あるとれいと~絶対回避能力があるのに色々トラブルに巻き込まれちゃう男のお話~

上田るぅ

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お城奪還編

第66話 決行!

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 アストリナ城奪還、決行日。

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 この日は雲一つ無く晴れ渡り、風も無く穏やかな天候と言えた。

 狼煙を頼りにしているアル達にとって、絶好の天気となった日の正午前。

 目的地であるアストリナ城の謁見の間。

 玉座に座るゼニールに対し、レドルジが書簡を読み上げていた。

「……という事ですので。 城に残った兵の半分を、アストリナ貴族の確保に向かわせますね」

 涼し気な表情でアルの書簡を読み上げ、兵を分割する事を進言するレドルジ。

 その進言に対しゼニールは、不満そうな表情で声を荒らげていた。

「この城の警備はどうするゼニ? もう十人程度しか居らんゼニよ?」

「ご心配は無用ですよ? 私も残っておりますし、何よりアストリナの貴族の確保が重要でしょう?」

「それはそうゼニが……」

 レドルジの言葉に対し若干不満そうに頷くと、確かめるようにレドルジの顔を覗き込むゼニール。

「それと! あの化け物を正面扉に連れてきて、何するつもりゼニ?」

「まぁ国境の警備の強化や城壁があるとは言え、何があるか分かりませんので」

 そう言いながら小さく「ふふっ」と笑みを浮かべ、ゼニールに話を続けていく。

「仮にシグニア国の残党が城に侵入してきた時の保険…… とでも思って頂ければ」

「ふんっ。 まぁ良いゼニ。 ただし! 貴族共が城に来たら即刻、兵は戻すゼニよ?」

 ゼニールは吸っていた葉巻の先をレドルジの方へ向け、声を荒らげる。

「もちろん! アストリナの貴族達が来たら…… 兵は戻しますので、ご安心を」

 涼し気な表情で話すレドルジに対し、ゼニールは不機嫌そうな表情で鼻を鳴らしていた。

 そんな二人の居る謁見の間に、焦った様子の兵士が息を切らしながら駆け込んできた。

「ハァハァ…… もっ、申し上げます!」

「おやおや。 どうしました? そんなに慌てて」

 焦った様子の兵士を他所に、レドルジは冷静な表情で問いかける。

「はっ! あっ、あちこちから救援を告げる狼煙が上がっております! いっ、如何したら……」

「なぁっ! それは本当ゼニ!? どっ、どうするゼニ?」

 報告を聞いたゼニールは、兵士に釣られるように焦った表情に変わっていく。

 そんな二人の様子とは対象的に、レドルジは冷静な態度を崩す事は無い。

「わかりました。 それでは国境に居る者達は全て、集落跡に向かう兵の元に集まるようにして下さい。 多方で上がっているのであれば、全てに対応する事は無理でしょうからねぇ」

「しょっ、承知しました!」

 レドルジの言葉を聞いた兵士は、慌てた様子で謁見の間から引き返す。

 その二人のやり取りを聞いていたゼニールは、焦った様子でレドルジを問い詰める。

「なっ! 何言ってるゼニ! 国境の警備はどうするゼニ? シグニアの残党が入り込むゼニよ」

「ふふっ。 心配要りませんよ」

 レドルジの冷静な返答を聞いても、ゼニールの焦りは収まる様子が無い。

「しっ、心配あるゼニ! どうするつもりゼニ?」

「彼らの目的は不明ですが、少なくとも兵の命や、アストリナの貴族が目的では無い事は明白です。 それならば、今は貴族の確保を優先した方が良いのでは?」

 レドルジの言葉に対し、腕を組み眉間にシワを寄せながら思案するゼニール。

(まぁ…… 確かにアイツ等の目的は、どう考えてもワシの命ゼニ。 となると、貴族を確保して城の警備を固めるのが、最善かも知れないゼニね……)

 思案を重ねながら、チラッとレドルジに視線を送る。

(まぁ不本意ではあるゼニが…… もう少しだけコイツには、役に立って貰う必要があるゼニね)

