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お城奪還編
第26話 幼い剣士リナ
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「…………」
バレリア達の前に姿を現した剣士は、無言のままバレリア達の元へ近付く。
「怪我は平気なの?」
剣士の様子を見て、バレリアが声をかける。
どうやらバレリアには、剣士がまだ幼い少女であるという事だけは分かっているようだ。
その為、子供を心配するような態度で剣士に接していた。
「…………」
剣士は無言のまま頷くと、その場を立ち去ろうとする。
「ちょっと待たれよ」
ワンは馬上から剣士へと声をかける。
「詳しい事情はよく分からんが…… そなた、あの者達の縁者か?」
ワンは徐々に小さくなるシナモン一行を指差し、剣士に問いかけた。
「…………うん」
消え入りそうな、とても小さな声で答える剣士。
その返答は、感情が欠落しているように印象付けた。
「そうか…… あの者達の行く先の事は…… 聞いておったかの?」
「…………」
剣士は無言のまま静かに首を横に振る。
その様子を見ていたバレリアは、少し呆れたように声をかける。
「それなら一緒に行けば良いのに。 まぁ何か事情があるんだろうけどさ」
「…………うん」
「アタシ達は先を急ぐけど、あの子達の事はキミに任せて良いの?」
バレリアは、優しく子供をあやすような態度で剣士に接していた。
それはレイに対するような態度とも違い、少しだけ母性を感じさせる表情。
「…………はい」
その様子に何か感じるものがあったのか、剣士は敬語で返答する。
「そっか。 分かった。 でも一つだけ良い?」
そう言うと、バレリアはゆっくりと剣士に近付く。
フードを被っていて表情までは伺い知れないが、背丈はバレリアより少し低いようだ。
そんな剣士の頭をポンポンと優しく叩きながら、バレリアは言葉を続けた。
「少しキミは自棄になった戦い方をしてる気がする。 何があったか知らないけどさ」
そう言うと、バレリアは真剣な表情に変わる。
「戦場では死なない奴が一番強いの。 だから命をかけて戦うなんて事しちゃ駄目。 良い?」
「…………」
バレリアのその言葉に肯定も否定もせず、ただただ押し黙る剣士。
数秒の沈黙を挟んで、剣士はゆっくりと口を開いた。
「……でも。 リナには…… しないといけない事が…… あるから」
まるで何かを覚悟しているように、少しだけ感情を籠めて言葉を発する剣士。
自分の事をリナと言う幼い剣士の言葉を聞いて、バレリアはニヤっと白い歯を見せる。
「でしょ? だったら生きなきゃ! その、しないといけない何かの為にもね」
そう言うと、再びバレリアはリナの頭をポンポンっと撫でる。
すると少し照れたような様子で、俯きながらバレリアへと声をかけた。
「あの…… 助けてくれて…… ありがと……」
ポソっと呟くようにお礼を言うリナ。
その様子を見てバレリアは、少しだけ満足そうな表情を見せていた。
「シナモンって言ったっけ? あの子達の行く先に居る奴は、まぁまぁ頼りになるからさ」
「…………」
「リナって呼んでも良いかな? リナもソイツに色々話してみると良いよ! ねっ」
「……うん」
バレリアのあっけらかんとした表情を見て、少しだけ感情の籠もった返事をするリナ。
「さて、そろそろええかの?」
「あっ、はい! 行きましょうか」
馬上から二人の様子を見ていたワンは、おもむろに荷物を漁る。
そして、布袋に入った食料の袋をリナへと投げ渡した。
「あの者達と一緒じゃないなら、食事も満足に取れまい。 少しじゃが持っていきなされ」
