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お城奪還編
第27話 寸胴とまな板
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「ちょっと待つのです! まだ何も言ってないのです!」
玄関先でずぶ濡れのまま、アルに抗議するシナモン。
その様子を自室の入り口の影から、ジッと見つめるレイの姿があった。
レイは可愛い少女であるシナモンの姿を見て、トコトコと玄関先へとやってきた。
「かっ…… 可愛い…… シナモンちゃんって言うの?」
「はっ、はいです。 あっ、あの…… 貴女は……?」
「私はレイ! まぁ一応、この家の主みたいなものかな?」
笑顔でニコッと微笑みかけるレイの表情を見て、シナモンは歓喜の表情を浮かべていた。
「あっ、貴女がレイ様ですか? あっ、あの…… バレリア様から聞いてやってきたです」
「へっ? お姉ちゃんの?」
少し驚いた表情で答えたレイ。
しかし、それ以上にシナモンは驚きの表情に変わる。
「バレリア様の妹君ですか? しっ、失礼しましたです」
急に慌てて頭を下げるシナモンの姿に、レイは少し恐縮した様子を見せていた。
「まっ、まぁまぁ。 ところで、お姉ちゃんからはなんて?」
疑問の表情で答えるレイに、アルはチョンチョンと肘打ちして耳打ちする。
「おっ、おい。 何か厄介事の予感がするぞ…… あんまり深く関わらん方が……」
人のヒソヒソ話というのは得てして、他人にも聞こえやすい物。
アルの発言がハッキリと耳に入ったシナモンは、ジトっとした目でアルを睨みつける。
「聞こえてるですよ。 とっ、とにかく、雨宿りさせて欲しいのです」
「えっ? あっ、悪いな…… って言っても、あの人数をこの家にはなぁ……」
アルは玄関先から見える人影達に目を向ける。
風雨は少し収まって来たとは言え、ずぶ濡れに近い十数人の人影。
とても、レイ達の家に入りきれるとは思えなかった。
「あっ! それなら集会場が良いかも! 結構、綺麗に残っててさ」
レイは玄関先から見える、少し大きめの建物を指差す。
外見こそレイ達の住む家よりかは煤けているが、中は綺麗だと太鼓判を押していた。
「ちょっと待ってね」
レイは自室に戻ると、大きめの手ぬぐいと着替えを一組持ち出す。
それをシナモンへと手渡すと……
「私があの人達を集会場に案内するからさ! シナモンちゃんは着替えて待ってて」
「えっ、あの」
「すぐ戻るからーー」
シナモンが制止するのも聞かずに、レイは人影達の元へと駆けて行った。
そのレイの後ろ姿を見つめていた、アルとシナモン。
数秒の沈黙を挟んで、アルがシナモンへと声をかけた。
「まぁ…… とりあえず入れば?」
「はい、なのです」
その言葉を聞いて、シナモンは濡れたマントを玄関先に置き、居間へと上がりこんだ。
シナモンは生活感のある居間の中を、キョロキョロと見回す。
久しぶりに訪れたの人家の様子に、少し安心した様子を見せていた。
「おーい、茶でも飲むかーー?」
台所に居たアルが、シナモンへと声をかける。
「えっ? あっ、だっ、大丈夫なのです」
「そっか。 欲しかったら言えよーー」
「はいなのです。 おっ、お手数おかけするです」
(顔に変な模様があるですが…… 見た目と違って良い人かもなのです)
急に声をかけられ、少し焦ったように返答するシナモン。
水滴が垂れるという程ではないが、衣服は水を含み重くなっていた。
まずは着替えからと思っていたシナモンは、受け取った衣服を床に置く。
着替えの準備をし始めるシナモンを他所に、アルは台所で自分の茶だけを用意していた。
居間へとやってきたアルは、テーブルの前に腰掛けると湯呑を手にする。
自分で入れた濃いめの茶を飲みながら、何気無くボーッとシナモンを眺めていた。
「まずは…… 髪の毛を拭かなきゃ…… なのです……」
その視線に気付く事無く、手ぬぐいで髪を拭くシナモン。
髪を拭き終えたシナモンは、濡れていた上着を脱ぐ。
中に着ていた薄着まで濡れ、シナモンの白い肌が薄っすらと透けていた。
その姿を見たアルは、ハッと気が付いて思わず立ち上がる。
「おっ、おい」
「なっ、なんなのです」
突然声をかけられたシナモンは、少し驚いた様子を見せた。
そしてハッと自分の肌が透けた姿に気付き、思わず叫びだす。
「あっ…… アァァァァ! 何見てるですか! このバカ! アホ! スケベッ!!」
「えっ? あぁ、そうじゃなく」
ガラガラガラガラ…… バッターン!!
