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お城奪還編
第50話 城壁
しおりを挟むヒューーーーーーー…… パァーーーーーーーン……
ゼニールの居城、アストリナ城の上空に何かが弾ける音と共に、青い小さな雲が出現した。
弾ける音を聞いた兵士は立ち尽くしたまま、アストリナ城の上空に浮かぶ青い雲を眺める。
「帰還の合図か…… 何かあったのか?」
「分からん。 っが、急いで戻らないとな」
アストリナ城の上空を眺め、アル達に背を向ける兵士達。
(今なら隙だらけだけど…… あれは……?)
アル達も釣られるように青い雲を眺めていると、兵士達が振り向きアル達へ視線を送る。
そしてアルから受け取った身分証を投げつけると、銀貨の入った袋をチラつかせ……
「おいっ。 もう一袋、寄越せ」
恫喝するような兵士の態度にアルは笑顔を向けると、後ろに控えるシナモンに目配せする。
すると少し不満げな表情のシナモンが、懐から銀貨の入った袋を取り出しアルに手渡す。
「どうぞ」
「ふんっ」
兵士は差し出された銀貨の入った袋を、アルから取り上げると吐き捨てるように言葉を発する。
「良いか? 俺達はお前達には会ってない。 お前達もここでは誰にも会ってない。 良いな?」
「もちろんですとも」
槍の切っ先を向け脅すように話す兵士に、アルは笑顔で返答した。
兵士は取り上げた銀貨の袋を片割れの兵士に手渡すと、ニヤッとした表情で目を合わせる。
「よし。 じゃ帰還するぞ」
「あぁ」
そう言葉を交わし無言で頷くと、急ぐように来た道を引き返し城へと帰還していった。
アル達はその場で兵士達の姿が小さくなるのを確認する。
そして兵士の姿が消えた途端、アルは「ふぅ……」と大きな溜息を吐いた。
「何とかなったなぁ。 いやぁ良かった良かった」
「全然良くないのですよ! ウルスラは人身売買は」
「まぁまぁシナモンちゃん! 落ち着いて落ち着いて」
「んぐぐ」
怒るシナモンを宥めるように、両肩をポンポンと掌で叩くレイ。
そしてフードを被っていたリナとアズサがフードを脱ぐと、アルと同様に溜息を吐いていた。
「どうするの……? お城…… 行くの?」
リナは無表情のままアルに言葉をかけると、アルは腕を組み右手で顎を触りながら返答する。
「いや、ここまで来たけど…… 城に兵士が集まってるみたいだし…… 難しいな」
「そう…… じゃ…… どうする?」
「仕方ないな…… 一旦、戻るか。 まだ日にちはあるしな」
少しガッカリした様子のアル達の会話を聞いていたアズサは、キョトンとした表情で問いかける。
「ねぇ? キミ達は一体、何者? 何か奴隷商人って感じでも無さそうだけど……」
売り物であるはずのリナと、商人であるはずのアル。
その不思議な関係性に疑問を抱いたアズサ。
「あっ、あぁ。 そういやアズサが居たんだったな…… まぁ…… 良いよな?」
アルはレイとシナモン、そしてリナに視線を送ると、三人は無言で頷く。
「んじゃ、とりあえず…… ちょっと移動して休憩だな」
アル達は来た道を引き返し、集落跡に続く帰路を進んでいった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
太陽が高く上り正午を少し過ぎた頃、道中にある少し開けた場所で昼食を取る事にした一行。
小川が流れ、新緑の絨毯がそよ風になびく場所での昼食は、さながらピクニックといった感じだ。
「ねっ、ねぇ。 ボク、お弁当とか準備して無いんだけど……」
車座になって座るアル達の中に紛れ込んだアズサは、少し気不味そうに呟く。
その言葉を聞いたシナモンは、にこやかな表情でアズサに声をかけた。
「多めに作ったので大丈夫なのです! アズサ様の分もあるですよ」
「本当に? いやぁ、キミも良い子だねぇ」
穀物を挽いて粉にした物に卵や水を加え、焼いた物。
いわゆるパンに具材を挟んだサンドイッチを頬張りながら、アズサがアルに問いかけた。
「それでキミ達は一体、何者なのかな? ゼニールの仲間って訳じゃなさそうだけど」
頬にパンを付けたアズサがそう問いかけると、アルはチラッとリナに視線を送る。
アルの隣に座るリナはその視線に気付き、アズサに聞こえない声量でアルに耳打ちする。
「私の正体は…… 秘密…… 言わないで……」
「えっ? あぁ」
リナの言葉を聞いたアルは、どのようにアズサに説明すべきか思案していた。