ワンは笑顔でリナにそう言葉をかけると、リナは無言のまま会釈をする。
「じゃぁね! あっ、レイちゃんっていう可愛い子とは、喧嘩しちゃ駄目だよ」
「…………」
再度、無言のまま会釈したリナは、振り返る事なくシナモン一行の後を追い、歩を進めた。
ワンはリナの後ろ姿を見ると、長く伸びた白い髭を触りながら……
(リナ…… というと。 もしかすると……)
何かを考えるような表情のワンに、バレリアが気を取り直したように声をかけた。
「さてと。 じゃ主様、行きましょうか!」
笑顔でワンの乗る馬の手綱を握ると、バレリアはゆっくりと歩を進める。
その様子を馬上から見ていたワンは、少し気不味そうな表情で声をかける。
「本当に良いのか?」
「えっ? 何がです?」
「もう何年になるかの…… お主も、あのまま帝国に居ったら、今頃は……」
少し気不味そうに声をかけたワンとは対象的に、バレリアは笑顔で答える。
「良いんです! アタシは自分の選択は間違ってないって思ってますし。 それに……」
そう言うと、少しだけ真剣な表情に変わるバレリア。
そして、ゆっくりと話しの続きを始める。
「これからの事も。 アタシは自分の信じた道を行くだけですから」
「そうか。 うむ。 それもそうじゃの」
ワンはそれ以上バレリアへ追求する事はせず、別な話題を始める。
「それにしてもレイ達は、上手くやっとるかのぅ」
レイの話題を出され、バレリアは少し思い出すように話を始める。
「もしアルがレイちゃんに手出してたら…… その時は戻りますね……」
「うっ、うむ。 お主も相変わらずじゃの」
呆れたように笑うワンとバレリアは、ニノカミ神聖国への道のりをゆっくりと進んでいく。
これが、アルとシナモンが出会う三日前の出来事の顛末だった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
バレリア達が集落跡を出発して四日目の朝。
その日は明け方から小雨が降り、吹く風も少し強く感じられた。
草木が風に揺られ、葉の裏の白い部分が顕になると、空中には抜け落ちた葉が舞う。
旅路には向かない天候の中、アルはゆっくりと目を覚ました。
「ふぁぁぁ…… 今日はまた…… 天気が悪そうだなぁ……」
雨戸を締め切った薄暗い部屋の中には、悪天候による為か雨戸がカタカタと揺れる音がした。
「さて…… 二度寝するか……」
そう呟きながら、ゆっくりと瞼を閉じムニャムニャと夢の続きを見ようとするアル。
そんなアルを起こしたのは、いつもながらの人物だった。
ドタドタドタドタドタ…… バタンッ!
少し大きめの足音がアルの部屋の前に止まると、勢い良く扉を開ける。
その音を聞いたアルは、目を瞑ったまま足音の主に声をかけた。
「あのなぁ…… もうちょっと静かに来れないのか?」
「そそそ…… それどころじゃないってば! ちょっと来て!!」
足音の主、レイは焦ったようにドタドタとアルの布団の前までやってくる。
そして、アルの布団を引っ剥がすと……
「なっ…… いつの間に、こんな物…… んーっもぉ」
布団を剥がすと、アルはお手製の抱き枕のような物を抱いて眠っていた。
レイはアルがしがみつく抱き枕の端をムンズっと掴むと、そのまま居間へと連行する。
ズルズルズルズル……
まるで人間モップのように引きずられるアル。
「あのなぁ…… 着替え位させてくれたって」
「シーッ! 良いから。 ちょっと来て!」
先程、ドタドタと音を立てていたのに、今度は急に静かにするように言うレイ。
レイのその様子を見て、アルはあまり良い予感がしなかった。
(はぁ…… また何か問題かぁ?)