シナモンの大きな声がしてすぐ、勢いよく玄関を開ける音がする。
ドタドタ… キィーーーー!!
大きな音を立て廊下をかけ、少し滑りながら居間の前へとやってきたのはレイだった。
「アルゥゥゥゥゥゥ」
鬼のような形相でアルを睨みつけたレイは、シナモンの元へとやってくる。
そしてシナモンを隠すようにギュッと胸に抱くと、レイはキッとアルを睨みつけた。
「あなたって人はぁぁぁぁ」
怒りの籠もった声でアルを睨みつけるレイ。
それに釣られレイに抱かれたシナモンも腕の影から、軽蔑の眼差しをアルへと向ける。
「はぁ………… 何、勘違いしてんだ……」
アルは二人の様子を見て落ち着きを取り戻すと、再び座り茶をすする。
「何、誤魔化そうとしてるですか! 私に襲いかかろうとしてたです」
キッと睨みつけるシナモンに、アルは少し呆れたように返答した。
「あほか。 何で俺が寸胴、まな板みたいなチンチクリンのガキに……」
「なっ!! 何言うですか、このスケベ! バカッ!」
暗に子供のようなスタイルだと言われ、顔を真っ赤にしながら怒るシナモン。
呆れて返答するアルに対し、レイが軽蔑の眼差しを向ける。
「ふぅん。 という事は…… しっかり見てたんだねぇ。 へぇぇ……」
「最低なのです」
女子二人に問い詰められたアルは、少しだけ気不味そうな表情に変わる。
「えっ…… いや、ちょっと待てって。 俺が言いたいのはだなぁ」
アルは弁解するように、レイに抱かれるシナモンを指差す。
その指先は、シナモンの右腕に向けられていた。
「なっ、なんなのです」
「お前のソレ。 【烙印】って奴じゃないのか?」
濡れて透けた衣服の下にはレイと同じような【烙印】が見える。
その言葉を聞いたレイも思わずシナモンの右腕へと視線を下ろす。
「えっ? あっ…… 本当だ」
はっきりとした文字は見えないが、確かにそれは【烙印】のようだ。
シナモンはそれを見られた事に少し焦った様子で慌てて左手で隠した。
「えっと…… あのですね……」
急に口籠るシナモンの頭をポンポンと撫でると、レイは笑顔で話しかけた。
「シナモンちゃんも持ってるんだ? えへへぇ。 仲間だねぇ」
「へっ?」
ニコッと笑いかけるレイの表情を見て、シナモンは呆気にとられた様子だ。
「レっ、レイ様も持ってるですか?」
「うん! 私のはこれ!」
レイは抱いていたシナモンを話すと、自分の右腕の袖をまくりあげる。
そして二の腕付近まで袖を上げ、【剛】の【烙印】をシナモンに見せつける。
「ほっ、本当なのです…… 私のと似てるです」
「うん! 仲間仲間! シナモンちゃんのは?」
「えっ?」
レイがシナモンへ見せるように促すと、少し驚いた様子を見せるシナモン。
そして、その表情が驚きから疑問へと変わるとレイへと問いかけた。
「なっ、何で隠さないですか? 女の【烙印】は隠すべきものと教わったです」
その言葉を聞いてレイもシナモン同様、驚いた表情に変わる。
「えっ? そうなの? アルは知ってた?」
「知るわけないだろ!」
二人のやり取りを聞いたシナモンは、レイとアルの表情を見回すと……
「なっ、何か変わってるですね。 二人とも……」
まるで知らない事が不思議なように、シナモンは少し呆れた表情に変わっていった。
「ちなみに、何で隠さないとダメなんだ? 何か問題でも?」
呆れた表情のシナモンに対し、アルは疑問を浮かべた表情で問い掛けた。
するとシナモンは目を瞑り、右人差し指を立てながら話し始める。
「女の【烙印】をさらけ出していると、悪魔がやってきてハラワタを抜き取られるですよ」
シナモンの言葉を聞き、レイは少し驚いた表情で思わず腹部を抑えていた。