そしてアズサの出方を試すように、アルは話を始める。
「俺達は、ゼニールを城から追い出したいというか……」
言葉を濁すアルの言葉を聞いたアズサは、少し納得したような表情に変わる。
「なるほどなぁ。 まぁ評判悪いし、当然と言えば当然だよねぇ」
小さくウンウンと頷くアズサの様子を見たアルは、逆にアズサに問いかけてみる。
「んでアズサは? 何かゼニールと敵対してるみたいだけど……」
「当然でしょぉ? ボクはアストリナの第五将軍! の娘だもん」
アズサはそう言うと、両手を腰に当て胸を張る。
シナモンのそれとは違い、アズサのふくよかな胸が強調されアルの視線が思わず釘付けとなった。
それに気付いたレイがジトっとした目でアルを睨む。
「アルぅぅぅぅ?」
「えっ? あっあぁ。 何だ?」
誤魔化すように視線を反らすアルを見て、シナモンが軽蔑した視線で小さく呟く。
「最低なのですよ…… これだからアルさんは……」
そんなアル達の様子を見ていたアズサは、笑顔でアルに声をかける。
「そういやオジサン、アルって名前なんだね?」
「いや、オジサンじゃねーーし! っていうか、それがどうかしたか?」
「隣の子はリナって名前なんでしょ?」
アズサはそう言うと笑顔のまま、リナに視線を向ける。
リナはその視線に気付くと、無言のまま頷いていた。
「名前だけ聞くと、まるでアストリナ国のアルヴァイン王子と、リナリア王女みたいだなって思ってさぁ! 何か親近感湧くと思って」
その言葉を聞いたアルはチラッとリナに視線を送るが、リナは無表情のままだ。
(まぁ黙ってるだけで、騙す訳じゃないしな……)
そんな事を思いつつアルは、気を取り直してアズサへと問いかけた。
「んでアズサの目的は? ゼニールを追い出したいなら目的は一緒だけど」
アルの問いかけを聞いたアズサは、真剣な表情で返答する。
「追い出すってより、ボクは城を取り戻したいんだっ!」
「城を? なんでまた」
「そりゃアストリナ国を復興する為に決まってるでしょ? なんたってボクは……」
アルはアズサが再度将軍のという件を聞かず、思案していた。
(そこまで目的が一緒なら…… 協力して貰った方が良いよな……)
そしてアルはチラッとリナに視線を送ると、リナもアルを見て小さく頷いていた。
(決まりだな。 とは言えリナの正体を明かさずに、上手く説明しないと……)
アルは改めてアズサを見ると、上手く言葉を選びながら目的と経緯を説明していく。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
・アストリナ貴族を保護している事
・貴族達がゼニールに狙われている事
・その為にゼニールを捕らえようとしている事
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
アルの話を聞いたアズサは目を瞑り、真剣な表情で頷いていた。
そしてパッと目を開くと、アルに問いかける。
「なるほどなぁ。 それならボク達は協力した方が良いと思うけどぉ……」
少し渋ったような様子のアズサに、アルが疑問を浮かべた表情で言葉をかける。
「けど…… 何か問題でもあるのか?」
「んっ? いやぁ、どうやって捕らえるのかなぁって。 何か手立てでもあるのぉ?」
先程までの表情とは一変し、少し期待を込めたような表情で尋ねるアズサ。
「まぁな。 ただ城壁を越えて城内に侵入する方法が無くて、探りに来たって訳なんだけど」
少し気不味そうな表情で話すアルの言葉を聞いて、アズサの表情は明るくなる。
「じゃっ、じゃぁさ? もし城壁を越えて中に入れたら…… 捕らえられるのっ?」
「んっ? まぁ越えられたらな」
アルの返答を聞いたアズサは片目を瞑り、右人差し指を顔の前で振りながら……
「ボクが中まで連れてったげるよ!」
アズサの言葉を聞いたアル達は、ハッと驚いた表情でお互いの顔を見合わせる。
「あっ、アズサさんっ! そんな事が可能なの?」
「なのですよ! 城壁を越えられるですか?」
驚いたレイとシナモンが、詰め寄るようにアズサに問いかけた。
「もちろん! その代わり、城を手に入れる為にボクに協力する事! 約束出来る?」
アズサの言葉を聞いたアル達は、真剣な表情で頷いていた。
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