う事は出来ない。
風貌だけ見ると兄であるザーマス同様にベタと言えた。
これが漫画であれば必ず出てくるであろう全ての能力値を攻撃に振ったパワー系のキャラ、といった所だろうか?
「何だぁぁ? 呼んだがぁぁ?」
「えぇぇい。 しっかりするザマス! ほら! アイツを殺るザマス」
ザーマスは小柄な剣士を指差し、命令する。
「おぉぉ。 全員殺しで…… いいのがぁぁ?」
「だっ、駄目ザマスよ! 奴隷共は傷つけちゃ駄目ザマス」
「面倒ぐせぇなぁ。 うっかり殺しぢまっても…… あぁぁ」
会話にならない会話を繰り返すザーマスとダーマス。
そんな二人を横目に、小柄な剣士はシナモンへと声をかける。
「……危険。 ……逃げて」
「えっ? あっ、あなたは?」
シナモンは驚いていた。
小柄な剣士の声は、年頃でいうとまだ幼い少女のような声。
抑揚の無い、感情が希薄な様子の剣士の声に、シナモンは驚きを隠せない。
「いっ、一体、何者なのです?」
「…………早く」
シナモンの問いを遮るように、逃げるよう静かに促す剣士。
その言葉を聞いて、シナモンは後ろに控える人影達へと声をかける。
「はっ、早く逃げるのです! 急ぐですよ!」
自分はその場から離れようとせず、皆を優先的に逃がそうとするシナモン。
その様子を見たザーマスは、焦ったように声を荒げる。
「きぃぃ! 逃げるなザマス! えぇい。 ダーマス! もう殺るザマス」
「おぉぉ。 わがっだぞぉぉぉ」
野太い声で答えるダーマスが、ゆっくりと剣士の方へと近づいてくる。
ズシンッ…… ズシンッ…… ズシンッ……
あまりの重厚感に、地面が少し揺れるように感じられた。
剣士はサーベルを構えながら、ダーマスと対峙する。
ズシンッ…… ズシンッ…… ズゥゥゥン……
剣士が巨大な戦鎚の間合いに入った所で、ダーマスは立ち止まる。
「死ね」
ダーマスが戦鎚を振り回す。
ビュン…… ビュン…… ヒュン……
巨大な戦鎚は鞭のようにしなり、剣士へと襲いかかる。
まるで小枝でも振っているかのような風切り音、巻き起こる砂塵。
残像を残しながら繰り出される破壊撃が、地面に無数の穴を空けていく。
「あぁぁぁ。 煩い蝿だぁぁ。 うがぁぁぁ」
プレートヘルムからヨダレを撒き散らしながら、戦鎚撃を繰り出すダーマス。
「………っ」
剣士は身体を翻しギリギリの所で避けているが、予想以上の速度に疲弊している様子だ。
息を切らす様子の無いダーマスのスキを突くように、剣士は剣撃を繰り出す。
ガンッ…… カーン……
「うぅぅ。 うるせぇぇぇ」
ヘルムを叩かれ、衝撃音がヘルム内に響き渡る。
あまりの音に、ダーマスは先程以上に素早い戦鎚撃を繰り出していく。
「……っ」
ギリギリで躱しながら、戦況を整理していく剣士。
しかし先程、渾身の一撃をプレートヘルムにお見舞いした剣士は絶望していた。
通常より厚く、刃の入る隙間が見当たらないダーマスの装甲。
小柄な剣士、切る事に特化したサーベル。
普通に考えれば、ダーマスにダメージを与える事すら不可能な状況と言えた。
「参ったザマスか? 弟ダーマスは強いざんしょ? ホーッホッホッホ」
声高らかに笑い声を上げるザーマスは、防戦一方の剣士とシナモンへ声をかける。
「弟は、かのガレリア帝国に属し、十四年前の大戦でハイランド騎士を八十人も殺したザマスよ」
なおも笑い声を上げながら、弟ダーマスの戦果を自慢するザーマス。
「けっ、剣士さまぁぁ……」
避ける事しか出来ない剣士の姿を見て、シナモンも少し絶望感に襲われていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ダーマスと剣士の攻防が始まって、どれくらい経ったろうか?