一方のアルは急に呆れた表情に変わり、小さく溜息を吐きながら呟く。
「何だよそれ。 言う事聞かない悪い子は、夜中迎えにくるような話だろ? やっぱガキだな……」
「ふんっ。 変態には言われたくないのですよ」
シナモンは少し怒ったように鼻を鳴らし、そっぽを向いていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
改めてシナモンがレイの部屋で着替えを済ませ、居間へとやってくる。
テーブルにはアルが入れた濃いめの茶が入った湯呑が三つ。
そして買い置きしておいたクッキーのようなお菓子が置いてある。
「あっ、あの…… あの方達は?」
シナモンは一緒に居た人影達の様子を気にし、レイに尋ねる。
「えっと、さすがに人数分の着替えは無いから、囲炉裏に火を付けてぇ」
レイは右人差し指を顎に当て、少し上に目線を向け思い出すように話す。
「集会場にある大きめの浴槽にも火を入れてぇ…… 簡単な食事も用意しといたよ?」
「あっ、ありがとなのです! もう丸一日、食事も取ってなかったのです……」
シナモンはそう言いながら、テーブルに置かれたクッキーを食い入るように見つめる。
その様子を見ていたアルがレイへと言葉をかけた。
「あれ作ってやれよ! レイの得意料理。 ぷっ……」
アルは意地悪そうに少し嫌味を込めた口調でレイに話しかける。
レイはアルのその様子を見て、少しムッとした表情に変わる。
「ふんっ! あれだって美味しいんだから! いいもん」
少し拗ねた様子をアルに見せていたが、パッと明るい表情に変わりシナモンに言葉をかけた。
「ちょっと待っててね! 今、料理してくるから」
「えっ、あの…… そんな申し訳」
「いいのいいの! すぐ出来るから待っててぇ」
そう言うと、レイはパタパタと台所へと向かった。
そんなレイの姿をテーブルに頬杖を付きニヤニヤしながら眺めるアル。
シナモンはそんなアルを見て声をかけた。
「ちょっと! レイ様とは、どんな関係なのです? とても夫婦には見えないのです!」
少し怒りの籠もった口調で、アルヘとジト目を向けるシナモン。
「あほか! 夫婦な訳ねーだろ」
「じゃぁ何なのです? レイ様はこの家の主なのですよね?」
「何って言われても…… まぁ、居候みたいなもんか?」
「居候! しっ、仕事は何してるです?」
「仕事? 仕事は特に何も」
「最低なのです! クソ野郎なのです」
アルが言葉を言い終わる前にシナモンが軽蔑の眼差しで暴言を吐く。
「ちょっ! おまっ!」
アルの抗議も虚しく、シナモンはプイッと明後日の方向を向いていた。
レイが台所へ向かってこのやり取りが終わるまで時間にして、一分程度。
「出来たよー!」
ドンッ……
レイが少し大きめの丼に入った得意料理を持ってくる。
そのあまりの速さ、出された料理の雑さに、シナモンは小さな声で呟いた。
「すぐ出来すぎなのです…… これは料理とは言わないのです……」
レイに聞こえない程度の小さな声で呟いたシナモンは黙って雑炊をすすっていた。
玄関先でずぶ濡れのまま、アルに抗議するシナモン。
その様子を自室の入り口の影から、ジッと見つめるレイの姿があった。
レイは可愛い少女であるシナモンの姿を見て、トコトコと玄関先へとやってきた。
「かっ…… 可愛い…… シナモンちゃんって言うの?」
「はっ、はいです。 あっ、あの…… 貴女は……?」
「私はレイ! まぁ一応、この家の主みたいなものかな?」
笑顔でニコッと微笑みかけるレイの表情を見て、シナモンは歓喜の表情を浮かべていた。