バレリア達が出発して三日目の昨夜は、徹夜をしていた。
明け方近くまで文字の習得に勤しんだアルは、若干の疲労を感じていた。
おかげで文字の習得があらかた済んだアル。
今日はのんびり出来ると思っていた為、少し不満な様子を見せていた。
「ちょ、ちょっと。 ここから覗いてみて! そっとだよ」
居間へとアルを引きずってきたレイは、居間の大きな窓の前でアルを離す。
雨戸が締め切られ、ランプの明かりが点いた居間。
僅かに外の明かりが差し込む雨戸の隙間を、レイはそっと覗くようにアルへ告げた。
「んーーっ? 一体なに」
「だからシーって! 静かに」
「いや…… レイの声の方がデカイだろ……」
アルは眠そうに頭をポリポリと掻くと、言われるままに雨戸の隙間を覗いた。
「んっ? あれは……」
家から少し離れた場所には、小柄な人影が十数名居た。
風雨に晒され、濡れたマントが身体に張り付いているように見える。
二人が覗く雨戸の先に居た人影の中の一人が、辺りを見回しながら大声で叫ぶ。
「あっ、あのーー! アルさーーん! アルさんは居るですかーー?」
その言葉にレイとアルは顔を見合わせる。
「えっと…… アルの知り合い?」
少し頭をかしげながら、アルヘ問いかけるレイ。
「んな訳無いだろ」
「でっ、でもアルの名前を」
「いや…… アルって、お前がつけたんだろ……」
「あっ、そうか! えーーっ? だっ、誰だろ? 女の子みたいだけど……」
外は風雨の為に、二人が話す声が漏れたという訳では無かった。
ただ、雨戸の隙間から外へと漏れたランプの明かりが、人影達の目に止まる。
「んっ? こっちに来るぞ」
人影の中で叫んでいた女の子が、アル達の家の方へとやってくる。
そして玄関の前に立ち止まると、ドンドンと戸を叩いた。
「ごっ、ごめんくださいなのです!」
玄関先で声を出す女の子に対し、アルは大きな声で返答した。
「あーーーい。 今開けるよーー」
何気なく返答するアルに、レイは少し焦ったような口調で話しかける。
「ちょっ、ちょっと! 大丈夫なの? 変な人とかだったら……」
「いやぁ…… 男だったら出ないけど。 大丈夫だろ…… 多分」
アルはゆっくりと玄関まで向かい、施錠を外す。
その間レイは自室へ向かい、愛用のメイスを握りしめていた。
(おっおい…… いきなり襲いかかったりするなよ……)
その様子を見て、少し不安になったアルだったが
ガラガラガラガラ……
アルが戸を開く前に、外に居た女の子が玄関の戸を開く。
そして雨で濡れたフードを脱ぐと、その正体は可愛らしい女の子だった。
「えっと…… どちらさん?」
アルがその女の子に声をかけると、女の子は少しだけ不思議そうな表情で見つめていた。
それは恐らくアルの顔に描かれた模様のせいだと、推測される。
「あっ、貴方がアルさん…… ですか?」
「まぁ…… 一応……」
「たっ、助かったのです…… 私はシナモンと言うのです。 あの……」
シナモンがアルへ言葉の続きを話そうとした瞬間、アルは反射的に返答した。
「とりあえず…… 無理かな……」
「へっ?」
何か厄介事に巻き込まれそうな予感がしたアルは、本能的に断りを入れたのだった。
バレリア達の前に姿を現した剣士は、無言のままバレリア達の元へ近付く。
「怪我は平気なの?」
剣士の様子を見て、バレリアが声をかける。
どうやらバレリアには、剣士がまだ幼い少女であるという事だけは分かっているようだ。
その為、子供を心配するような態度で剣士に接していた。
「…………」
剣士は無言のまま頷くと、その場を立ち去ろうとする。
「ちょっと待たれよ」
ワンは馬上から剣士へと声をかける。
「詳しい事情はよく分からんが…… そなた、あの者達の縁者か?」
ワンは徐々に小さくなるシナモン一行を指差し、剣士に問いかけた。
「…………うん」
消え入りそうな、とても小さな声で答える剣士。
その返答は、感情が欠落しているように印象付けた。
「そうか…… あの者達の行く先の事は…… 聞いておったかの?」
「…………」
剣士は無言のまま静かに首を横に振る。
その様子を見ていたバレリアは、少し呆れたように声をかける。
「それなら一緒に行けば良いのに。 まぁ何か事情があるんだろうけどさ」
「…………うん」
「アタシ達は先を急ぐけど、あの子達の事はキミに任せて良いの?」
バレリアは、優しく子供をあやすような態度で剣士に接していた。
それはレイに対するような態度とも違い、少しだけ母性を感じさせる表情。
「…………はい」
その様子に何か感じるものがあったのか、剣士は敬語で返答する。
「そっか。 分かった。 でも一つだけ良い?」