戦鎚を振り回しながらも、剣士を捉えきれずにいたダーマスは苛立ちを隠せずにいた。
「だぁぁぁ。 動ぐんじゃねぇぇ。 あぁぁぁ」
叫びながら攻撃を繰り返すダーマス。
その様子を見ていたザーマスは、シナモンへと視線を送り声をかけた。
「ダーマス!! 先にシナモンさんを潰すザマス!!」
その声を聞いたダーマスはピタリと動きを止め、ゆっくりとシナモンへと視線を送る。
「ひっ!!」
突然の出来事に、シナモンは恐怖のあまり動けずにいた。
ズシンッ…… ズシンッ…… ズシンッ……
ゆっくりとシナモンに近付く大きな影。
シナモンにとって恐怖そのものであるダーマスの姿は、逃げるという事を忘れさせた。
その場にへたり込み涙目を浮かべ、その影を見つめるシナモン。
「あっ、あぁ…… はっ、母様ぁ……」
死を覚悟したシナモンは、ふと脳裏に母親の事を思い浮かべていた。
「じっ…… 死ねっ……」
ヒュン…… ドスン……
「……くっ」
先程までシナモンが居た所には、ダーマスの戦鎚撃による巨大なクレーターが出来ている。
その傍らには、背中に少し傷を負った剣士。
そして剣士に抱かれるように、へたり込むシナモンの姿があった。
「けっ、剣士さま。 だっ、大丈夫なので……」
シナモンは自らに寄り掛かる剣士の肩を抱く。
「……ウッ……」
その肩はダランと下がり、明らかに脱臼しているような状態だ。
「……ッ」
「けっ、剣士さまぁぁ」
フードを被り表情までは伺いしれないが、苦痛に歪む剣士の声。
シナモンは自分のフードを脱ぎ去ると、涙目のまま間近に迫るダーマスを睨みつける。
「あぁぁぁ。 やっど…… 捕らえたぁぁぁ」
ダーマスは、チラリとザーマスへと視線を向ける。
「殺って…… 良いのがぁぁぁ?」
「うんうん。 問題無いザマスよ! さっさと潰すザマス」
ザーマスは下卑た表情で、そう答える。
「まっ、待つのです!」
「何ザマス? 今更、命乞いザマスか?」
「そんな事しないのです。 でも。 でも剣士さまだけは」
「だーめーざーまーすー」
ザーマスは、意地悪そうな表情でそう答えると、ダーマスへと声をかける。
「もう良いザマス。 さっさと殺るザマス」
「おぉぉ。 じゃぁぞういうごどでぇぇぇ」
ダーマスは両手で戦鎚を握り、大きく振りかぶる。
巨大な戦鎚と、巨大なダーマスの身体の影に隠れた剣士とシナモン。
シナモンは、ギュッと剣士の身体を抱きしめながら、小声で呟いた。
「ごっ、ごめんなさい…… なのです……」
シナモンは謝罪の言葉を述べると、両目をギュッと閉じ迫りくる戦鎚撃に備えた。
「死ねっ」
その言葉と共にダーマスは、大きく振りかぶっていた戦鎚を二人目掛けて振り下ろす。
ビュン……
(か…… 神様……)
ダーマスの戦鎚が風を切る音を鳴らし、それと同時にシナモンが心の中で祈る。
ガァァァン…………ンン……
「ひっ……」
風切り音の後に鳴り響いた、特大の衝撃音が辺り一帯に広がった。
恐怖で瞼が固まっていたシナモンは、ゆっくりと目を開ける。
先程までダーマスが居た場所と、シナモンの間には一人の少女?の姿が見えた。
「あぶなぁぁ…… 間に合って良かったぁぁ」
そこに居たのは身の丈程もある黒い剣で戦鎚を受け止める、赤い髪の少女?だった。
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長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
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2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
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ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
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この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
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第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
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『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
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※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
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