「あっ、貴女がレイ様ですか? あっ、あの…… バレリア様から聞いてやってきたです」
「へっ? お姉ちゃんの?」
少し驚いた表情で答えたレイ。
しかし、それ以上にシナモンは驚きの表情に変わる。
「バレリア様の妹君ですか? しっ、失礼しましたです」
急に慌てて頭を下げるシナモンの姿に、レイは少し恐縮した様子を見せていた。
「まっ、まぁまぁ。 ところで、お姉ちゃんからはなんて?」
疑問の表情で答えるレイに、アルはチョンチョンと肘打ちして耳打ちする。
「おっ、おい。 何か厄介事の予感がするぞ…… あんまり深く関わらん方が……」
人のヒソヒソ話というのは得てして、他人にも聞こえやすい物。
アルの発言がハッキリと耳に入ったシナモンは、ジトっとした目でアルを睨みつける。
「聞こえてるですよ。 とっ、とにかく、雨宿りさせて欲しいのです」
「えっ? あっ、悪いな…… って言っても、あの人数をこの家にはなぁ……」
アルは玄関先から見える人影達に目を向ける。
風雨は少し収まって来たとは言え、ずぶ濡れに近い十数人の人影。
とても、レイ達の家に入りきれるとは思えなかった。
「あっ! それなら集会場が良いかも! 結構、綺麗に残っててさ」
レイは玄関先から見える、少し大きめの建物を指差す。
外見こそレイ達の住む家よりかは煤けているが、中は綺麗だと太鼓判を押していた。
「ちょっと待ってね」
レイは自室に戻ると、大きめの手ぬぐいと着替えを一組持ち出す。
それをシナモンへと手渡すと……
「私があの人達を集会場に案内するからさ! シナモンちゃんは着替えて待ってて」
「えっ、あの」
「すぐ戻るからーー」
シナモンが制止するのも聞かずに、レイは人影達の元へと駆けて行った。
そのレイの後ろ姿を見つめていた、アルとシナモン。
数秒の沈黙を挟んで、アルがシナモンへと声をかけた。
「まぁ…… とりあえず入れば?」
「はい、なのです」
その言葉を聞いて、シナモンは濡れたマントを玄関先に置き、居間へと上がりこんだ。
シナモンは生活感のある居間の中を、キョロキョロと見回す。
久しぶりに訪れたの人家の様子に、少し安心した様子を見せていた。
「おーい、茶でも飲むかーー?」
台所に居たアルが、シナモンへと声をかける。
「えっ? あっ、だっ、大丈夫なのです」
「そっか。 欲しかったら言えよーー」
「はいなのです。 おっ、お手数おかけするです」
(顔に変な模様があるですが…… 見た目と違って良い人かもなのです)
急に声をかけられ、少し焦ったように返答するシナモン。
水滴が垂れるという程ではないが、衣服は水を含み重くなっていた。
まずは着替えからと思っていたシナモンは、受け取った衣服を床に置く。
着替えの準備をし始めるシナモンを他所に、アルは台所で自分の茶だけを用意していた。
居間へとやってきたアルは、テーブルの前に腰掛けると湯呑を手にする。
自分で入れた濃いめの茶を飲みながら、何気無くボーッとシナモンを眺めていた。
「まずは…… 髪の毛を拭かなきゃ…… なのです……」
その視線に気付く事無く、手ぬぐいで髪を拭くシナモン。
髪を拭き終えたシナモンは、濡れていた上着を脱ぐ。
中に着ていた薄着まで濡れ、シナモンの白い肌が薄っすらと透けていた。
その姿を見たアルは、ハッと気が付いて思わず立ち上がる。
「おっ、おい」
「なっ、なんなのです」
突然声をかけられたシナモンは、少し驚いた様子を見せた。
そしてハッと自分の肌が透けた姿に気付き、思わず叫びだす。
「あっ…… アァァァァ! 何見てるですか! このバカ! アホ! スケベッ!!」
「えっ? あぁ、そうじゃなく」
ガラガラガラガラ…… バッターン!!