そう言うと、バレリアはゆっくりと剣士に近付く。
フードを被っていて表情までは伺い知れないが、背丈はバレリアより少し低いようだ。
そんな剣士の頭をポンポンと優しく叩きながら、バレリアは言葉を続けた。
「少しキミは自棄になった戦い方をしてる気がする。 何があったか知らないけどさ」
そう言うと、バレリアは真剣な表情に変わる。
「戦場では死なない奴が一番強いの。 だから命をかけて戦うなんて事しちゃ駄目。 良い?」
「…………」
バレリアのその言葉に肯定も否定もせず、ただただ押し黙る剣士。
数秒の沈黙を挟んで、剣士はゆっくりと口を開いた。
「……でも。 リナには…… しないといけない事が…… あるから」
まるで何かを覚悟しているように、少しだけ感情を籠めて言葉を発する剣士。
自分の事をリナと言う幼い剣士の言葉を聞いて、バレリアはニヤっと白い歯を見せる。
「でしょ? だったら生きなきゃ! その、しないといけない何かの為にもね」
そう言うと、再びバレリアはリナの頭をポンポンっと撫でる。
すると少し照れたような様子で、俯きながらバレリアへと声をかけた。
「あの…… 助けてくれて…… ありがと……」
ポソっと呟くようにお礼を言うリナ。
その様子を見てバレリアは、少しだけ満足そうな表情を見せていた。
「シナモンって言ったっけ? あの子達の行く先に居る奴は、まぁまぁ頼りになるからさ」
「…………」
「リナって呼んでも良いかな? リナもソイツに色々話してみると良いよ! ねっ」
「……うん」
バレリアのあっけらかんとした表情を見て、少しだけ感情の籠もった返事をするリナ。
「さて、そろそろええかの?」
「あっ、はい! 行きましょうか」
馬上から二人の様子を見ていたワンは、おもむろに荷物を漁る。
そして、布袋に入った食料の袋をリナへと投げ渡した。
「あの者達と一緒じゃないなら、食事も満足に取れまい。 少しじゃが持っていきなされ」
ワンは笑顔でリナにそう言葉をかけると、リナは無言のまま会釈をする。
「じゃぁね! あっ、レイちゃんっていう可愛い子とは、喧嘩しちゃ駄目だよ」
「…………」
再度、無言のまま会釈したリナは、振り返る事なくシナモン一行の後を追い、歩を進めた。
ワンはリナの後ろ姿を見ると、長く伸びた白い髭を触りながら……
(リナ…… というと。 もしかすると……)
何かを考えるような表情のワンに、バレリアが気を取り直したように声をかけた。
「さてと。 じゃ主様、行きましょうか!」
笑顔でワンの乗る馬の手綱を握ると、バレリアはゆっくりと歩を進める。
その様子を馬上から見ていたワンは、少し気不味そうな表情で声をかける。
「本当に良いのか?」
「えっ? 何がです?」
「もう何年になるかの…… お主も、あのまま帝国に居ったら、今頃は……」
少し気不味そうに声をかけたワンとは対象的に、バレリアは笑顔で答える。
「良いんです! アタシは自分の選択は間違ってないって思ってますし。 それに……」
そう言うと、少しだけ真剣な表情に変わるバレリア。
そして、ゆっくりと話しの続きを始める。
「これからの事も。 アタシは自分の信じた道を行くだけですから」
「そうか。 うむ。 それもそうじゃの」
ワンはそれ以上バレリアへ追求する事はせず、別な話題を始める。
「それにしてもレイ達は、上手くやっとるかのぅ」
レイの話題を出され、バレリアは少し思い出すように話を始める。
「もしアルがレイちゃんに手出してたら…… その時は戻りますね……」
「うっ、うむ。 お主も相変わらずじゃの」
呆れたように笑うワンとバレリアは、ニノカミ神聖国への道のりをゆっくりと進んでいく。
これが、アルとシナモンが出会う三日前の出来事の顛末だった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
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その日は明け方から小雨が降り、吹く風も少し強く感じられた。
草木が風に揺られ、葉の裏の白い部分が顕になると、空中には抜け落ちた葉が舞う。
旅路には向かない天候の中、アルはゆっくりと目を覚ました。
「ふぁぁぁ…… 今日はまた…… 天気が悪そうだなぁ……」
雨戸を締め切った薄暗い部屋の中には、悪天候による為か雨戸がカタカタと揺れる音がした。
「さて…… 二度寝するか……」
そう呟きながら、ゆっくりと瞼を閉じムニャムニャと夢の続きを見ようとするアル。
そんなアルを起こしたのは、いつもながらの人物だった。
ドタドタドタドタドタ…… バタンッ!