 そして考えがまとまると、玉座に深く腰掛け大きく息を吐く。

「ふぅぅ…… 分かったゼニ。 その代わり、確実に貴族共をワシの前に連れてくるゼニよ!」

「その点はご安心を」

 ゼニールに対しレドルジは、小さく「ふふっ」と笑みをこぼしながら答えていた。

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 一方その頃、アストリナ城の城壁の近く。

 城壁の周りは綺麗に刈り揃えられた芝生が取り囲んでいたが、その脇は深い茂みになっている。

 その茂みの中で、周りの様子を伺いながら隠れるアル達の姿が見えた。

「アル! 見てあれっ! ディンゴさん達の合図だよね? きっと」

 レイは茂みの中から赤い煙の上がる方角を指差し、小さな声でアルの耳元で囁く。

「あぁ。 さっき集落の方に向かった馬車も見えたし…… この辺にも、見回りは居なそうだな」

 アルはレイの言葉に対し小さく頷くと、横に居るレイや後ろに控えるリナ達に視線を向ける。

 愛用のメイスを持ったレイに、サーベルを携えたリナ。

 アズサは白い弓を背負い、シナモンは木で出来た杖を持っていた。

「さて…… 集落からここまでの時間。 大体二時間が勝負だけど…… 覚悟は出来てるんだよな?」

 アルの言葉に対し皆は、無言のまま大きく頷く。

「よしっ……」

 皆の様子とは違いアルは少し緊張していたが、気を取り直し改めてアズサに視線を送る。

 真剣な表情のアズサに対し、アルは確かめるように小声で言葉をかけた。

「穴の開いた城壁ってのは、こっち側で良いのか?」

「うん! ほらっ! あの木見てっ!」

 アズサが指差す方向に、少し傷のついた一本の木が生えている。

「忘れないように目印付けておいたからさっ! 絶対だよっ!」

 少し大きな声で話すアズサに、レイとシナモンが右人差し指を鼻と口に当て静かにするよう促す。

「アズサ様! シーーっなのですよ」

「そうだよっ! アズサさんっ!」

 アズサより大きな声で話すレイとシナモンを見て、アルは呆れた表情に変わる。

「いや…… お前らもうるさいから…… リナ」

「……なに?」

 気を取り直したアルは、無表情のまま控えるリナに問いかける。

「城の内部に入る入り口ってのは…… どこにあるんだ?」

「こことは反対側…… 回り込めば分かる……」

 リナの言葉を聞いたアルは、溜息を吐き小さな声で呟く。

「まじか…… まぁ最悪…… 俺が足止めするか……」

 そして改めて皆の顔を見回したアルは、真剣な表情で確認するように言葉を発する。

「良いか? 城壁を抜けたら一直線に城内に向かう。 途中で兵に出くわしたら、俺が囮になるから皆は最短で城内に行く事! 先頭はリナ。 アズサとレイはそれに続いてくれ」

 アルの言葉を聞き頷く皆とは対象的に、シナモンは少し気不味そうな表情をしていた。

(ここまで言っても付いてくるつもりか…… まぁ…… 今更、後には引けないか……)

 俯くシナモンの頭をポンポンと叩いたアルは、真剣な表情で声をかける。

「良いか? お前は戦えないんだから、全力でリナに付いてけよ? 絶対に離れたりするなよ?」

「はっ、はいなのですよ!」

 アルの言葉を聞いたシナモンは、ハッとした表情に変わると首を大きく縦に振る。

 その様子を見たアルは、レイに視線を向け真剣な表情で言葉をかける。

「レイ! 頼みがあるんだけど、良いか?」

「なっ、なに? 何でも言って!!」

 力強く答えるレイの様子に、アルは少しだけ気不味そうな表情に変わる。

 しかし直ぐに気を取り直すと、シナモンの頭に手を乗せながら意を決したように話を続ける。

「爺さんやバレリアには禁止されてたけど…… もし、コイツが危なくなったらレイの【烙印】の」

「うんっ! 任せてっ! 何があっても絶対にシナモンちゃんは守るから!!」

「れっ、レイ様……」

 アルが言葉を言い終わる前に、レイは再度大きく頷きながら力強く答える。

「よしっ! んじゃ…… さっさと取り返すぞ!」

 アルの言葉を聞いた皆は大きく頷く。

 そして周囲を確認するとアズサを先頭に、皆が城壁へと向かっていった。
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