シナモンの大きな声がしてすぐ、勢いよく玄関を開ける音がする。
ドタドタ… キィーーーー!!
大きな音を立て廊下をかけ、少し滑りながら居間の前へとやってきたのはレイだった。
「アルゥゥゥゥゥゥ」
鬼のような形相でアルを睨みつけたレイは、シナモンの元へとやってくる。
そしてシナモンを隠すようにギュッと胸に抱くと、レイはキッとアルを睨みつけた。
「あなたって人はぁぁぁぁ」
怒りの籠もった声でアルを睨みつけるレイ。
それに釣られレイに抱かれたシナモンも腕の影から、軽蔑の眼差しをアルへと向ける。
「はぁ………… 何、勘違いしてんだ……」
アルは二人の様子を見て落ち着きを取り戻すと、再び座り茶をすする。
「何、誤魔化そうとしてるですか! 私に襲いかかろうとしてたです」
キッと睨みつけるシナモンに、アルは少し呆れたように返答した。
「あほか。 何で俺が寸胴、まな板みたいなチンチクリンのガキに……」
「なっ!! 何言うですか、このスケベ! バカッ!」
暗に子供のようなスタイルだと言われ、顔を真っ赤にしながら怒るシナモン。
呆れて返答するアルに対し、レイが軽蔑の眼差しを向ける。
「ふぅん。 という事は…… しっかり見てたんだねぇ。 へぇぇ……」
「最低なのです」
女子二人に問い詰められたアルは、少しだけ気不味そうな表情に変わる。
「えっ…… いや、ちょっと待てって。 俺が言いたいのはだなぁ」
アルは弁解するように、レイに抱かれるシナモンを指差す。
その指先は、シナモンの右腕に向けられていた。
「なっ、なんなのです」
「お前のソレ。 【烙印】って奴じゃないのか?」
濡れて透けた衣服の下にはレイと同じような【烙印】が見える。
その言葉を聞いたレイも思わずシナモンの右腕へと視線を下ろす。
「えっ? あっ…… 本当だ」
はっきりとした文字は見えないが、確かにそれは【烙印】のようだ。
シナモンはそれを見られた事に少し焦った様子で慌てて左手で隠した。
「えっと…… あのですね……」
急に口籠るシナモンの頭をポンポンと撫でると、レイは笑顔で話しかけた。
「シナモンちゃんも持ってるんだ? えへへぇ。 仲間だねぇ」
「へっ?」
ニコッと笑いかけるレイの表情を見て、シナモンは呆気にとられた様子だ。
「レっ、レイ様も持ってるですか?」
「うん! 私のはこれ!」
レイは抱いていたシナモンを話すと、自分の右腕の袖をまくりあげる。
そして二の腕付近まで袖を上げ、【剛】の【烙印】をシナモンに見せつける。
「ほっ、本当なのです…… 私のと似てるです」
「うん! 仲間仲間! シナモンちゃんのは?」
「えっ?」
レイがシナモンへ見せるように促すと、少し驚いた様子を見せるシナモン。
そして、その表情が驚きから疑問へと変わるとレイへと問いかけた。
「なっ、何で隠さないですか? 女の【烙印】は隠すべきものと教わったです」
その言葉を聞いてレイもシナモン同様、驚いた表情に変わる。
「えっ? そうなの? アルは知ってた?」
「知るわけないだろ!」
二人のやり取りを聞いたシナモンは、レイとアルの表情を見回すと……
「なっ、何か変わってるですね。 二人とも……」
まるで知らない事が不思議なように、シナモンは少し呆れた表情に変わっていった。
「ちなみに、何で隠さないとダメなんだ? 何か問題でも?」
呆れた表情のシナモンに対し、アルは疑問を浮かべた表情で問い掛けた。
するとシナモンは目を瞑り、右人差し指を立てながら話し始める。