少し大きめの足音がアルの部屋の前に止まると、勢い良く扉を開ける。
その音を聞いたアルは、目を瞑ったまま足音の主に声をかけた。
「あのなぁ…… もうちょっと静かに来れないのか?」
「そそそ…… それどころじゃないってば! ちょっと来て!!」
足音の主、レイは焦ったようにドタドタとアルの布団の前までやってくる。
そして、アルの布団を引っ剥がすと……
「なっ…… いつの間に、こんな物…… んーっもぉ」
布団を剥がすと、アルはお手製の抱き枕のような物を抱いて眠っていた。
レイはアルがしがみつく抱き枕の端をムンズっと掴むと、そのまま居間へと連行する。
ズルズルズルズル……
まるで人間モップのように引きずられるアル。
「あのなぁ…… 着替え位させてくれたって」
「シーッ! 良いから。 ちょっと来て!」
先程、ドタドタと音を立てていたのに、今度は急に静かにするように言うレイ。
レイのその様子を見て、アルはあまり良い予感がしなかった。
(はぁ…… また何か問題かぁ?)
バレリア達が出発して三日目の昨夜は、徹夜をしていた。
明け方近くまで文字の習得に勤しんだアルは、若干の疲労を感じていた。
おかげで文字の習得があらかた済んだアル。
今日はのんびり出来ると思っていた為、少し不満な様子を見せていた。
「ちょ、ちょっと。 ここから覗いてみて! そっとだよ」
居間へとアルを引きずってきたレイは、居間の大きな窓の前でアルを離す。
雨戸が締め切られ、ランプの明かりが点いた居間。
僅かに外の明かりが差し込む雨戸の隙間を、レイはそっと覗くようにアルへ告げた。
「んーーっ? 一体なに」
「だからシーって! 静かに」
「いや…… レイの声の方がデカイだろ……」
アルは眠そうに頭をポリポリと掻くと、言われるままに雨戸の隙間を覗いた。
「んっ? あれは……」
家から少し離れた場所には、小柄な人影が十数名居た。
風雨に晒され、濡れたマントが身体に張り付いているように見える。
二人が覗く雨戸の先に居た人影の中の一人が、辺りを見回しながら大声で叫ぶ。
「あっ、あのーー! アルさーーん! アルさんは居るですかーー?」
その言葉にレイとアルは顔を見合わせる。
「えっと…… アルの知り合い?」
少し頭をかしげながら、アルヘ問いかけるレイ。
「んな訳無いだろ」
「でっ、でもアルの名前を」
「いや…… アルって、お前がつけたんだろ……」
「あっ、そうか! えーーっ? だっ、誰だろ? 女の子みたいだけど……」
外は風雨の為に、二人が話す声が漏れたという訳では無かった。
ただ、雨戸の隙間から外へと漏れたランプの明かりが、人影達の目に止まる。
「んっ? こっちに来るぞ」
人影の中で叫んでいた女の子が、アル達の家の方へとやってくる。
そして玄関の前に立ち止まると、ドンドンと戸を叩いた。
「ごっ、ごめんくださいなのです!」
玄関先で声を出す女の子に対し、アルは大きな声で返答した。
「あーーーい。 今開けるよーー」
何気なく返答するアルに、レイは少し焦ったような口調で話しかける。
「ちょっ、ちょっと! 大丈夫なの? 変な人とかだったら……」
「いやぁ…… 男だったら出ないけど。 大丈夫だろ…… 多分」
アルはゆっくりと玄関まで向かい、施錠を外す。
その間レイは自室へ向かい、愛用のメイスを握りしめていた。
(おっおい…… いきなり襲いかかったりするなよ……)
その様子を見て、少し不安になったアルだったが
ガラガラガラガラ……
アルが戸を開く前に、外に居た女の子が玄関の戸を開く。
そして雨で濡れたフードを脱ぐと、その正体は可愛らしい女の子だった。
「えっと…… どちらさん?」
アルがその女の子に声をかけると、女の子は少しだけ不思議そうな表情で見つめていた。
それは恐らくアルの顔に描かれた模様のせいだと、推測される。
「あっ、貴方がアルさん…… ですか?」
「まぁ…… 一応……」
「たっ、助かったのです…… 私はシナモンと言うのです。 あの……」
シナモンがアルへ言葉の続きを話そうとした瞬間、アルは反射的に返答した。
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