「女の【烙印】をさらけ出していると、悪魔がやってきてハラワタを抜き取られるですよ」
シナモンの言葉を聞き、レイは少し驚いた表情で思わず腹部を抑えていた。
一方のアルは急に呆れた表情に変わり、小さく溜息を吐きながら呟く。
「何だよそれ。 言う事聞かない悪い子は、夜中迎えにくるような話だろ? やっぱガキだな……」
「ふんっ。 変態には言われたくないのですよ」
シナモンは少し怒ったように鼻を鳴らし、そっぽを向いていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
改めてシナモンがレイの部屋で着替えを済ませ、居間へとやってくる。
テーブルにはアルが入れた濃いめの茶が入った湯呑が三つ。
そして買い置きしておいたクッキーのようなお菓子が置いてある。
「あっ、あの…… あの方達は?」
シナモンは一緒に居た人影達の様子を気にし、レイに尋ねる。
「えっと、さすがに人数分の着替えは無いから、囲炉裏に火を付けてぇ」
レイは右人差し指を顎に当て、少し上に目線を向け思い出すように話す。
「集会場にある大きめの浴槽にも火を入れてぇ…… 簡単な食事も用意しといたよ?」
「あっ、ありがとなのです! もう丸一日、食事も取ってなかったのです……」
シナモンはそう言いながら、テーブルに置かれたクッキーを食い入るように見つめる。
その様子を見ていたアルがレイへと言葉をかけた。
「あれ作ってやれよ! レイの得意料理。 ぷっ……」
アルは意地悪そうに少し嫌味を込めた口調でレイに話しかける。
レイはアルのその様子を見て、少しムッとした表情に変わる。
「ふんっ! あれだって美味しいんだから! いいもん」
少し拗ねた様子をアルに見せていたが、パッと明るい表情に変わりシナモンに言葉をかけた。
「ちょっと待っててね! 今、料理してくるから」
「えっ、あの…… そんな申し訳」
「いいのいいの! すぐ出来るから待っててぇ」
そう言うと、レイはパタパタと台所へと向かった。
そんなレイの姿をテーブルに頬杖を付きニヤニヤしながら眺めるアル。
シナモンはそんなアルを見て声をかけた。
「ちょっと! レイ様とは、どんな関係なのです? とても夫婦には見えないのです!」
少し怒りの籠もった口調で、アルヘとジト目を向けるシナモン。
「あほか! 夫婦な訳ねーだろ」
「じゃぁ何なのです? レイ様はこの家の主なのですよね?」
「何って言われても…… まぁ、居候みたいなもんか?」
「居候! しっ、仕事は何してるです?」
「仕事? 仕事は特に何も」
「最低なのです! クソ野郎なのです」
アルが言葉を言い終わる前にシナモンが軽蔑の眼差しで暴言を吐く。
「ちょっ! おまっ!」
アルの抗議も虚しく、シナモンはプイッと明後日の方向を向いていた。
レイが台所へ向かってこのやり取りが終わるまで時間にして、一分程度。
「出来たよー!」
ドンッ……
レイが少し大きめの丼に入った得意料理を持ってくる。
そのあまりの速さ、出された料理の雑さに、シナモンは小さな声で呟いた。
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それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
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